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Entry 2023/04/15
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【ネタバレ】名探偵コナン映画2023/黒鉄の魚影|感想解説と結末ラスト評価。“ピンガ”と犯人の正体は?灰原哀ファン注目作は“黒の組織”との潜水艦での攻防戦

  • Writer :
  • 糸魚川悟

「黒の組織」とコナンたちが海上で激突するバトルミステリー!

1994年から連載が始まり、30年近く経った2023年現在までも広い世代で愛され続けている人気漫画『名探偵コナン』。

そして、1997年の『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』(1997)から毎年の定番となったコナンの劇場版アニメ作品も、2023年でついに26作目となります。

今回はシリーズの最大の敵であり、コナンの因縁の相手である「黒の組織」との攻防を“潜水艦”という舞台で描いた『名探偵コナン 黒鉄の魚影』(2023)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の作品情報


(C)2023青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

【公開】
2023年(日本映画)

【原作】
青山剛昌

【監督】
立川譲

【脚本】
櫻井武晴

【キャスト】
高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、林原めぐみ、緒方賢一、山口勝平、高木渉、湯屋敦子、大谷育江、岩居由希子、松井菜桜子、堀之紀、立木文彦、小山茉美、古谷徹、池田秀一、沢村一樹

【作品概要】
青山剛昌の人気コミック『名探偵コナン』の劇場版アニメ作品シリーズの26作目。

監督は。興行収入91億円を達成した『名探偵コナン ゼロの執行人』(2018)を手がけた立川譲。

また、『劇場版 おっさんずラブ 〜LOVE or DEAD〜』(2019)や『マスカレード・ナイト』(2021)に出演する俳優の沢村一樹が、ゲスト声優として出演しました。

映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』のあらすじとネタバレ


(C)2023青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

ドイツ・フランクフルトにあるユーロポール(欧州刑事警察機構)のデータセンターで働く捜査官ニーナは、施設に侵入する「黒の組織」の男を目撃したことで命を狙われていました。

「黒の組織」に“キール”というコードネームで潜入しているCIA諜報員の水無怜奈(本名:本堂瑛海)は、ニーナをわざと取り逃がすことで彼女の命を助けようとしますが、キールの肩ごと打ち抜いた“ジン”の凶弾によってニーナは射殺されてしまいます。

日本。八丈島のホエールウォッチングツアーの抽選会に参加するコナンたちに同行した灰原は、コナンたちのもとを離れ、数量限定で販売されるブローチの整理券を手にします。しかし、灰原は遠方から来たにも関わらず、整理券を手に入れられなかった老婆に整理券を譲りました。

抽選会に落選し落ち込む元太、光彦、歩美でしたが、灰原の行動を目撃し感心した園子が、自身の父が経営する八丈島のホテルに蘭や阿笠博士を含めた面々を招待してくれることに。

八丈島にコナンたちが訪れた日、八丈島の近海では世界中の監視カメラの映像を集約したユーロポールの海洋施設「パシフィック・ブイ」が稼働しようとしていました。

コナンたちの動向を盗聴器で把握していたFBIの赤井秀一は、八丈島にいるコナンに「ユーロポールでの職員の殺害事件には、黒の組織の構成員“ピンガ”が関わっている」「パシフィック・ブイに接続されるネットワークの一つには、フランクフルトのデータセンターが含まれている」と伝えます。

またホエールウォッチングへ向かう漁船に乗り込もうとしたコナンは、同じ港で警視庁の白鳥警部と黒田警視の乗る船を目撃。黒の組織の情報を集めるため、二人の乗る船に密航します。

海上に浮かぶ巨大施設パシフィック・ブイへとたどり着く船。黒田に気づかれていたコナンは、何とか誤魔化しながらパシフィック・ブイ始動の瞬間を目撃します。

局長の牧野が指揮するこの施設には、レオンハルト、エド、グレースという各国選りすぐりのエンジニアが在籍しており、中でも直美・アルジェントの製作した「老若認証システム」が目玉の一つでした。

幼少時の写真を取り込み骨格を解析することで、大人になった状態の同一人物を監視カメラの映像から解析できる老若認証システムは、パシフィック・ブイに集う膨大なデータと併用されることで高い人物特定能力を発揮します。

そのシステムを密かに狙っていた黒の組織は、直美がひとりになったところを“バーボン”と“ベルモット”に誘拐します。

やがてベルモットは、直美が持っていたUSBメモリの中から、ベルツリー急行で死亡したはずの組織の裏切り者“シェリー”が老若認証システムによって監視カメラに映った少女……灰原哀と“同一人物”と判定されたデータを見つけます。

