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【ネタバレ】名探偵コナン映画2025(隻眼の残像)あらすじ感想と結末の評価解説。ファン待望の長野県警勢をメインに据えた衝撃作

  • Writer :
  • 糸魚川悟

白銀の世界に隠された恐ろしき陰謀を解き明かせ

27作目にして158億円と言うシリーズ最高の興行収入を記録した映画『名探偵コナン 100万ドルの五稜星』(2024)。

毎年の目玉映画となる作品を出し続ける劇場版「コナン」映画は、名実ともに国民的アニメとなったことで生まれる高いハードルを毎年飛び越える結果を見せてくれます。

2025年、さらに高くなったハードルに挑むのは劇場版で初のメイン回を務める「長野県警」。

今回は長野を舞台とした劇場版28作目『名探偵コナン 隻眼の残像』(2025)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

映画『名探偵コナン 隻眼の残像』の作品情報


(C)2025 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

【公開】
2025年(日本映画)

【原作】
青山剛昌

【監督】
重原克也

【脚本】
櫻井武晴

【主題歌】
King Gnu『TWILIGHT!!!』

【キャスト】
高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、林原めぐみ、高田裕司、速水奨、小清水亜美、岸野幸正、草尾毅、飛田展男、平田広明、緒方賢一、岩居由希子、高木渉、大谷育江、山田孝之、山下美月

【作品概要】
青山剛昌の人気コミック『名探偵コナン』の劇場版アニメ映画シリーズの28作目。

すずめの戸締まり』(2019)で演出補佐を務めた重原克也が本作を手掛け、『凶悪』(2013)など数多くの出演作を持つ山田孝之と『六人の嘘つきな大学生』(2024)に出演した山下美月がゲスト声優を務めました。

映画『名探偵コナン 隻眼の残像』のあらすじとネタバレ


(C)2025 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

十ヶ月前、八ヶ岳連峰未宝岳で逃走中の御厨貞邦を追跡していた長野県警の警部・大和敢助は、雪の積もる山中で御厨以外の人間を目撃します。

その人間はライフルを取り出すと敢助に向け発砲し、左眼を損傷した敢助は直後に引き起こされた雪崩に飲み込まれてしまうのでした。

現代、長野県の野辺山宇宙電波観測所に侵入者が押し入り、研究員の円井まどかが負傷しますが、天文台に所属する教授の越智豊が駆け付けたことで難を逃れます。

一方、阿笠博士は知人の越智から電波観測所へ招待を受けており、少年探偵団を招き長野県を訪れようと計画していました。

しかし、コナンは予定日である翌々日に毛利蘭とのサッカー観戦の予約があり、長野県への同行を断ります。

その日の夜、小五郎の警察時代の友人である警部・鮫谷浩二から小五郎充てに電話が鳴り、十ヶ月前の事件に関する長野県警の敢助に関する情報を求め翌々日に日比谷公園で会うこととなりました。

雪崩に巻き込まれ死亡していたと思われていた敢助が何者かの通報により発見され救助されたこと、逃亡していた御厨は敢助の同僚の警部・諸伏高明によって逮捕されたことを過去の事件の捜査で知っていた小五郎は、優秀な刑事でありながら「改革準備室」と言う窓際部署へと飛ばされていた鮫谷に疑問を覚えながら翌々日を迎えます。

日比谷公園で銃声を聞いた小五郎・蘭・コナンは到着と同時に鮫谷の射殺体を発見、コナンは死体の傍に居た犯人を追跡しますが地下鉄の入口付近でその姿を見失ってしまうのでした。

友人を殺害され仇討ちを誓う小五郎は鮫谷が調べていた勘助の事件について調べるため、警視庁の佐藤美和子と高木渉と共に長野へと向かいます。

いつになく真剣な小五郎に突き放されてしまったコナンと蘭はサッカーの予定を取り止め、少年探偵団たちと電波観測所に行くと言う名目で長野へと向かうのでした。

佐久平駅で自身にぶつかった男に盗聴器を仕掛けられたことに気づいたコナンは、この事件に公安の風見裕也が関わっていることを即座に察知し、風見の上司である安室透に連絡を取り事件に関する情報を集め始めます。

一方、長野県警で勘助、高明、そして彼らの同僚である上原由衣と再会した小五郎はコナンに盗聴器を仕掛けた警部補であり、各県警に潜入する「隠れ公安」の林篤信と会い、十ヶ月前の事件の概要を聞き出しました。

