2020年の映画おすすめランキングベスト5
選者:シネマダイバー星野しげみ
2020年は新型コロナウィルス感染拡大防止のために、映画館への外出も規制がかかりました。それでも厳しい現実をものともせずに、多くの映画が上映されました。
本年を振り返ってみると、アニメ『鬼滅の刃』がセンセーションを巻き起こしましたが、恋愛もの、コメディ、アニメ、ミステリーと様々な作品が誕生しています。
中でも、感染症との闘いの毎日のせいか、信念を持って生きていくことを描いた作品や家族の温かな繋がりや強い絆を考えさせられる作品が心に強く残っています。特に印象深い作品のベスト5をご紹介します。
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第5位『異端の鳥』
【おすすめポイント】
疎開先から自宅を目指してさすらう少年が、理不尽な差別や迫害に次々と出会う作品。
少年を襲う数々の暴力的な出来事に、第76回 ベネチア国際映画祭では途中で席をたつ人々が続出する一方、終了後はスタンディングオベーションも起こったそうです。
残酷な映像の中に観客は何を見出すのでしょうか。観ることによって自分が試される作品です。
第4位『朝が来る』
【おすすめポイント】
人気作家辻村深月の同名小説を河瀬直美監督が手掛けました。特別養子縁組や親子の絆、中学生妊娠など社会問題を含んでいます。
きらきら光る木漏れ日の光をふんだんに取り入れた爽やかな映像が印象的で、原作よりも養子となった子供の気持ちが表されています。
第3位『三島由紀夫VS東大全共闘』
【おすすめポイント】
1969年5月に東京大学駒場キャンパスで行われた三島由紀夫と東大全共闘の討論会を映画化。
伝説といわれる討論会の一部始終に三島についての証言も加えたドキュメンタリーです。
三島由紀夫が壮絶な死を遂げてから50年が経ちました。節目の年にその生き様を通して、彼の追い求めたものを描き出します。
第2位『天外者』
【おすすめポイント】
亡き三浦春馬の最後の主演作。三浦春馬が演じるのは、近代日本経済の基礎を築いたといわれる五代友厚。
五代友厚が何を思って偉業を成し遂げたのか。歴史上の人物のことがよくわかり、三浦春馬の白熱する演技に心をゆさぶられる作品です。
第1位『ミッドナイトスワン』
【おすすめポイント】
トランスジェンダーが孤独な少女を通して初めて感じた母性愛が描かれています。
母性の話だけに終わらず、バレエ舞曲との類似する親子関係や、主人公の死の謎などミステリアスな要素も含まれ、考察すればするほど、深い意味のある作品でした。
2020年注目の監督とキャスト
監督賞:河瀬直美
女優賞:永作博美
男優賞:草彅剛
【コメント】
2020年に行われる予定だった東京オリンピック公式記録映画の監督に決定した河瀬直美。背景と人物の心理描写のマッチング、映像の美しさは、卓越したセンスを伺わせます。
不妊治療の末に養子縁組で迎えた子供への愛を全うする母を時には優しく時には毅然たる態度で演じ切った永作博美と、トランスジェンダーという難しい役に挑戦した草彅剛。役者としての成長が見られました。
まとめ
2020年も多くの映画が上映されました。その中でも特に印象深いベスト5を選んでみました。
幻想的な美しい映像で残酷シーンをも多く取り入れた『異端の鳥』。爽やかな映像で親子の絆と信頼を描き出した『朝が来る』。三島由紀夫の真実に迫るドキュメンタリー『三島由紀夫VS東大全共闘』。五代友厚を三浦春馬が熱演する『天外者』。トランスジェンダーの主人公に草彅剛が体当たりで演じた『ミッドナイトスワン』。
バリエーションに富んだベスト5となりましたが、それぞれの作品によって社会問題や人間関係を様々な角度から観ることができました。
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