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映画『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』ネタバレ感想と考察評価。京アニがファンの想いを受け取った“代筆のラブレター”

  • Writer :
  • 薬師寺源次郎

京アニが手掛ける映画『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』

映画『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、戦時中に兵士として育てられ、愛を知らずにいた少女が、「自動手記人形」と呼ばれる手紙の代筆業を通じて、さまざまな愛のかたちを知る物語。

2018年にテレビ放送された京都アニメーションによる人気アニメ「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の完全新作劇場版です。

「愛してる」の意味を探し続け、「愛」を知った少女、ヴァイオレットは何を“想う”のでしょうか。

心を知らぬ少女が人々の“愛”に触れ、心を育み、絆を結ぶ物語『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の最終章である本作で、ヴァイオレットは「愛してる」の答えに辿り着きます。

映画『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』をご紹介します。

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映画『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』作品情報


(C)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

【公開】
2020年(日本映画)

【監督】
石立太一

【脚本】
吉田玲子

【キャスト】
石川由依、浪川大輔、子安武人、木内秀信、戸松遥、内山昴輝、遠藤綾、茅原実里、水橋かおり、佐藤利奈、遠藤大智、八十川真由美、松本恵、中田譲治、麦人、間宮康弘、三瓶雄樹、原島梢、桜木可奈子、齋藤綾、引坂理恵、諸星すみれ、宮本充、篠原恵美、京田尚子、川澄綾子

【作品概要】
2018年にテレビ放送された京都アニメーションによる人気アニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の完全新作劇場版。第5回京都アニメーション大賞受賞の暁佳奈による同名小説をアニメ化したTVシリーズの続編にして完結編。『境界の彼方』(2016)などで知られ、TVシリーズも手掛けた石立太一が監督を担当しています。

戦時中に兵士として育てられ、愛を知らずにいた少女ヴァイオレット・エヴァーガーデンが、「自動手記人形」と呼ばれる手紙の代筆業を通じて、さまざまな愛の形を知っていく姿を描き出します。

映画『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のあらすじとネタバレ


(C)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

デイジーとある“手紙”との出会い

ある少女、デイジー・マグノリア(声:諸星すみれ)は、亡くなった祖母の葬儀のため、祖母の家を訪れていました。

そこで、祖母が生前大事にしていた手紙を見つけます。

デイジーの父(声:宮本充)はかつて、手紙のやり取りが盛んだったころ、手紙を代筆する職業“ドール”があったことを教えられます。

デイジーの祖母は早くに母親を亡くしたのですが、あるドールに祖母の成長に合わせ、毎年、手紙が届くように手配していました。

そのことに驚くデイジーをよそに、デイジーの母(声:篠原恵美)は仕事に戻ろうとします。

祖母を偲ぶため、家に残るというデイジーは、思わず母に家族より、仕事を優先していると言い、母を傷つけてしまいます。

両親が立ち去った後、後悔するデイジーは曾祖母が祖母にあてた手紙を読みます。

祖母が5歳の時に亡くなった曾祖母が毎年、祖母にあてた手紙はどれも想いにあふれたものでした。

デイジーはその手紙を書いたドールが当時、話題になっていた人物であることを知ります。

しかし、そのドールは18歳の時にドールをやめ、その後、話題になることがありませんでした。

そのドールの名は、ヴァイレット・エヴァーガーデンと言いました。

ヴァイオレットの新たな依頼人、そして、一通の手紙が示唆する再会の予感

ヴァイオレット(声:石川由依)はライデン市で航海の無事と海の恵みに感謝する、海の感謝祭で歌われる賛歌を作成する依頼を受け、書き上げると、祭の式典に参加します。

式典を終え、ヴァイオレットが勤めるC.H郵便社の仲間たち、社長のクラウディア・ホッジンス(声:子安武人)、同僚のドールのアイリス・カナリー(声:戸松遥)、先輩のドールであるカトレア・ボードレール(声:遠藤綾)、配達係のベネディクト・ブルー(声:内山昴輝)と合流します。

露店でにぎわう通りを歩く面々は祭りを楽しもうとします。しかし、ヴァイオレットは仕事をするため会社に戻ると言います。

ホッジンスをはじめ、ヴァイオレットを引き留めようとしますが、結局、ヴァイオレットは会社へ向かいます。

夜遅くまで、手紙の代筆を行っていたヴァイオレットは不調をきたした義手を調整しながら、ある人物のことを思い出します。

その人物はギルベルト・ブーゲンビリア(浪川大輔)と言い、数年前に終結した大戦の際、ヴァイオレットの上官であり、戦う道具として扱われていたヴァイオレットに人間らしさを教えてくれた人物でした。

