映画『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』は2019年6月21日より全国ロードショー公開
『アベンジャー/エンドゲーム』後の世界にして、アイアンマン=トニー・スターク亡き後の世界。
“親愛なる隣人”スパイダーマン=ピーター・パーカーが、アイアンマンの意志を受け継いでさらなる成長を遂げます!
新たなキャラクター・ミステリオの正体、ガールフレンドのMJとの恋の行方など、アクションとコメディの両面で多くの見所にあふれた本作。
MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)フェーズ3の最終作にして、新たな展開を見せる青春ヒーロー譚をご紹介します。
CONTENTS
映画『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』の作品情報
【日本公開】
2019年6月28日(アメリカ映画)
【原題】
Spider-Man: Far From Home
【監督】
ジョン・ワッツ
【キャスト】
トム・ホランド、サミュエル・L・ジャクソン、ゼンデイヤ、コビー・スマルダーズ、ジョン・ファヴロー、J・B・スムーヴ、ジェイコブ・バタロン、マーティン・スター、マリサ・トメイ、ジェイク・ギレンホール
【作品概要】
人気アメコミシリーズのマーベル・シネマティック・ユニバースのフェーズ3最終作。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』にて「アイアンマン」ことトニー・スタークがこの世を去った後の世界、残された若きヒーロー「スパイダーマン」ことピーター・パーカーの青春模様と成長が描かれます。
スパイダーマン役は、これまでに引き続きトム・ホランド。
その他にもサミュエル・L・ジャクソン、ゼンデイヤ、コビー・スマルダーズ、ジョン・ファヴロー、J・B・スムーヴ、ジェイコブ・バタロンなど最早お馴染みのキャストも出演しています。
そして本作から登場の新キャラクターである謎の男・ミステリオ役として名優ジェイク・ギレンホールが登場します。
映画『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』のあらすじとネタバレ
アベンジャーズがサノスと戦い、5年前にインフィニティストーンで消された人々を元に戻してから8ヶ月が経っていました。
S.H.I.E.L.D.S元長官のニック・フューリーと部下のマリア・ヒルは謎の災害に襲われたメキシコの街に訪れます。
そこで彼らは、意思を持って動く竜巻と、いきなり現れてその怪物と戦い始めるマントを纏った謎の男を目撃しました。
消えていた状態から復帰した「スパイダーマン」ことピーター・パーカーは、再び学校生活をエンジョイしていました。
親友のネッドも気になっている女子のMJもみんな消えていたため。まだ高校1年生です。
しかし、かつての戦いで命を落とした師匠である「アイアンマン」ことトニー・スタークの存在を事あるごとに思い出してしまい、ヒーローとしての活動は不調でした。
鋭敏な第六感のスパイダーセンスも、以前のように機能しなくなっていました。
ピーターはあるイベントにスパイダーマンとして参加した際、その舞台裏でトニーの親友だった運転手ハッピー・ホーガンに会い、ニック・フューリーから連絡が来ると言われます。
しかし、ヒーロー活動の招集だと思った彼はフューリーからの着信を無視していました。なぜなら翌日から夏休みが始まり、楽しみにしていた科学部での研究のためのヨーロッパ旅行が控えていたからです。
ピーターはその旅行中にMJと一気に接近し恋人になれるようネッドにも協力を求め、色々と画策していました。
行きの飛行機の中でもなんとかMJの隣に座ろうとしますが、計画は裏目に出てしまい、MJはバスケ部のイケメン・ブレッドと隣になってしまいピーターはヤキモキしていました。
おまけにネッドは飛行機で隣になったクラスの女子ベティと短時間で恋仲になっており、2人で旅行を楽しみだします。
ピーターはこの旅行にスパイダースーツは持って来なかったのですが、アタッシュケースを開けるとメイおばさんが勝手にスーツを入れていたことに気づき、彼はウンザリしてしまいます。
まずは憧れの水の都・ベネチアにやってきて観光を楽しむ一同。
ピーターはMJにプレゼントするブラックダリアの形を模したブローチを買いますが、肝心の彼女はずっとブレットと過ごしていました。
チャンスを伺っていたその時、突然運河の中から巨大な人の形をした水の塊が飛び出してきて街を破壊し始めました。
スーツを所持していなかったピーターはみんなを逃がしながらこっそり戦いますが、ウェブシューターは水をすり抜けてしまい効果がありません。
