連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第229回
「前略おふくろ様」や「北の国から」シリーズなど、数々の名作を手がけてきた巨匠・倉本聰が長年にわたって構想し、「どうしても書いておきたかった」と語る渾身のドラマ『海の沈黙』。
このたび、このドラマが『空母いぶき』(2019)や『Fukushima 50』(2020)などを手がけた若松節朗監督によって映画化されます。
映画『海の沈黙』は、2024年11月22日(金)TOHOシネマズ 日比谷 ほか全国公開!
類まれな才能を持つ天才画家があることをきっかけに表舞台から消えました。
人々の前から姿を消した天才画家のこれまで秘めてきた想い、美と芸術への執念、そして忘れられない過去が明らかになる時、至高の美と愛の全貌がキャンバスに描きだされます。
主役の天才画家を務めるのは、本木雅弘。小泉今日子、中井貴一、石坂浩二、仲村トオルら豪華な共演者とともに重厚な物語を紡ぎます。
映画『海の沈黙』の作品情報
【日本公開】
2024年(日本映画)
【原作・脚本】
倉本聰
【監督】
若松節朗
【製作】
曳地克之
【プロデューサー】
佐藤龍春
【出演】
本木雅弘、小泉今日子、清水美砂、仲村トオル、菅野恵、石坂浩二、萩原聖人、村田雄浩、佐野史郎、田中健、三船美佳、津嘉山正種、中井貴一
【作品概要】
『海の沈黙』は、「前略おふくろ様」や「北の国から」シリーズなど、数々の名作ドラマの脚本を手がけてきた巨匠・倉本聰が長年にわたって構想した物語を映画化したものです。
『空母いぶき』(2019)や『Fukushima 50』(2020)の若松節朗監督がとりまとめました。主役を務めるのは本木雅弘、共演として小泉今日子、中井貴一、石坂浩二、仲村トオル、清水美砂ら豪華キャストが顔を揃えます。
映画『海の沈黙』のあらすじ
世界的な画家・田村修三(石坂浩二)の展覧会で、作品のひとつが贋作だと判明する事件が起こります。
田村本人だからこそ見抜けた本物そっくりな出来栄えで、力強い海の描写が印象的な作品です。
この絵を描いたのは一体、誰なのでしょう? 連日、事件の報道が加熱する中、北海道・小樽では女性の死体が発見されます。
その身体にはほぼ全身刺青が施されていました。
素晴らしい贋作と美しい刺青が特徴的な2つの事件をつなぐ存在として、一人の男性が浮かび上がります。
それは、新進気鋭の天才画家と称されながら、ある事件をきっかけに人びとの前から姿を消した津山竜次(本木雅弘)でした。
かつての竜次の恋人で、現在は田村の妻である安奈(小泉今日子)は小樽へ向かい、二度と会うことはないと思っていた竜次と再会を果たすのですが……。
映画『海の沈黙』の感想と評価
タイトルの『海の沈黙』は、主人公津山竜次が若い頃に描いた絵画のタイトルです。北海道の荒々しい海が大きな秘密を抱えて、津山の人生に絡んできます。
本作は、津山の元恋人で現在は画家の田村の妻である安奈が、占い師に自分の生活を観てもらうシーンで始まります。そこで指摘されたのは、安奈の心の奥にある1人の男の影でした。
安奈はそんな人はいないと言い切りますが、その後起こった田村の展覧会での贋作事件からある過去の記憶が蘇ります。
脚本家の倉本聰が長い間構想を練った作品と言われるだけあって、事件の裏側には深い愛と憎しみが潜んでいます。主人公津山の一筋縄ではいかない人生模様が見て取れます。
自分の描きたい美を追求する芸術家の本質とともに、人としての‟ぬくもり”を求める姿が狂おしく表現された作品で、孤高の天才画家・津山の苦悩を熱演する本木雅弘に、心を揺さぶられることでしょう。
まとめ
「北の国から」シリーズなど、人気ドラマを数多く手がけてきた巨匠・倉本聰の構想30年をかけた渾身作『海の沈黙』をご紹介しました。
本木雅弘が演じる天才画家・津山竜次の追求する「美」への執念と過去の記憶が、贋作事件をきっかけに、小泉今日子演じる津山のかつての恋人・安奈との再会によって鮮明になってきます。
贋作の犯人捜しというミステリーから、ほろ苦い大人のラブストーリーへと物語は急展開。痛ましい思いを胸に抱く津山を演じる本木雅弘にご期待ください。
映画『海の沈黙』は、2024年11月22日(金)TOHOシネマズ 日比谷 ほか全国公開!
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。