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Entry 2021/08/28
Update

映画『岬のマヨイガ』ネタバレあらすじ感想と結末考察の解説。アニメ監督 川面真也が描く“震災の痛みと人間の強さ”

  • Writer :
  • 糸魚川悟

岩手県を舞台に震災と伝承を組み合わせたアニメ映画

2011年3月11日、宮城県牡鹿半島沖で発生した最大震度7の地震は多くの犠牲者を出し、日本だけでなく世界を悲しみに包みました。

10年が経過してもなおその痛みは人々の心の中に深く残ってはいますが、進み続ける時間の中を強く生きています。

今回は東日本大震災を題材とし、被災した地で強く生き続ける3人の「家族」の物語を描いた最新アニメ映画『岬のマヨイガ』(2021)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

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アニメ映画『岬のマヨイガ』の作品情報


(C)柏葉幸子・講談社/2021「岬のマヨイガ」製作委員会

【公開】
2021年(日本映画)

【監督】
川面真也

【脚本】
吉田玲子

【キャスト】
芦田愛菜、大竹しのぶ、粟野咲莉、伊達みきお、富澤たけし、宇野祥平、達増拓也、天城サリー

【作品概要】
1975年に児童文学作家としてデビュー後、数多くの児童小説を手掛けてきた柏葉幸子による同名小説を映像化した作品。

映画『パシフィック・リム』(2013)などに出演し話題となった芦田愛菜が主人公の声を担当し、『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』(2020)などのアニメ映画を手掛けた吉田玲子が脚本を務めました。

アニメ映画『岬のマヨイガ』のあらすじとネタバレ


(C)柏葉幸子・講談社/2021「岬のマヨイガ」製作委員会

東日本大震災で多くの犠牲者が出た岩手の狐崎、家出少女のユイは避難所付近の神社で少女ひよりと出会います。

両親を交通事故で失い、身を寄せた親戚の家で震災に巻き込まれまたも家族を失ったひよりはショックから声を出すことが出来なくなっており、ユイは彼女のことを心配していました。

身を寄せる場がないのはユイも同じでしたが、避難所で出会った老女キワがユイとひよりを孫と偽り引き取ることを決め、岬に立つ古民家で3人は共同生活を行うことになります。

キワは2人に親切に振る舞いますが、ユイは彼女の強引とも言える親切心を信じきることが出来ず、有事の際はひよりを連れ逃げ出すことを決意。

ユイは自身の疑問を正直にキワにぶつけると、キワは2人に道に迷い紛れ込んだ人間をもてなし幸福を届ける「マヨイガ」の昔話を聞かせます。

ユイはなぜキワが昔話をするのかを疑問に思いますが、やがてこの古民家そのものが不思議な力を持っていることを感じ始めます。

水が欲しいと呟くと水が用意され、氷を入れて欲しいと言うと氷が入るこの家は至れり尽くせりの環境でしたが、ユイは自身に暴力的にあたる父の記憶をフラッシュバックさせてしまい、反射的にひよりを連れて家を飛び出してしまいます。

ひよりが転んでしまい、うな垂れるユイは追いかけてきたキワも家も、自分たちを受け入れてくれる人であることを思い知り、家へと戻ることになりました。

数日が経ち、ひよりは小学校に通い始め、友人から子狐岬で毎年行われる「狐踊り」の練習の見学を誘われついて行きます。

狐踊りの見学中にひよりは両親の死を思い出し、その場から逃げてしまいます。

一方、ユイは町で蕎麦屋を営む男性から原付を貰い、スーパーでバイトを始めることにしました。

家に戻ったユイはショックを受けるひよりを見つけ彼女に寄り添うと、キワはこの地に伝わる狐にまつわる昔話を聞かせます。

かつて「アガメ」と呼ばれる化け蛇が、人々に幻覚を見せこの地から人々を追い払い支配しようとしていました。

しかし、地元に住む漁師の男性が狐から受け取った魔を払う刀「マギリ」を使い、命を代償としてアガメを打倒したのでした。

3人の暮らしは楽しく経過し、ひよりは狐踊りの練習をする地元民から笛を教わり上達していきます。

ある日、キワが家にある目的から地元の水源を守る「河童」を招待します。

ユイとひよりは常識外のものを目の当たりにし動揺しますが、河童たちが優しく彼女たちに接するため2人の警戒は溶けます。

キワは河童のようなこの世のものではない存在を「ふしぎっと」と呼び、他の人には内緒にすることを2人に誓わせました。

キワは河童たちに震災によって壊れてしまった祠のある海中の調査を依頼すると、河童たちは祠の破壊によって「何か」の封印が解け逃げだしてしまった形跡があるとキワに話し帰って行きました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『岬のマヨイガ』のネタバレ・結末の記載がございます。『岬のマヨイガ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)柏葉幸子・講談社/2021「岬のマヨイガ」製作委員会

