マーベル・コミック『ブレイド』の実写映画化シリーズ第1作目。
スティーヴン・ノリントンが監督を務めた、1998年製作(1999年日本公開)のアメリカのホラーアクション映画『ブレイド』。
人間とヴァンパイアの血をひくヴァンパイア・ハンターが、己の忌まわしい運命を呪いながらも、世界制覇を目論むヴァンパイアたちを抹殺する使命に燃える姿とは、具体的にどんな内容だったのでしょうか。
母を殺したヴァンパイアへの復讐を誓うヴァンパイア・ハンターが、人間とヴァンパイアの血を受け継ぐダークヒーローとして活躍していく、ウェズリー・スナイプス主演映画『ブレイド』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
映画『ブレイド』の作品情報
【日本公開】
1999年(アメリカ映画)
【原作】
マーヴ・ウォルフマン、ジーン・コーラン『ブレイド』
【監督】
スティーヴン・ノリントン
【キャスト】
ウェズリー・スナイプス、スティーヴン・ドーフ、クリス・クリストファーソン、ウンブッシュ・ライト、ドナル・ローグ、ウド・キア、アーリー・ジョヴァー、トレイシー・ローズ、ケヴィン・パトリック・ウォールズ、ティム・ギニー、サナ・レイサン、ケニー・ジョンソン、エリック・エドワーズ、シャノン・リー、エミリー・ハースト、ドナ・ウォン、カルメン・トーマス、ジャドソン・アーニー・スコット、アール
【作品概要】
『デスマシーン』(1994)や『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』(2003)のスティーヴン・ノリントンが監督を務めた、アメリカのPG-12指定のアクションホラー作品。
原作は、マーヴ・ウォルフマンとジーン・コーランのマーベル・コミック刊行のアメリカン・コミック作品『ブレイド』。主演を務めるのは、『ホワイトハウスの陰謀』(1997)や「ブレイド」シリーズ、『デトネーター』(2006)などに出演しているウェズリー・スナイプスです。
映画『ブレイド』のあらすじとネタバレ
この世界には人間の他に、闇に蠢く者「吸血鬼(ヴァンパイア)」が暮らしていました。ヴァンパイアたちは人間と共存するため、人間社会と協定を結び、人間社会に隠れて、数千年の時を生き長らえてきました。
そんなある日、人間を支配し世界制覇を目論む1人のヴァンパイアが、臨月の黒人女性に襲いかかりました。
首を咬まれてしまった女性は、帝王切開で男児を出産。この時の子供ブレイドは、母親がヴァンパイアに咬まれたことが原因で、半分人間で半分ヴァンパイアという、混血児(ハーフ)として生まれました。
母親の死後、ブレイドは師であり親代わりであり、ヴァンパイアたちを狩る者「ヴァンパイア・ハンター」の仲間であるウィスラーの指導のもと、母親を死に追いやったヴァンパイアを抹殺するための技術を教え鍛えあげます。
やがて、「Day Walker(昼歩く者)」とヴァンパイアたちに恐れられるほどに成長したブレイドは、フロストへの復讐のため、彼が率いるヴァンパイア一味のクインを捕らえ、銀の杭で壁に磔にしたまま焼き殺しました。
しかし、検視にまわされた焼死体のクインは突如起き上がり、そばにいた検視官カーティス・ウェッブの首に咬みつき殺害。つづいて彼の元恋人であり、血液学を専門とする黒人の女医カレン・ジェンソンの首に咬みつきます。
そこへ再びブレイドが現れ、クインにとどめを刺すべく、まず右腕を銀の仕込み剣で斬り落としました。しかしそこへ、ブレイドをクインの仲間かと勘違いした警備員が乱入。ブレイドが彼らに気を取られている隙に、クインは病院から逃走してしまうのです。
ブレイドはそれを追いかけようとしましたが、こちらに助けを求めるカレンを見て、自分の母親と重なって見えたのでしょう。ブレイドはカレンを連れて病院から脱出してウィスラーがいる隠れ家に戻り、カレンを助けてほしいと頼みます。
一方、生粋のヴァンパイア「純血種」でありそのリーダー、ドラゴネッティは身勝手な行動をするフロストに警告していました。
