映画『キングダム2 遥かなる大地』を原作漫画から紐解く!
古代中国を舞台に、群雄割拠の戦国時代を“天下の大将軍”を目指し駆け抜ける主人公・信の活躍を描く、原泰久による大人気漫画『キングダム』。
2019年に初の実写映画が公開され、大ヒットを記録。2022年7月15日(金)には待望の続編となる映画『キングダム2 遥かなる大地』が公開されます。
遂に戦場へと赴く信。そこには想像を絶する戦いと、かけがえのない仲間たちとの出会い、そして信の運命を変える邂逅が描かれる『キングダム2 遥かなる大地』。
本記事では、『キングダム2 遥かなる大地』にて実写映画化される原作漫画のエピソード「蛇甘平原編」の魅力を、ネタバレ要素を交えながら解説・紹介していきます。
CONTENTS
映画『キングダム2 遥かなる大地へ』作品情報
2022年(日本映画)
【原作】
原泰久『キングダム』(集英社)
【監督】
佐藤信介
【脚本】
黒岩勉、原泰久
【音楽】
やまだ豊
【主題歌】
Mr.Children『生きろ』
【キャスト】
山崎賢人、吉沢亮、橋本環奈、清野菜名、満島真之介、岡山天音、三浦貴大、濱津隆之、真壁刀義、山本千尋、豊川悦司、高嶋政宏、要潤、加藤雅也、高橋努、渋川清彦、平山祐介、玉木宏、小澤征悦、佐藤浩市、大沢たかお
【作品概要】
原泰久原作の人気漫画を実写化した2019年公開の映画『キングダム』の続編。監督は前作に引き続き、実写化作品に定評のある佐藤信介監督。
主演の山崎賢人をはじめ、吉沢亮、橋本環奈らが再集結。また実写映画では本作が初登場となり、原作漫画でも高い人気を誇るキャラクター・羌瘣を清野菜名が演じることでも話題になりました。
漫画『キングダム』「蛇甘平原編」のあらすじ
この蛇甘平原編の大きな見どころといえば、信が初陣を飾り”戦場”を経験するという点に尽きるでしょう。
直前のエピソード「王都奪還編」も凄惨な戦いの連続ではありましたが、「蛇甘平原編」以降に繰り広げられていく戦場での激戦と比較すると、少数同士の小競り合いであったと言わざるをえません。
また「物語の展開」と側面でみても、次々と現れる強敵を倒していくというスタンスで物語が進んでゆき、“個”の武力の優位性が強く影響していたのが「王都奪還編」ともいえます。
しかし「蛇甘平原編」では、大軍対大軍の戦いを描く中で、「“個”の武力がいくら優れていても、戦況自体の変化はどうにもならない」という戦場の在り方を、信は身をもって体感します。
「蛇甘平原編」の冒頭、戦場に到着する前から着々と状況が悪化していく様を見せつけられる場面も、それを象徴する場面の一つでしょう。
そして騎馬戦車という兵器に対峙し、信が“個”の力で太刀打ちできないことを察した上で、“集”の力を駆使して勝利する場面も、これまでと勝手が違う“戦場”を信が意識する重要な場面であるといえます。
縛虎申に見る“将”の生き様
信たちの伍が編入された軍を率いる千人将・縛虎申(ばくこしん)。
彼は信たち歩兵を“物”のように扱い、「勝利のためにはいかなる犠牲をいとわない」という思想を持つ苛烈で冷酷な人物でした。
それゆえ劇中、多大な兵を犠牲にする縛虎申に対し、同じく千人将を務め「王都奪還編」では信とともに戦った壁(へき)は、自ら助けに赴こうとします。
しかし縛虎申は、壁に「お前は歩兵を助けに来たのか? 魏に勝利しに来たのか?」という趣旨の言葉を問いかける場面が原作漫画では描かれます。
前述の縛虎申の「いかなる犠牲をいとわない」という思想を最も現したセリフであるとともに、彼の考える“犠牲”には常に“勝利”が前提にあることが察せられます。
事実、劇中での縛虎申は、決して自分の持ち場の勝利に固執しているわけではなく、戦場全体の勝利のためには自身の持ち場が最も重要であることを熟知した上で行動しています。
また上官である麃公への絶対の信頼から、自身の命を犠牲にしてでも、自身の持ち場での勝利を成し遂げさえすれば、全体の勝利へとつなげてくれると信じていました。そして己の信念を体現するかのように、縛虎申は自分の命と引き換えに魏軍の副将を討ち取ります。
この縛虎申の戦いを、ひょんなことから傍らで一部始終見ることとなった信は、その“生き様”から“将”の在り方を感じ取ることになります。
また縛虎申は、信に対し「“勇猛”と“無謀”をはき違えてはならない」という言葉も遺しており、信にとって縛虎申は大きな存在の一人といえるのではないでしょうか。
信に影響を与える二人の“大将軍”
そして「蛇甘平原編」では、秦国の大将軍が二人登場します。
一人は、「王都奪還編」でも多大な存在感を発揮していた王騎。そしてもう一人は、蛇甘平原での戦いで秦軍を率いる麃公。いずれも秦国を代表する大将軍です。
信は期せずして、この二人の“大将軍”から薫陶を受けることになります。
後の物語でも、信にとって重要な役割を果たす王騎と麃公は、当時の信が漠然と抱いていた“天下の大将軍”のイメージを現実的なものへ変換する役割を担います。
王騎は信との会話で「戦は武将次第」という趣旨のセリフを口にします。
このセリフは一見、前述の「“個”ではどうにもならない“集”の争いが戦」と矛盾するようですが、王騎はその現実をふまえた上で「軍という“集”を彩るの、は武将という強烈な“個”である」と語ります。
この、“個”と“集”の密接なかかわりが“軍”となり、より強固な“軍”が勝利すると語る王騎は、だからこそ「結局、武将次第」と口にします。
信はこの言葉により、武将に求められるものを感覚的に理解し、自分が目指す“天下の大将軍”のビジョンを明確にしていきます。
一方の麃公は、その戦い方で信に影響を与えます。
後に頻繁に語られ、漫画『キングダム』において重要な要素となる“本能型”と“知略型”と呼ばれる二つの武将のタイプ。その最たる“本能型”である麃公を目にした信は、“武将の戦い方”を体感します。
物語が進んでゆくにつれ自身も“本能型”として覚醒する信にとって、この麃公の戦いを目にしたことは非常に重要な出来事です。
これらを王騎と麃公から身をもって学ぶ信にとって、「蛇甘平原編」は後の物語の展開へと強く影響を与えた戦いであり、信にとっては鮮烈に記憶に残る初陣であったといえるでしょう。
まとめ
です。
初めて目にする戦場。信の成長のきっかけを与える王騎と麃公の存在。そして、後のかけがえのない仲間たちとの出会い。これらすべてが、信の壮大な夢への第一歩となります。
そして「蛇甘平原編」を基に、映画『キングダム2 遥かなる大地』がどのように描かれるのか、楽しみでなりません。
映画『キングダム2 遥かなる大地』は、2022年7月15日(金)公開!