卵を手に入れろ!わくわくするようなアドベンチャーファンタジー
悪ガキ3人組“不死身のワニ団”。メンバーのアリス、ヘイゼル、ジョディは大の仲良し。
新たに手に入れたゲームをする代わりに風邪で寝込んでいるヘイゼルとジョディのママにブルーベリーパイを手に入れにいきますが……道中で謎の男に横取りされてしまいます。
「卵を奪還にしてママにパイを届けるんだ!」
3人のアドベンチャーが始まります。3人は、無事にママにパイを届けることができるのでしょうか。
16㎜フィルムを使った映像や、遊び心満載の小道具でネオレトロフューチャーな世界観を演出し、まるでゲームの中の世界のようなわくわくに思わず心をくすぐられます。
『グーニーズ』(1985)や「ロッタちゃん」シリーズを彷彿させるような新たな子ども映画の誕生!
映画『リトル・ワンダーズ』の作品情報
【日本公開】
2024年(アメリカ映画)
【原題】
Riddle of Fire
【監督・脚本・製作】
ウェストン・ラズーリ
【キャスト】
リオ・ティプトン、チャールズ・ハルフォード、チャーリー・ストーバー、スカイラー・ピーターズ、フィービー・フェロ、ローレライ・モート、アンドレア・ブラウン、レイチェル・ブラウン、ウェストン・ラズーリ
【作品概要】
監督・脚本を務めたウェストン・ラズーリは、「魔法の剣一味」のメンバーであり、魔女の弟であるマーティー役として出演もしています。
またウェストン・ラズーリは、映画やMVの製作からデザインまで幅広く手がけるアトリエ「ANAXIA」を2015年に設立し、以降短編映画を製作し、本作が初の長編デビュー作となりました。
魅力的な子役たちが顔を揃え、「魔法の剣一味」メンバーには『ウォーム・ボディーズ』(2013)のリオ・ティプトン、『ローガン・ラッキー』(2017)のチャールズ・ハルフォードらが顔を揃えました。
映画『リトル・ワンダーズ』のあらすじとネタバレ
アリス、ヘイゼル、ジョディからなる悪ガキ3人組“不死身のワニ団”。
ある日、3人は会社の倉庫に侵入し、新しいゲーム機を手に入れます。警備員にバレてしまいますが、逃げ出した3人は、ヘイゼルとジョディの家で早速ゲームをしようとします。
するとパスワード入力画面が映し出されます。当てずっぽうのパスワードを入力しますが、何を入力しても次に進めません。仕方なく3人は、風邪で寝込んでいるママの元に行きます。
「1日中ゲームをするでしょう。折角の夏休みなのだから外で遊びなさい」というママに3人は頼み込んで「2時間だけでも」とお願いします。
とうとう折れて、ママは2時間ゲームをすることを許します。
「パスワードを教える前に頼みがあるの。ブルーベリーパイを買ってきて欲しいの。おばあちゃんが風邪を引いた時に作ってくれてブルーベリーパイを食べたら元気になれるの」とママは言います。
3人は早速街のセリアの店にパイを買いに行きます。しかし、パイは売り切れでした。パイを作ってもらおうと、セリアの家を訪ねるとセリアも風邪を引いていると言います。
「パイは作れない」と言うセリアに3人はレシピを聞き出そうとすると、「体が暑いから何か冷やすものを持ってきておくれ」と言われます。
コンビニでドライアイスを盗もうとするも失敗してしまう3人。そんな時ジョディが見つけたのは、フリーと書かれたワゴンの中にある人形でした。どこかゾッとする人形を持っていけば、背筋がゾクっとするのではないかと考えたのです。
ヘイゼルとアリスは相手にせず氷を持っていきます。セリアは「氷でも冷えない」と言います。そんなセリアに、ジョディは人形を渡します。セリアは「面白い子だね。確にゾクっとする」と気に入り、レシピを教えてくれます。
3人はスーパーに行ってレシピにある必要なものを棚から取り出していきます。最後は卵だけ。それもまだら模様の特別な卵でないといけません。
最後の1つの卵のパックに手を伸ばした時、横からやってきた謎の男に奪われてしまいます。「卵を1つ分けて!」と3人が頼み込んでも男は全く相手にしません。
「絶対取り返す!」と3人は意気込んで男の車を追うと、一軒の家にたどり着きます。そこは、魔女率いる謎の集団「魔法の剣一味」のアジトだったのです。
映画『リトル・ワンダーズ』の感想と評価
大人の心をくすぐる遊び心
『グーニーズ』(1985)、『スタンド・バイ・ミー』(1987)、「ロッタちゃん」シリーズや「ホーム・アローン」シリーズと、子どもの世界を描く名作は数知れず。
そんな数々の映画を彷彿させる映画『リトル・ワンダーズ』。
本作が初長編作となるウェストン・ラズーリ監督は、MVや映画のポスターデザインなど幅広く手がけています。そんな監督の美術センスが作品の世界観を構築しています。
子どもの頃やっていた“ごっこ遊び”がそのまま再現されているようなドリーミングな世界を構成する大きな要素はRPGのような世界観と童話のようなファンタジーな世界観です。
その2つのテーマは冒頭から提示されています。森の中で彷徨うペタルと森の王子の話が語られ、その後スマートフォンのような小型機械で倉庫に潜入しようとする“不死身のワニ軍団”の姿は、まるでゲームのミッションのようです。
非現実的すぎないけれど、現実的でもない、それが子どもの世界を彩る絶妙なラインといえます。そしてその世界は、親をはじめとした“大人が知らない世界”であることも重要です。
まさにネバーランドであるわけですが、ネバーランドは終わりがくるものです。本作においてその終わりを知らせるのが、警察という現実的な存在です。
警察はゲームオーバーということなのか……と思いきや、ペタルの活躍によって卵を手に入れるのも面白い展開です。
本作は、大きなミッション(=パイをママに届ける)のために、目の前に現れる試練に一つ一つ立ち向かっていくというゲームのような構成になっており、途中で投げ出さない様子は映画『ジュマンジ』(1995)や、『ザ・スーラ』(2005)を彷彿とさせます。
そのようなアドベンチャー要素も魅力の一つですが、本作は王道の青春要素も描かれているのが良いところです。
アリスとヘイゼルの淡い恋愛模様、皆で楽しくダンスするシーンなどは、思わず胸がぎゅっとなります。
童心にかえるような懐かしさと遊び心に心をくすぐられる魅力いっぱいのアドベンチャームービーです。
まとめ
遊び心いっぱいのアドベンチャームービー『リトル・ワンダーズ』は、世界観の面白さもさることながら、子役たちのキャラクターが大きな魅力になっています。
勇敢に皆を引っ張るアリスや、ジョディ名前では頼もしい兄でもありつつアリスよりちょっと情けないところもあるヘイゼル、そして不思議なダンスを披露するキュートなジョディ、さらに話し方が独特なペタル。
大人に対してイタズラもするけれど、勇敢でチャーミングな子役たちに、ペタルのように「友達になってくれない」と言いたくなってしまうような魅力に溢れています。
自分のことをセクシーだと思っていたけれど「キュートと言われる方がいいよ」とアリスとヘイゼルに言われて「僕はキュートかも」と思うジョディの会話やジョディとヘイゼルの結婚の話などキュートな姿にくすぐったくなります。
そのような子供たちの恋愛模様はウェス・アンダーソンの『ムーンライズ・キングダム』(2012)を彷彿とするような甘酸っぱさも。
数々の子ども映画の要素を織り交ぜつつニューレトロな子ども映画の誕生に、ウェストン・ラズーリ監督の今後も楽しみですね。