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Entry 2020/03/26
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映画『三島由紀夫vs東大全共闘』あらすじネタバレと感想【50年目の真実】大激論で見えてきた共通の‟敵”とは?

  • Writer :
  • 星野しげみ

三島由紀夫と東大全共闘。50年前の伝説の討論会が映画化

1969年5月に東京大学駒場キャンパスで行われた三島由紀夫と東大全共闘の討論会。伝説といわれる討論会の一部始終に三島についての証言も加えたドキュメンタリー映画です。

討論会の様子だけでなく、三島と関わりのあった人達が人間「三島由紀夫」を語ります。徐々に、三島の生き様、人格や思想も解明されていきます。

三島が没してから50年。新たな三島由紀夫の人物像を知ることになるでしょう。

映画『三島由紀夫VS東大全共闘~50年目の真実』は3月20日(金・祝)から全国ロードショーされています。

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映画『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』の作品情報

(C)2020映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会

【公開】
2020年(日本映画)

【監督】
豊島圭介

【キャスト】
三島由紀夫 芥正彦 木村修 橋爪大三郎 平野啓一郎 内田樹 小熊英二 瀬戸内寂聴
篠原裕 宮澤章友 原昭弘 椎根和 清水寛 小川邦雄雄
東出昌大(ナレーター)

【作品概要】

1969年5月に東京大学駒場キャンパスで行われた三島由紀夫と東大全共闘との伝説の討論会の様子を映したドキュメンタリー。1000人を超える熱気にたぎる学生が集まる討論会へ単身で臨んだ三島。2時間半にわたる学生たちと議論を戦わせた様子は、伝説とも称されるものでした。作品では、当時の関係者や現代の識者たちの証言も得て、討論会の全貌や三島の人物像を検証しています。ナビゲーターは三島の小説『豊饒の海』(2018)の舞台版にも出演した東出昌大。監督は『森山中教習所』(2015)『ヒーローマニア 生活』(2016)の豊島圭介です。

映画『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』のあらすじ

(C)2020映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会

今から半世紀前の日本は、学生を中心とした政治への革命の嵐が吹き荒れていました。受験戦争を勝ち抜いたエリート中のエリートの東大生たちも、反体制を唱える革命児たちでした。

東大には東大全共闘という学生集会の党派があり、本郷キャンパスの安田講堂を学生が占拠し、機動隊と対決した「安田講堂攻防戦」を起こしていました。

その頃の政治に不満を持つ彼らですが、大学卒業後の進路はエリート官僚への道も開けていました。彼らは資本主義を口では批判しながら、実は資本主義を支える側じゃないか、という強烈な自己矛盾も持っていたのです。

一方の三島由紀夫は、ノーベル文学賞の候補にもあがる世界的な文学者であり、自衛隊に体験入隊を繰り返し身体を鍛え上げて、「天皇」を抽象的な「神聖な概念」と捉える右翼派の考えを持っていました。

「左翼」と「右翼」。敵対する双方だったのですが、ある日三島は東大全共闘から討論会に招かれます。敵の中に素手で飛び込んでいくような行為ですが、三島は承諾しました。

1969年5月13日。東大駒場キャンパス900番教室に、1000人近い学生が集結します。「三島を論破して立ち往生させ、舞台の上で切腹させる」と、三島の到着をいまかいまかと待っていたのです。

たった一人で教場に乗り込んだ三島は、壇上に立つと10分間挨拶を始めます。「7人の敵」どころではなく、1人対1000人の熾烈な言葉の戦争が始まったのです。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』ネタバレ・結末の記載がございます。『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)2020映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会

当日の司会は東大全共闘の木村修。まずは三島のことを「先生」と呼んで会場の空気を和ませました。

三島も笑顔で自らを揶揄したポスターをネタにした挨拶を披露。それはとてもユニークで、会場にはたちまち爆笑が起こりました。

挨拶が終わったあと、学生と三島との討論が始まりました。中でも印象深いのは、赤ん坊を連れた学生の芥正彦と三島とのやりとりです。

三島が目の前の木製の机をさして、「机は授業のためにあるが、バリケードの材料にもなる。生産関係から切り離されて、戦闘目的に使われているということだ。しかしそれは諸君が生産関係から切り離されているからではないか。それが諸君の暴力の根源ではないのか」と言います。

芥は「大学の形態の中では机は机だけど、大学が解体されれば定義は変わる。この関係の逆転に革命が生まれるんだ」と答えます。

所詮は働いていない学生じゃないかという三島の皮肉に対して、芥の鋭い切りかえし。

三島もたじたじとなりますが、決して怒り出したり、暴言を吐いたりしません。苦笑しながらもあくまで冷静に相手の話を聞いています。

天皇観について聞かれた三島の答えも、とても落ち着いたものでした。

「天皇親政と直接民主主義には区別はなく、1つの共通要素がある。それは国民の意志が、中間的な媒介物を経ないで国家意志と直結することを夢見ているということだ」

これに対するヤジもとび、力を得たように芥が再び反論。頭脳明晰な者同士の本音をぶつけあう討論は激しさを増していく……、。

激しい論争の割には意外なことに、比喩を用いたユニークな解答も飛び出して笑いも起こり、穏やかに時は流れて行きます。

会場には万が一に備えて、三島のつくった「楯の会」1期生の原昭弘がもぐり込み、三島がこっそり呼び寄せた雑誌の記者もいましたが、礼節をわきまえた言葉と言葉の戦いに、みな我を忘れて聞き入っていました。

