連載コラム「SF恐怖映画という名の観覧車」profile163
ある「共通点」を持った年齢も立場も異なる男女が集められ、死の脱出ゲームを強要されるデスゲーム映画『エスケープ・ルーム』(2020)。
およそ100分の上映時間の中でバラエティに富んだ密室が登場し、常にハラハラとドキドキを感じさせてくれた『エスケープ・ルーム』は、予想を越えるヒットを記録しました。
そして2022年、前作を生き延びた登場人物がデスゲームを仕掛けた「ミノス社」への対抗を決意するシーンから始まるシリーズ第2作が映像配信サービス「U-NEXT」で配信開始。
今回は、前作では謎に包まれていた運営側に焦点を当てたシリーズ2作目『エスケープ・ルーム2:決勝戦(エクステンデッド・エディション)』(2022)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
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CONTENTS
映画『エスケープ・ルーム2:決勝戦(エクステンデッド・エディション)』の作品情報
【原題】
Escape Room: Tournament of Champions
【日本公開】
2022年(アメリカ映画)
【監督】
アダム・ロビテル
【キャスト】
テイラー・ラッセル、ローガン・ミラー、トーマス・コッケレル、ホランド・ローデン、インディア・ムーア、イザベル・ファーマン、ジェームズ・フレイン
【作品概要】
前作のヒットを受けて『インシディアス 最後の鍵』(2018)を手掛けたアダム・ロビテルが監督として続投し製作したシリーズ第2作。
テイラー・ラッセルやローガン・ミラーなど前作キャストが続投し、新たに『エスター』(2009)のイザベル・ファーマンが物語の鍵を握るクレアとして本作に出演しました。
映画『エスケープ・ルーム2:決勝戦(エクステンデッド・エディション)』のあらすじとネタバレ
死の脱出ゲーム「エスケープ・ルーム」を生き延びたゾーイとベンは、残された手がかりから「ミノス社」の場所を突き止めており、死んだ人間の想いに報いるためにマンハッタンへと飛行機で向かうことにします。
2003年、「エスケープ・ルーム」のパズル制作者ヘンリーは仕事に明け暮れ妻との関係が悪化し、ある夜サウナに入った妻は「ゲーム」に強制参加させられ死亡します。
現在、ヘンリーはパズルの制作を監禁している娘のクレアに任せていました。
ヘンリーは「ミノス社」の正体を突き止めようとしているゾーイの殺害に執着し、クレアはゾーイを「大事なものを奪われた人間」として同情します。
ヘンリーは飛行機に生存率4%のゲームを仕掛けゾーイを仕留めようと考えていましたが、ゾーイは過去のトラウマによって飛行機恐怖症を発症しており、土壇場で搭乗をやめて車でマンハッタンへ向かうことになります。
ニューヨークについたゾーイとベンは「ミノス社」所有と見られる廃ビルに侵入。
廃ビルに住み着いていた浮浪者の男にゾーイの時計が盗まれ、2人は男を追いかけるうちに地下鉄に乗り込むことになります。
男は車外へと逃げ、動き出した地下鉄は2人の乗る車両だけが不自然に切り離され、同乗者たちも地下鉄に取り残されてしまいました。
すると、車内アナウンスで「エスケープ・ルーム」の開始が案内され、同じ車両に乗り込んだ人間たち全員が過去に「エスケープ・ルーム」を生き延びた者だと分かります。
車内に電流が流され始め、全員が高い観察力と行動力で車内広告に隠された誤字の謎を解き脱出口を開くことに成功しますが、名前も分からない1人の参加者が感電し死亡。
脱出口の先はエレベーターへと繋がっており、生存者たちはゾーイとベン以外に、インフルエンサーのブリアナ、司祭のネイト、素性を明かそうとしないレイチェルの5人となりました。
エレベーターの先は銀行のロビーのようになっており、ハズレのタイルを踏むことで人を焼き切るほどのレーザーが照射される仕組みになっていました。
