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【まどマギ考察2】魔法少女まどか☆マギカのあらすじとネタバレ感想。第9〜12話:まどかの幸せだけを願いつづける悲しきほむら

  • Writer :
  • さくらきょうこ

2021年4月にシリーズ開始10周年を迎えたアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』

アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(略称「まどマギ」)は2011年1月~4月に深夜アニメとして放送されました。

可愛らしいキャラクターにそぐわない重めな設定とハードな展開が話題となり、2011年の第15回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門で大賞をとるなどさまざまな賞を受賞しました。


(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Movie Project

放送当時、東日本大震災が起こり物語終盤での打ち切りが危ぶまれましたが、4月21日深夜に未放送回2~3話(放送局によって異なります)が一挙放送され、高い視聴率を記録しました。

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アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の作品情報

(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Movie Project

【放送】
2011年放送

【監督】
新房昭之

【脚本】
虚淵玄(ニトロプラス)

【キャラクター原案】
蒼樹うめ

【キャスト】
悠木碧、斎藤千和、水橋かおり、喜多村英梨、加藤英美里、野中藍

【作品概要】
可愛らしい少女たちが自らの願いを叶えるために魔法少女となり、人々に災いをもたらす魔女と戦う。しかし、願った分だけ呪いも引き受ける運命にある魔法少女はやがて自らが魔女と成り果て、新たな魔法少女によって倒されていく……。

定番の“魔法少女モノ”かと思われたこの作品、実は希望と絶望をくり返す少女たちの壮絶な戦いを描いたストーリーでした。

この記事で紹介する第9話から第12話までのお話は、『劇場版魔法少女まどか☆マギカ [後編] 永遠の物語』に総集編としてまとめられていますのでこちらもあわせてご覧ください。

アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』のあらすじとネタバレ

(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Movie Project

第9話 「そんなの、あたしが許さない」

“人魚の魔女”になってしまったさやか。杏子はさやかの“死体”をかかえ、ほむらの協力で結界から脱出します。

さやかを探していたまどかに、ほむらは彼女が魔女になったことを伝えます。その冷静すぎる態度に腹を立てた杏子は「こいつはさやかの親友なんだぞ」とつかみかかります。

死体の扱いに気をつけるよう忠告するほむらに杏子は「てめぇ、それでも人間か?」と反発。「もちろんちがうわ。あなたもね」と言ってほむらは去っていきます。

深夜。ベッドでうずくまるまどかにキュゥべえが声をかけてきました。キュゥべえは、すべては宇宙の寿命をのばすためだと話し始めます。

エントロピー、つまり変換するたびにロスが生じ目減りする一方のエネルギー問題を解決するため、熱力学の法則にしばられないエネルギーを探した結果、見つけたのが魔法少女の魔力だというのです。

知的生命体の感情をエネルギーに変換するテクノロジーを発明したキュゥべえたち。しかし彼らには感情がなく、宇宙を探した結果人類にたどり着いたのです。

最も効率がよいのは第二次性徴期の少女の希望と絶望の相転移のとき。ソウルジェムが燃え尽きてグリーフシードになるときに発生する膨大なエネルギーを回収するのがキュゥべえ=インキュベーターの役割だといいます。

遠い未来に人類がこの星を離れ自分たちと近い存在になるとき、エネルギーが枯渇していたら困るだろう?とキュゥべえ。

それに、契約は合意の上だから良心的だと。いつまでたってもまどかとキュゥべえはお互いを理解できません。

「いつか君は最高の魔法少女になり、そして最悪の魔女になるだろう。この宇宙のために死んでくれる気になったらいつでも声をかけて。待ってるからね」

一方、死体を部屋に持ち帰った杏子はキュゥべえに、さやかを元に戻す方法をたずねますが明確な答えは帰ってきません。

翌朝、姿を見せないさやかを仁美が気にしています。まどかはテレパシーで杏子に呼び出され学校をサボります。

「美樹さやか、助けたいと思わない?」

助けられないとわかるまであきらめたくないと杏子は言います。一番仲の良かったまどかの声なら届くかもしれない。「最後に愛と勇気が勝つ」魔法少女ってそういうものだと思い出させてくれたのはさやかだった、と杏子は笑います。