八年前、銃砲店に押し入った御厨と鷲頭は銃砲店の店主・舟久保英三の娘・真希を負傷させ逃走。

地元警察の奮闘によって鷲頭はその日のうちに逮捕され、鷲頭との減刑を約束する「司法取引」によって判明した情報を使い御厨も逮捕。

鷲頭は「司法取引」によって執行猶予付きの判決となりますが、御厨は実刑の判決によって刑務所に服役することとなり、仮出所と同時にその姿を消してしまいます。

十ヶ月前、姿を消した御厨を勘助が追い詰め、高明が逮捕したことで全てが解決したと思われていましたが、被害者である真希が受けた傷を苦に自殺したことから父の英三は、執行猶予期間後に姿を消した鷲頭に報いを受けさせるため彼を探していたことが分かります。

鮫谷が長野を訪れ刑務所に再度収監された御厨と面会していたことを知った小五郎は、御厨と面会し彼が自分を警察に売った鷲頭を恨み続けていることを知るのでした。

勘助は十ヶ月前の雪崩の前後の記憶を思い出すことが出来ず、由衣と共に未宝岳を訪れている最中に何者かからの銃撃を受けます。

間一髪で犯人からの追跡を逃れることに成功しますが、同じく未宝岳を訪れていた少年探偵団の光彦と元太、蘭が犯人と接触することとなり、3人の機転で何とか犯人を撃退することに成功。

銃撃犯が現れたことで事件の捜査に乗り出していた長谷部陸夫検察官の指示により、長野県警と警視庁合同の未宝岳の山狩りが行われますが犯人を見つけることは出来ませんでした。

未宝岳の中腹で炭焼き小屋を営む大友隆の小屋に身を寄せたコナンたちは、東西に位置するの二つの山頂付近に仕掛けられた雪崩を意図的に発生させる装置の存在を知ります。

同規模の雪崩を両箇所で発生させぶつけることで、山下への被害を抑えることを目的としたその装置は大友によって管理されていました。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『名探偵コナン 隻眼の残像』のネタバレ・結末の記載がございます。『名探偵コナン 隻眼の残像』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

(C)2025 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

翌日、小五郎と高木、佐藤の3人と共に下山するコナンは英三が自殺した娘のために用意した墓前に何者かが献花をしていることや、生前の彼女に恋人がいたことを知ります。

一方、犯人が自分を狙っていることに気づいていた勘助はわざと少数で下山することで犯人に自身を狙わせ、その意図通り犯人は勘助を襲撃。

勘助は由衣と高明と共に犯人に対抗しますが、爆弾を用意していた犯人によって高明が凍った川に落とされてしまいます。

公安に所属後姿を消した弟のことを思い返しながらも、水面からの銃撃によって位置を知らせた高明の機転により、駆け付けた小五郎たちは高明の救出に成功しますが、犯人は中腹に留まる勘助たちを狙い、装置を使い雪崩を引き起こしていました。

もう一方の装置を作動させることによってコナンは雪崩を止めようとしますが試みは失敗し、窪みに隠れることの出来たコナンたちは無事に雪崩をやり過ごしますが勘助が行方不明となってしまいます。

長野県警に戻ったコナンと小五郎、そして長野県警の刑事たちは高明の容態が安定したことを聞くと同時に、勘助の死体が発見されたことを伝えられます。

自身を盗聴している風見を使い情報を集めていたコナンは安室に連絡を取り、犯人の正体と引き換えに今回の事件が国が推し進めている「改正刑事訴訟法」に関わっている事件であることを聞き出し、小五郎を始めとする関係者全員に事件の真実を新一としてメールするのでした。

犯人の正体を暴く前に、小五郎は大友が失踪した銃砲店強盗事件の鷲頭であることや真希の墓前に献花していた人物であることも伝えます。

大友は養子縁組によって合法的に名字を変えながらも、友人を裏切ったことや真希を死に追いやってしまったことを後悔しており、贖罪のために事件の起きた未宝岳に留まっていたのです。

