Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

韓国映画『対外秘』あらすじ感想評価。悪人伝のイ・ウォンテ監督が描く“政府の表と裏”|映画という星空を知るひとよ231

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第231回

1992年の韓国・釜山の町を舞台にした映画『対外秘』は、『悪人伝』(2019)のイ・ウォンテ監督が、権力闘争の表と裏を予測不能な展開で緊迫感たっぷりに活写したサスペンスです。

主人公の政治家ヘウンに『工作 黒金星と呼ばれた男』(2018)『警官の血』(2022)のチョ・ジヌン、『KCIA 南山の部長たち』(2020)のイ・ソンミンが権力者スンテ、『犯罪都市 PUNISHMENT』(2024)のキム・ムヨルが裏世界の悪魔ピルドを演じています。

映画『対外秘』は、2024年11月15日(金)シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷他、全国公開

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『対外秘』の作品情報

(C)2023 PLUS M ENTERTAINMENT AND TWIN FILM/B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED. 

【日本公開】
2024年(韓国映画)

【監督】
イ・ウォンテ

【出演】
チョ・ジヌン 、イ・ソンミン、キム・ムヨル 、ウォン・ヒョンジュン、キム・ミンジェ、パク・セジン

【作品概要】
『対外秘』は、『悪人伝』(2019)のイ・ウォンテ監督が手がけた、権力闘争の表と裏を描き切る絶対予測不能なサスペンスドラマです。

1992年の釜山を舞台に、権力を競い合う表社会の政治闘争と、莫大な金を巡り命まで奪い合う裏社会の死闘が幕を開け、騙し合いと裏切りの心理戦、襲撃と返り討ちの無限ループを描きます。

工作 黒金星と呼ばれた男』(2018)のチョ・ジヌンが主役を務め、共演に、『KCIA 南山の部長たち』(2020)のイ・ソンミン、『犯罪都市 PUNISHMENT』(2024)のキム・ムヨル。

映画『対外秘』のあらすじ


(C)2023 PLUS M ENTERTAINMENT AND TWIN FILM/B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.

1992年、釜山でのこと。党の公認候補を約束されたヘウンは、国と国民に尽くそうと国会議員選挙への出馬を決意します。

ところが、公認をしてくれるはずだった、陰で国をも動かす黒幕のスンテが、公認候補を自分の言いなりになる男に変えてしまいました。

激怒したヘウンは、スンテが富と権力を意のままにするために作成した〈極秘文書〉を手に入れます。

自らもダークサイドに堕ちる覚悟をしたヘウンは、ギャングのピルドから選挙資金を得て無所属で選挙に出馬。

地元の人々からの絶大な人気を誇るヘウンは選挙に圧倒的有利に見えたのですが、スンテが戦慄の逆襲を仕掛けます。

ですが、この選挙は、国を揺るがす壮絶な権力闘争の始まりに過ぎなかったのです。

映画『対外秘』の感想と評価


(C)2023 PLUS M ENTERTAINMENT AND TWIN FILM/B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.

本作のタイトル「対外秘」は「極秘」のことであり、他の人や団体に知られてはいけない秘密のことを言います

これを手中に収めている限り、敵の弱みを握っていることになります。いわば、権力者のとっておきの奥の手と言えるのが「対外秘」なのでした。

国と国民に尽くそうと美しい動機に燃えていたヘウンは、上部組織から裏切られ、「対外秘」を手に入れて国会議員になろうとして立ち上がりました。

魂を悪魔に売ったかのようなヘウンに、人間の変わり身の早さを思い知らされます。政界にはこのように、悪魔や魔王が潜んでいます。ある意味、現代社会の地獄と言えるのでしょう。

業界のボスであるスンテと対峙するヘウン。お互いの弱みを握っていると思い、「引き分けだ」と言うスンテに、ヘウンは「ウィンウィンだ」と答えます

ハッタリとも言えますが、一世一代の大勝負! キモが座った態度に見えるヘウンのこめかみに流れる一筋の汗が、緊張感を伴った彼の心の葛藤と決意を伺わせます

セリフや状況説明がなくても、心の動きが手に取るようにわかるシーンです。アクションも多い作品ですが、ここではこの作品の持つ重厚な緊張感が見て取れました。

一方、撮影場所としてイ・ウォンテ監督は、1990年代の釜山をイメージできるような港町を探し求めます。

ロケ地となった、開発された今の釜山港以前の海の香りが漂うさびれた港町で繰り広げられる、無頼漢、政治家、権力者たちが織りなす人間模様と心理戦から目が離せません

(C)2023 PLUS M ENTERTAINMENT AND TWIN FILM/B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.

まとめ


(C)2023 PLUS M ENTERTAINMENT AND TWIN FILM/B.A. ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED.

韓国釜山を舞台にし、『悪人伝』(2019)のイ・ウォンテ監督が、権力闘争の表と裏を予測不能な展開で緊迫感たっぷりに活写したサスペンス映画『対外秘』をご紹介しました。

1990年代の港町釜山の発展の利を狙う、地域有力者と政府官僚の目論見。騙し合い、裏切り、策略がいつ果てるともなく続きます。

激闘の勝利者は、トップシークレットと言える「対外秘」の文書を手に入れた者なのでしょうか。ヘウン、スンテ、ピルドの3人が織りなす無限ループの結末をどうぞお楽しみに。

映画『対外秘』は、2024年11月15日(金)シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷他、全国公開

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。



関連記事

連載コラム

映画『わたくしどもは。』あらすじ感想と評価解説。ロケ地・佐渡島で小松菜奈×松田龍平が“輪廻という別れ”を演じる|TIFF東京国際映画祭2023-14

映画『わたくしどもは。』は第36回東京国際映画祭コンペティション部門にてワールド・プレミア上映! 男と女は「生まれ変わったら、今度こそ一緒になろうね」という約束の言葉を最後に、寺の境内から身を投げた… …

連載コラム

映画『MOTHER マザー』解説と考察。奥平大兼が演じた祖父母殺害事件に見る‟特異な母親像”と転落への道|銀幕の月光遊戯 60

連載コラム「銀幕の月光遊戯」第60回 映画『MOTHER マザー』は2020年7月3日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開予定。 映画『MOTHER マザー』は、『さよなら渓谷』(2013年) …

連載コラム

『マーメイドNYMPH』ネタバレ感想と結末解説のあらすじ。人魚ホラーのリベンジには皆殺しジャンゴの復讐がお似合いだ|B級映画 ザ・虎の穴ロードショー10

連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第10回 深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信サービス【U-NEX …

連載コラム

映画『シスターフッド』あらすじと感想レビュー。西原孝至監督の混在するドキュメンタリーと劇映画の臨界を探る|OAFF大阪アジアン映画祭2019見聞録3

連載コラム『大阪アジアン映画祭2019見聞録』第3回 女性の存在が根本から問い直されている昨今、意欲作が次々と発表されています。 しかし若手女性の映像作家の活躍は目覚ましいものがありますが、男性監督の …

連載コラム

映画『ケアニン〜こころに咲く花〜』感想と考察評価。戸塚純貴が演じた介護福祉士の仕事内容で‟咲せた花”とは|映画という星空を知るひとよ3

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第3回 映画『ケアニン〜こころに咲く花〜』は、戸塚純貴が新人の介護福祉士を演じ、介護現場の現実を描いた映画『ケアニン~あなたでよかった~』の続編です。 介護福祉 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学