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Entry 2019/06/26
Update

細野辰興の連載小説 戯作評伝【スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~】④

  • Writer :
  • 細野辰興

細野辰興の連載小説
戯作評伝【スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~】(2019年6月下旬掲載)

【細野辰興の連載小説】『スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~』の一覧はこちら

第一章「舞台『スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~』は失敗作だったのか」

第二節「一枚のポスター」其の弐

これまでの『スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~』一覧はこちら

 「良く見てみろ。オカシイところが有るとは思わんか、このポスター。」

『スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~』の劇中、演出家である鬼迫哲が取り出したポスターに謎を掛けられ、思わず若き日の中村錦之助と高倉健を凝視した登場人物たち。

と、サスペンスが動き始めた処で「続く」になってしまったのを受け、快刀乱麻にポスターの謎を解いて行きたいのは山々なれど、亦、校正のことで新たな問題が勃発してしまった。

今回は、「戯曲の書式」だ。

戯曲や脚本の「シーン」の出だしは「柱」(はしら)と呼び、次の様に書く。

〇 東映京都撮影所の入り口(昼)

上の様に、「〇」の後ろに「話」が展開する場所や昼夜の時間が示してある「柱」を書き終えると、
次は、「行」を何文字か下げ、「場所の状況」や「人物の動き」を現す「ト書き」(とがき)が始まる。

〇 東映京都撮影所の入り口(昼)
   時代劇の衣装を着けた大部屋さんたちが、昼
   食を食べに行ったり、戻って来たりで賑やか
   している。

上の様に、通常「ト書き」は頭から二文字ないし三文字下げることになっている。「作者」である細野辰興監督の場合は三文字下げている。

 処が、校正されて来たゲラは「ト書き」の頭揃えがバラバラで繋がっていなかったのだ。新しく校正担当になったと云う河合君に問い糺すと、Cinemarcheで使用しているワープロソフトだと頭揃えが出来ない、と泣き出されてしまった。

泣きたいのは私も同じで、実は、昨年の10月連載開始時の「縦書きor横書き事件」どころではない大問題なのだ。

と云うのは、戯曲や脚本の書式の問題は、この道40年の映画人である細野辰興監督にとっては間違いなく矜持の問題に波及する惧れがあるからに他ならない。

何より、細野辰興監督は、若い頃から脚本の書式を現役の脚本家たちから徹底的に扱かれて来ていた。
「横浜放送映画専門学院」で云えば、日本映画学校を経て日本映画大学にまで継承されている「二百枚シナリオ」と云う名物授業がカリキュラムに組み込まれていた。

脚本家、監督志望なら言わずもがな、撮影、照明、録音、美術、編集、記録、メイクなどの匠を目差す者全員が長編シナリオを執筆しなければならない「荒行」だ。
この執筆指導、添削を通して若き日の細野辰興監督は、馬場当、富田義郎、今村昌平と云う松竹大船撮影所出身の名脚本家の方々から脚本創作の薫陶を受けて来たのだ。
 書式に必要以上に五月蠅くても何の不思議もない。

兎に角、「作者」である細野辰興監督の目に入る前に直して欲しいッ、編集部のワープロソフトを替えれば済む話だ。河合君の涙に負けじと受話器を額に擦り付けて懇願し、対処して貰った。

 処が、「眠たい眼編集長」の出町氏が昨年の10月以来に登場したことから、事態は新たな方向に動き出した。
「PC用に書式を整えるよりスマフォやiPhone用で書式を統一した方が良いんですよ〜」
と何時もながらの眠たい様な眼で、しかし断言した。今やPCで読む人よりスマフォで読む人の方が多いらしいのだ。

「PC仕様」から「スマフォ仕様」、そして「iPhone仕様」と二転三転。新人の河合君と編集部の方々の奮闘努力の甲斐あって、どうやらPCでもスマフォでも、何よりiPhoneでも統一された書式で見られる体裁にはなった。

「横書き」とは言え、何とか「戯曲の書式」を死守することが出来、今回も首の皮が繋がり胸を撫で下ろした次第。
『【語り手】はつらいよ』と云った処か。

 と云う訳で、話を『スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~』の舞台に戻そう。


©︎東映

「良く見てみろ。オカシイところが有るとは思わんか、このポスター。」
『日本俠客伝』公開当時のポスターを前に鬼迫から挑発された登場人物たちが、ポスターを凝視した処から再開したい。

