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Entry 2017/01/15
Update

映画『アノマリサ』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

  • Writer :
  • yukimura

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映画『アノマリサ』作品情報

【公開】
2015年(アメリカ)

【原題】
Anomalisa

【監督】
デューク・ジョンソン/チャーリー・カウフマン

【キャスト】
デヴィッド・シューリス(マイケル・ストーン)、ジェニファ・ジェイソン・リー(リサ)トム・ヌーナン(その他)

映画『アノマリサ』あらすじとネタバレ

ベラ

マイケル・ストーンは、カスタマーサービスの専門家。ベストセラー本も書いている彼は、講演会を行うためにオハイオ州シンシナティ行きの飛行機に乗っていました。

マイケルには悩みがあります。自分の周囲の人間が、年齢性別問わず誰もが同じ顔に見え、同じ声に聞こえるのです。機内で隣に座る男性も、タクシーの運転手もみな同じ顔、同じ声です。聴こえる音楽ですら、同じ男性の歌声です。

マイケルは、フレゴリ・ホテルに到着します。部屋に案内してくれるボーイも同じ顔、同じ声です。家に電話をすると、妻子の声までマイケルには同じに聞こえます。

部屋で酒を飲むマイケル。11年前に別れた恋人べラのことが頭をよぎり、彼女に電話をかけます。ベラはこの街に住んでいます。電話に出たベラもまた、同じ声でした。

ベラは今も独身でした。二人はホテルのバーで再会します。マイケルはべラに自分の悩みを伝えたいのですが、どうにもうまく話せません。困った挙句、自分の部屋に来ないかと誘ったマイケルにべラは腹を立て、冗談じゃないわと帰ってしまいます。

マイケルはすっかり落ち込み、一人で街をさまよいます。ふと目に入ったのは怪しい玩具店。マイケルは、日本の芸者の姿をした奇妙なカラクリ人形を購入します。

リサ

部屋に戻りシャワーを浴びたマイケルの耳に、誰かの声が聞こえてきます。いつも聞いている男性の声ではなく、まぎれもない女性の声です。驚いたマイケルは廊下に飛び出し、ずらりと並ぶ客室のドアを次々と叩いて声の主を探して回ります。

ドアが開き、二人の女性が現れました。一人は例の男性の声ですが、もう一人は美しい女性の声です。彼らはマイケルの講演会を聞きに来たファンでした。食品会社の顧客サービス係で、マイケルの著書のおかげで仕事の効率が上がったと言うのです。

マイケルは二人をバーへ誘います。美しい声の女性はリサといいました。会話を楽しんだ後、マイケルはリサだけを自分の部屋へ誘います。リサは、マイケルが選んだのが美人の友人ではなく、地味な自分であることに驚きますが、部屋について行きます。

マイケルはリサの声をほめ、何か歌ってほしいと言います。リサは不思議がりますが、ためらいがちにシンディ・ローパーの曲を歌います。ごく普通の歌声ですが、マイケルにとっては、まるで天使の声のように美しく響くのでした。

マイケルはリサにキスします。リサの顔には傷があり、それを髪で隠していました。リサは、マイケルの著書に出てくる「変則的(アノマリー)」という言葉が好きだと言います。他者と違うのはいいことだわと言うのです。マイケルは彼女のことを「アノマ・リサ」と呼びました。そのまま二人は愛し合い、マイケルは眠りに落ちました。

マイケルは不思議な夢を見ます。ホテルの支配人に「リサ以外の女性にしろ」と言われ、同じ顔、同じ声の女性達が大勢で現れるのです。マイケルは必死で部屋に逃げ帰り、リサに「愛している。一緒に逃げてくれ」と言ったところで目が覚めました。

そして妻

リサは、ベッドの上で幸せそうに笑っています。二人はルームサービスの朝食をとります。マイケルはリサに「妻とは別れる。一緒になってくれ」と頼みます。いきなりのことに戸惑ったリサですが、マイケルの真剣さに心打たれて結婚に同意します。

その途端、マイケルはなぜかリサの些細な癖が気にさわり出します。フォークで音を立てる癖、食べながら喋る癖など、イライラした様子でリサに注意するマイケル。

リサは、マイケルの様子が突然変わったことに困惑します。マイケルには今、リサの顔がいつもの男の顔に見えています。結局、リサも他の人間達と同じでした。マイケルは絶望し、うなだれます。

講演会が始まりました。いつもと調子が違うマイケル。顧客サービスを説くはずが、「この世界は崩壊している」「私は壊れてしまった」など支離滅裂なことを口走ります。観客はみな同じ顔です。客席のリサが、不安げにマイケルを見つめていました。