しかし、大戦末期、ギルベルトはヴァイオレットに「心から愛してる」と言う言葉を残し、消息不明となっていました。

それからヴァイオレットは「愛してる」の意味を探し、数々の手紙を代筆して来ました。

ヴァイオレットはギルベルトへ手紙を書き始めます。

ギルベルトのことを思い出すたび、ヴァイオレットは決して届く事のない手紙を綴り、ギルベルトへの思いを募らせていました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』ネタバレ・結末の記載がございます。『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

ある日、週末を控えた郵便社ではホッジンスがヴァイオレットたちを労いにやってきます。

本音は、最近始めたテニスの相手を探しに来たのですが、皆それぞれに仕事や顧客探しと忙しくしていました。

あきれるホッジンスをアイリスが「危機感がない」と窘めます。

世間では電話が登場、徐々に普及し、ゆくゆく、手紙は廃れていくのではと皆が考えていました。

翌日、ヴァイオレットはとある墓地に出向き、ある墓に花を手向けます。

その墓はギルベルトの母の墓で、ヴァイオレットは月命日に訪れ、花を手向け続けてきました。

そこに、ギルベルトの兄、ディートフリート・ブーゲンビリア(声:木内秀信)が現れます。

墓前の花を見たディートフリートは、これまで人知れず花を手向けていた人物がヴァイオレットだと気が付きます。

ギルベルトの代わりに花を手向けているのかと尋ねるディートフリートに違うと答えるヴァイオレットの嘘を見抜いたディートフリートは、死んだ(とディートフリートはそう思っている)ギルベルトのことを忘れるようにいます。

「忘れることなどできません」そう言い残し、足早に立ち去るヴァイオレットは髪に結んだリボンを落としてしまいます。

ディートフリートは落ちたリボンに気が付き、ヴァイオレットを呼び止めようとしますが、すでにヴァイオレットの姿はありませんでした。

その後、休日にもかかわらず、出社し、仕事をこなそうとするヴァイオレットですが、電話がかかってきます。

電話は「ドールに手紙の代筆を頼みたい」という依頼でした。

休日のため、日を改めるよう言おうとするヴァイオレットですが、電話の主が少年であることが気にかかり、依頼を受けることにします。

ヴァイオレットが呼び出された先は病院でした。

そこに入院する、ユリス(声:水橋かおり)を訪ねたヴァイオレットでしたが、部屋に入るなり、ユリスに隠れるよう言われます。

ユリスの部屋を見舞いにやってきた家族が訪れます。心配する両親や弟にそっけない態度をとるユリスは、家族を追い出します。

去り際に「リュカが会いたがってる」と言う母親にユリスは「来ないように言って」と伝えます。

ベットの下に隠れていたヴァイオレットは家族が去ったのを確認し、這い出るとユリスに隠れさせた理由を尋ねます。

ユリスは手紙を書いてほしい相手は家族であり、知られたくなかったと言います。そして、ユリスは書いた手紙は自分が死んだ後、渡してほしいと言います。

ユリスは病に侵され、長くは生きられませんでした。依頼を受けるヴァイオレットは代筆を後日行うこととし、会社に戻ります。

ヴァイオレットは会社の前で、ホッジンス、ベネディクトと遭遇、そこに、ディートフリートが現れます。

敵意をむき出しにするホッジンスをよそに、ディートフリートはヴァイオレットに歩み寄ると、墓地で拾ったリボンを渡します。

そして、ブーゲンビリア家が所有する船を処分するため、そこにあるギルベルトの所持品を譲ると言い、見に来るよう伝えます。

そのことに喜ぶヴァイオレットですが、傍らで話を聞いていたホッジンスは複雑な思いでした。

大戦中、孤児であったヴァイオレットを“武器”として扱い、戦いを強いていたディートフリートをよく思わないホッジンスは2人が接することに反対していました。

そのことをカトレアに相談するホッジンスですが、カトレアはディートフリートは変わりつつあると言い、ヴァイオレットとディートフリートはギルベルトへの思いを共有できる良い関係になると考えていました。