◯ 小劇場・舞台上
   中央から上手には芝居小屋の楽屋の装置、下
   手には喫茶店ルノワールの会議室が装置され
   ている。
   三々五々、会議室に座っている一同。
   ポスターを凝視し、一向に答えに気付かぬま
   ま時間が流れる。
清水「あ、高倉健が主演だと言っていましたが…」
鬼迫「言っていましたが、って『日本俠客伝』観て
 いないのか?!」
清水「健さんが任俠映画に主演していたことさえ知
 りませんでしたので。」
鬼迫「任俠映画ではないッ、ヤクザ映画だッ。」
一同「エエ!?」
鬼迫「で、言っていましたが、何なんだ?」
清水「ポスターの俳優さんたちのバランスが変じゃ
 ないですか?」
壽々子「あ、言われてみればそうね。健さんよりも
 こっちの人の方が真ん中の良いポジションに収
 まっているし、一段高いところに立っているし、
 表情も素敵。」
鬼迫「こっちの人の方って、名前知らないのか? 
 この人が有名な中村錦之助だ!」
清水「ナカムラキンノスケって誰ですか?」
寿々子「中村錦之助って、…何言っているわけ! 
 先月も歌舞伎座に行って来たけど錦之助ってこん
 な格好良くなかったわよ。第一、もっとオジサン
 だったし。」
鬼迫「初代・中村錦之助だッ。」
和田「後の萬屋錦之介ですッ。テレビ時代劇『破
 れ傘 刀舟』や『子連れ狼』で有名な。」
稲田「中村獅童の叔父さんと言えば判るのかねえ」
   和田、俄かに刀舟に成り切り、
和田「やかましいやッ、この野郎! 手前ぇらは、
 人間じゃねえッ、叩き斬ってやる!」
   向井も拝一刀に成り切り、
向井「大五郎。父が一命を賭して幼いお前に伝える
 水鴎流斬馬刀の奥義、心して見ておくが良い
 ッ。」
清水「水を差すようですが、『子連れ狼』は何と
 言っても若山富三郎先生ですッ。」
向井「なんで、若山富三郎は知っている訳?」
和田「へッ、そっちは映画で6本、萬屋錦之介さん
 の方はテレビで3年間に亘り80本以上作られた
 のよ。」
向井「揉めたんだよね~、映画版とテレビ版で。テ
 レビでも拝一刀を演じたかった若山先生が怒っ
 ちゃって。」
和田「萬屋と胴太貫で真剣勝負して決めるッ、っ
 て。間に入った勝新太郎が真っ青に成ったっ
 て。」
清水「カツシンタロウって?」
   日野が初めて呆れ顔で言葉を発する。
日野「若山富三郎は知ってても、勝新は知らないの
 かい!?」
   清水、スマホで調べ、
清水「…あゝ、弟さんでしたか。」
   ズッコケル一同。
清水「(意に介さず)ドウタヌキ、って?」
和田「刀よ、馬の胴体も一刀両断出来るッて云うく
 らいの凄い刀なのよ。その胴太貫を萬屋錦之介が
 鮮やかに」
   鬼迫、行き成り立ち上がると和田の頬を激し
   く張る。
   驚愕し仰け反る一同。
鬼迫「仏の顔も三度ッ。お前は萬屋錦之介と云う名
 を三回半、口にした。二度と俺の目の前で萬屋錦