“ウォッカ”はシェリーが科学者であったことから、何らかの方法で少女の姿に化けていると勘づき、彼女を誘拐しジンに接見させることにします。

しかし想定外のウォッカの行動にベルモット、キール、バーボンは不参加を表明し、ウォッカは内心ジンを嫌い蹴落とそうとしているピンガに頼らざるを得なくなりました。

一方、灰原とホテルで合流したコナンは、直美の誘拐が黒の組織による犯行だと気づき、翌日に帰ることを提案します。

その日の夜、ユーロポールのデータセンターから「バックドア」を仕掛けることでパシフィック・ブイをハッキングしたウォッカとピンガは、灰原の所在を突き止め彼女を誘拐します。

駆けつけた蘭がピンガを蹴り飛ばし灰原を救出しようとしますが、組織のスナイパー“キャンティ”によって追撃を阻止されてしまいます。

逃げたピンガをコナンと阿笠博士は追跡しますが、ピンガとウォッカと灰原を乗せた船は海に飛び込み、突然海に現れた巨大な潜水艦にピンガたちは乗り込んでいきました。

直美の誘拐事件の応援のために駆けつけた目暮警部と佐藤警部補に灰原の誘拐を伝えたコナンは、赤井にも事情を伝え、灰原の救出を約束すると同時に赤井に潜水艦の破壊を頼みます。

その頃、誘拐された灰原は潜水艦の中で直美と出会います。

直美はいじめられていた幼少期に宮野志保(灰原/シェリーの本名)によって救われ、のちに“行方不明”となった彼女を探すために老若認証システムを作り出しました。

そのシステムに目をつけた黒の組織から、自分たちの痕跡を世界中の監視カメラから抹消するよう協力を求められ続けていた直美。ウォッカは“コルン”に命じて直美の父親を狙撃させ「次は母親を射殺する」と彼女を脅迫します。

情報を少しでも集めるため、再びパシフィック・ブイに向かおうとするコナン。そこで“バーボン”こと公安潜入捜査官の安室透(本名:降谷零)から、潜水艦にジンを迎え入れるために浮上するタイミングが、灰原を救う唯一のタイミングだという情報を得ます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『名探偵コナン 黒鉄の魚影』のネタバレ・結末の記載がございます。『名探偵コナン 黒鉄の魚影』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2023青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

その頃、パシフィック・ブイのエンジニアを務めていたレオンハルトが、「黒の組織とつながっていた」と自白する文章を遺し監視カメラの前で自殺します。

死体から香るシンナーのような匂いに、強烈な違和感を覚えるコナン。潜水艦の浮上の時間が迫る中、コナンは灰原救出のために、阿笠博士が新たに発明した水中スクーターを使って潜水艦へと向かいました。

一方、灰原はキールに仕掛けた盗聴器から、魚雷の発射口から脱出する方法を見つけ出し、ジンの到着と同時に直美とともに脱出する計画を実行しようとします。

その計画に勘づいたジンは、発射口に圧縮空気を打ち込み二人を殺害しようとしますが、灰原の脱出を陰ながら後押ししていたキールによって制止されました。

潜水艦から脱出した灰原と直美を回収し、パシフィック・ブイに避難させたコナン。そして、素性がバレたことで皆の前から姿を消そうと考える灰原のために、レオンハルトを殺害しパシフィック・ブイにハッキングを行ったピンガの正体を突き止めることを決意します。

その頃、ベルモットは世界中で老若認証システムを使ったところ、シェリーと一致する人物が大量に見つかったことから、システムの欠陥を上層部に報告します。

“ラム”は組織の犯罪の痕跡を消すという目的以上に、姿を消した黒の組織のリーダーを探し出すためにシステムを欲していましたが、ベルモットの報告に失望。ジンにパシフィック・ブイの破壊を命じます。

またコナンは、佐藤からもらったコーヒーを飲む直美の仕草を見ると、レオンハルトが監視カメラの前で死亡した際のトリックに気づきます。

関係者全員がいる場で毛利小五郎を眠らせ、推理を展開するコナン。そして、監視カメラの映像がレオンハルトの顔をCGですげ替えた「ディープフェイク映像」であると解明した上で、エンジニアのグレースが実は変装したピンガだと指摘します。

蘭に蹴られた際に残ったアザが決め手となり、正体を暴かれたピンガ。佐藤や目暮を振り切り逃走しますが、逃げ道を辿られたコナンに追い詰められます。

ピンガもまた、老若認証システムを用いたことでコナンの正体が工藤新一だと気づいていました。そして、その事実を利用し、組織内におけるジンの立場を失脚させようと画策していました。

ピンガはコナンを倒しパシフィック・ブイから逃走。そのタイミングで、ジンの乗る潜水艦による魚雷でのパシフィック・ブイ襲撃が始まります。

コナンは降谷と赤井へ連絡をとり、自身が潜水艦を発見し、それを赤井がロケットランチャーで破壊するという計画を立てます。コナンは再び水中スクーターで、魚雷の発射され続けている方向……潜水艦へと向かいます。