まどかは手伝わせてほしいと手を差し出し、改めて自己紹介するのでした。

そのころ学校ではほむらが、まどかの欠席を不審に思い教室を抜け出していました。

“人魚の魔女”を探しながら杏子は、ほむらとはワルプルギスの夜を倒すために共闘しているだけだと言います。

まどかが、魔法少女にならない自分はずるいかとたずねると杏子は、幸せな奴が気まぐれで魔法少女になるなんて許さないと怒り、命を危険にさらすのはそうするしかない奴がすること、命がけで戦わなきゃいけないときがきたらそのとき考えればいい、と持論を展開します。

結界に侵入したふたりは魔女と対峙します。手はずどおりまどかはさやかに向けて話しかけ、杏子は防壁を展開してまどかを守ります。魔女はたくさんの車輪で無抵抗な杏子を攻撃し、防壁が破られまどかに危機が迫って初めて杏子は反撃します。

魔女がフロアを壊し杏子とまどかは落下。気を失ったまどかを抱きとめたのはほむらでした。杏子はほむらにまどかを託し、こいつはあたしが引き受ける、と祈りのポーズをとります。

「心配すんなよ、さやか。ひとりぼっちはさびしいもんな。いいよ、いっしょにいてやるよ。さやか」

全魔力を集中して“人魚の魔女”に向かう杏子。赤いソウルジェムが砕け散りました。

その夜ほむらがキュゥべえに、さやかを救える可能性があったのか尋ねると「不可能に決まってるじゃないか」という返事。

しかし杏子の脱落には大きな意味があるといいます。ワルプルギスの夜に対してほむらひとりでは勝ち目がなく、この町を守るためにはまどかが魔法少女になるしかない、とキュゥべえは企みを明かすのでした。

第10話「もう誰にも頼らない」

おさげ髪にメガネ。かつての暁美ほむらの姿です。見滝原中に転校してきたほむらは心臓が弱く、オドオドした引っ込み思案な女の子でした。

クラスの保健委員であるまどかは明るくポジティブな少女で、内気なほむらの心を解きほぐそうと積極的に話しかけてきてくれました。

長い入院生活のため勉強は遅れ、運動も苦手なほむらがコンプレックスを感じ意気消沈していると、いつの間にか結界に取り込まれていました。危機一髪のところを救ってくれたのはふたりの魔法少女、巴マミと鹿目まどかです。

先週契約したばかりだというまどかに先輩のマミは、ワルプルギスの夜がくるまでに一人前になってほしいと言っています。

そのワルプルギスの夜との戦いでマミは死に、まどかはひとりでも戦うとほむらに告げます。そして、あなたと友だちになれて本当によかった、あなたを救えたことが自慢だとほほえみが……。

戦いに敗れたまどかの死体のそばでほむらは「あなたに生きててほしかったのに」と泣き崩れます。するといつの間にか現れたキュゥべえが、叶えたい望みがあるならボクが力になるよと持ちかけてきました。

「わたしは、鹿目さんとの出会いをやり直したい。彼女に守られるわたしじゃなくて、彼女を守るわたしになりたい!」

ほむらが目を覚ますと手には紫色のソウルジェムが握られていました。

前回よりもスムーズに転校時の自己紹介ができたほむらはすかさずまどかのもとへかけ寄ります。

魔法少女としてマミとまどかとともに行動するようになったほむらは、時間停止の技をどう使えばいいか思案しています。

時間を止めて手製の爆弾を仕掛け、再び時間を動かし爆発させるというやり方で“委員長の魔女”を倒したほむら。まどかは抱きついて祝福し、マミはほめてくれました。

しかしワルプルギスの夜の戦いで敗れたまどかは“救済の魔女”に変貌し、魔法少女の仕組みを初めて知ったほむらは時間を巻き戻します。

今回は仲間となったマミ、まどか、さやかにキュゥべえの企みを話しますが、さやかには信じてもらえず、挙げ句いっしょに戦いたくないと言われてしまいます。

マミに爆弾以外の武器はないかと言われたほむらは、時間を止めてヤクザの事務所にしのびこみ銃を調達するようになります。

魔女化したさやかと戦うほむらたち。「ごめん、美樹さん」と言いながら仕掛けた爆弾を爆発させて倒します。魔法少女が魔女になることを知った杏子は怒り、まどかは泣き、そしてマミは「ソウルジェムが魔女を生むなら、みんな死ぬしかないじゃない!」と泣きながら杏子を撃ち殺してしまいます。

