映画『ダークナイト ライジング』でバットマンの終焉が伝説となる。
『ダークナイト ライジング』は、クリストファー・ノーラン監督によるバットマン三部作「ダークナイトトリロジー」の最終章です。
「ダークナイトトリロジー」最終章にして、最大の危機がゴッサムシティを襲います。
復活を果たしたバットマンに立ちはだかる最大の強敵、ベイン、そしてバットマンが対峙する過去とは?
主演のクリスチャン・ベールに加えて、お馴染みの豪華メンバーが再集結。幾多の“過去”が絡み合い、“未来”へつながる、映画『ダークナイト ライジング』をご紹介します。
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CONTENTS
映画『ダークナイト ライジング』作品情報
(C)2012 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC
【公開】
2012年(アメリカ映画)
【原題】
The Dark Knight Rise
【監督】
クリストファー・ノーラン
【キャスト】
クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、アン・ハサウェイ、トム・ハーディ、マリオン・コティヤール、ジョセフ・ゴードン=レビット、モーガン・フリーマン、マシュー・モディーン、ベン・メンデルソーン、バーン・ゴーマン、アロン・モニ・アブトゥブール、ジュノー・テンプル、ダニエル・サンジャタ、クリス・エリス、トム・コンティ、ネスター・カーボネル、ブレット・カレン、エイダン・ギレン、リーアム・ニーソン、ジョシュ・ペンス、キリアン・マーフィ、ジョーイ・キング
【作品概要】
クリストファー・ノーラン監督によるバットマン三部作「ダークナイトトリロジー」の最終章。主演のクリスチャン・ベールに加え、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、ゲイリー・オールドマンらお馴染みの豪華メンバーが再集結。
新たなヒロイン、セリーナ役に『プラダを着た悪魔』(2006)などのアン・ハサウェイ、物語のカギを握る女性、ミリンダ役に「TAXi」シリーズのマリオン・コティヤールを起用しています。また、本作でベイン役 トム・ハーディ、ブレイク役 ジョセフ・ゴードン=レビットを務めた2人が『インセプション』(2010)に続きノーラン監督作品への出演で話題になりました。
前作『ダークナイト』(2008)から8年が経ち、バットマンを必要としなくなったゴッサムシティに現れたベインにより、ゴッサムは再び混沌と化します。長き沈黙を破り再び立ち上がるバットマンは、ゴッサムに平穏をもたらすことができるのでしょうか?
映画『ダークナイト ライジング』のあらすじとネタバレ
(C)2012 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC
ハービー・デントの死とともにバットマンが姿を消して8年が過ぎたゴッサムシティ。
デントの死後、制定した「デント法」により犯罪者は一掃され、ゴッサムは平和が守られていました。
デントの功績をたたえる式典でゴッサム市警本部長のゴードンは8年前の真実、デントの死の真相とバットマンの冤罪を晴らそうとしますが、混乱を恐れ公表しませんでした。
その頃、女泥棒のセリーナは公の場から姿を消したブルース・ウェイン=バットマンの屋敷に使用人を装い侵入します。
ブルースの部屋に忍び込み、指紋を盗み出そうとしたセリーナはブルースに見つかりました。ブルースはセリーナを捕まえようとしますが、逃げられてしまいます。
その頃、ゴッサム市警の新人警官、ブレイクは自身が育った孤児院の子供が下水道で死んでいたことを知らされました。
この時ブレイクはホームレスなど普通の仕事を得ることが難しい人々が、下水道で仕事をしていることを知ります。
この知らせを聞いたゴードンは捜査のため部下を連れ下水道に向かいます。
しかし、待ち伏せていた何者かに襲撃されて部下は全滅し、ゴードンも捕まってしまいますが、水路に逃げ込み、重傷を負いながらも難を逃れます。
