連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第67回
2021年11月4日(木)にNetflixで配信された、イズ・オジュク監督が描くアフリカ・ナイジェリアの時代劇アクション・アドベンチャー映画『アミナ』。
16世紀のナイジェリアを舞台に、代々男性が王位に就いてきたザザウ王国(現在のザリア)の王女アミナが、自国を守るために戦闘の武術を学んで軍を率いて戦いに身を投じていく姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
史実に基づいてザザウ王国の王女アミナの戦いを描いた、アフリカ・ナイジェリアの時代劇アクション・アドベンチャー映画『アミナ』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
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映画『アミナ』の作品情報
【配信】
2021年(ナイジェリア映画)
【脚本】
オケイ・オグンジフォー、フランク・ウバ
【監督】
イズ・オジュク
【キャスト】
ルーシー・アメ、アリ・ヌフ、クラリオン・チュクウラ、クリス・グバカン、イブラヒム・ミジンヤワ、ヤクブ・モハンメド、ウンミ・モハメッド、アサベ・マダキ、ジュネヴィエーヴ・オグンジフォー、ゴッドウィン・オガガ、エマニュエル・デグリ、アブドゥル・モハメッド、ヴィクトリア・ンウェケ
【作品概要】
『’76』(2016)のイズ・オジュクが監督を務めた、アフリカ・ナイジェリアの時代劇アクション・アドベンチャー作品です。
ルーシー・アメが主演を務め、サザウ王国の王女アミナ役を演じています。
映画『アミナ』のあらすじとネタバレ
16世紀のアフリカ・ナイジェリアには、13世紀から19世紀まで存在したという、アフリカのチャド系民族ハウサ人の都市国家群「ハウサ諸王国」建国神話に登場する、原初七国がありました。
そのうちの一国であるザザウ王国(現在のナイジェリア・ザリア)は、女性が従属的地位にあった時代でした。
バルクワの一族が治めるザザウ王国の王女アミナは、ザザウの国王(サルキ)であり、7つの王国の首長を務める父親と一緒に、闘技場で行われる男たちの決闘を観戦していました。
最高の魔力を持つトゥクルトゥクルの予言者(通称ズンブラ)である祭司を母に持つザザウ軍の兵士カバルカイは、母親から与えられた強い魔力によって、決闘では負け知らずの王者として君臨していました。
そんなカバルカイに戦いを挑むのは、捕虜として捕まっていたイガラ王国の王子ダンジュマです。
ダンジュマは最初はカバルカイに圧倒されていましたが、果敢に挑んで彼の左目を潰し、勝利を収めました。
しかしカバルカイの負けは、他の属国に「ザザウは将来の危機に無関心」だと示したことになるため、ダンジュマは自身の勝利を奪われただけでなく、地下牢に閉じ込められてしまったのです。
ダンジュマは捕まる直前、自分と一緒に奴隷として扱われていたいとこのアラディ・アメと一緒に逃げようとしますが、警備兵によって無理矢理引き離されてしまいました。
そんな2人の様子を見ていたアミナは、妹のザリアと一緒にアラディの元を訪れ、「友達になろう」と救いの手を差し伸べます。
アミナたち姉妹のお目付け役である老兵ムーサからの報告で、娘たちが1人の奴隷の解放を求めていることを知ったサルキは、奴隷と関わるなと姉妹を叱りました。
これに対しアミナは、ザザウの最高評議会で死刑の判決が言い渡されたダンジュマの助命と、アラディを奴隷の檻から解放するよう求めます。
さらにアミナは、「兵士のように武器を持って戦えるようになりたい」と直談判。指導役にカバルカイを指名しました。
「男が女を守るというザザウの伝統がある」と言って最初は反対したサルキでしたが、彼はザザウや7つの王国より家族を大事にする男。特に娘には甘かったため、最終的にはアミナの提案を全て受け入れることにしました。
サルキ自身、戦闘の武術を学んだアミナが、どこまで成長するのか興味が湧いたのも理由の1つです。
こうして、カバルカイに戦闘の武術を学ぶことになった姉妹。数年後、カバルカイに手合わせで勝利するほど、強い兵士として成長しました。
その一方で、バルクワの一族の暴政に苦しむイガラの軍によって領地が荒らされ、7つの王国の1つであるジュクン族との戦いが長引いたせいで、ザザウの戦力は激減。
ザザウ周辺の野営地には、歩兵の数が1万人に満たず、騎兵は200人以下しかいませんでした。
マダキからそう報告を受けたサルキは、兵力を呼び戻してイガラ族を阻止する軍隊を送り、2つの前線で戦うよう命じます。
サルキの命を受けた摂政のマダキは、ある野望を秘めていました。それは、サルキと王位継承者であるアミナたちを亡き者とし、自らが王として君臨し、ザザウと7つの王国を支配しようというものでした。
マダキは妻のジャガディヤに頼んで、奴隷の中から1人の女性を選出し、妻に先立たれたサルキの後妻となり、いつでも毒殺できるようにお膳立てしました。
それを知らないサルキは、マダキが紹介した奴隷の女性メロを一目で気に入り、彼女を後妻として宮殿に迎え入れました。
