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『ガザからの報告』あらすじ感想評価。ドキュメンタリーで土井敏邦監督が戦時下の現状を世界へ伝える|映画という星空を知るひとよ225

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第225回

『ガザからの報告』は、パレスチナ取材歴30年の⼟井敏邦監督が、30年にわたる激動のガザの過去と現在を繋ぐ渾身のレポートを映像化した作品です。

2023年10⽉7⽇、ハマスによる越境攻撃をきっかけに始まったイスラエルによる未曽有のガザ攻撃。

本作は、ガザ地区に住むエルアクラ一家の日常を追った第一部と、ハマス指導者やスタッフ、戦闘員、ガザ住民へのインタビューを中心とした第二部ならなる2部構成で、今現地で何が起きているのかを鮮明に描き出します。

映画『ガザからの報告』が、2024年10⽉26⽇(土)より東京・Kʼs cinemaほか全国順次公開

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『ガザからの報告』の作品情報


(C)DOI Toshikuni 2024

【日本公開】
2024年(日本映画)

【監督・製作・撮影・編集】
⼟井敏邦

【整音】
川久保直貴

【出演者】
第一部:アブ・バッサム(アリ・エルアクラ)、バッサム、ファウジ、ガッサン、ウム・バッサム(セブハ)、フサム、ハイデル・アブドゥルシャーフィー、イスマイル・ハニーヤ、ハーレド・アブドゥルシャーフィー、サラ・アブドゥルシャーフィー
第二部:ラジ・スラーニ、アハマド・ヤシーン、イスマイル・アブジャブ、ガジ・ハマド、アミラ・ハス、M

【作品概要】
ドキュメンタリー『ガザからの報告』は、パレスチナ取材歴30年の土井敏邦によるイスラエルとパレスチナの過去と現在を繋ぐ渾身のレポートです。

第一部「ある家族の25年」では、故郷を追われてガザ最大の難民キャンプ「ジャバリア」で暮らすエルアクラ家を取材し、第二部「民衆とハマス」後にイスラエルによって暗殺されたハマス指導者やスタッフ、戦闘員、ガザ住民へのインタビューを中心とした2部構成で、現在のガザの惨状の根源を浮かびあがらせています。

映画『ガザからの報告』のあらすじ


(C)DOI Toshikuni 2024

第一部「ある家族の25年」

故郷を追われ、ガザ最大の難民キャンプ「ジャバリア」で暮らすエルアクラ家。土井敏邦は1993年9月の「オスロ合意」直後から住み込みで取材を開始しました。

職につけず、結婚もままならない息子たち。家族と共に故郷へ戻れる日を待ち続けている父。イスラエル軍の撤退、解放、パレスチナ自治政府の誕生。「和平」ムードに人々が歓喜する一方で、父は「これは本当の和平ではない」と怒り、故郷への帰還を諦めて家の増築を始めました。

パレスチナ初の選挙が行われ、インフラが整備されたガザで、エルアクラ家の息子たちは仕事と家庭を持ち、新たな生活を送っていた。しかし自治政府の独裁・強権政治と腐敗が深刻化し……。

第二部「民衆とハマス」


(C)DOI Toshikuni 2024

イスラエル国家を認めず、全パレスチナの解放、難民の帰還を掲げるハマス。彼らは貧困に苦しむ家庭への食料配布や孤児の救済、女性の職業訓練、医療支援といった慈善事業と、 パレスチナ解放をめざす武装闘争の両面で民衆の支持を拡げてきました。

2006年の選挙と、翌年の内戦の勝利によってハマスがガザ地区を実効支配するようになると、イスラエルは封鎖政策を強化。

さらにはハマスの悪政も重なり、人びとはかつてない貧困に喘ぐことになります。絶望した住民たちの中にはイスラム教で禁止されている自殺に走る者、ガザ脱出を図る者まで続出しました。


(C)DOI Toshikuni 2024

映画『ガザからの報告』の感想と評価


(C)DOI Toshikuni 2024

ガザは、日本の種子島ほどの土地に200万人の人が住む、 世界で最も人口密度が高い場所の一つです。1993年にイスラエルとPLO(パレスチナ解放機構)の間で結ばれた「オスロ合意」に基づいて、ガザ地区はヨルダン川西岸地区と共に「パレスチナ自治区」になりました。

ですが、2007年以来、ガザは周囲からイスラエル軍に包囲されています。移動やアクセスに厳しい制限があり、塀やフェンスで囲まれた住まいの外観から「天井のない監獄」と言われています。

2023年10月からハマスによる越境攻撃をきっかけに、イスラエルによる未曾有のガザ攻撃が始まりました。パレスチナ・ガザ取材歴30年の土井敏邦のもとには、現地ジャーナリストから定期的に報告が届いていると言います。

「電気、水が遮断され、深刻な食糧危機が続き、生活環境も治安も悪化する中で、人々は精神的にも追い込まれている」

命がけで伝えられるその“生の声”を受け取った土井敏邦は、ジャーナリストの責務として、激動のガザ・30年の真実の記録を世界に向けて伝えようとして本作を作り上げました

住み込みで取材をしたエクアクラ家の人々の人生をみつめる第一部。ここではガザ住民の生の生活が鮮明に描き出されています。

またガザ住人にとって「オスロ合意」とは何だったのかを問い、「ガザのパレスチナ人」と一括りにされる彼らが私たちと“同じ人間”であることを伝えています。なお、エクアクラ家の人々は今回のイスラエルの軍事作戦により、消息が途絶え安否不明となっているそうです。

第二部では、後にイスラエルに暗殺されたハマスの指導者やスタッフ、戦闘員、そしてガザ住民へのインタビューを重ね、ハマスが民衆から乖離していったプロセスを追い、今のガザの惨状の根源を浮かび上がらせています。

今回のガザ攻撃を受けた現地からの報告を元に見えてくるのは、インフラも人間もすべてが破壊されてしまった現在のガザの厳しい現状

これだけ人間同士が争って、破壊しくつした後に何が残るというのでしょうか。人間同士の憎悪や復讐からの紛争や争いは、その民族だけの自己満足に過ぎないように思えます。

惨状を極める現地からの嘘、偽りのない‟生の声”は、しっかりと私たちに届けられたと言えるでしょう。

まとめ


(C)DOI Toshikuni 2024

ドキュメンタリー『ガザからの報告』をご紹介しました。

本作は、イスラエルとパレスチナの取材を30年以上にわたって続けてきた映像ジャーナリストの土井敏邦監督が、イスラエルによる未曽有の攻撃の受けるガザの過去と現状を映像化したものです。

ガザ攻撃の裏には、2000年以上も昔からパレスチナという地域をめぐって、アラブ人とユダヤ人が起こしている対立があります。自国を求める民族問題に宗教問題も絡み、いまだに解決されない奥の深い対立です。

刻々と進化する世界情勢と文化の中において、なぜ人間の争いだけが治まらないのか。人の心の奥にすむ極めて醜いモノが生々しく描き出されています。

争いのある現地から遠く離れていても、同じ人間である限り、そこで今何が起きているのかを知る必要はあるに違いありません

映画『ガザからの報告』が、10⽉26⽇(土)より東京・Kʼs cinemaほか全国順次公開となります。

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。



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