その時、式典で話すはずだったデントの死の真相を記した原稿を落とし、ゴードンを襲った謎の男がこれを手に入れます。
ゴードンが傷を負い、病院に運ばれたことを知ったブルースは再びバットマンとして立ち上がる決意をします。
ブルースは自身の会社、ウェイン産業の社長でバットマンとしての協力者でもあるフォックスを訪ねます。そして、フォックスの協力でゴードンを襲った犯人がベインであることを突き止めます。
また、フォックスが開発した都市専用ヘリコプター通称「バット」を気に入り持ち帰りました。
セリーナはブルースの指紋を取引相手の男たちに引き渡します。
しかし、見返りに求めていた「クリーン・スレート」と呼ばれるプログラムを男たちは渡す気はなく、セリーナを殺そうとします。
それを見越していたセリーナは警察に通報しており、突入してきた警官と男たちの銃撃戦の混乱に乗じ逃げ出します。
ベインは部下とともに証券取引所を襲。駆け付けた警察が包囲しますが、人質を盾に逃走します。人質がいるため手が出せない警察の前にバットマンが現れます。
バットマンは人質を解放しますが、ベインらを逃がしてしまいます。
翌日、ブルースは訪ねてきたフォックスから自分が無茶な株取引で破産したことを知ります。
身に覚えのないブルースですが、セリーナが盗んだ指紋から、前日のベインによる証券取引所襲撃から2人を使い裏で糸を引いている人物がいることを感じます。
フォックスはウェイン産業役員のダゲットがブルースの破産後、筆頭株主になろうとしていることを話します。
裏社会とのつながりが噂されるダゲットにかつて開発していた小型核融合炉を悪用されることを恐れたブルースは、役員のミランダが新会長に就任できるよう、フォックスに根回しさせます。
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映画『ダークナイト ライジング』の感想と評価
(C)2012 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC
なぜバットマンは“沈黙”から“復活”を果たしたのか
本作『ダークナイト ライジング』は前作『ダークナイト』から8年の月日が経過しています。
なぜバットマンは8年もの間、“沈黙”を貫いたのでしょうか?
一つはゴッサムが“バットマン”という存在を必要としていなかったからではないでしょうか。
前作『ダークナイト』の後、制定した「デント法」により、ゴッサムは刑務所に収監した犯罪者の仮出所を認めず、結果、犯罪は激減しています。
このことにより“バットマン”という犯罪者に対する抑止力が必要なくなりました。
また、『ダークナイト』でバットマンはデント殺害の容疑を自ら被って、ジョーカーの思惑通りに事が進まないようにしました。
これでゴッサム市民はバットマンを“英雄”デントを殺した“犯罪者”と認識しているため、市民がバットマンを求めることはなくなりました。
結果だけを言うならば、『ダークナイト』において、ブルースが思い描いた、“バットマン”による犯罪の抑止ではなく“法”によるい統治だったのかもしれません。
もう一つはブルースの最愛の女性、レイチェルの死です。
前述のとおり、ゴッサムはバットマンを必要としていませんでしたが、本作において、ベインの出現により事態がゴッサム市警の手に負えなくなりつつあるときに、ブレイクの働きかけによりブルースは“沈黙”を破る決意をします。
ここで考えられるのがレイチェルの死後、ブルースは戦う意思を失っていたのではないかということです。
バットマンが必要されなかったとして、いつ、ベインのような存在が出現するか分からないわけですから、戦う意思があるのなら、常に戦いに備えており、すぐに対応できたはずです。
そうしなかったのはレイチェルの死による失意から立ち上がれなかったからでしょう。
仮にバットマンとして戦うことをやめたとしても、ブルース・ウェインとして、公の場に出続けたはずです。
このことから、レイチェルの死はブルース=バットマンの心に大きな影を落としていたことがわかります。
では、逆にバットマンはなぜ“復活”したのでしょうか?