次にマダキが取り掛かったのは、カバルカイの買収。しかし、この数年ですっかりアミナを崇拝するようになったカバルカイは、マダキの誘いを断ったため失敗。
そこでマダキは、和平を結ぶための休戦協定を持ち掛けたイガラの摂政と手を組み、カバルカイの暗殺を企てます。
イガラの摂政はバルクワの一族の暴政からの解放を求めており、この休戦協定は願ったり叶ったりの申し出でした。
そんなイガラの摂政にも、ある野望を秘めていました。それは甥にあたるダンジュマを暗殺し、イガラの国王として君臨することです。
両国の摂政による企みにより、イガラへ送還されることになったダンジュマは、マダキの家来たちに連れられ、イガラからの使者との待ち合わせ場所へ向かいました。
イガラ王国の国王に仕えていた祭司である賢者イジュマは、ダンジュマの暗殺計画に気づき、ダンジュマに危険を知らせるべく、使者と共に彼に会いに行きました。
しかし、イジュマがダンジュマに危険を知らせようとした瞬間、茂みに隠れていたイガラからの刺客たちに襲われ、イジュマは殺されてしまいます。
何とか刺客たちを退けたダンジュマは、使者と共にイガラへ帰還。ザザウを出立する際、マダキから渡された書状を、ダンジュマは叔父に渡しました。
叔父がいるテントを出た後、ダンジュマは臣下から、ジュマ殺害を企てたのが叔父であることを知らされました。
「王からあなたを守るよう命じられたイジュマは、15年間神に生贄を捧げていたため、叔父上はあなたに手出しすることが出来なかった」
「だからダンジュマ暗殺のため、叔父上は邪魔なイジュマの殺害を企てた」「しかしイジュマ亡き今、彼があなたにかけた魔除けの効力がいつまで続くか分からない」
「だから早く、ここから逃げた方が良い」………そう話す臣下の言葉を聞いて、ダンジュマは一度ザザウに戻り、アラディにイガラ王国に迫る危険を知らせます。
「もうすぐ戦いが始まる。俺はしばらく姿を消す」と言ってその場を立ち去っていったいとこを、ただ呆然と見送ることしかできなかったアラディ。彼女は、ダンジュマと入れ違うように現れたアミナたち姉妹に、こう言いました。
「戦いが始まる。兵士たちが私たちを見ている。きっと私は、また奴隷の檻に戻されるんだわ」
「あなたたちの父親は、マダキの言いなりなのよ。誰も味方なんていない私を、彼は奴隷の檻に戻すわ。それでも私の味方として、私を守ってくれるというなら、それを証明して」
涙を流しながらそう訴えるアラディに、アミナたちは彼女への友情を証明するべく、ある儀式を行いました。
それは、先が左右に枝分かれしている小枝を使い、尖った先で3人の右手の親指に傷をつけ、互いの血を舐めあうという儀式でした。
映画『アミナ』の感想と評価
愛する人を全て失ったアミナの戦い
アミナはザザウの王国内部に敵がいること、さらにザザウに侵攻する敵がいることを知り、自国を守るために学んだ戦闘の武術を活かして戦っていきます。
しかしそれが、結果的に妹のザリアや恋人のダンジュマ、長年一緒にいたカバルカイやムーサを亡くすことになってしまったのです。
大切な誰かを失うたびに、深い悲しみに暮れるアミナの姿は、観ているのが辛くなるほどで、悲しすぎて涙が止まりません。
そんなアミナに追い打ちをかけるように、自国同士の潰し合いが始まってしまいます。それを手助けしてくれたアラディとの友情は、結局最後まで失ったまま………。
劇中で語っていたズンズラの予言が、悲しいことに当たってしまったアミナが、それでも34年間、女王としてザザウを治めたことは讃えられるべき功績でしょう。
2つの国の摂政に秘められた野望
ザザウの摂政であり、ザザウ軍の指揮官マダキは、密かに王として国を支配するという野望を秘めています。同じくイガラ王国の摂政も、イガラ王国の王として君臨するという野望を秘めていました。
そんな2人が王になるためにしたことは、王位継承者であるアミナとダンジュマの暗殺計画です。
何度もアミナたちを殺そうと刺客を放ったり、自国の王を毒殺してまで王座に就きたいマダキたち。それによって身内の誰かが悲しむことになるとは考えもしない彼らの執念は、もはや狂気というべき怖いものでした。
まとめ
最強の男から戦闘の武術を学んだ王女が、自国を守るために過酷な戦いに身を投じていく、アフリカ・ナイジェリアの時代劇アクション・アドベンチャー作品でした。
本作の見どころは、一国の王女であるアミナが自国を守るために戦うアクション場面と、互いに惹かれ合ったアミナとダンジュマのひと時の恋です。
ルーシー・アメが演じるアミナは、ザリアたち身内の人間だけでなく、本当にザザウのことを大切に思っており、彼女こそ次の王になるにふさわしい人格者と言えるでしょう。
そんなアミナを演じるルーシー・アメは、ダンジュマに恋するただの女としてのアミナの姿と、自国を守るために過酷な戦いに身を投じる王女のアミナの姿を上手く演じ分けており、その高い演技力に感嘆させられます。
国を守るために過酷な戦いに身を投じることになった、一国の王女の孤独と悲しみと幸せを描いた時代劇アクション・アドベンチャー映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。
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