 之介と云う名を口にするなアッ。」
和田「う、迂闊でしたッ。」
   と素直に従う。
壽々子「何、殴られて素直に従ってるのよ。このコ
 ンプライアンスを重視過ぎる世の中にパワハラ丸
 出しの平手打ち。絶対に許せるものではない
 わッ。」
鬼迫「そう無理やり舞台に社会性を持ち込もうとす
 るなって。作品がチープに成る。第一、創作のプ
 ロセスにはコンプライアンスも糞も存在しないん
 だからッ。」
壽々子「時代錯誤も甚だし過ぎない? 第一、萬屋
 錦之介と中村錦之助って同じ人なんでしょう?」
鬼迫「嫌なら出て行けッ。萬屋錦之介と中村錦之助
 が同じ俳優だと云う輩も出て行けッ。」
   鬼迫の剣幕に白ける一同。
飯尾「(気にせず)あ、判った!? 判ってしまい
 ました! トップ・タイトルが高倉健ではない
 ぞ、このポスター。」
壽々子「(も気づき)そう、トップタイトルが健さ
 んじゃないじゃない!! あら、嫌だ。中村錦之
 助、高倉健の順番で書いてある。」
和田「ピンポン!」
皆「ホントだ」
鬼迫「・・・」
   皆の視線を浴びる『日本俠客伝』のポスタ
   ー。
   ──高倉健の上に威風堂々と記されているト
     ップタイトルの「中村錦之助」の名前。
清水「確認しますが、この映画の主演は間違いなく
 高倉健さんなのですね?」
和田「言わずもがなよ。」
飯尾「で、中村錦之助さんは特別出演なんです
 ね?」
和田「最高のオーラでした!」
清水「では何故、健さんより錦之助さんの方がポス
 ターのポジションは良いし、トップタイトルなん
 ですか?」
寿々子「そうよ、私がお慕いする田宮二郎さんなん
 てポスターの名前の順列を永田ラッパに抗議して
 大映を馘になったぐらいなんだから、名前の順列
 配置は大切なのよ」
清水「…タミヤジロウって」
一同「(黙殺)…」
飯尾「それより、ナガタラッパって、誰?」
稲田「呆れた人ねェ、アンタが『スタニスラフス
 キー探偵団』で演じ続けている法螺プロデュー
 サーのことじゃないのッ。」
飯尾「エエ!?」
清水「飯尾さん、知らないで演じていたんです
 か!?」
飯尾「清水にだけは言われたくないけど」
尾形「何が、スタニスラフスキー探偵団だよッ。」
飯尾「尾形さんは知っていたんですか? 妖しいも
 んですよ。」
   少し睨み合う尾形と飯尾。
和田「法螺プロデューサーは、否、永田雅一は、田
 宮二郎さんを馘にしただけでなく五社協定で他の
 映画会社の作品に出演させなくしたんですッ。」
飯尾「顔は、斬られなかったの?」
和田「そこまでは、流石に時代が違いますから。」
清水「あのう、話が東映から大映に変わっているん
 ですが。」
鬼迫「まあ、東映はこの手のことは良くやるけど
 な。」
向井「この手のこと、とは?」
鬼迫「ポスターや本編の出演者の名前の順番を主
 演、助演に拘らず平気で入れ替えることさ」
   皆、一斉に鬼迫を注視する。