そのきっかけとなったのが、セリーナとの出会いが考えられます。
ブルースは本人の意思とはかかわらず、未だゴッサムシティに大きな影響を与える権力を持っており、セリーナにより盗まれたブルースの指紋は悪用されかねません。
それを防ぐため、ブルースは行動を開始します。この時点ではまだ、バットマンの“復活”に至っていませんが、一因になったのは明らかです。
また、ブルースがセリーナに興味を惹かれたことも大きいのではないでしょうか。
次にベインという強敵の存在です。
バットマン“復活”の直接的な要因はベインによりゴッサムの平和が脅かされていたことにあります。
前述のとおり、ブレイクによってもたらされた情報により、後にブルースはベインの存在を知り“復活”を決意します。
また、この時、ブレイクから再びバットマンを求める声があることを聞かされます。
この点から、失意に暮れていたブルースの中には「ゴッサムのため戦いたい」という思いが燻っていたのかもしれません。
その思いがベインの出現をきっかけに“復活”へと至ります。
この“沈黙”と“復活”に至る心境は矛盾しているように感じられますが、本来、人間には相反する感情を内包しているものです。
本作『ダークナイト ライジング』において、ブルース=バットマンの複雑な心境を描き、ヒーローも生身の人間であるということを表現しているように感じます。
バットマンの“死”と“継承”について
(C)2012 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC
アメリカンコミックにおいて王道のエンディングはヒーローの“死”とその意志の“継承”です。
本作でもバットマンの“死”と“継承”が描かれています。
本作を含む三部作「ダークナイトトリロジー」の一作目『バットマン ビギンズ』においてブルースは影の同盟で修練に励む中で“恐怖”に打ち勝つ術を学びます。
それゆえに“死”すら恐れない強靭な精神力でバットマンとして戦ってきました。ですが本作において、ブルースは再び“恐怖”と対峙します。
奈落で、囚人から言われた「死の恐怖を受け入れろ」という言葉に導かれ、脱出に成功し、“魂の強さ”を手に入れます。
この“魂の強さ”とは“死の恐怖”を感じ“生への渇望”を得て、より強い精神を手に入れることにあります。
これまでバットマンは前述のとおり、“死”を恐れない姿勢で戦ってきました。
これは幼少の頃、目の前で両親を殺されるきっかけを作ってしまったことに罪の意識を感じ、自らの命を軽んじていたからではないかと感じます。
また、ゴッサムのために戦ってきたバットマンですが、その理由の中に過去への贖罪の思いが強くあったのではないでしょうか。
このことから、“魂の強さ”を身に付けたバットマンは“過去の贖罪”ではなく“未来への希望”を胸に戦います。
ではなぜ、バットマンは“死”を受け入れたのでしょうか?
実際にブルースは生存していたわけですから、バットマンとして戦い続けることができたはずです。
その理由は、バットマンの意思を“継承”する人物が現れたからではないでしょうか?
本作の最後の場面でブレイクがブルースからウェイン邸の地下設備、バット・ケイブを譲り受けます。
彼の本名が「ロビン」であることが語られる場面でピンときた方も多くいたでしょうが、原作コミックスにおいてバットマンの相棒を務めるのが「ロビン」なのです。
こうしてブルースはゴッサムを守る役割、意志をブレイクに託した訳ですが、バットマンの意思を“継承”したのはブレイクだけではありません。
バットマンが持ち出した核爆弾が爆発する場面でその一部始終をを見ていた子供たちが映し出されますが、その様子が印象的でした。
バットマンは8年もの間、自ら汚名を被ることで人知れず街を守り通しました。
最後には命を顧みず、核爆弾を街から遠ざけたバッドマンの勇気ある行動は、子供達の瞳にもバットマンが成しえた“正義”として映っていたことでしょう。
他の市民たちにもバットマンの“正義”は伝わっています。その証拠にバットマンの銅像を建て、その功績を称え他のではないでしょうか。
ブルースはバットマンが残した“正義”を宿した市民ならどんな困難にでも打ち勝てると考え、ゴッサムには自分が必要ないと感じたのではないでしょうか。
たとえ、ゴッサム市民だけで乗り越えられない困難が生じたとしても、新たな“バットマン”が現れるのではないかとも思っているはずです。
なぜなら、ブルース=バットマンは「“バットマン”はこの街の正義の象徴でしかない」と語っていたからです。
まとめ
(C)2012 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC. AND LEGENDARY PICTURES FUNDING, LLC
クリストファー・ノーラン版バットマン『ダークナイトトリロジー』は、本作をもって完結しました。
これまでの過去2作、『バットマン ビギンズ』、『ダークナイト』はそれぞれで一つの物語が紡がれていましたが、本作はこれまでの2作品自体が本作の伏線であったかのように濃密に絡み合っています。
特にブルース=バットマンの心の葛藤において、乗り越えたはずの過去の出来事が再び心を苦しめる描写がたびたび見られました。
これには人が常に心のどこかで過去に囚われているということを表現しているように感じます。
ですが、作中でブルースは決して過去に屈することなく、未来への希望をもって何度も立ち上がりました。
これは何度、過去に囚われ、躓こうとも未来を信じて歩き出せるというメッセージが込められているように感じられました。
不安定な世の中、先行きが見えない未来だからこそ、バットマンは希望を信じて立ち上がることを私たちに伝えたかったのかもしれません。
そして、バットマンは人の抱える“闇”と向き合い、未来のため、これからも戦い続けていく事でしょう。