「我々は人間社会と協定を結び、人間に隠れながらひっそりと暮らすことで、この数千年の時を生き長らえてきた」「人間から変身したヴァンパイアであるお前が、このまま身勝手な行動を続けていけば、政治家どもは我々を殺しにかかってくる」
「だからこれ以上、ブレイドとの面倒ごとを増やすな」………フロストはドラゴネッティの警告に聞く耳を持たず、彼にこう訴えました。
「人間は俺たちヴァンパイアの獲物だ。だからひっそりと人間から隠れて生きるのではなく、俺たちが人間を支配するべきなんだ」
翌朝。ブレイドはウィスラーに、ヴァンパイアが嫌うニンニク入りの血清を注入してもらい、自らの体内に流れるヴァンパイアの血を抑制します。
ウィスラーが注入した血清によって、同じくヴァンパイアへの変身を食い止めたカレンは、ブレイドたちの隠れ家で目を覚まし、その光景を目にしました。
ウィスラーに見つかってしまい、思わず逃げ出すカレン。しかし、すぐに2人に捕まってしまい、ウィスラーからヴァンパイアについて教えてもらいます。
ヴァンパイアは銀を激しく嫌い、ニンニクもショックを起こすほど苦手で、日の光や紫外線にも弱いこと。ただ映画などでヴァンパイア対策として描かれている十字架は、実際にはあまり効力がないこと。
そして、ブレイドとウィスラーは対ヴァンパイア用の武器を作り、ヴァンパイアたちを抹殺するヴァンパイア・ハンターであること。
そう話すウィスラーは、カレンに硝酸銀とニンニク入りのスプレーを渡し、ヴァンパイアに命を狙われている彼女に忠告をします。
「地下鉄にもバーにも、一般人には見分けがつかないだろうが、ヴァンパイアは潜んでいる。警察は奴らの手先だ」
「これともう一つ、銃を買うことを勧める。もし日光に敏感になったり、いくら水を飲んでも喉が渇くようになったりしたら、その買った銃で自決した方が良い」
銀の弾丸入りの銃と仕込み剣、銀の杭と飛び道具、強力な紫外線を照射するライトを持って、ブレイドは再びヴァンパイア狩りへと向かいます。またブレイドはカレンを自宅近くまで車で送り届け、その場を立ち去ります。
ブレイドと別れたカレンは、自宅への帰り道で、奇妙な絵文字がうなじに刻まれた男女2人組と遭遇。ヴァンパイアかと警戒するカレンは逃げるように帰宅し、荷物をまとめて自宅から離れようとします。
しかしそこへ、突如警察官のクリーガー巡査が現れ、カレンはヴァンパイアの手先である彼に襲われてしまいます。
カレンが咄嗟にスプレーを噴きかけると、怯むクリーガー。そこへ先ほど別れたはずのブレイドが音もなく現れ、彼を痛めつけながら、カレンにこう言います。
「警察はヴァンパイアを崇拝しており、奴らに忠誠を尽くすことでヴァンパイアにしてもらえる」「このうなじに彫られた絵文字は、奴らの家畜である証である刻印。他の物が血を吸えば、その家畜を所有している者と決闘になる」
「こいつの所有者はフロスト、俺たちが追っている男だ」………そう話すブレイドとカレンは、クリーガーが運転するパトカーのトランクに入っていた血液パックを見て、クリーガーがヴァンパイアたちに血を運ぶ途中であったと推理。
「乱暴はしないで」とカレンがブレイドを止めている隙に、尋問されかけたクリーガーは街の喧騒に紛れて逃走しました。
やがて日は暮れ、ヴァンパイアたちが活動する夜となります。クリーガーがパトカーに戻ってきたのを見計らって、ブレイドたちは車で彼の尾行を開始。クリーガーが血を運んだ場所……ヴァンパイアの印が刻まれたナイトクラブを見つけ、武器を持って乗り込んでいきます。
その印が刻まれた場所の近くに、ヴァンパイアたちが夜明けに身を隠す隠れ家があると、カレンに話すブレイド。
彼の目的はあくまでも、隠れ家の入り口を知っていそうなクリーガー。それを邪魔するヴァンパイアたちを倒しながらも、ブレイドはクリーガーに尋問します。
その結果、クリーガーから隠れ家への入り口を聞き出したブレイドは、彼に「皆殺しにしてやる」とフロストへの伝言を託し、解放しました。
ブレイドはカレンと合流し、街の政治と経済の半分を支配するヴァンパイアたちの膨大な歴史の記録が保管されている、ヴァンパイアたちの隠れ家「暗黒院」の書庫室へ足を踏み入れました。
クリーガーにブレイドが来たと知らされたフロストは、彼の首に咬みつき殺害。そこにいたクインに、ブレイドを生け捕りにして来いと命じます。