英三は大友に対し恨みを吐き出しながらも、彼の贖罪の行動に打たれ、彼を知るための努力をすることを決めました。

次に警察関係者を電波観測所に集めた小五郎は、死亡した鮫谷が「改正刑事訴訟法」を推し進めるために活動していた「隠れ公安」であることを暴露し、同じ「隠れ公安」である林こそが一連の事件の犯人であると指摘。

コナンからの依頼で裏取りを行っていた風見も現場に現れ、林が押収された銃器を処分する権限を持っていたことを話します。

多くの現場で証拠を残していた林でしたが、死を偽装していた勘助が目の前に現れ、彼の記憶が蘇ったことが決め手となり犯人であることを認めました。

林は真希の恋人であり、真希の自殺後鷲頭が姿を消したことで日本で推し進められようとしている「証人保護プログラム」に対し強い拒否感を覚え、観測所の情報を使い不正入手したアメリカの機密情報を使って政府を脅す行動に身を染めます。

十ヶ月前の未宝岳でその様子を目撃された林は勘助の殺害を決める一方で、事件の捜査を始めた鮫谷を殺害したのでした。

罪を認めながらも大人しく捕まることを拒否した林は銃を乱射しながらその場から逃走し、観測用の重機を使い暴走を開始。

長野県警の三人とコナン、そして灰原哀の協力によって運転中の視界を一時遮られた林は、風見から拳銃を借りた小五郎による射撃で重機を破壊され逮捕されるのでした。

数日後、公安警察のアジトに拘束される林の前に安室が現れ、裁判中に公安警察であることを自白しない代わりに死刑を免れさせると言う「司法取引」を提案します。

「司法取引」を嫌っていた林は即座に拒否しますが、安室は林が提案を拒否した場合、自殺した真希との関係を公表し彼女の名誉を傷つけると林を脅迫しました。

施設を去る間際、風見から高明が救出され意識が朦朧としていた際に「景光」と口にしていたことを聞いた安室は驚愕しその場を立ち去るのでした。

映画『名探偵コナン 隻眼の残像』の感想と評価


(C)2025 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

劇場版初となる長野県警メイン回

近年の劇場版コナン映画は『名探偵コナン ゼロの執行人』(2018)では警視庁公安部の安室透、『名探偵コナン 緋色の弾丸』(2021)ではFBIの赤井秀一とその家族と言った、本編シリーズに登場する準レギュラーキャラクターをメインとする回が多く、ラストで明かされる「誰が次の作品のメインとなるか」の発表も作品の見どころとなるほどにシリーズの定番化していました。

本作のメインとなる「長野県警」勢は、劇場版コナン映画では初のメインを務めることになりましたが、本編を楽しむファンたちからは特に人気の高いキャラクターたちでもあり、発表が行われた前作のラストでは歓喜する人も多くいるほどでした。

特に人気の高い知的な雰囲気を漂わせる諸伏高明は、失踪した弟に深く関わっていると認知している公安部の安室透との共演回ともあり、発表から1年をかけて様々な憶測が飛び交っていました。

そんな大注目の「長野県警」が主軸となる今回の作品では、謎に包まれていた大和勘助が行方不明となっていた事件の真相がすべて明らかになります。

アニメオリジナル作品でありながら登場人物の重要なエピソードが初公開される、原作ファンもアニメのみを鑑賞しているファンも大満足の一作です。

物語の中心となる長野の雪景色


(C)2025 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

本作で物語の中心となるのは長野県の「野辺山宇宙電波観測所」と「八ヶ岳」です。

雪景色の似合う長野の広大な自然を魅力的に描いた本作は、長野駅や佐久平駅と言った要所も細部までしっかりと描いており、疑似観光映画としても魅力十分。

さらに「コナン」映画として不可欠な名所の爆破もしっかりと行われており、アニメ作品だからこその現実に存在する場所の崩壊を目の当たりに出来る作品でした。

まとめ


(C)2025 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

登場人物の深い関係性の構築、本編でも描かれていない重要な背景の描写、一般層に浸透していない準レギュラーの魅力紹介、と毎年の映画でありながらファンの求める要素がすべて詰まった劇場版コナン映画。

最終版の特報にて2026年のメインはまたしても劇場版では初のメイン回となる準レギュラーキャラクター「風の女神」こと荻原千速であると発表されました。

『名探偵コナン 隻眼の残像』は季節映画として一年を彩るコナン映画が、30作を目前にしてもまだまだ衰えることはないと教えてくれるような作品でした。


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