一定の理解を示しながらも、ホッジンスはそのことに完全に納得はできませんでした。

ヴァイオレットにギルベルトの所有物を譲り渡すディートフリートは墓地でギルベルトを忘れるよう言ったことを謝罪します。

何より、未だギルベルトのことを忘れられないディートフリートはギルベルトに家のことをすべて押し付けてしまったと吐露します。

ブーゲンビリア家代々、陸軍に関わり、地位を築いてきており、ギルベルトとディートフリートの父(声:中田譲治)も当然のように2人を陸軍に入隊させようとしていました。

しかし、ディートフリートはそんな父に反発し、海軍に入隊、残されたギルベルトはディートフリートの代わりに陸軍に入隊し、家のことも一手に引き受ける事となりました。

ディートフリートはその事を後悔していました。

ある島の孤児院で「先生」と慕われる青年は、大戦の後、帰らない父を案じる少女に請われ手紙を代筆します。

ある日、ヴァイオレットはユリスの下へ出向き家族への手紙を代筆します。

両親と弟への手紙を書き上げ、立ち去ろうとするヴァイオレットですが、ユリスはもう一通、手紙を書いてほしいと言います。

快諾するヴァイオレットですが、それ以降言い淀んでしまうユリスにヴァイオレットは「リュカ」の名を持ち出します。

リュカ(声:佐藤利奈)はユリスの親友でしたが、病を患って以来、弱っていく自身の姿を見せたくないと思いリュカを遠ざけていました。

そのことを悔いているユリスはリュカに謝罪したいと思っていました。ヴァイオレットは「“想い”は伝えられるときに伝えるべきです」とユリスに語ります。

自身がギルベルトに“想い”を伝える術も、伝える機会もなかったことを話すヴァイオレットに勇気づけられたユリスは、リュカへ“想い”を伝える決意をします。

しかし、ユリスは突如、苦しみ始めます。ヴァイオレットは急ぎ、看護師を呼び、処置を終えたユリスは眠ってしまっため、日を改めることにします。

その頃、ホッジンスはベネディクトに頼まれ、宛先不明で未配達の郵便物の整理をしていました。

その中に、真新しい郵便物が目についたホッジンスは目を見張ります。

エカルテ島という島の孤児院から送られた手紙の筆跡は見覚えがあり、それを手にホッジンスはディートフリートを訪ねます。

ホッジンスが見せる手紙の筆跡はディートフリートにも見覚えのあるものであり、2人はギルベルトが生きているかもしれないと考えます。

その夜、ホッジンスはヴァイオレットの部屋を訪ねます。

「ギルベルトが生きているかもしれない」。そう伝えられるヴァイオレットは、ホッジンスと共にエカルテ島を訪ねる事を決意します。

しかし、喜びと共にギルベルトに会い、何を話し何を伝えたらいいのか不安に思うヴァイオレットに、カトレアは行く道すがら手紙を書けばいいと伝えます。

デイジーのヴァイオレットをたどる旅路

デイジーはヴァイオレットの痕跡を探し、ライデン市を訪れます。

電話の普及につれ、縮小した郵便事業は国営化され、数多あった郵便社は解体された現代、C.H郵便社の社屋は郵便の歴史を今に伝える博物館となっていました。

博物館でデイジーは、展示されたとある切手に目が止まります。その切手はある島で販売されている記念切手でした。

再会と別れ、そして…

(C)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

エカルテ島に到着したヴァイオレットとホッジンスはギルベルトらしき人物がいる孤児院へ向かいます。

気持ちのはやるヴァイオレットに対し、まずはホッジンスが一人で会うと言います。

その人物がギルベルトかわからない、また、ギルベルトであったとして、現在の状況が不明なため、まずは確認すると言うホッジンスにヴァイオレットは従います。

その人物と対面するホッジンスは正真正銘のギルベルトであることを確認します。

ギルベルトもまた、友人、ホッジンスとの思いもよらぬ再会に驚きます。

大戦後、どうしていたかを聞くホッジンスにギルべルトとは、各地を放浪し、エカルテ島に辿り着き、大戦で男手を失った島の生活を支えていることを明かします。

ホッジンスはギルベルトにヴァイオレットを連れてきていることを明かし、会うように勧めますが、ギルベルトはそれを拒否します。

ギルベルトはディートフリートからヴァイオレットを引き取った後、普通の少女のような暮らしをさせようとしていましたが、結局、ディートフリート同様、ヴァイオレットを“武器”として扱い、あまつさえ、戦いで両腕を失わせてしまったことを悔いていました。

