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Entry 2021/07/11
Update

映画『サイコ・ゴアマン』感想評価と内容解説。SFスプラッターヒーローアドベンチャー“殺戮宇宙人”は少女の言いなり!

  • Writer :
  • 増田健

『サイコ・ゴアマン』は2021年7月30日(金)シネマート新宿ほかロードショー!

カナダの過激映像集団”アストロン6″がまたやった!メンバーの1人、80~90年代のB級映画を愛して止まない監督が、少女の無邪気さが暴走した結果、画面を大量の血で染めるトンデモ映画と極悪残虐ニューヒーローを誕生させた!

その名は『サイコ・ゴアマン』!イギリスの映画祭セルロイド・スクリームスで、オーストラリアの映画祭モンスター・フェストで、アメリカのフィラデルフィア映画祭で観客賞受賞した作品です。

世界のB級・ジャンル映画ファンを熱狂させた、話題のスプラッターSF『サイコ・ゴアマン』、略して「PG」についてご紹介します。

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映画『サイコ・ゴアマン』の作品情報


(C)2020 Crazy Ball Inc.

【日本公開】
2021年(カナダ映画)

【原題】
Psycho Goreman

【監督・脚本】
スティーブン・コスタンスキ

【出演】
ニタ=ジョゼ・ハンナ、オーウェン・マイヤー、アダム・ブルックス、アレクシス・ハンシー、マシュー・ニネバー

【作品概要】
とある家の裏庭で太古より封印されていた、”銀河の破壊者”と呼ばれる凶悪宇宙人。目覚めた彼を支配し操るのは、実に性格の悪い8歳の少女。蘇った悪魔を倒すべく、宇宙から最強怪人が刺客として地球にやって来る!

『マンボーグ』(2011)と『ABC・オブ・デス2』(2014)の1編であるW「WISH 願い」と『レプリコーン リターンズ』(2018)を監督し、『ザ・ヴォイド』(2018)の共同監督を務めたスティーブン・コスタンスキ。過去のB級映画へのオマージュ溢れる作品を手掛ける人物です。

主演はクライブ・パーカーの小説を原作にした、Huluオリジナル映画『Books of Blood(血の本)』(2020)にも出演した、ニタ=ジョゼ・ハンナ。『マンボーグ』に出演のアダム・ブルックス、『ターゲットID』(2014)を監督したマシュー・ニネバーらが共演した作品です。

映画『サイコ・ゴアマン』のあらすじ


(C)2020 Crazy Ball Inc.

遠い昔、はるか彼方の銀河系…ではなくガイガックス星に、支配者に反旗を翻し破壊と殺戮の限りを尽くす、”名前の無い悪魔”と恐れられた残虐宇宙人が現れます。恐るべき悪魔は、宇宙から正義を一掃しようと暴れます。

強大な力を持つ極悪宇宙人の野望は達成されるかに見えましたが、正義の勢力が結集し、”名前の無い悪魔”を遥かかなたの地に封印することに成功しました。

その悪魔が再び解き放れる時には、全宇宙全ての者が破滅することになるでしょう…。

そんな事など全く知らない地球のどこか。8歳の少女ミミ(ニタ=ジョゼ・ハンナ)は兄のルーク(オーウェン・マイヤー)と暮らしていました。

生意気で口が悪く、恐れ知らずで性格は凶悪極まりない妹のミミに、常識人の兄・ルークは振り回されていました。それでも兄妹は仲良しで、今日も我流ルールのドッジボール「クレイジーボール」で勝負します。

負かされたルークは、妹の命令で裏庭を掘り起こすように命じられます。地面を深く掘ったルークは怪しく光る宝石が付いた、棺のようなものを掘り当てます。

いい加減な方法でその封印を解くと、ミミはその宝石を手に入れました。すると棺が振動し始めます。両親にバレないように、慌てて棺を埋め戻せと兄に命じたミミ。

お調子者でぐうたらな父グレッグ(アダム・ブルックス)と、しっかり者だが口やかましい母スーザン(アレクシス・ハンシー)も、乱暴者の娘ミミには手を焼いていました。

ミミとルークは両親から寝るように言われますが、埋め戻した地面は光を放っていました。その光の点滅と同じ様に、ミミが手にした宝石も輝き始めます。

地中から封印を破り、あの”名前の無い悪魔”と呼ばれた宇宙人が甦ります。ミミの家の裏にある、廃工場跡にたむろするチンピラたちを襲い、よくもまあ”PG12指定”で済んだな、というエゲつない方法で血祭りにあげる残虐宇宙人。