 誤解されると困るのだが、劇中のこのポスターは実際の『日本俠客伝』のポスターであって、架空の、否、中村錦之助が主演を断る前に作成した先行ポスターなどではない。そんな物は存在しない。高倉健が主演し、中村錦之助が特別出演して完成された作品の公開時のポスターであることは間違いない。
 では、何故、特別出演だった中村錦之助の名前が「留め」ではなくトップタイトルに…。「特別出演」のクレジットもなく。これでは、映画を観るまでは誰でもが中村錦之助主演の作品だと思ってしまうのではないか。

現に当時のキネマ旬報の『日本俠客伝』紹介記事を見てもあくまでも中村錦之助がトップ・タイトルであり、紹介写真も中村錦之助と三田佳子の共演シーンが使用されている始末だ。

何故、こう云うことに成ったのか。

疑問に答えるには、当時の中村錦之助と高倉健の映画界でのポジションと、東映と云う映画会社の体質の話に触れなければならない。

だが、そのことは一旦、置いておきたい。

 日頃、細野監督は、
「映画、演劇は冒頭の15分間で決まるッ。」と豪語しているが、ここまでの冒頭部分を見て来てどう感じられただろうか。

否、15分間には未だ少し足らないので、もう少し舞台を紹介しておかなければならない。

◯ 小劇場(続き)
   鬼迫、皆の視線をモノともせず、 
鬼迫「(清水に)さっきのビデオ」
清水「ちょっと待って下さいッ。」
   とカバンからビデオを取り出す。
鬼迫「再生して」
向井「(ビデオパッケージを見て)『博徒対テキ
 屋』! 昭和39年12月24日公開、主演、鶴田浩
 二。監督、小沢茂弘ッ。」
和田「『博徒』の監督、主演コンビじゃないです
 か!?」
清水「『バクト』って?」
和田「時代劇を撮り続けて来た東映京都撮影所で初
 めて製作されたヤクザ映画ッ。」
   そこまで殆ど話に入って来なかった南千草が
   口を挟む。
千草「公開当日、何故かエプロンを手にした大勢の
 主婦たちが「ヤクザ映画反対」「深夜映画反対」
 と映画館に押し寄せたと云う曰く付きの作品ね」
   客席方向にスクリーンが在る積りで観る一
   同。
和田「やっぱり荒波に三角マークは昔の方が全然、
 良いですよねェ!!」
一同「おお!!」
   暫く魅入る一同。
一同「え?」
鬼迫「止めろ!」
   ビデオを止める清水。
飯山「…片岡千恵蔵って誰?」
向井「片岡千恵蔵がトップタイトル!?」
和田「鶴田浩二が二番目!?」
清水「だから、鶴田浩二って誰なんです?」
和田「(鬼迫に)もうッ、殴って下さい!!」

 『日本俠客伝』が公開された昭和39年の12月末、中村錦之助の好敵手で「錦橋時代」を築いたとも言われた大川橋蔵主演の時代劇『黒の盗賊』(監督・井上梅次 脚本・結束信二/宮川一郎/井上梅次)と二本立てで正月映画として公開された鶴田浩二主演の『博徒対テキ屋』。この作品でも同じ「出演者タイトル順列変更現象」を見て取ることが出来る。

 『前語り』では「大きな嘘」「小さな嘘」を紹介するために多羅尾伴内としてピストルまで持って登場して頂いた片岡千恵蔵は、阪東妻三郎や長谷川一夫と並ぶ戦前からのトップスターであり、映画ファンで知らぬ者は「潜り」と斬り捨てられても文句を言えない程の存在だった。戦後は市川右太衛門たちと大映に所属していたが、社長の永田雅一が時代劇俳優としてのプライドを傷つける不用意な発言をしたことから袂を分かった。
間髪おかずに「日本映画の父」と謳われる牧野省三の次男でプロデューサーのマキノ光雄に請われ東横映画に移り、東映設立に拘る。

爾来重役スターとして市川右太衛門と並んで東映を支えて来た大物だ。

中村錦之助が『笛吹童子』(`54 4月公開 監督・萩原遼 脚本・小川正)で東映デビューする以前からの大スターだったのだ。

 10月に東京オリンピックが開かれた昭和39年(1964年)は、「時代劇の東映」がヤクザ映画に大きくシフト・チェンジを始めた年であり、千恵蔵と右太衛門両御大の主演映画は激減。
千恵蔵の出演作は、前年の昭和38年が東映東京撮影所製作のオールスター大作『ギャング忠臣蔵』(10月公開 監督・小沢茂弘 脚本・松浦健郎)と集団時代劇の傑作『十三人の刺客』(12月公開 監督・工藤栄一 脚本・池上金男)。
そして昭和39年は、『日本俠客伝』と同時上映された『御金蔵破り』(8月公開 監督・石井輝男 脚本・野上竜男/石井輝男)と『博徒対テキ屋』のみだった。


©︎東映

 蛇足だが、『ギャング忠臣蔵』は、企画当初は前後篇で完結する筈だったが、不入りの為、続篇は製作中止となった。
勿論、年間観客動員数が全盛期の半分以下の5億1千万人に落ち込んでいた背景が第一の要因ではあった。しかし、東京オリンピック開催を一年後に控えて沸く日本にギャングたちの「忠臣蔵」では荒唐無稽が過ぎたのかも知れない。