ヴァイオレットを不幸した自分には会う資格がないと言うギルベルトは、ホッジンスに帰るよう告げます。

ホッジンスも一旦、仕切り直そうと考え、ギルベルトの前から立ち去ります。

ホッジンスは待っていたヴァイオレットにギルベルトが生きていたことを告げ、今は会えないと伝えますが、ヴァイオレットはホッジンスの静止を振り切り、ギルベルトに会おうとします。

しかし、ギルベルトは孤児院から去っていました。ホッジンスはギルベルトの自宅を見つけ、ヴァイオレットと共に向かいます。

ヴァイオレットはギルベルトに会ってくれと懇願しますがギルベルトは頑なに扉を開くことはなく、帰るよう告げます。

ギルベルトに拒絶され、傷ついたヴァイオレットは連れ、ギルベルトの自宅を後にします。

灯台守の家に泊めてもらうことになったヴァイオレットとホッジンスのもとに郵便社からモールス信号による連絡が入ります。

その通信はヴァイオレットに宛てた、ユリスの危篤を知らせるものでした。失意の底にあったヴァイオレットですが、その知らせを聞き、すぐにユリスの下へ帰ろうとします。

ヴァイオレットはまだ、リュカに宛てた手紙の代筆をしなけらばならないとホッジンスに告げます。しかし、最低でもライデンまでは3日かかるためとても間に合いません。

ヴァイオレットはアイリスに代理を頼みます。

ベネディクトと共にユリスの下を訪れたアイリスですが、死期の近づくユリスはしゃべることもままなりません。

アイリスは電話でユリスとリュカを話させることを思いつき、ベネディクトと共に急ぎ手配を始めます。

ユリスは電話越しの再会を果たしたリュカに会わなかったことを謝罪、リュカもまた、快く許し、二人は変わらぬ友情を確かめます。

それから、間を置かず、ユリスは息を引き取ります。悲しみに暮れるユリスの家族にアイリスはユリスが残した手紙を渡します。

自分たちが知らぬ間に綴られたユリスからの手紙により、残された家族はユリスの想いに触れます。

事の一部始終を知らされたヴァイオレットとホッジンスは胸を下します。

翌日、また、ギルベルトを尋ねると言うホッジンスにヴァイオレットはライデンに帰ると言い出します。

ギルベルトが無事生きていた、それだけで十分と言うヴァイオレットは翌日、島の子供にギルベルトに宛てた手紙を託し、船に乗り込みます。

ブドウの収穫を手伝うギルベルトの前にディートフリートが現れます。

ディートフリートはギルベルトに生きていたならなぜ戻らなかったのかを問います。

家の事と勘違いするギルベルトに、ディートフリートはヴァイオレットが待っていたことを話します。

ギルベルトはヴァイオレットたちに伝えたようにディートフリートに今更、ヴァイオレットと歩むことができないと話します。

そこに、ギルベルトに宛てたヴァイオレットからの手紙が届けられます。

手紙にはギルベルトがかつてヴァイオレットに伝えた「愛してる」の意味を知った事が綴られていました。

手紙を読み終えたギルベルトにディートフリートは家は自分が継ぐと宣言し、「お前はvもう自由だ」と伝えます。

ギルベルトはヴァイオレットが乗る船を追い、走り始めていました。

島を出ようとする船にギルベルトはヴァイオレットの名を叫びます。

その叫びを聞いたヴァイオレットは躊躇なく海に飛び込み、島へ戻ります。

再会を果たしたヴァイオレットにギルベルトは今もヴァイオレットを「愛してる」と告げ、そばにいてほしいと伝えます。

その言葉を聞いたヴァイオレットは感極まり、自分もギルベルトを「愛してる」と伝えようとしますが、言葉にすることができません。

ギルベルトはただ、優しくヴァイオレットを抱きしめます。

その後、ヴァイオレットはC.H郵便社で残していた仕事を終えると、退職します。

今に息づくヴァイオレットの軌跡

エカルテ島を訪れたデイジーは郵便局で記念切手を購入します。郵便局員は記念切手の所以をデイジーに聞かせます。

国内でも年間に1人が出す手紙の量が最も多いエカルテ島にはかつて、島民に慕われたドールがおり、手紙を出す文化が息づいていると説明する局員はそのドールの名を口にしようとします。