するとそこに、マントを羽織り、球体のマスクをかぶった男が出現。魔術のような力を使って水の怪物を倒します。一方、ピーターは倒壊しそうな建物を糸で補強して人々を守るのが精一杯でした。
その夜、謎のマスクの男はニュースで話題になり、イタリア語で“謎の男”という意味である“ミステリオ”と呼ばれ始めました。
ピーターはメイおばさんのオフィスに電話しますが、なぜかそこにハッピーがおり困惑。ハッピーはメイおばさんと親密になり始めていたのです。
その後、ピーターはネッドと旅行中のヒーロー活動をどうすべきか話しながらホテルの部屋までやって来ましたが、突然ネッドが麻酔銃によって倒れてしまいます。
部屋にはニック・フューリーが待ち構えていました。
フューリーは無視を決め込んでいたピーターを咎めた後で、町のはずれにある隠れ家へと連れて行きます。そこにはエージェントたちと一緒に、昼間に怪物と戦っていたマントの男“ミステリオ”がいました。
彼の名はクエンティン・ベック。アベンジャーズとサノスの戦いにおいて異次元の扉を開いた時にやって来た男であり、別次元の地球に生きていた戦士だといいます。
ベックの住んでいた地球は水・火・風・土・空の五大元素が意思を持って暴走した怪物“エレメンタルズ”に滅ぼされ、彼はそれを追ってこちらの世界にやってきたのでした。
ベックは紳士的な男で、ピーターはすぐに彼のことを信頼し始めます。
エレメンタルズのほとんどはべックが軒並み倒していましたが、火のエレメンタルズがまだ残っていました。
次の出現予測地点はチェコ・プラハでしたが、旅行の行き先はパリであったため、ピーターはフューリーたちへの同行を拒みます。
旅行を楽しみたいし、あくまで”親愛なる隣人”でしかない自分には敵が手に余ると主張するピーター。
しかし、翌朝になるとフューリーの手引きにより、旅行の行き先がプラハに変わっていました。
ピーターはバスの運転手になり済ましたフューリーの部下からあるものを受け取ります。それは、トニー・スタークがピーターのために遺したというサングラスでした。
それはただのサングラスではなくイーディスという人工知能が搭載されており、全世界のネットワークシステムにアクセスすることで、グラス部分に他の同級生が使っているスマホの画面を映すこともできる程の代物でした。
バスが休憩所に停まった際、ピーターはとある個室に案内されます。そこでピーターは、普段のスパイダースーツだと同級生達に不審がられるからと用意してもらった新スーツを渡されました。
その場で着るように言われるピーターですが相手が女性エージェントだったため、恥ずかしがりつつ脱ぎ始めます。
しかし、その現場にブレットが入ってきて写真を撮られてしまいました。
ピーターが現地女性と如何わしい事をしようとしてるようにしか見えないその写真を、ブレットはMJに見せるといいます。彼もMJを好きになり、ピーターのことを敵視していたのでした。
バスに戻ったピーターは、サングラスでブレットがMJに写真を送ろうとしているのを見て、焦ってイーディスにブレットを止めるように指示します。
しかし、言葉足らずな指示をしてしまったため、イーディスはスタークインダストリーズの衛星から攻撃用のドローンを呼び寄せてブレットを殺害しようとし、ピーターは焦りつつもみんなにバレないようになんとかドローンを撃墜しました。
せっかくのトニーからの贈り物をくだらないことに使ってしまい、落ち込むピーター。
プラハについた途端、フューリーから今夜エレメンタルズが現れると告げられたピーターは、同級生たちを巻き込まないために急遽オペラ鑑賞の予定を入れさせて、みんなを屋内から出さないように手配します。
しかし、MJはピーターが会場を出ていくのを見て不審に思っていました。またネッドとベティも、プラハのカーニバルを楽しもうと会場を抜け出してしまいます。
カーニバル真っ只中、広場に火のエレメンタルズが現れて暴れ始め、ミステリオは必死に戦います。
ピーターは新しく用意してもらった黒いスーツで参戦しますが、ネッドとベティが広場の観覧車に取り残されているのを見て彼らを助け出しました。
その間にミステリオはエレメンタルズを退治。ミステリオと黒いスパイダーマンはニュースで”ナイトモンキー”と呼ばれ話題になります。
フューリーはまだ脅威が残っている可能性があるからとピーターに今後の同行を求めますが、ピーターは旅行を抜けたくないので断ります。
フューリーはわがままを言うピーターに怒り、イーディスを渡した途端同級生を殺そうとしたことも含めて、まだ未熟だと厳しい言葉をぶつけました。
その後、落ち込んでいるピーターをベックは酒場に連れていき慰めます。
ヒーローとして悩むピーターに対し、君の本音は何だと聞くベック。それに対し、ピーターは「旅行を続けてMJに告白したい」と本音を語りました。
ピーターは、アイアンマンの後継者はベックのような経験豊富な大人がなるべきだと思い、トニーのサングラスを彼に渡します。