重役スター主演で高倉健、鶴田浩二、佐久間良子と云う東映現代劇のオール・スターを揃えた作品でさえ、不入りなら一週間で打ち切るのが東映だった。
 しかし、同時上映だった『次郎長三国志』(監督・マキノ雅弘 脚本・マキノ雅弘/山内鉄也 主演・鶴田浩二)は、不入りだったにも拘わらず何故か『甲州路殴り込み』(`65 8月公開)まで4本が作られている。後の3本も当然、ヒットしなかったのにも拘らずにだ。

このことから読み解けることに関しては、別の章で詳しく述べることにしたい。

更に蛇足だが、一週間で打ち切られたり、続篇が製作中止になったりしたものの、『ギャング忠臣蔵』は平成の終わりにはレアな作品へと昇華、ビデオに超高値が付いているのだから世の中は面白い。
ブレイク前の高倉健が浅野内匠頭役で出演していることや、パロディ忠臣蔵として、何より「討ち入り」がない「未完の忠臣蔵」として価値が付加されたのだろうか。

 とまれ、『博徒対テキ屋』の主演は明らかに鶴田浩二だった。

昭和35年後半、東宝から東映に移籍して三年目の昭和38年3月に東京撮影所で製作されたヤクザ映画『人生劇場 飛車角』(監督・沢島忠 原作・尾崎士郎 脚本・直居欽哉)とその続篇が予想外にヒットし、東映の本拠地である太秦初のヤクザ映画となった『博徒』もヒット、漸く人気復活の兆しが見え始めていた時代の鶴田浩二だった。

『日本俠客伝』での高倉健の扱いとは違い、ポスターもトップタイトルは鶴田浩二だったのだ。
それが何故、本編のトップタイトルが片岡千恵蔵に成ったのだろう。

この辺りの出鱈目さが東映と云う映画会社の面白い処なのだが、謎解きは『日本俠客伝』同様、次回に譲りたい。

 さて、第二節で初めて紹介した舞台『スタニスラフスキー探偵団〜日本俠客伝・外伝〜』。未だ入口だが明らかに映画『貌斬りKAOKIRI~』の構成を踏まえていることが見て取れる。『スタニスラフスキー探偵団』に出演する俳優たちの話。所謂、バックステージ物としての構成だ。
『スタニスラフスキー探偵団』を映画化する時に細野監督が考え出した構成だが、今回は舞台にも持ち込んだのだ。

それが功を奏したのか、裏目に出たのか。

時のトップスター中村錦之助が、『日本俠客伝』前後に抱えていたアーティストとしての苦悩に、細野監督がどの様に「創作」として挑んで行ったのか。

 次回では映画監督・風間重兵衛が活躍する劇中舞台『スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~』に更に踏み込んで行くことにもなるだろう。

【この節】続く

【細野辰興の連載小説】『スタニスラフスキー探偵団~日本俠客伝・外伝~』の一覧はこちら

*この小説に登場する個人名、作品名、企業名などは実在のものとは一切関係がありません。作家による創作物の表現の一つであり、フィクションの読み物としてご留意いただきお楽しみください。

細野辰興のプロフィール


©︎Cinemarche

細野辰興(ほそのたつおき)映画監督

神奈川県出身。今村プロダクション映像企画、ディレクターズ・カンパニーで助監督として、今村昌平、長谷川和彦、相米慎二、根岸吉太郎の4監督に師事。

1991年『激走 トラッカー伝説』で監督デビューの後、1996年に伝説的傑作『シャブ極道』を発表。キネマ旬報ベストテン等各種ベストテンと主演・役所広司の主演男優賞各賞独占と、センセーションを巻き起こしました。

2006年に行なわれた日本映画監督協会創立70周年記念式典において『シャブ極道』は大島渚監督『愛のコリーダ』、鈴木清順監督『殺しの烙印』、若松孝二監督『天使の恍惚』と共に「映画史に名を残す問題作」として特別上映されました。

その後も『竜二 Forever』『燃ゆるとき』等、骨太な作品をコンスタントに発表。 2012年『私の叔父さん』(連城三紀彦原作)では『竜二 Forever』の高橋克典を再び主演に迎え、純愛映画として高い評価を得ます。

2016年には初めての監督&プロデュースで『貌斬り KAOKIRI~戯曲【スタニスラフスキー探偵団】より』。舞台と映画を融合させる多重構造に挑んだ野心作として話題を呼びました。


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