その頃ブレイドは、書庫室の隅にいた巨漢のヴァンパイアであり、記録保管係のパールを発見。ブレイドたちはパールを拷問し、フロストに話していた「儀式」や「予言」の詳細を吐かせようとします。
その結果、古代の予言書『マルガの再臨』を解読したフロストは、12人の純血種の魂を生贄にヴァンパイアに崇められている伝説の神マグラを再臨させようとしていることが判明しました。
映画『ブレイド』の感想と評価
「半吸血鬼」ブレイドの葛藤と戦い
母親がブレイドをお腹に身籠った際、ヴァンパイアのフロストに襲われ咬まれたせいで、人間とヴァンパイアの血を宿す「半吸血鬼」として生まれたブレイド。
物語が始まって早々、対ヴァンパイア用の武器を巧みに使い、大勢のヴァンパイアたちを塵も残さず抹殺していく姿は、ヴァンパイアへの恐怖が吹き飛んでしまうくらい勇ましいものです。
ですがブレイドは、劇中でカレンに明かしていたように、人間でもヴァンパイアでもない存在であり、憎きヴァンパイアのように血に飢える自分に嫌悪するほど、内心では苦しんでいます。それは仲間であるウィスラーにも、行動を共にすることになったカレンにも、本当の意味での理解は得られません。
また己の運命に悩み苦しむ彼に追い打ちをかけるかのように、死んだはずの母親がヴァンパイアとして蘇っていたという衝撃的な事実が明かされます。
そしてカレンの血を得てヴァンパイアとして覚醒したブレイドが、自身の母親と戦う羽目になった場面では、「実の母親を本当は殺したくないのに、ヴァンパイアである以上殺さなくてはならない」と、ブレイドはこれまでで一番葛藤したことでしょう。
師であり親代わりでもあるウィスラーの死といい、母親がヴァンパイアで敵として現れることといい、次々と不運な出来事に見舞われるブレイドが内心悲しんでいるかもしれないと思うと、観ているこちらも辛く悲しくなってきます。
ブレイドの宿敵フロストの野望
ドラゴネッティたちのように生粋のヴァンパイアではなく、ヴァンパイアに咬まれて変身した元人間であったフロスト。彼は人間を家畜同然と考えており、人間を滅亡させ、世界を支配することを目論んでいます。
そのためにフロストは、ヴァンパイアに崇められている伝説の神マグラを再臨させ、その力を得ようと画策。そしてマグラを再臨させるための儀式に必要なものは、ドラゴネッティたち純血種12人の魂と、儀式の成否を決めるブレイドの血でした。
『マルガの再臨』を解読したフロストは、ブレイドの血を得るために隠れ家を襲いますが、実はそれ以前から彼を監視していたことが作中で明かされます。
フロストがブレイドの母親を襲い、「半吸血鬼」のブレイドが生まれたのは単なる偶然なのか、それとも儀式のためにわざと妊娠中の女性を狙ったのかなど、色々な考察ができて面白いです。
まとめ
人間とヴァンパイアの血をそれぞれにひくブレイドが、ヴァンパイア・ハンターとしてヴァンパイアを狩りつつ、母親を死に追いやった宿敵フロストを探す、アメリカのPG-12指定のホラーアクション作品でした。
本作の見どころは、ブレイドがヴァンパイア・ハンターとして活躍する様と、宿敵フロストと因縁の対決をする場面です。
フロストとその仲間がいる隠れ家には、フロストに殺されたはずのブレイドの母親がいて、ヴァンパイアとして蘇ったという驚きの真実。てっきりこのままウィスラーとブレイドが一緒にフロストに立ち向かうのかと思いきや、フロストとの最終決戦の目前で、ウィスラーがフロストたちに嬲り殺され自殺した場面に、最も衝撃を受けます。
またクインに咬み殺されたと思われたカーティスが、通常ヴァンパイアへ変身するはずがそうなれず、ゾンビ化してカレンと再会する場面は、驚きよりも恐怖が勝って悲鳴をあげそうになります。
そしてブレイドとカレンがそれぞれヴァンパイアたちと戦う場面は、とてもスリリングで大興奮間違いなしのアクションが繰り広げられますが、グロテスクな描写もあるので12歳未満の方の視聴は推奨できません。
ヴァンパイアを片っ端から抹殺し、最強の力を手に入れた宿敵との決戦に挑む、ヴァンパイア・ハンターの活躍を描いたホラーアクション作品が観たい人に、とてもオススメな作品です。