MJに思いを伝えると張り切るピーターをベックは優しく見守っていました。しかし彼が店を出ていった直後、ベックは高笑いを始めました。
映画『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』感想と評価
『アベンジャーズ/エンドゲーム』でアイアンマンを始めとする初代アベンジャーズの物語が見事に完結してからわずか2ヶ月足らずで『スパイダーマン』の新作が出るということで、多くの観客はいかにスパイダーマン=ピーター・パーカーがアイアンマン=トニー・スタークの魂を受け継ぐのかという点に注目していたことでしょう。
たしかにそういう話ではありますが、この映画は予想以上に衝撃的な展開を迎え、そして観客とスパイダーマンの気持ちをシンクロさせてきました。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』を見たあとは「もうこのまま終わりでいいかな…」と余韻に浸っていましたが、本作を見た後は続きが気になって仕方ありません。
ミステリオというメタ的で小さな悪役
『アベンジャーズ/エンドゲーム』の悪役サノスが独自の正義感と信念を持って行動する多面的な悪役だったのに対し、本作の悪役・ミステリオ=クエンティン・ベックの目的はあくまでも復讐と自己顕示欲を満たすことだけで非常に矮小な悪役として描かれています。
しかし、本作は発展途上なピーター・パーカーが悩むMCUの中でも規模が小さい物語の映画なので、敵のスケール感としても適正でしょう。
純朴なピーターを翻弄する老獪な大人として、ジェイク・ギレンホールがいつものように見事な下衆な演技を見せてくれます。
また彼も、トニー・スタークの影を追っている存在として、ある種ピーターの合わせ鏡のようにも見えます。
どうすればアイアンマンのようなヒーローになれるのか悩むピーターに対し、ミステリオは表面だけをなぞって文字通り「幻影でそう見えさえすればいいんだ」という安直な答えを見せてくる上に、「個人の幸せを優先していいんだ」と彼を誘惑します。
この敵はピーターが乗り越えるべき弱い自分を顕在化させたようなキャラであり、最後は彼自身がはっきりとNOを突きつけます。
またミステリオが操るホログラムは、そのままCGで作られてきたフィクションであるMCUの歴代作品にも重なります。
これは「単に見た目や言動を模倣するだけでなく、自分たちの魂を込める」という今後のMCUの作り手たちの矜持を示しているのかもしれません。
やはり故スタン・リーがくり返し描いてきた「ヒーローに一番必要なのは能力でも見た目でもなく心だ」というテーマを今後もマーベルスタジオは大事にしてくれるようです。
アイアンマンからの継承
本作の肝であるピーターのトニー・スタークからの魂の継承という部分を象徴しているのが、ハッピーから後押しをされてピーターが自分のスパイダースーツを作り出す場面です。
ここでハッピーはトニーの代わりはいないから自分を貫けということを言うのですが、その彼を演じているのがMCUの記念すべき一作目『アイアンマン』の監督だったジョン・ファブロー。
まさしく役柄としても演じてる本人としても最もアイアンマンを知り尽くしている男が、ピーターをその呪縛から解放するという多層的な場面になっています。
そして、気持ちが吹っ切れたピーターがスーツを作り始めた時にかかる曲は『アイアンマン』冒頭でトニーが聞いていたお気に入りの曲「Back in black」(AC/DC)。
歌詞の内容も「私は戻ってきた、そうだ戻ってきた」「霊柩車は必要ない。私は死なないから」とはっきりトニーの魂が戻ってきたことが提示されており、シリーズのファンは涙なしでは見られません。
まとめ
真面目な部分ばかり語ってきましたが、本作ははっきりコメディに振り切っているのも見所です。
『スパイダーマン:ホーム・カミング』から続投している若手俳優たちも成長し、ちょっとした掛け合いで笑いを掻っ攫います。
そして、『アベンジャーズ/エンドゲーム』後に「いきなり消えた人が現れたらどうなるんだろう」「5年のブランクは?」と思っていた観客の疑問にもギャグとして答えてくれるので、冒頭から爆笑の連続でした。
また甘酸っぱいラブロマンスやヨーロッパの様々な名所めぐり、局面ごとに変わるスパイダースーツなど飽きさせないサービス精神に溢れています。
そして悪役に勝ったと思ったら、終盤のまさかの展開でピーターは大ピンチに陥って映画はそのまま終わります。
その結末は「ああ、MCUはこれからも続いてくれるんだな」と安心させてくれるものでもあるため、いろんな意味で『アベンジャーズ/エンドゲーム』直後に作る意義のあった作品です。
ちなみにエンドロール後、長年のスパイダーマン映画を見てきた人には歓喜&爆笑の、ある人物が出てくるので必見です。