「ヴァイオレット・エヴァーガーデン!」

思わず、デイジーの口を突きその名を叫ぶと、局員は優しく微笑みます。デイジーの手にはヴァイオレットが描かれた切手が握られていました。

デイジーは手紙なら自分の本当の気持ちを両親に伝えることができるのではと思い、ペンを取ります。

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映画『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の感想と評価


(C)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

本作『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は作画に定評のある京都アニメーションにより制作されました。

ダイナミックかつ繊細な作画により美しい映像が話題となったTVシリーズから引き続き、本作でもため息が出るほどの美しい映像に心奪われます。

特に、キャラクターの瞳の書き分けが美しく感じられました。

アニメーションにおいて瞳は表情に直結し、描くことが難しく、瞳の表現でキャラクターが全く変わってしまうという話は珍しくありません。

しかしながら、本作においては見事に描き分けがされています。

とりわけ、主人公・ヴァイオレットは表情の変化が乏しいキャラクターであるため、過剰な瞳の変化を避けながらも、喜び、憂い、悲しみを表現していました。

その中でもクライマックスのギルベルトへ想いを伝えようとする場面での瞳は印象的でした。

目からあふれる涙に瞳がゆがみながらも、ギルベルトと再会した喜び、想いを伝える事への不安や恐怖、それを口に出せない自分への怒りが一見しただけでも見て取れる、表情はぐちゃぐちゃなのですが、瞳は吸い込まれるほど美しさを感じさせる素晴らしい作画になっていました。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は、TVシリーズよりヴァイオレットが「愛してる」の意味を探し、手紙の代筆を通し、様々な“愛”に触れてきました。

本作でも様々な“愛”の形が描かれています。

死にゆくユリスが家族へ宛てた感謝と言う“愛”や、ギルベルトのヴァイオレットを想うゆえに遠ざけようとする不器用な“愛”、ホッジンスのヴァイオレットを守ろうとする父性としての“愛”と、それぞれ深い愛が印象的でしたが、特に心に残ったのはディートフリートのギルベルトに対しての兄弟愛です。

TVシリーズではディートフリートはヴァイオレットを“武器”として扱っており、ギルベルトやブーゲンビリア家との確執もあり、悪役的な立廻りでした。

しかし、本作で死んだと思っていたギルベルトに対する贖罪の気持ちは決して届くことがない“想い”であり、遅れながら弟への“愛”に気が付いたディートフリートは「想いは伝えられるときに伝えるべき」と言う劇中のセリフを強調しているように感じ、どこか身につまされる思いがしました。

また、本作は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の完結編として制作され、これまでヴァイオレットが歩いてきた軌跡が描かれています。

特に本作に深くかかわってくるのが、TVシリーズ第10話で死期の迫る母親が娘に50年間に及び残す手紙を書く話です。

この第10話のラストで20歳になった娘に子供が生まれる場面が描かれています。

その子供を後に産んだデイジーが、本作でヴァイオレットの物語を締めくくるナビゲーターの役割を果たします。

デイジーの役どころとしてはそれ以外にヴァイオレットが紡いできた“想い”が遠い未来にまで影響を与えている事を体現しています。

このデイジーの様子は作中でホッジンスが語っていた「強く願えば“想い”は届く」と言うセリフを表しているように感じられ、ヴァイオレットが本作の後も誰かの“想い”を届ける手助けがしたいという強い“想い”を表しているに感じられました。

まとめ


(C)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

本作『劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が公開に至るまで、大きな困難がありました。

2019年、京都アニメーション放火事件により、アニメ制作に携わる多くの方が犠牲になり、この出来事はアニメファンのみならず、社会の大きな反響を及ぼしました。

数々の作品で多くの人々に感動を与えてきた京都アニメーションの復興を願い、日本はもちろん“Pray For Kyoani”の合言葉の下、世界中からも義援金やメッセージが届けられました。

こうして公開を迎えた本作はこうした多くの人たちの“想い”を体現してるように感じられてなりません。

本作の主人公・ヴァイオレットが誰かの“想い”を綴り、それ受け取った別の誰かへと絆を紡いでいったように、京アニを応援したいという“想い”を受け取り、困難な中、制作に携わった方々が紡いだ熱意を作品という“手紙”で私たちに、感動を届けてくれたように感じられます。

普段は、決して交わることがない、作り手と観客との絆を紡ぐため、ヴァイオレットは“代筆”してくれたのかもしれません。

この作品はヴァイオレットが時を超え、デイジーに“想い”を届けたように、本作もまた、時を超え、多くの人に感動を与えられる作品となるでしょう。


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