王(キング)の覚醒。
2014年に公開された前作『GODZILLA ゴジラ』から5年。
映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』が、2019年5月31日より全国ロードショー。
ゴジラに続き、ラドン、モスラといった「東宝三大怪獣」に加え、最大最凶の敵・キングギドラをハリウッドが映像化。史上空前の戦いを繰り広げます。
CONTENTS
映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の作品情報
【公開】
2019年5月31日(アメリカ映画)
【原題】
Godzilla:King of the Monsters
【監督】
マイケル・ドハティ
【キャスト】
カイル・チャンドラー、べラ・ファーミガ、ミリー・ボビー・ブラウン、ブラッドリー・ウィットフォード、サリー・ホーキンス、チャールズ・ダンス、トーマス・ミドルディッチ、オシェア・ジャクソン・Jr、渡辺謙、チャン・ツィイー
【作品概要】
監督を『スーパーマン リターンズ』『X-MEN:アポカリプス』を手がけたマイケル・ドハティが担当。
主演には『ウルフ・オブ・ウォールストリート』『ファースト・マン』などで知られるカイル・チャンドラーが務めたほか、前作『GODZILLA ゴジラ』からの続投である渡辺謙、本作から参加したチャン・ツィイーも出演しています。
最大最凶の敵・キングギドラの復活に立ち向かうゴジラ。モスラやラドンも登場し、世界は再び蹂躙されてしまうのでしょうか?
2019年、ゴジラ生誕65周年という節目の年に、ハリウッドで製作された世界最大級の怪獣バトルが繰り広げられれます。
映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』あらすじとネタバレ
中国・雲南省の山奥でモスラが卵から孵化。監視していた特別研究機関「モナーク」の職員たちはモスラを拘束しようとしますが、何者かにシステムを掌握されていました。
興奮して暴れるモスラを古代生物学者・エマは自身の開発した装置「オルカ」を使用します。怪獣たちが共通して発する音波を下に合成した音源を「オルカ」によって鳴らし、彼女はモスラを落ち着かせることに成功します。
しかし、突如現れた武装集団にエマと彼女の娘・マディソンは連れさらわれてしまいます。
その後、コロラドで暮らす動物学者・マークの前にモナークの生物学者・芹沢が現れ、彼の元妻であるエマと娘・マディソンが何者かに連れさらわれたことを聞かされます。
マークはオルカの試作品にあたる装置を開発しており、オルカを探し出すことが出来ると考えた芹沢は彼に協力を要請します。オルカを取り戻したい芹沢と家族を助けたいマークは協力することになりました。
バミューダ海峡にあるモナークの基地「キャッスル・ブラボー」に招かれたマークはそこでゴジラと遭遇します。
ゴジラを監視していたモナークの職員たちも様子の違うゴジラを不審に思っており、ゴジラが南極に向かっていることを突き止めます。
その頃、南極にあるモナークの基地を武装集団が襲撃。そこで休眠中であった怪獣「モンスター・ゼロ」を武装集団のリーダー・ジョナは目覚めさせようとしていました。
ジョナは自然回帰主義を掲げ、文明社会を怪獣たちを利用して破壊するために「オルカ」を所持するエマを誘拐したのです。
2019年ハリウッド版ゴジラVS日本版ゴジラ!演出・描写比較
ゴジラ
前作『GODZILLA ゴジラ』から引き続き登場する、本作の「主役」怪獣。
本作におけるゴジラと日本版ゴジラとの違いをご紹介します。
放射熱線及びそれに関わる表現
ゴジラの最大の武器、放射熱線は日本版と同様に青色で表現され、発射される前に背びれが青く光る点も同じでした。
本作ではキングギドラに対して放射熱線を放つ際、末端の背びれから上の背びれにかけ段階的に発光して行き放つ様が描かれていますが、日本版においてそのような描写はありませんでした。
また、背びれの発光で威嚇をしたり、発光の強さそのものがゴジラ自身の生命力を測るバロメータとして観客にゴジラの様子を伝える演出がされていました。
全身が赤く発光するゴジラ
映画終盤でのキングギドラとの決戦では、ゴジラの体が赤く発光すると高熱を放ち、キングギドラを周囲の街ごと焼き尽くしました。
これは『ゴジラVSデストロイア』(1995)に登場したバーニングゴジラを意識したものではないかと考えられます。
バーニングゴジラは体内の核エネルギーが暴走したことで体がオレンジ色に発光し、本来青色のはずの放射熱線が赤色である上、体から発せられた高熱で周囲を焼き尽くす様も劇中では描かれており、本作の赤く発光するゴジラと酷似しています。
しかし、バーニングゴジラは最後には燃え尽き消滅してしまいましたが、本作でのゴジラは異常に高まった放射線を放出し尽くたのちに、通常の姿へと戻っていました。