最後にこんな質問がありました。「天皇という観念を三島さんも全共闘も共有できるのだったら、そこに天皇という名前をつける必要はないのでは?」

三島は「天皇とひとこと言ってくれれば、私は諸君と手をつなぐのに」と答えます。すかさず、「今僕は“天皇”と言いましたが、これでも手はつなげませんか?」という声があがりました。

これに対して三島は、「確かに“天皇”という言葉は聞きましたが、私は諸君と手をつなぎません」と言い捨て、どよめきと笑いの中、悠々と壇上を去っていきました。

この討論会から約1年たった11月25日。三島は自衛隊市ヶ谷駐屯地の東部方面総監部へ出向きます。

アメリカと友好的になっている日本の未来を危惧し自衛隊員に決起を呼びかけますが、見事に失敗。その後、総監室で割腹自殺を遂げます。

天才的文学者、演出家、など幅広く活躍していた三島由紀夫。討論会の合間に、三島を知る平野啓一郎や内田樹、小熊英二や瀬戸内寂聴などが彼について語るシーンがあります。

彼らの証言で三島の人柄がよくわかり、討論会に臨んだ彼の心境も理解できることでしょう。

今も健在する楯の会や東大全共闘のメンバーたちの当時を振り返っての話では、それぞれの三島への印象が鮮烈に語られ、三島由紀夫を偲びます。

駒場キャンパス900番教室は、討論会当時と変わらない姿で残されています。

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映画『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』の感想と評価

(C)2020映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会

まず注目したのは、50年前にこのような討論会があったということ。しっかりとした自分の考えを持ち、それを言葉に変えて自己主張する学生たちの姿に驚きます。

国を動かす問題を論じるかのような熱の入った討論会です。このような討論会を正直なところ見たことありません。

「自分たちがこの国を変える」という革命意識は、東大全共闘の活動の根元であり、優秀な彼らは自分たちの思いを伝えるのに、言葉というツールを持って、討論会に挑みました。

一方、学生たちの挑戦を受けて立つ三島由紀夫。こちらも東大生に負けず劣らず頭の回転が早い天才文学者です。

具体的な例を出して論じる三島の思想は、ちょっと分かりづらいのですが、討論をしている学生たちには分かるようで、芥とのやりとりはとても興味深いものでした。

改めて三島由紀夫を知る

三島由紀夫は作家として『仮面の告白』『禁色』『潮騒』『金閣寺』など多くの長編小説を残していますが、武闘家でもあり、国土防衛思想の持主でもありました。

思想の裏には、戦後生き残ったことへの背徳感があったといいます。軍隊に憧れ、天皇を崇拝しているように見えながらも、実は違っていた……。そんな三島の本音が、この討論会でポロリポロリと出てきます。

討論会の翌年の1970年11月25日、三島は市ヶ谷駐屯地へ向かい、東部方面総監部で「自衛官よ、奮起せよ」と呼びかけますが、自衛官たちは動きません。

三島はそのまま割腹自殺の道を選びます。頭のいい三島のことですから、この結末を自ら察していたのかもしれません。

市ヶ谷事件で三島には「憲法改正」と「自決」というイメージが付きまとっていますが、映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』を見ると、三島という人間の見方が変わることでしょう。

この映画での討論会は、言葉と言葉の闘いでした。激しく論じながらも、相手を罵倒せずに丁寧に答弁する彼ら。こんなにもスマートでアツさのある討論はもう聞けないかもしれません。

まとめ

(C)2020映画「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」製作委員会

伝説といわれた東大駒場キャンパスの討論会。50年前の映像には、白熱した舌戦を繰り広げる三島と東大全共闘の姿が残されています。

一つ間違えれば大暴動も起こりかねないと心配する周囲をよそに、三島と東大生の討論は、実に礼儀正しく鮮やかな闘いでした。言葉を尽くしての討論には嘘もなければ諂いもなく、討論しながら次第にお互いを分かり合うという、一種の清々しささえあります。

本音と本音を討論し合って分かり合うという知恵者同士の闘いは、伝説にしておくにはもったいない。東大駒場キャンパス900番教室は今なお現存し、市ヶ谷記念館となっている東部方面総監部総監室の柱には、三島の残した刀傷が残されています。

三島の生きた証は文学の他にも残されているのです。歴史的な事実は風化させてはならず、そこで何があったのかと、世代を超えて知っておくべきでしょう。

もしも三島が生きていたら2020年の日本をどう思うでしょうか。今は彼らのように熱量高い思考で意欲的に、この国の将来を考えるときなのかもしれません。

三島とアツい討論をした芥は最後のインタビューで、「考え方は違っていても、三島とは共通の“敵”を持っていた」と、キッパリ言い切っています。芥の言葉を聞き逃すことのないように……。

映画『三島由紀夫VS東大全共闘~50年目の真実』は3月20日(金・祝)から全国ロードショーされています。

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