地中から何かが現れたと気付いたミミとルークは、両親に内緒でその正体を探ります。物怖じしないミミが廃工場で目にしたのは、無残な姿になった犠牲者たちと、宇宙を破滅させかねない宇宙人でした。

逃げようとしたルークに凄んだ、残虐宇宙人の口の利き方に腹を立て怒鳴りつけたミミ。彼女は宝石を持つ自分には、目の前にいる宇宙人を操る能力があると気付きました。悔しみながらもそれを認め、いずれ貴様らを破滅させてやると脅す”名前の無い悪魔”。

脅されても全く動じないミミは、宇宙人に名前が無いと知るとカッコいい名前を与えようと考え、”サイコ・ゴアマン”(マシュー・ニネバー)と名付けます。

サイコ・ゴアマン、略して”PG”はいずれ後悔させてやると叫びますが、自分のいいなりになる”PG”を皆に見せびらかし、人気者になろうと思いつくミミ。

一方地球から遠く離れたガイガックス星では、サイコ・ゴアマンが封印を破った事実に震撼していました。悪魔が目覚めた以上、このままにしては宇宙が滅びると恐れた彼らは、正義の冷酷な執行者”テンプル騎士団”の最強戦士・パンドラを地球に送り込みます。

サイコ・ゴアマンの壮絶な過去に興味の無いミミは、兄の心配をよそに”PG”に何をさせれば皆にウケるかで頭が一杯です。少女の無茶な命令に怒りを募らせ復讐を誓うサイコ・ゴアマンも、どうやら地球の文化に興味を持ち始めた様子。

そんな中、ついに地球に無慈悲な最強戦士・パンドラが降臨します。全宇宙の存亡を決する極悪と正義の最終決戦の行方は、性格最悪の少女・ミミの手に委ねられます。

がんばれ、サイコ・ゴアマン!どっちが勝っても多分、ロクなことにはならないぞ!

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映画『サイコ・ゴアマン』の感想と評価


(C)2020 Crazy Ball Inc.

この映画は悪趣味だらけの「東映不思議コメディーシリーズ」だ!

ユルくて悪趣味な痛快作『サイコ・ゴアマン』に、世界のB級映画ファンが熱狂した事実に納得しました。

CG全盛の時代に、作り込まれたボディスーツで登場するサイコ・ゴアマン。同様の姿ですが、よりメカっぽい姿の正義の戦士パンドラ。まるで東映の仮面ライダー&スーパー戦隊シリーズを見ているかのよう。

他にも登場するスーツ系の宇宙人や、プロップで作られたあれやこれやのキャラクター。これをイイ趣味だ、よく判っているぜスティーブン・コスタンスキ監督!と思う人には最高の作品です。

本作のテイストは、『がんばれ!! ロボコン』(1974~)の世界観を継承し、『ペットントン』(1983~)や『勝手に!カミタマン』(1985~)、『おもいっきり探偵団 覇悪怒組』(1987~)や『美少女仮面ポワトリン』(1990~)を生んだ、東映不思議コメディーシリーズ(東映不思議特撮シリーズ)と同様だと理解下さい。

放送作家として数々のギャグ番組に関わり、シュールな脚本を現在も特撮・アニメ作品に提供し続ける、名脚本家・浦沢義雄が手掛けた東映不思議コメディーシリーズ同様にユルさとユーモア、時に辛辣でブッ飛んだ世界観が『サイコ・ゴアマン』に展開されます。

もっともちびっ子たちも楽しめる東映不思議コメディーシリーズと異なり、世界のB級映画ファンのために作られた『サイコ・ゴアマン』は、サイコで悪趣味なゴアシーンたっぷり。

PG12指定作品ですから、良心的かつ適切な指導の下、お子様と楽しんで下さい。ご覧になったお子様は、間違いなくB級映画愛好家のエリートコースを歩まれるでしょう。

こだわりが強い、B級映画大好きなコンタスキ監督

参考映像:『マンボーグ』(2011)

長編映画デビュー作『マンボーグ』で、世界のB級映画ファンを驚愕させたコスタンスキ監督。熱烈なB級映画愛をこだわった映像で表現した映画は、堀貴秀が執念で完成させ世界に認められ、2021年劇場公開されヒットした『JUNK HEAD』(2017)に通じるものがあります。