降谷の連絡を受けた黒田によりすでに避難が始まっていたものの、パシフィック・ブイは魚雷によって崩壊。

岩礁帯で潜水艦を発見したコナンは、潜水艦が近づくタイミングで阿笠博士の発明品である花火ボールを爆発させ、潜水艦のシルエットを海に浮かび上がらせます。その瞬間を捉えた赤井は、ヘリからロケットランチャーを潜水艦に撃ち込むと、損傷を受けた潜水艦は動きを止めました。

爆破の衝撃によって海中で意識を失ったコナンのもとに灰原が現れると、意識を失ったコナンに灰原は口移しで息を吹き込み、コナンを目覚めさせます。

コナンとともにパシフィック・ブイへと向かう中、周囲の人々に危険が迫ることを考えた灰原は皆との別れを改めて決意しますが、考えを読んでいるようなコナンの顔に魅入られ、コナンとキスしたことを思い返します。

その頃、ジンと合流するために潜水艦に来ていたピンガでしたが、ジンたちはすでに潜水艦に証拠隠滅用の爆薬を仕込んだ上で脱出していました。ジンと犬猿の仲だったことからその事実を知らされていなかったピンガは、爆発とともに命を落としました。

潜水艦の爆破によって津波がパシフィック・ブイに押し寄せますが、コナンがキック力増強シューズで破片を波に打ち込んだことで波は消滅します。

倒れた灰原に駆け寄り人工呼吸をしようとするコナンでしたが、灰原はその口を押さえると駆けつけた蘭にキスし「唇は返した」と言いました。

数日後、狙撃された父親の意識が無事戻ったことを知った直美は、日本以外の国での再始動が決まったパシフィック・ブイへの参加が決まります。決して自身が宮野志保だと明かさなかった灰原でしたが、彼女が志保であることを確信していた直美は、空港で彼女に別れを告げます。

またコナンは、老若認証システムが世界中でシェリーの姿を発見した理由は、ベルモットが世界中でシェリーの変装をし、わざとシステムの誤作動を起こさせたからだと安室から伝えられます。

老若認証システムは黒の組織にとって有用なものであったにも関わらず、ベルモットがそのような行動をとった理由を断定できず混乱する関係者たち。

しかし、以前ブローチを譲った老婆が、実はベルモットの変装した姿であったことに気づいていた灰原は、心の中でコナンに「その謎を解き明かしてみなさい」とつぶやくのでした。

映画『名探偵コナン 黒鉄の魚影』の感想と評価


(C)2023青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

「黒の組織」とコナンたちの手に汗握る攻防戦

高校生の工藤新一が少年となり、“江戸川コナン”と名乗る理由を生み出した張本人である「黒の組織」の冷酷な殺し屋“ジン”。

世界規模で犯罪を実行し、躊躇いなく人の命を奪う黒の組織は、作中で最も危険な組織として描かれていました。

しかし黒の組織には、“バーボン”こと安室透や“ライ”こと赤井秀一、そして“キール”こと水無怜奈など、組織に所属しながらも別の目的で動いている人間も存在しています。

本作ではコナンを含め、決してその正体がジンたちに露見してはいけない人間たちが、誘拐された灰原哀を救うという形で存在を隠しながら共闘するという熱い物語が展開されている作品でした。

さまざまな想いが入り乱れる登場人物


(C)2023青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

本作は黒の組織から脱走し、組織から身を隠す灰原哀を中心に物語が進みます。

シリーズではコナンこと工藤新一の幼馴染の毛利蘭がヒロインとして登場しますが、同様に灰原哀も作中ヒロインの一人としてファンから熱い支持を受けています。

本作では灰原の抱えるコナンへの想いが劇場版の中でも特に強く描かれており、二人の関係性の進展に灰原好きとしては目が釘付けになってしまうほど。

さらにFBIの赤井秀一を「死んだ旧友の仇」として命を狙っていた時期もあった安室透が、劇場版作品としては『名探偵コナン 純黒の悪夢』(2016)ぶりに共演を果たすなど、キャラのかけ合いに特に注目して欲しい作品です。

まとめ


(C)2023青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

映画のラストには、お決まりとなった次回作の登場人物のお披露目があり、2024年は怪盗キッドと西の名探偵・服部平次がメインになると判明。

平次が一方的に怪盗キッドに因縁をつけているようなかけ合いに、キッドが作中最強とされる京極真と戦うことになった『名探偵コナン 紺青の拳』(2019)以来のキッドの“受難”が想像されます。

毎年の楽しみのひとつにしている人も多い劇場版コナン映画は、今年もその期待に応えるような派手な演出とキャラのかけ合いに満足できる作品になっていました。





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