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Entry 2021/01/08
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映画『恋する遊園地』あらすじ感想と解説評価。ノエミ・メルランの恋のお相手はテーマパークのアトラクション!|映画という星空を知るひとよ45

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第45回

遊園地のアトラクションとの奇想天外なラブストーリー映画『恋する遊園地』。

本作は、エッフェル塔に恋をし、実際に法的手続きを経てエッフェル塔と結婚したというアメリカ人女性の実話から着想を得た監督ゾーイ・ウィットックが、人間の女性と遊園地のアトラクションとの恋を描いたものです。

人間同士の恋愛もなかなか思い通りに行かないというのに、相手が遊園地のアトラクションというこの恋は、果たしてどんな結末を迎えるのでしょうか。

主演は『燃ゆる女の肖像』でリュミエール賞主演女優賞を受賞したノエミ・メルランが務めています。

映画『恋する遊園地』は、2021年1月15日(金)ロードショーです。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『恋する遊園地』の作品情報


(C)2019 Insolence Productions – Les Films Fauves – Kwassa Films

【日本公開】
2021年(フランス・ベルギー・ルクセンブルク合作映画)

【原題】
Jumbo

【脚本・監督】
ゾーイ・ウィットック

【キャスト】
ノエミ・メルラン、エマニュエル・ベルコ、バスティアン・ブイヨン、サム・ルーウィック

【作品概要】
映画『恋する遊園地』は、エッフェル塔に恋した女性が実際に法的手続きを得て結婚したという実話から着想を得て、ゾーイ・ウィットック監督が手掛けました。

主人公のジャンヌ役は、『燃ゆる女の肖像』でリュミエール賞の主演女優賞に輝くノエミ・メルラン。ロマンティックで驚きに溢れた“現代のおとぎ話”を作り上げています。

映画『恋する遊園地』のあらすじ

(C)2019 Insolence Productions – Les Films Fauves – Kwassa Films/span>

奔放な性格の母と2人暮らしのジャンヌは、とても内気な性格です。

ジャンヌがお腹にいる時にジャンヌの父である男と別れた母は、以来女で1つでジャンヌを育てていました。

ジャンヌは遊園地のアトラクションのミニチュアを制作することが趣味の物静かな女性に育ちます。

そして、幼いころから通っていた遊園地の夜間スタッフとして働き始めていました。

ある日、新たに導入されたアトラクションのムーブ・イットを目にした彼女は、煌々と輝くライトや美しくメタリックなボディ、熱く流れる油圧のオイルなど、ムーブ・イットの全てに魅了されました。

ある夜、その美しさにひかれ、ジャンヌはムーブ・イットに「“ジャンボ”と呼んでいい?」とひとり語りかけます。

やがて彼女の思いに応じるかのように、ジャンボはライトを灯して動き始めました……。

映画『恋する遊園地』の感想と評価


(C)2019 Insolence Productions – Les Films Fauves – Kwassa Films

『恋する遊園地』のオープニングでは、いきなり「実話から生まれた物語」という文字が出てきます。

本作は遊園地のアトラクションと人間の恋の物語ですが、エッフェル塔を愛して法的に結婚した女性の実話をヒントに生まれた映画だそうです。

ロボットと人間の恋、というのはありそうですが、機械それも遊園地のアトラクションというのは、本当に奇想天外な設定と思われます。

しかし、映像でみると、夜の闇に煌々と輝くライトをまとったアトラクションの姿は、雄大で神々しいものでした。

人一倍こういったアトラクションに惹かれる性質だと思われる主人公ジャンヌが、‟ジャンボ”に魅かれるのも無理はありません。

ジャンヌは父親の顔を知らず、母はジャンヌよりもとっかえひっかえ連れてくる新しい恋人たちに夢中です。

父と母から与えられるべき家族の愛が薄いジャンヌにとっては、人よりも寂しい心を分かってくれかも知れないアトラクションの方が良かったのかも知れません。

人ではないモノに恋をするというのは、普通の人から見れば“歪んだ愛”と思われるでしょう。ですが、ジャンヌは母に必死にその思いを訴えます。

相手と一緒にいると楽しくなれるという気持ち。これは愛じゃないの?と。

エマニュエル・ベルコ演じるジャンヌの母もこれには答えられないでいます。

果たして自分の娘がこんな恋をしたらどうするべきか。母親としての苦悩も見え隠れし、考えどころ満載な作品でした。

ジャンヌに扮するのは、ノエミ・メルラン。『燃ゆる女の肖像』(2020)でも女性同士の恋愛を演じ切って、リュミエール賞の主演女優賞を受賞しています。

フランスの詩人アルフォンス・ド・ラマルティーヌの「命なき物よ お前にも魂があり 僕らに愛を求めるのか?」というフレーズが、この作品の世界観へのナビゲイトを務めています。

まとめ

(C)2019 Insolence Productions – Les Films Fauves – Kwassa Films

映画『恋する遊園地』は、実話を基にして生まれた、遊園地のアトラクションに恋した人間の女性の物語。

主役は2人。1人は、ヒロインのジャンヌ。『燃ゆる女の肖像』でリュミエール賞の主演女優賞に輝いたノエミ・メルランが演じています。

そして、もうひとつの主役は、ジャンヌが恋に落ちるアトラクション“ジャンボ”。

フランスでイメージ通りのアトラクションを見つけた映画制作陣は、撮影地となるベルギーへ移動させ、1年をかけてカスタマイズし、アトラクションの“ジャンボ”として生まれ変わらせたといいます。

やはり主役ですから、それなりのインパクトと存在感が欲しかったのでしょう。苦労と年月をかけて作り上げた“ジャンボ”は、ボディも美しく、見映えのするイケメンアトラクションとなっています。

遊園地は、恋人たちのデートスポットだけでなく、家族がファミリーで楽しむ場所でもあります。

家族愛の薄いジャンヌが遊園地に魅かれるというのも、肉親の愛に飢えていたからかも知れません。

本作は観ているうちに、“アトラクションは生きている”という気がし、本気ならアトラクションとでも恋はできると思える、楽しいラブストーリーとなっています。

映画『恋する遊園地』は、2021年1月15日(金)ロードショーです。

次回の連載コラム『映画という星空を知るひとよ』もお楽しみに。

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