マイケルは飛行機に乗り、ロサンゼルスの自宅へ戻りました。息子への土産にと、あの日本の人形を渡します。家には大勢の友人や身内が来ていて賑やかでした。全員が同じ顔、同じ声でマイケルを囲みます。

マイケルは妻の顔を眺め、思わず「君は誰なんだ?」と尋ねます。妻には何のことだか理解できません。日本人形が歌を歌い出します。それをじっと見つめるマイケル。
人形の歌声は、まるでリサのような美しい女性の声です。

リサは、マイケルに手紙を書いていました。「あなたが去ってしまったのは残念だけど」と綴ります。「“アノマリサ”の意味を和英辞典で調べてみたら、“天国の女神”という意味だったわ」。リサの顔には微笑みが浮かんでいました。

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『アノマリサ』の感想と評価

主人公マイケルには、自分以外の人間が全て同じ顔、同じ声に思えて仕方ありません。他人だけでなく、愛する妻と息子までがそうなのです。その事実がマイケルにとってどれほど恐ろしく異様なことであるかは、想像つかないこともありません。

このような現象を「フレゴリの錯覚」といい、知人が他人に見えたり、他人が知人に見えたりするという、一種の鬱状態で起こり得る症状だそうです。劇中にその説明はありませんが、ただ、マイケルが宿泊する場所は、「フレゴリ・ホテル」です。

マイケルがある種の病にかかっているとして、その恐怖を描いた映画だったら、まだ「なんとお気の毒な」的なスタンスで鑑賞させていただくのですが、なぜかこの主人公にはシンパシーではなく、強い違和感を感じてしまいます。

ベストセラーを執筆し、各地で講演会を開くマイケルは人生の成功者です。ホテルで出会ったリサとその友人もマイケルのファンであり、彼に声をかけられただけで舞い上がります。どうやらマイケルは、若い女性にも魅力的にうつる男性らしいのです。

「人間」を熟知しているからこそのカスタマーサービス専門家。そんなマイケルにとって、簡単に自分についてくる女性はもちろんのこと、他人の考えていることなどたかが知れていて、何の驚きも感動もないつまらない存在なのではないでしょうか。

そう感じる根拠は、11年前に捨てた恋人べラをホテルに呼び出すくだりです。男の性欲うんぬんは置いといて、マイケルにとってはベラもまた同じ顔、同じ声です。べラが帰った後、浴室の鏡を見たマイケルは、自分の顔も他人の顔に見えぎょっとします。

顔にはうっすらと切れ目が走り、お面のようにはずれます。慌てて顔を押さえるマイケル。彼にとっては自分だけが特別であり、他人と同じ顔になること、つまりは他人を理解することなど論外なのでしょう。この鏡のシーンにはギョッとさせられます。

映画が描く「狂気」には二種類あると思います。社会の狂気と人類の狂気。この作品の場合、狂っているのは社会でも人類でもなく、マイケル個人が持つ根本的エゴイズムではないかと思いました。

アノマリサ=特別なリサ、かもしれません。しかしその魅力も、リサを手に入れた瞬間、「ただのリサ」に変わり果てました。結局、マイケルに女性の声で歌い続けてくれるのは、不気味な日本のカラクリ人形だけです。とてもシニカルなラストでした。

まとめ

『マルコヴィッチの穴』(1999)や『エターナル・サンシャイン』(2004)で脚本を、そして『脳内ニューヨーク』(2008)で監督・脚本を手がけた鬼才、チャーリー・カウフマンによるストップモーション・アニメ作品。

資金が集まらず、クラウドファンディングで製作費をかき集めて作られたという裏話も納得。一般受けとは程遠い、しかし一度見ると強烈な印象を残す作品です。人形とはいえ大人向けですから、全体的にアーティスティックな作風となっています。

物語に謎を残すのが、マイケルが買った芸者のカラクリ人形です。日本人から見てもキモ可愛い、というか全く可愛くないのですがインパクト大です。しかも女性の声で歌う歌が、よりによって「桃太郎」なのです。これは深い考察あってのチョイスか、それとも単なる歌の解釈ミスなのか。

リサが和英辞典で調べたという「アノマリサ=天国の女神」も、そんな言葉は日本語にないため、さらに謎は深まります。初めて『マルコヴィッチの穴』を見た時と同じような衝撃に、またもや打ちのめさました。ジョン・マルコヴィッチの脳内と同じくカウフマンの脳内も、凡人には計り知れない世界が広がっていそうです。

全編、ミニチュアの人形が、街が、景色が、とにかく生々しくて美しいです。撮影期間はなんと2年だそうで、第88回アカデミー賞長編アニメーション部門にもノミネートされています。今まで見たことのない世界観を体験できる作品です。

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