続けてほむらに銃口を向けたマミのソウルジェムを、今度はまどかの矢が射抜きます。「もうやだよ、こんなの」と泣くまどかにほむらは、ふたりでがんばってワルプルギスの夜を倒そうと声をかけるのでした。

そのワルプルギスの夜に敗北したふたり。隠し持っていたグリーフシードでほむらのソウルジェムを浄化したまどかは、過去に戻ってキュゥべえにだまされる前の自分を助けてあげてほしいと頼みます。

ほむらは「絶対にあなたを救ってみせる。何度くり返すことになっても、必ずあなたを守ってみせる!」と約束します。魔女にはなりたくないというもうひとつの願いをきき、ほむらはまどかのソウルジェムを撃ち砕くのでした。

時間を戻したほむら。だれも未来を信じない。だれも未来を受け止められない。そう悟ったほむらは淡々と迷いなく行動します。

すべての魔女を自分ひとりの力で倒そうと決意したほむらは、基地から大量の武器を持ち出していきます。

こんどこそ!とワルプルギスの夜に挑むほむら。それを見守るまどかの横にキュゥべえがいるのを見て瀕死のほむらは叫びます。

「ダメーーーーー!」

魔法少女となったまどかはたった一撃でワルプルギスの夜を倒し、その後最悪の魔女となります。10日でこの星を壊滅させる力を持つその魔女に背を向け、ほむらはまた時間を巻き戻します。

まどかを絶望の淵から救い出したい一心で、同じ時間を何度もめぐり、たったひとつの出口を探すほむら。

(まどか。たったひとりの、わたしの友だち)

第11話「最後に残った道しるべ」

ほむらが時間遡行者だということに気づいたキュゥべえ。彼女がこの1ヶ月間をくり返すことによっていくつもの並行世界がまどかを中心に束ねられ、因果のすべてがいまの時間軸のまどかにつながってしまったと分析します。

「お手柄だよ、ほむら。君がまどかを最強の魔女に育ててくれたんだ」

さやかの葬儀から帰ってきたまどかを母詢子が出迎えます。この件について何も知らないという娘のウソに気づきながらどうすることもできません。

制服のままうずくまるまどかにキュゥべえは、人類を家畜に例えて説明し、そして知的生命体として認めた上で交渉していると弁解します。

キュゥべえはまどかに理解させるため、有史以前からともに歩んできた歴史をビジョンとして見せます。クレオパトラ、卑弥呼、ジャンヌ・ダルク……さまざまな場面で彼らは人類の文明に干渉。

多くの少女たちが希望を叶え、そして絶望に身を委ねていったといいます。キュゥべえたちは特定の個人の生死に固執する人間が理解できず、そんな彼らをまどかは受け入れることができません。 

詢子は友人でまどかたちの担任でもある早乙女和子と話をしています。恋愛トラブルを抱えていたさやかは家出の末の衰弱死として処理、三年生にも行方不明者がいると辛そうに話す和子。

詢子はまどかの本音が見抜けないのは初めてだと動揺し、今は時間が解決するのを待つしかないと和子に諭されます。

ほむらの家を訪ねるまどか。ワルプルギスの夜について、ひとりで十分と言い張るほむらにそれがとても本当とは思えないとまどかは涙を流します。

ついにほむらはちがう時間を生きていることを告白し、泣きながらまどかを抱きしめます。何度もまどかが死ぬところを見てきたほむらは、どうすれば運命を変えられるのか、その答えだけを探して何度もやり直していると言います。

しかしくり返すうち次第にふたりの時間はずれ、言葉は通じなくなり、すっかり迷子になってしまった。それでも、まどかを救いたいという最初のその気持ちだけが、たったひとつだけ最後に残った道しるべなのだと言い、しぼり出すようにまどかにこう伝えます。

