連載コラム『いま届けたい難民映画祭2025』第7回
難民映画祭は、難民をテーマとした映画を通じて、日本社会で共感と支援の輪を広げていくことを目的とした映画祭で、世界各地で今まさに起きている難民問題、1人ひとりの物語を届けています。
今年で20回目を迎える難民映画祭。それは、「節目」であると同時に、「続いてしまった現実」を映す鏡でもあります。
2025年11月6日(木)〜12月7日(日)開催の第20回難民映画祭では、困難を生き抜く難民の力強さに光をあてた作品をオンラインと劇場で公開。公開される9作品をCinemarcheのシネマダイバー菅浪瑛子が紹介します。
今回紹介するのは、難民としてイラクからイギリスに渡った、ろう者であるクルド人の少年ラワンのドキュメンタリー『ぼくの名前はラワン』。
『ぼくの名前はラワン』は、2026年1月9日より新宿武蔵野館ほかにて公開予定のため、特別先行上映として12月3日(水)にイタリア文化会館(東京)で上映します。オンライン上映はありません。
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映画『ぼくの名前はラワン』の作品情報

(C)Lawand Film Limited MMXXII, Pulse Films, ESC Studios, The British Film Institute
【日本上映】
2025年先行上映(イギリス映画)
【原題】
Name Me Lawand
【監督、脚本】
エドワード・ラブレース
【キャスト】
ラワン・ハマダミン
【作品概要】
SXSWやBFIロンドン映画祭などで高い評価を受けてきたイギリス人監督のエドワード・ラブレースが、2019年に写真をきっかけにラワンのことを知り、殻を破ろうとするラワンの姿に心を動かされます。
ラワンが通うダイギリス・ダービーの王立ろう学校で多くの時間を過ごし、ラワンと打ち解け、クルド人やろう者のプロデューサーらと撮影チームを組み、4年の歳月をかけてラワンの成長をカメラで捉えました。
本作はニューヨーク・ドキュメンタリー映画祭をはじめとする各国の映画賞で賞賛されました。
映画『ぼくの名前はラワン』のあらすじ

(C)Lawand Film Limited MMXXII, Pulse Films, ESC Studios, The British Film Institute
生まれつき耳が聞こえないろう者である、クルド人の少年ラワン。家族の中で耳が聞こえないのは、ラワンだけでした。
手話を教える人もいなくて孤独なラワンの姿を見た両親は、イラクにラワンの将来はないと感じ、故郷を離れる決意をします。
難民キャンプで1年過ごした後、ある支援者の尽力よってイギリスに渡ることができ、ダービーという街で一家は難民として生活を始めます。ラワンは王立ろう学校に入学し、手話や口語を学び、初めて自分の言葉を得ます。
ろう学校では、ラワンのようなケースは初めてでしたが、教師らはラワンに寄り添い、好奇心旺盛なラワンの手話の取得スピードに驚きます。
ろう学校で友だちもできたラワンでしたが、両親は口語ではなく手話だけで会話することを選んだラワンの選択を心配していました。またラワン自身も、手話ができない両親と思うように会話ができないことに寂しさを感じていました。
そんな中、イギリス政府は一家の難民申請を却下し、国外退去を命じます。ラワンが生きていくのはここしかないと絶望する家族でしたが……。
映画『ぼくの名前はラワン』の感想と評価

(C)Lawand Film Limited MMXXII, Pulse Films, ESC Studios, The British Film Institute
難民としてイラクからイギリスに渡った、ろう者のクルド人の少年ラワンのドキュメンタリー『ぼくの名前はラワン』。
好奇心旺盛で、表情豊かなラワンが手話という自分の言葉を経て、友だちもできて楽しそうに駆け回る姿が印象的ですが、それまでのラワンは想像もできないような孤独や恐怖を抱えて生きていました。
イラクでラワンは誰ともコミュニケーションをとることができず、「自分は違う惑星から来た、ここは自分の惑星ではない」と感じていたと言います。そんなラワンを一番近くで見ていたのが、兄でした。ラワンの友だちは兄しかいませんでした。
ラワンの身を案じてイラクから逃れイギリスに渡った一家ですが、ラワンにイラクを離れることを伝えられきず、ラワンはただただ恐怖を感じながら過酷な旅を乗り越えたのです。
イギリスにたどり着いた一家。兄はラワンに「もう大丈夫」と伝えたかったが、伝える術がなかったと言います。
その後、ラワンは初めて手話という自分の言葉を経て、自分の気持ちを伝えられるようになりますが、イラクでの話は「話したくない」と言います。笑われ、揶揄われてきたこと、孤独だったこと……自分の言葉を得ても、つらく苦しい思い出と向き合うのには時間がいるのです。
それでも、一歩一歩さまざまなことを知り成長していくラワンの姿は眩しく、彼の幸せな日常が奪われることがあってはいけない、と願うばかりです。
しかし、そんな日常すらイギリス政府からの国外退去の通告で崩れ去ってしまいます。難民という立場の不安定さ、安心して暮らすことができない状況が浮き彫りになっていきます。
ラワン、そして一家の思いはイギリス政府に届くのでしょうか。
まとめ

(C)Lawand Film Limited MMXXII, Pulse Films, ESC Studios, The British Film Institute
生まれつき耳が聞こえない、ろう者の少年ラワン。
ずっと孤独を抱えていたラワンは、過酷な旅を経てたどり着いたイギリスで、手話を学び、自分の言葉を伝えられるようになります。
ずっと自らを「よそ者」だと思っていた、居場所がなかったラワンの世界がひらけたのは、教育の力、教育を得ることができる環境に両親や支援者が導いてくれたからなのです。
難民キャンプは人が増える一方で、その教育環境は十分とはいえません。また、ラワンのようなろう者をはじめとした障がい者に対する支援も行き届いていません。
ラワンがいたイラクをはじめ、ろう者や障がい者の子どもたちが十分な教育を得られない国もたくさんあります。そんな彼らが未来を諦めることのない世界になるにはどうしたら良いのか、と改めて感じさせます。
また、『ぼくの名前はラワン』は、エドワード・ラブレース監督が2019年にラワンの写真を見たことをきっかけに、クルド人やろう者のプロデューサーらと撮影チームを組み、4年の歳月をかけて撮影しました。
監督はラワンが通う王立ろう学校に通い、ラワンと打ち解ける中で彼の等身大の姿、成長を映し出しています。ラワンの表情もまた本作の見どころと言えます。
第20回難民映画祭は2025年11月6日(木)〜12月7日(日)までオンラインにて開催されます。
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