Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

連載コラム

『Cosmetic DNA』映倫先輩との甘酸っぱい思い出【自主映画監督・大久保健也のニッポン頂上作戦4】

  • Writer :
  • 大久保健也

連載コラム『自主映画監督・大久保健也のニッポン頂上作戦』
第4回「映倫先輩との甘酸っぱい思い出」

皆様、お世話になっております。誰もお前の世話なんかした覚えねえよというそこのあなた、今こうしてリンクから飛んでこの記事を読んでくれている。それだけで僕はもう嬉しいです。


(C)田中舘裕介:『Cosmetic DNA』を演出した大久保健也監督

お世話になっております。今秋劇場公開の映画『Cosmetic DNA』の監督の大久保健也です。

映画『Cosmetic DNA』が映倫先輩からPG12指定(小学生以下のお子様が視聴する際、保護者の助言・指導が必要)を受けた話はもう既に連載コラム第1回でお話しました。

今回はその映倫先輩についてお話させてください。

【連載コラム】『自主映画監督・大久保健也のニッポン頂上作戦』一覧はこちら

映倫先輩との甘酸っぱい思い出

まずPG12指定というのは、とても微妙なラインだと思います。

決して家族みんなが安心して楽しめるような映画ではないけれど、中学生お断りというほどショッキングではない。誰もが気軽にちょっと覗き見できる「刺激的な映画の世界」がそこには広がっています。

過激な描写が苦手な人でも大丈夫。ほんとにヤバい映画ならR15指定になっているはずです。『Cosmetic DNA』はPG12指定。次の日も胃がギリギリするような激辛ラーメンではありません。もちろん辛さが映画の本質ではないのですが……

ラーメンの辛さで言うと『Cosmetic DNA』は当然、過激な描写やエログロを売りにしたような映画ではありません。

そういう消費のされ方に対して「やめて!!」という権利は僕にはない(映画はお客さんのものなので)のですが、僕自身は全て作品全体に流れるテーマを表現するために、逃げてはいけないという思いで胃をギリギリさせながら書きましたし撮りました。

だからこそ、その作品全体に流れる本当の、本質のテーマというのを僕は明言したくなくて、観た人がどう思うかを知りたい。劇場公開された暁には僕にだけこっそり教えてほしいです。

三池崇史監督の『極道大戦争』(2015):PG12

ところでPG12指定映画で思い出すのはやはり三池崇史監督の『極道大戦争』(2015)の残酷描写ですよね。『寄生獣』(2014)『地獄でなぜ悪い』(2013)なんかも強く印象に残っていますが、やっぱりこれです。

この映画のとあるシーンで、人の首がねじれて千切れるというくだりがあるんですが、その瞬間を、照明、アングル、編集、あらゆる映画テクニックを駆使して「R15指定相当」の表現から「PG12指定相当」の表現にまで抑えているという。

映画館でこれを観た時、これこそが映画文化、これこそがショー・ビジネスだと思いました。この表現をするかしないか、できるかできないかが自主映画と商業映画の境目とさえ思います。

『Cosmetic DNA』は自主映画で、撮影段階では“映倫先輩”のことは意識していなかったので『極道大戦争』的な表現とはまた別なのですが、それでも『極道大戦争』と同じPG12指定の冠を被れたことは誇りです。

劇場デビュー作がPG12指定って一番かっこよくないですか??かっこよくないですか……そうですか……すみません。

中島哲也監督の『告白』(2010):R15指定

映倫と言えば僕は1995年生まれで、ちょうど15歳を迎えた年に中島哲也監督の『告白』(2010)(R15指定)が公開されて観に行って衝撃を受けました。

その後に『バトル・ロワイアル』(2000)(R15指定)の3Dリバイバル上映があって、初見で当時はかなり怖かったけど、未だかつてないほど腹の底からワクワクしたのを覚えています。

なので今でも「R15」のロゴには当時感じたロマンが詰まっている、世界一好きなロゴです。オリンピックもこのロゴで開催すればいいのにと思います。

それから僕が18歳になった2013年に『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(R18指定)が公開されて「大人になったぜ俺も……」という気持ちでプリ夫を眺めていました。

さて次はどんな年齢制限が……という時にもうR18指定以上はないことに悲しくなりました。

もう誰にも「これは観ちゃダメ!!」と言われなくなってしまった。いつまでも大人に甘える子供ではいられないのだと悟り、いつも眺めていた難波の景色が少し冷たく見えました。

何の話をしていたのでしょうか。PG12指定映画はかっこいいという話でしたね。

とにかく『Cosmetic DNA』はすごい映画です。予算も知識も経験もありませんでしたが、とにかく異常なテンションを作劇にありったけ注入しました。PG12指定のギラギラ極彩色の楽しい悪夢、2021年秋、是非とも劇場で!!