「お願いだから、あなたをわたしに守らせて」

翌朝、突発的異常気象により見滝原市に避難指示が発令されます。まどかは家族とともに体育館に来ていますが、ほむらのことが心配でなりません。

そのころほむらは、いまだかつてないほどの最大火力をもって具現化したワルプルギスの夜を攻撃しています。しかし全く歯が立ちません。

居ても立っても居られないまどかにキュゥべえは、ほむらはあきらめたらたちまち絶望に飲み込まれる、だから選択肢はないと言います。そんなほむらを思って歩き出したまどかを母詢子が止めます。

必死に説得する詢子にまどかは、愛されていることをわかった上で、大切なみんなを守るために行かなくてはならないと断言します。そんなまどかを詢子は信じて送り出しました。

避難場所に近づきつつあるワルプルギスの夜を必死で食い止めようとするほむら。しかし残弾はつき、負傷して動けなくなってしまいます。

そして時を戻そうとしますが、これでまたまどかの因果を増やしてしまうと躊躇し、自分のやってきたことの無意味さを痛感します。途端にソウルジェムは黒く濁り、すべてをあきらめかけたそのとき、まどかがその手をそっと包みました。

ハッとするほむらにまどかはほほえみかけます。

「ほむらちゃん、ごめんね」

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『魔法少女まどか☆マギカ』ネタバレ・結末の記載がございます。『魔法少女まどか☆マギカ』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

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(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Movie Project

第12話「わたしの、最高の友達」

「わたし、魔法少女になる」

まどかの言葉にほむらは動揺します。でもまどかは、絶対にいままでのことをムダにしたりしないから信じて、と誓います。

深呼吸のあと、「すべての魔女を、生まれる前に消し去りたい」と願うまどか。

「君は本当に神になるつもりか?」とキュゥべえはあわてますが、「神でもなんでもいい。さあ、叶えてよ、インキュベーター!」とまどかは言い放ちます。

マミの部屋。紅茶をいれながらマミは、その願いがどんなにおそろしいものかを話しています。未来永劫、魔女を滅ぼす概念となってしまう。まどかはそのつもりだと言い切ります。

「希望を抱くのがまちがいだなんて言われたら、そんなのはちがうって何度でも言い返せます」

「いいんじゃねーの、やってみなよ」ケーキをほおばりながら言う杏子。マミも「あなた自身が希望になるのよ。わたしたちすべての希望に」と応援します。

魔法少女となったまどかが空に矢を放つと一瞬で青空に変わり、全方位に向けて光の矢が飛び立っていきます。その一本一本にまどかが宿り、死に瀕したあまたの魔法少女たちのソウルジェムを浄化し消滅させていきます。

絶望して魔女になるという運命から逃れた少女たちは安らかな死を迎えます。あのワルプルギスの夜でさえ両手を広げて受け止めるまどか。

月面のような場所で目覚めるほむら。再編中の宇宙を見届けることを許されたほむらは改めて、まどかが引き受けた因果の大きさに愕然とします。嘆くほむらの耳に「大丈夫」というまどかの声が響きます。

宇宙空間に“アルティメットまどか”として出現したまどか。

「もう絶望する必要なんて、ない!」

放たれた矢によって宇宙は光に包まれ、まどかは始まりも終わりもない、だれにも認識されない概念となったのです。

「こんな終わり方であの子は報われるの?死ぬよりも、もっとひどい……」そう泣くほむらにまどかが寄り添います。

過去も未来もすべて見えるというまどかは、何度もくり返し自分を守ろうとしたほむらを認識し、気づけなくてごめんねと謝ります。まどかの胸で泣くほむらに、「あなたはわたしの最高の友だちだったんだね」とまどかは伝えます。

こんな場所でひとりきりで存在することを嘆くほむらにまどかは、「これからのわたしはいつでもどこにでもいる」と言います。

それでも、まどかを忘れ、感じることができなくなると泣くほむらに「あきらめるのはまだ早いよ」とまどか。髪につけていた赤いリボンをはずし、「こんなところまでついてきてくれたあなたなら、もしかしたらわたしのこと忘れずにいてくれるかも」と手渡します。

徐々にはなれていくまどか。「いつかまた会えるから」そう言って消えていきました。

ステージでヴァイオリンを演奏する上条恭介。後方の客席でまどかとさやかがそれを見守っています。さやかを救うためには何もかもなかったことにするしかなかった、と言うまどか。
 