制限時間は10分であり、貸金庫とATMを使った謎を解き安全と思われるタイルの道順を見つけた5人を代表し、ネイトがタイルを歩きます。
しかし、時間が迫る中でネイトが暴走し転倒したことで気を失い、ベンがネイトを担ぎ進み、何とか全員が次のエリアに歩を進めました。
次のエリアは砂浜を模した部屋になっており、置かれていたポラロイドカメラに残された手がかりからイカリを探します。
金属探知機を見つけ砂の中からイカリを見つけたものの、部屋全体を覆う砂が突然流砂となりレイチェルが砂に飲み込まれました。
ネイトが自身を犠牲にすることで流砂の中からレイチェルを救い出し、彼自身は砂の中へと飲み込まれます。
流砂によって部屋自体の崩壊が始まり、イカリをはめ込んだ小屋の中に次の部屋への出口が見つかりますが、一方でゾーイは部屋の片隅にある月を模した電灯を外すことで制作者の思惑外の外への出口を発見。
ゾーイの呼びかけによってレイチェルは外の出口へと向かいますが、ゾーイを信じきれないブリアナは次の部屋へと向かい、ブリアナが外の出口へ行くことを待っていたベンは出口に間に合わず、ゾーイに後を託し砂へと飲み込まれてしまいました。
映画『エスケープ・ルーム2:決勝戦(エクステンデッド・エディション)』の感想と評価
「通常版」と大きく異なる本作
本作『エスケープ・ルーム2:決勝戦』は、アメリカで劇場公開された「通常版」とDVD&BD発売時に追加された「エクステンデッドエディション」で終盤の物語が大きく異なります。
「通常版」では前作で「エスケープ・ルーム」に参加し死亡したはずのデボラ・アン・ウォール演じるアマンダが再登場し、ベンを人質に取り、多くの「エスケープ・ルーム」を生き延びたゾーイをパズルの制作者に指名します。
一方で「エクステンデッド・エディション」にはアマンダが登場せず、代わりに「通常版」には登場しなかった運営側の人間であるヘンリーとパズル制作者のクレアが登場。
このことで酸の部屋以降の物語がふたつのバージョンで異なることとなり、「通常版」ではゾーイは「ミノス社」にほとんど痛手を与えることが出来ませんでしたが、「エクステンデッド・エディション」ではクレアによって「ミノス社」は逮捕者が出るほどの痛手を負っています。
この違いはゾーイの物語の完結を意識した「エクステンデッド・エディション」に対し、「通常版」は更なる続編の可能性を意識していると考えることが出来ます。
運営側の正体と謎が深まる黒幕
部屋全体をトースターのような部屋にしたり、地下鉄のひとつの車両を廃線に誘導し「エスケープ・ルーム」の舞台にしたりと大掛かりなデスゲームを仕掛ける「ミノス社」。
前作で「ミノス社」の目的が「富裕層に向けた賭けの対象となるゲームの提供」であることが明かされましたが、ゲームマスターやスタッフが登場するのみで「運営側」の正体は分からずじまいでした。
続編となる本作の「エクステンデッド・エディション」にはゾーイを着け狙う「運営側」の存在であるヘンリーが登場し、徐々に「ミノス社」の全容が明かされていくこととなります。
しかし、本作にはパズル制作や空港スタッフを巻き込んでゾーイの抹殺を行おうとしていたヘンリーですらさらなる「上の存在」に怯える描写があり、「通常版」と「エクステンデッド・エディション」の双方で「ミノス社」の全容が解明されることはありませんでした。
まとめ
「通常版」におけるゾーイとベンの新たなる「エスケープ・ルーム」への強制参加という衝撃的なラストに対して、続編の可能性を問われたアダム・ロビテルは「興行収入と関心によっては続編制作の可能性もある」と答えました。
次から次へと、殺意の塊のような難易度の謎解きを迫られる前作の興奮度を引継ぎ進化させた続編映画『エスケープ・ルーム2:決勝戦(エクステンデッド・エディション)』。
本作は「エスケープ・ルーム」の生き残りによる頂上決戦ならではの行動力と知恵の出し合いが、前作以上のハラハラとドキドキを与えてくれるエンターテインメント作品となっています。