次回の「自主映画監督・大久保健也のニッポン頂上作戦」は…


(C)穏やカーニバル

今後、定期的に大久保健也が自らを連載コラム通して、インディーズ映画『Cosmetic DNA』の魅力を更新していきます。

『Cosmetic DNA』の劇場公開を終えるまで、粛々と続けていこうと思います。全ての劇場公開が終わった時、それまでの連載コラムの記事を全部読んだという人は自己申告してください。自己申告は大事です。

【『Cosmetic DNA』公式Twitter】
@CosmeticDna

【『Cosmetic DNA』公式facebook】
https://www.facebook.com/CosmeticDna/

【連載コラム】『自主映画監督・大久保健也のニッポン頂上作戦』一覧はこちら

大久保健也監督プロフィール


(C)田中舘裕介

1995年生まれ、大阪育ち。中学時代より自主映画の制作を始め、60本以上の映像作品を制作。近年は様々なアーティストのMVなどを手がける傍ら、自主映画の制作を行っている。

2021年秋公開予定の『Cosmetic DNA』は初の長編監督作となる。

映画『Cosmetic DNA』のあらすじ


(C)穏やカーニバル

化粧を愛する美大生・東条アヤカ(藤井愛稀)は、ある日クラブハウスで出会った自称映画監督・柴島恵介(西面辰孝)に性的暴行を受ける。

泣き寝入りせざるを得ない状態に精神的に病んでいくアヤカだったが、大学院生のサトミ(仲野瑠花)、アパレル店員のユミ(川崎瑠奈)と出逢うことで少しずつ自我を取り戻していく。

しかし、柴島の次なる標的がユミであることを知ったアヤカは突発的に柴島を殺害。やがて死体処理を行う最中に人間の血液こそが理想の化粧品であることに気付くが……。

大久保健也監督へ応援のメッセージをお寄せください。

映画『Cosmetic DNA』を監督した大久保健也さんの連載コラムを読んでいただき、

*本記事は大久保健也監督がnoteに執筆したものを、監督本人に意向を伺いながら再構成した内容になっております。本文の一部の文言について編集部で追記調整した箇所があります。

関連記事

連載コラム

『サッドヒルを掘り返せ』感想と解説。「続夕陽のガンマン」のロケ地を映画マニアたちが聖地へと甦らせる|だからドキュメンタリー映画は面白い9

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第9回 荒れ果てた名作西部劇のロケ地を、俺たちの手で復活させる! 『だからドキュメンタリー映画は面白い』第9回は、2019年3月8日に日本公開の、『サッ …

連載コラム

【イップ・マン完結の映画感想とレビュー評価】ドニーイェン扮する詠春拳の達人が最後の闘いに挑む|すべての映画はアクションから始まる10

連載コラム『すべての映画はアクションから始まる』第10回 日本公開を控える新作から、カルト的評価を得ている知る人ぞ知る旧作といったアクション映画を網羅してピックアップする連載コラム、『すべての映画はア …

連載コラム

【ネタバレ】ゴジラマイナスワン|ラストシーン“再生”の意味は?倒し方に宿る“鎮魂”×ゴジラ細胞が予感させる《祟り神が忘れられた時》の“真の祟り”|0-1方程式の名はゴジラ2

ラストシーンの「再生」が予感させる《真の祟り》とは? 日本制作の実写ゴジラシリーズ作品としては『シン・ゴジラ』(2016)以来の7年ぶりとなる「ゴジラ」生誕70周年記念作品として、山崎貴監督が手がけた …

連載コラム

映画『ペリカン・ブラッド』あらすじと感想評価レビュー。心理サスペンスとミステリーの手法で社会問題に提起|2020SKIPシティ映画祭11

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2020エントリー・カトリン・ゲッベス監督作品『ペリカン・ブラッド』がオンラインにて映画祭上映 埼玉県・川口市にある映像拠点の一つ、SKIPシティにておこなわれるデジタ …

連載コラム

『姉姉妹妹』あらすじ感想評価とレビュー解説。ベトナム映画が大阪アジアンでABC賞受賞の快挙!|OAFF大阪アジアン映画祭2021見聞録7

第16回大阪アジアン映画祭「ABCテレビ賞」受賞作『姉姉妹妹』 2021年3月14日(日)、第16回大阪アジアン映画祭が10日間の会期を終え、閉幕しました。 グランプリと観客賞をダブル受賞した橫浜聡子 …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学