「これでいいよ、ただもう一度あいつの演奏がききたかっただけ」とさやかはおだやかに語り、それでも舞台袖に仁美の姿を見つけると「ちょっとくやしいけど仁美じゃしょうがない、幸せになってくれるよね」と涙を落とします。

「じゃ、行こっか」まどかとともに消えるさやか。演奏を終えた恭介はふと気配を感じ、「さやか?」とつぶやくのでした。

再編された世界で“魔獣”を倒した杏子、マミ、ほむら。その瞬間さやかは消滅し、「行ってしまったわ、円環の理に導かれて」とマミが言います。

「やっと友だちになれたのに」という杏子にマミは「それが魔法少女の運命よ。希望を求めた因果はこの世に呪いをもたらす前にああやって消え去るしかないのよ」と説明します。

話を聞いていたほむらは赤いリボンを見つめ泣いています。「まどか」と声に出すも、マミも杏子もまどかのことをおぼえていません。

砂にまどかの絵を描く弟のタツヤ。その横にしゃがみこんだほむらは髪にまどかの赤いリボンを巻いています。

「まどか、まどか」タツヤはよくその名を呼んでいるようで、母の詢子はなんだかなつかしく感じると言います。ほむらのリボンに気づくとすごくかわいいとほめ、娘とかいたらつけさせたかもしれないね、と笑うのでした。

ほむらは、まどかが円環の理になったいきさつをキュゥべえに話してきかせています。その記憶がないキュゥべえは感心しつつも証明しようがないといいます。

なぜほむらだけがその記憶を持ち合わせているのか。そして浄化しきれなくなったソウルジェムがなぜ消滅してしまうのか、キュゥべえには解明できていない謎として残っています。
 
魔女が生まれなくなった世界でも、新たに魔獣がはびこり人々を脅かしています。

「悲しみと憎しみばかりをくり返す救いようのない世界だけど、ここはかつてあの子が守ろうとした場所なんだ。それをおぼえてる。けして忘れたりしない。だからわたしは戦いつづける」

白い翼を発現させることができるようになったほむらは、かつてのまどかのように弓矢で戦っています。

やがて、たったひとり荒野で魔獣に向かうほむらの背から宇宙空間を思わせるような大きな黒い翼が出現します。そして聞こえる「がんばって」というまどかの声。ほほえみながらほむらは戦いつづけます。

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ヒロインは暁美ほむら

(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Movie Project

『魔法少女まどか☆マギカ』といいながら、この作品のヒロインは暁美ほむらです。

第10話で初めてほむらがこの一ヶ月間を何度もくり返していることが明らかになり、第1話でさやかが冗談で口にしていた“時空を越えてめぐりあった運命の仲間”が事実だったことがわかります。

最初はクールな憎まれ役として登場したほむらが、実は大好きなまどかを守るために時間遡行者となっていた……。ここでようやくミスマッチ(?)といわれていたオープニング映像の意味が判明します。

ほむらの想いは巻き戻しを重ねるごとに強く、そしてこじれていき、まどか以外は必要ないという恋愛感情にも似た状態になっていることが百合展開(女性同士の恋愛)の映像によって表現されています。

「コネクト」の歌詞も内容がわかった上で聞くと、ほむらの気持にピッタリとハマっていて鳥肌が立ちます。

同じ時間を何度もくり返すうち、まどかと仲良くなる世界線をあきらめ、まどかが生き残るエンドだけを模索し続けるほむら。そんな悲しきヒロインほむらは続編である『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ [新編] 叛逆の物語』でさらに暴走していくことになります。

“希望と絶望の相転移”

この物語の一番の魅力は印象の逆転です。(キュゥべえの見た目とその目的とのギャップはその代表格かもしれません)

夢見る少女のほんわかストーリーかと思ったら重く悲壮な運命の物語だったとか、冷徹なほむらが実はまどか大好き守護者だったとか。

キャラクターのギャップでいえば佐倉杏子も負けていません。はじめは利己的でイヤな奴として登場しますが、さやかに同情しなんとか助けようとするうちに本来のやさしさがみられるようになります。

