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Entry 2022/12/19
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『すべてうまくいきますように』あらすじ感想と評価考察。映画監督フランソワ・オゾンが‟家族の安楽死”問題を投げかける|映画という星空を知るひとよ133

  • Writer :
  • 星野しげみ

連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第133回

サスペンスフルなストーリーテリングを得意とするフランソワ・オゾン監督が、安楽死を望む父親とその娘たちの葛藤を描いた映画『すべてうまくいきますように』。

本作では、オゾン監督がフランスの国民的俳優ソフィー・マルソーと初タッグを組み、‟安楽死”を巡る父娘の葛藤を描きだしました。

フランスでは‟安楽死”は禁じられているため、スイスのある機関に相談してその日を決める父娘。それまでに孫の演奏会やリハビリの効果を実感したりと、決行日は延期されます。

映画『すべてうまくいきますように』は、2023年2月3日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ 他公開

果たして、安楽死を願う父の願いを娘は叶えられるのでしょうか……。映画公開に先駆けて、『すべてうまくいきますように』をご紹介します。

【連載コラム】『映画という星空を知るひとよ』一覧はこちら

映画『すべてうまくいきますように』の作品情報


(C)2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES

【日本公開】
2023年公開(フランス・ベルギー合作映画)

【原題】
Tout s’est bien passe

【原作】
エマニュエル・ベルンエイム

【脚本・監督】
フランソワ・オゾン

【製作】
エリック・アルトメイヤー、ニコラ・アルトメイヤー

【出演】
ソフィー・マルソー、アンドレ・デュソリエ、ジェラルディーヌ・ペラス、シャーロット・ランプリング、ハンナ・シグラ、エリック・カラヴァカ、グレゴリー・ガドゥボワ

【概要】
本作の原作は『スイミング・プール』(03)の脚本家エマニュエル・ベルンエイムの自伝的小説。病気によって不自由な身体になり安楽死を望む父親と、その娘たちの葛藤を描いた作品です。

8人の女たち』(2002)や『Summer of 85』(2020)などで知られるフランス映画界の名匠フランソワ・オゾン監督が取りまとめました。

主人公の長女は『ラ・ブーム』(1980)で世界的なアイドルとなり、今なお愛され続ける国民的俳優ソフィー・マルソーが務めます。

父のアンドレ役は、『私のように美しい娘』(1972)や『美しき結婚』(1982)で知られ、『ブラックボックス:音声分析捜査』(2022)にも出演した名優アンドレ・デュソリエ。

ジェラルディーヌ・ペラス、ハンナ・シグラら実力派も共演しています。

映画『すべてうまくいきますように』のあらすじ


(C)2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES

小説家のエマニュエルはある日、父アンドレが倒れて入院したという知らせを受けました。

芸術や美食を楽しみ、ユーモアと好奇心にあふれ、何より生きることを愛していた85歳の父アンドレ。検査の結果、脳卒中でした。

意識は回復したものの、身体の自由がきかなくなり、「こんな姿は友人にも見せたくない」と父は悲しみます。

彫刻家の母はパーキンソン病を患っているため、妹のパスカルと交替で父の看護にあたるエマニュエル。

リハビリを行いながら入院をしている父は、身体の自由がきかなくなったという現実が受け入れられず、人生を終わらせるのを手伝ってほしいと娘のエマニュエルに頼みます。

エマニュエルは妹のパスカルとも相談し、父の気が変わることを望みながらも、スイスの合法的に安楽死を支援する協会とコンタクトをとります。

一方で、リハビリが功を奏し日に日に回復する父は、孫の演奏会やお気に入りのレストランへ出かけ、生きる喜びを取り戻したかのように見えました。

けれども、父はまるで楽しい旅行の日を決めるかのように、娘たちにその日を告げます。

娘たちは戸惑い葛藤しながらも、父と真正面から向き合おうとします。 

映画『すべてうまくいきますように』の感想と評価


(C)2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES

『すべてうまくいきますように』のテーマは、家族の‟安楽死”です。

脳卒中で身体が不自由になった高齢の父親は生きる意欲を失い、「終わらせたい」と娘に言いました。つまりは、自分の命を終わらせたいということで、言われた娘は驚きます。

けれども父がそんな言葉を言ったのは娘だけではありません。医師や看護師にも言っていて、それだけ本気だということがわかりました。

明るくユーモアのセンスにあふれる父を愛する娘だからこそ、父の望みをかなえてあげたい気持ちと終わってほしくない気持ちが娘の心を交互に揺さぶります

安楽死を支援する協会に相談し、少しでも楽に逝けるよう思案する娘。その胸中は乱れに乱れます。

これは誰にも訪れる可能性のある問題ではないでしょうか。

もしも自分の家族や自分自身が重い病気にかかって、治る見込みがなかったり、周囲の人たちに迷惑をかけるような境遇になったとしたら……。

誰にも迷惑をかけたくないと思うなら、自分も安楽死を望むかも知れません。そして家族を安楽死をさせることが犯罪になるとしても、実行してしまうかもしれません

‟安楽死”は本人と家族のことを思えばこその手段と言えるのですが、果たして娘たちはどうするのでしょう。

結果については、‟すべてうまくいきますように”と、祈らずにいられません

まとめ


(C)2020 MANDARIN PRODUCTION – FOZ – France 2 CINEMA – PLAYTIME PRODUCTION – SCOPE PICTURES

名匠フランソワ・オゾンが集大成として描く、涙とユーモアあふれる感動の物語『すべてうまくいきますように』をご紹介しました。

誰にでもいずれは訪れる家族との別れを描いた作品ですが、家族が望む最期が安楽死だとしたら、自分ならどうするのでしょうか。

最愛の父をどうおくるか。娘の選択に注目です。

長女エマニュエルを演じるのは、ソフィー・マルソー。葛藤する胸の内を隠しながらユーモラスに日々を過ごしているのですが、時には感情が高ぶって爆発するエマニュエルが、身近な存在と思えることでしょう。

映画『すべてうまくいきますように』は、2023年2月3日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、Bunkamuraル・シネマ 他公開

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星野しげみプロフィール

滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。

時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。

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