2018年4月5日に亡くなられた日本を代表するアニメーション監督、高畑勲。
彼の代表作『パンダコパンダ』、続編『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』が、新文芸坐にて5月1日~5月3日、ユジク阿佐ヶ谷にて5月26日~6月8日まで劇場公開されます。
生前、高畑勲自身が語っていますがこの作品は、その後の高畑作品・宮崎駿作品のベースとなっている作品です。
映画『パンダコパンダ』作品概要
【公開】
1972年(日本映画)
【監督】
高畑勲
【原案・脚本】
宮崎駿
【キャスト(声の出演)】
杉山佳寿子、熊倉一雄、太田淑子、山田康雄、瀬能礼子、峰恵研、松金よね子、和田文雄
【作品概要】
公開当時の1972年、日中国交正常化により中国から上野動物園に2頭のジャイアントパンダ、カンカンとランランが送られます。それによって起きたパンダブームに乗って本作は製作されました。
2008年に三鷹の森ジブリ美術館の配給で続編『雨ふりサーカス』と2本立てでリバイバル公開され、2018年には45周年を記念して『雨ふりサーカス』と2本立てとして、デジタルリマスター版上映されています。
映画『パンダコパンダ』のあらすじ
ミミ子は両親がおらず、おばあさんと二人で暮らしています。
しかし。おばあさんは、おじいさんの法事で長崎へ。ミミ子は一人になってしまいます。
ミミ子が買い物から帰ってくると、小さな足跡と切り取られた竹が庭にあります。
ミミ子は泥棒かと思いますが、縁側にいたのは小さなパンダ・パンちゃん。ミミ子とパンちゃんは仲良くなり、家へ上げます。
そこへパンちゃんの父親のパパンダも現れます。
パパンダはミミ子の家庭事情を聞き、自分がミミ子のパパになる事を提案。
ミミ子は代りに、パンちゃんの母親になることを提案し、3人の愉快な家族生活が始まります。
映画『パンダコパンダ』の感想と評価
1972年に日中国交正常化を記念して、中国からジャイアントパンダのオスとメスの2頭が上野動物園に贈られたことで起きたパンダブーム。
実はパンダブーム以前から、高畑と宮崎はこの企画をあたためていました。
しかし、企画は通らず塩漬けにされていました。
本作の企画が再浮上した契機には前述のパンダブームと、元々予定していた『長ぐつ下のピッピ』の頓挫の2つがあります。
高畑はアスリッド・リンドグレーン原作の児童文学『長ぐつ下のピッピ』のアニメ化を企画し、ロケハンなどの作業を開始しますが、原作者からの許諾が下りず製作は頓挫します。
代りに『ピッピ』企画中に得たイメージと没企画であった『パンダコパンダ』を合わせて映像化します。
そのため主人公のミミ子の奔放な性格、赤毛のツインテールなど『ピッピ』のイメージを継承した点が見られます。
本作のキャストは劇団テアトル・エコーの俳優で占められています。
その後、高畑は代表作『アルプスの少女ハイジ』(1974)を演出しますが、ハイジを演じたのは本作の主人公・ミミ子を演じた杉山佳寿子。
高畑はミミ子のイメージから、ハイジのキャスティングを杉山に決めたのです。
また、水森亜土の歌が印象的なOPアニメーションですが、単色の背景にデフォルメされたキャラクターが動いているというもの。これも『アルプスの少女ハイジ』のEDアニメーションを思わせます。
パパンダとパンのパンダ親子ですが、こちらは後に宮崎駿の『となりのトトロ』へと繋がります。
女の子と不思議な生き物の交流というメインプロットは両作に共通しています。
パパンダとトトロのシルエットや、笑った時にニッと白い歯が見える場面など、トトロはパパンダのイメージを引き継いだキャラクターと言えます。
また宮崎は、1980年に『もののけ姫』という作品を企画します。
こちらにもパパンダやトトロとシルエットが似た“もののけ”というキャラクターが登場します。
後年製作された『もののけ姫』(1997)とは全く異なる内容です。
まとめ
高畑・宮崎両氏にとっても重要な作品であり、日本のアニメーション史にとっても重要な『パンダコパンダ』。
原案・脚本を宮崎駿が手掛けているため、他の高畑作品に比べファンタジックな要素が多いです。
一方でミミ子、パパンダ、パンちゃんの3人の生活を丹念に描いている点など、高畑勲の演出が発揮されています。
原作なしのオリジナル作品で、高畑・宮崎両者の才能が合わさった名作です。
『となりのトトロ』や『アルプスの少女ハイジ』などと比べみるのもお薦めです。