短編オムニバス映画『ABC・オブ・デス2』のW「WISH 願い」は、『マンボーグ』に近いテイストの作品です。そして特殊メイクなどアーティストスタッフとして、ドラマ『ハンニバル』(2013~)や『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017)などに参加し、大作映画・ドラマで実績を積み重ねたコスタンスキ監督。

共同監督作『ザ・ヴォイド』は70~80年代B級映画愛にあふれた作品でした。同じ年に手掛けた監督作が『レプリコーン リターンズ』は、1993年の映画『レプリコーン』の直接の続編との設定で作られました。

『レプリコーン』には、ドラマ『フレンズ』(1994~)でブレイクする以前のジェニファー・アニストンが出演。おそらく彼女が絶対に思い出したくない映画ですが、そんな作品の続編を手掛けるのがコスタンスキ流です。

『ザ・ヴォイド』も『レプリコーン リターンズ』も面白い作品ですが、『マンボーグ』や『ABC・オブ・デス2』で描いてみせた世界観に近い作品こそ、『サイコ・ゴアマン』と言えるでしょう。

子供時代にトラウマを与えられた映画こそ、人を成長させる

参考映像:『サイコ・ゴアマン』スティーヴン・コスタンスキ監督インタビュー

『ABC・オブ・デス2』のW「WISH 願い」を見た方なら、本作がその発展形であると同時に、それより明るく楽しい作品だと気付いたはず。W「WISH 願い」は、実にブラックな作品です

そして本作に影響を与えた作品として、『ロウヘッド・レックス』(1986)を挙げた監督。この映画はホラー小説家クライヴ・バーカーが原作で、封印を破り復活した太古の魔物が人々を襲う、本作と同じコンセプトを持つ作品です。

ちなみに『ロウヘッド・レックス』の出来の悪さにクライヴ・バーカーは失望し、次回作は自分で監督する!と撮った映画があの『ヘル・レイザー』(1987)。コスタンスキ監督がいかにB級、いやC~Z級映画のファンであるかお判り頂けましたか?

今回ニタ=ジョゼ・ハンナやオーウェン・マイヤーといった、子供たちと共にゴア映画を作り上げた監督。彼は少年時代に様々な映画を見て育ったとインタビューで話しています。

そんな子供の頃見た映画の中に、成長と共に語りかけてくる映画がある。そんな映画の1つが最初見た時はトラウマになった『ターミネーター2』(1991)であり、振り返ればそれは良い体験だと語りました。

子供時代に見た全ての映画は大人向けのものだった。それはトラウマになると同時に、私の想像の中で何かをかき立てるのに役立った、と話すコスタンスキ監督

この言葉に多くのB級映画ファンは同意するでしょう。ゲーム好きだった監督は、9歳の時に劇場で『モータル・コンバット』(1995)を見た。子供の私がゲームのキャラクターが大画面で動くのを目撃したのは、超越的な体験だったと振り返っています。

そんな子供の頃、大好きだったタイプの映画を撮りたかった。それが『サイコ・ゴアマン』だと説明した監督。この映画は悪趣味に留まらず、大人の中の子供心をくすぐる、実に夢のある映画とも言えます。

まとめ


(C)2020 Crazy Ball Inc.

日本人なら「東映不思議コメディーシリーズ」を鑑賞するノリで見るべき映画。ですが主人公の少女は『美少女仮面ポワトリン』に程遠い根性悪で、しかも映画は血塗れという痛快な作品である『サイコ・ゴアマン』。

あらすじでは紹介できなかった、シュールでえげつないシーンも数々登場、そして最終決戦の行方は!と見どころは実に盛りだくさん。良い意味で気をラクにして、ゆる~い気持ちでお楽しみ下さい。

ところで公の場で、9歳の時に映画館で『モータル・コンバット』を見たと公言しているスティーヴン・コスタンスキ監督。1995年版の『モータル・コンバット』はアメリカではPG-13指定でした(監督の故国カナダでは地域により差があります)。

『サイコ・ゴアマン』に与えられた“PG”の呼び名と、本作が子供目線を意識しつつ残虐シーンを追求した背景に、このようなこだわりがありました。

もっとも本作、カナダでは18A(18歳未満は大人の同伴が必要、地域により差有り)指定で、アメリカではレイティングを求めずにNot Rated扱いです。

しかし監督の狙い通り(?)、めでたくPG12指定となった日本。この国は最も『サイコ・ゴアマン』を受け入れ、支持した国かもしれません。

『サイコ・ゴアマン』は2021年7月30日(金)シネマート新宿ほかロードショー!





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