その日から町に異変が起き始めます。

震災の幻覚を見た人やこの地を離れた人の幻覚を見た人が町を離れてしまうことが相次ぎ、ユイとひよりも赤い目の蛇を目撃します。

キワは封印が解かれたのは「アガメ」であることを2人に話し、ユイとひよりを守るために神社を守っていた狛犬を家に招待。

アガメは人の悲しみや辛さを喰らい原動力としており、震災の悲しみが集まるこの地によって、アガメは急成長を遂げていきます。

ある日、スーパーで働くユイの前にユイの父親(普通の男性をアガメが父親に見せた幻覚)が現れ、ユイはその場を逃げ出し嗚咽します。

ユイは家に戻ると未来を一切見通すことのできない現状をキワとひよりに吐露すると、ひよりはそっとユイに寄り添い、キワは人生に迷いながら訪れたこの家こそが「マヨイガ」であり、迷いながらも自分に出来ることを見つけることが大切なのだとユイを励まします。

その週の土曜日、2人はキワの提案で「遠野」へと訪れることになります。

その地にはキワの話した初代の「マヨイガ」が存在するだけでなく、河童や山男に雪女、天狗などありとあらゆる「ふしぎっと」がアガメに対抗すべく集まっていました。

3人はその「マヨイガ」にしばらく滞在することになりますが、その日の夜にキワは狐たちから「マギリ」を受け取っていました。

翌日、「マヨイガ」から出ることが出来ずキワの姿が見当たらないことから、ユイとひよりはキワが昔話と同様に自身の命と引き換えにアガメを倒そうとしていることに気づきます。

血は繋がっていないとは言え、ひよりとキワ、そして岬の家のことを「家族」と考えるユイとひよりは「マヨイガ」に懇願しキワの後を追うことします。

その頃、キワは子狐岬でアガメにマギリを使い対抗していましたが、想像以上に成長したアガメに苦戦を強いられます。

震災を経験し悲しみの集まる土地でありながらも、その地に留まり強く生きようとする人々を守りたいと強く願うキワは諦めずに立ち向かいます。

キワが見える距離まで来たユイはアガメが作り出した父親の幻覚に怯えますが、ひよりが声を出しユイを家族として呼び止めたことで幻覚を振り払うことに成功。

ふしぎっとが集まりアガメの攻撃から人々を守る中、ひよりは「自分が出来ること」として笛や神楽が魔払いの効果があることを思い出し、笛を吹き始めます。

笛の音色で弱ったアガメの瞳にユイが破魔矢を撃ち込み、アガメは消滅しました。

翌日、ふしぎっとを認知していない人々からはアガメの記憶は消えており、キワはアガメの苦しみを想い岬の家の中に祭壇を作ります。

ユイはこの地から離れることはあっても絶対に戻ってくることを誓い、ひよりはキワと同様にふしぎっととの橋渡しを行う人間になることを夢見ます。

キワは2人を庭に呼び寄せ、波で流れてきた桜の木を埋めたことを報告。

「花が咲くかな?」と問いかけるユイに、キワは「きっと咲く」と言いました。

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アニメ映画『岬のマヨイガ』の感想と評価


(C)柏葉幸子・講談社/2021「岬のマヨイガ」製作委員会

「いま」を強く生きる人々を描いた最新アニメ

自身に非のない理不尽なトラブルに巻き込まれたとき、「なんで自分ばかりがこんな目に」と言う気持ちが沸くことがあります。

しかし、すべてを投げ出したくなるような悲しみやトラウマを抱えるのは世界に自分ひとりではありません。

東日本大震災を題材とした児童小説をアニメ化した『岬のマヨイガ』は、そんなトラウマを抱える2人の少女が「いま」を強く生きるために崩れた自分の心を再起させる物語が展開されます。

震災は理不尽に多くのものを奪っていきました。

その痛みが残る東北の地で「いま」を生きる人々の強さに目を向ける、感情を揺さぶられる物語に引き込まれる作品でした。

「遠野物語」を主軸としたファンタジー


(C)柏葉幸子・講談社/2021「岬のマヨイガ」製作委員会

柳田国男が岩手県の遠野地方に伝わる伝承をまとめた説話集『遠野物語』は、民間伝承を書いた本として高い評価を受け続けています。

映画『岬のマヨイガ』は岩手県を舞台とし現地の民間伝承を取り入れた作品となっているため、「天狗」や「河童」、「座敷わらし」などの著名な妖怪(ふしぎっと)が登場します。

本作に登場するふしぎっとや魔を払う刀の「マギリ」などは全て「遠野物語」内の民間伝承に登場するため、本作が岩手県の伝承を調べ抜きとことん寄り添った物語であることが分かります。

遠野地方に伝わる「デンデラ野」のように暗く辛い伝承がある一方で、本作の主軸である「マヨヒガ」の伝承のように暖かい物語もある『遠野物語』。

本作で興味を持った人、もしくはより『岬のマヨイガ』についてを知りたい方は『遠野物語』も合わせてオススメします。

まとめ


(C)柏葉幸子・講談社/2021「岬のマヨイガ」製作委員会

宮城県気仙沼市で東日本大震災に被災し、義援金を設立し10年で5億円にも及ぶ寄付を行ったお笑いコンビ「サンドウィッチマン」。

これからも東北と共に歩んでいくことを宣言する2人は、東日本大震災を題材とした本作にも声優として参加しています。

東日本大震災を題材としどこまでも地元に寄り添った映画作りを感じることができる『岬のマヨイガ』は、岩手の民間伝承に興味のある方にも被災地で生きる人間たちを描いた作品を観たい人にもオススメの作品です。

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