行動はがさつで魔法の使い方もほめられたものではありませんが、それでも必死にさやかを連れ戻そうとして結局いっしょに死ぬことを選びます。

そのさやかも正義感が強い人物として描かれますが、彼女を支えていた気持ちが揺らいだとき、不本意ながら周囲に絶望をまき散らす存在となります。

彼女たちのそのギャップは、作中の言葉を借りるならまさに“希望と絶望の相転移”。その振れ幅が見る者の感情を容赦なく揺り動かしてくるのです。

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ジャンルをまたいだ複合的な楽しみ方

「魔法少女モノ」という形式でスタートしたこの作品。魔女や使い魔という邪悪な存在の登場で「ホラー」「オカルト」テイストの画面が展開されます。

スタッフのインタビューの中で、ホラー映画の巨匠、ダリオ・アルジェントの『サスペリア』を参考にしたという言葉がありましたが白黒チェックの床や極彩色の結界内部など、なるほどとうなずけます。また魔女の名前は『ミッドサマー』でおなじみルーン文字で書かれています。

キュゥべえの目的が説明されるときは、“エントロピー”などさまざまなむずかしい言葉に頭の中がふつふつと煮立ち、「熱力学におけるエントロピー増大の法則」などを調べてみたりしました。

ずいぶん高尚な話だなぁと思っていると、今度はほむらの告白により「タイムリープ」作品であることが明らかになります。

何度も同じ時間をくり返すうちに並行世界を螺旋状に束ねたというので、今度は他のいろいろな「タイムリープもの」と比較してみたりします。

そして最終的には宇宙の再編という壮大なSF展開になり、何度も見返しては必死に理解しようとするのです。

ちなみに、中学校の授業のシーンでホワイトボードに書かれていた数学の問題は“フィボナッチ数列”を取り上げていました。

それは自然界の螺旋や枝分かれ、黄金比率を数式化したもので、作品中にはそれをもとにした構図が多数使われています。そういったものを探しながら見るのも楽しいかもしれません。

まどかの母・詢子の存在感

この作品の中で完璧に幸せな家庭として描かれているのは鹿目家だけです。

マミは交通事故で死別、杏子は無理心中によって家族を失っています。ほむらやさやかは家族がいるはずですが一切でてきません。

余計な情報は一切排除し少女たちの行動・感情に集中することで、よりシンプルに魔法少女たちの悲劇を際立たせる効果があるように思います。

そして対称的にまどかの家は理想的な幸せ家族です。カッコいいバリキャリの母、やさしく家庭的な父、可愛い弟。そして皆が家族を愛し、信じ、尊敬しています。特に母・詢子は人生の先輩としてまどかに的確なアドバイスを与え、その成長に大きな影響を与えます。

子どもとしては合格、だから大人になる前に間違えた方がいい。母から娘にかけるには勇気のいる言葉です。そして、おとなになったまどかと酒を飲むのがを楽しみだと話しますが、残念ながらどの世界線でもそれは実現しません。

そもそも第1話のオープニングでなにげなく母によって選ばれた赤いリボンが最後の最後、こんな大切な役目を担うとは思ってもみませんでした。終盤のほむらと詢子の会話はせつなくて、同時にここにリボンつながったか、とはっとさせられるシーンです。

この家族に生まれたから、そしてほむらに守られたからまどかは人智を超越した存在になり、その母にもらったリボンが一筋の希望の光となってほむらの記憶をつなぎとめ、愛する家族の近くまで戻ってくることができた……。それを知っているのはほむらと、いまや概念となったまどか、そしてわたしたちだけなのです。

まとめ

(C)Magica Quartet/Aniplex・Madoka Movie Project

アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』は主人公まどかが「円環の理」になって幕を閉じます。だれにも認識されなくなったまどかに想いを馳せながら、一番気になるのはほむらのことです。

ほむらの願いはまどかの幸せ。その根幹にあるのはまどかが好きだという気持ち。当然いっしょにいて仲良くしたいはずです。

しかしまどかはすべての魔法少女の魂を解放するため自ら概念となってしまった。そう、まどかを“神”にしてしまうほどのほむらの気持ちは満たされてはいないのです。

でも大丈夫。まどかはまた会えると言っていました。そしてラストシーンでほむらに声もかけています。時間遡行という技を失ったほむらはまどかのような弓矢を持ち、背中には翼が出現するようになっています

白かった翼が次のシーンでは大きな黒い翼に変わっていました。これからほむらがどうなっていくのか。『[新編]叛逆の物語』もお楽しみに。




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