ゴジラに対する人類の評価
本作ではゴジラに対する評価が二つに分かれおり、「ゴジラが活動することにより多大な被害が発生し、多くの人命が失われたことから、ゴジラを殲滅するべきだ」という世論がある一方、「ゴジラを生物として尊重し、共存する道を探すべきだ」と考える芹沢たちの意見が存在しました。
日本版になぞらえると、前者の考え方は徹底して「ゴジラは人類の敵だ」と考えるVSシリーズ(第16~22作)、ミレニアムシリーズ(第23~28作)と呼ばれるシリーズの設定観に近い考え方です。
また後者については、宇宙人からの侵略を防いだり、出現した怪獣による地球の危機を救ったり、人類と協力しながら危難を乗り越えた昭和シリーズ(第1作~15作)の設定観に近い考え方といえます。
そして本作の最後には、人類が怪獣たちと共に共存する様子が描かれています。
キングギドラ
本作にて初めてハリウッドで映像化されたキングギドラですが、日本ではゴジラ最大のライバル怪獣にして、ファンにとっておなじみの怪獣として知られています。
キングギドラの呼称について
初めはコードネームである「モンスター・ゼロ」で呼ばれていたキングギドラですが、この呼び方はシリーズ6作目『怪獣大戦争』(1965)で「X星人」と呼ばれる宇宙人たちが「怪物0」とキングギドラを呼称していたことにあやかっているようです。
また本作の字幕版では、名前が判明した以降は一貫して「ギドラ」と呼ばれるようになりますが、吹き替え版では他の怪獣から「王」として認められたことを機に「キングギドラ」と呼ばれるようになりました。
三つの頭の描写の違い
キングギドラといえば、三つの頭が最大の特徴です。
南極で目覚めた際には人間を食べようとする左の頭を中央の頭がいさめるシーンがあり、中央の頭がリーダーとして左右の頭を従えているようでした。また、メキシコ沖でゴジラと対決した際、左の頭が食いちぎられてしまいますが、すぐに再生していました。
いずれの描写も、日本版では存在しません。
ちなみに、頭を食いちぎられる描写自体は第18作『ゴジラVSキングギドラ』(1991)でも描かれています。その際は中央の頭が食いちぎられ一度は死んでしまいますが、23世紀に生きる未来人たちの技術によって機械の頭が取り付けられ、メカキングギドラとして復活します。
キングギドラの生態
一見すれば龍のような容姿を持つキングギドラですが、本作では爬虫類的な特徴が強調して描かれていました。
まず、初めてゴジラと対峙した際にキングギドラは威嚇をしますが、翼を丸める姿はエリマキトカゲ、尻尾をこすり合わせて音を出す仕草はガラガラヘビの威嚇を模しているようでした。
どちらも日本版のキングギドラには見られず、生物としてのリアリティある表現が追求されていました。
戦闘シーンの違い
本作でのキングギドラの攻撃手段はそれぞれの口から放たれる「引力光線」と呼ばれる電撃と、三つの頭による噛み付きなど、日本版の設定を周到しているものの異なる点も多く見られました。
特にクライマックスの決戦で見せた、変電所に噛み付いて電気を吸収し、引力光線を翼や尻尾の先から無差別に放つことで広範囲攻撃を行う姿は、日本版では見られないものでした。
また、ゴジラに噛み付くことで体内の放射能を吸い取る描写も見られましたが、こちらも日本版では描かれていません。さらに、自らの首を巻きつける攻撃は日本版でも存在するものの、本作ではゴジラの首をがっちりと絞めることで意識を奪う場面がありました。
モスラ
「東宝三大怪獣」と呼ばれる怪獣の一体であるモスラは、これまでのシリーズで出現する設定が何度か変わりましたが、一貫して「人類の味方」として描かれ続けてきた唯一の「ヒーロー怪獣」或いは「ヒロイン怪獣」として描かれており、本作でもその設定が継承されています。
容姿の違い
モスラは蛾をモチーフにした怪獣であり、シリーズ中でも卵→幼虫→成虫に変化する場面は数多く見られ、本作でもその場面が登場しています。
日本版におけるモスラの卵は、青と黄色が混ざったマーブル模様の硬質な殻に覆われていましたが、本作では不定形で軟質な昆虫の卵に近い姿をしていました。
幼虫形態については、日本版が巨大な芋虫のような容姿に対し、本作では甲虫のような硬い殻で体表が覆われていました。また、腹部分が青白く発光しており、興奮した際は赤く発光していたのも印象的でした。
また成虫形態では、日本版よりも脚が長く、目の形も円形から半月形へと変更されており、より昆虫らしいデザインになっています。また、羽が青白く発光している所も日本版では見られませんでした。
戦闘シーンの違い
日本版のモスラは幼虫形態時には口から吐く糸で相手の動きを封じたり、成虫形態時には触手から発する光線で攻撃したりしています。
本作でも幼虫形態時に糸を吐く点は同じでしたが、成虫形態時にも糸を吐いてキングギドラの動きを封じる姿が描かれていました。
また、光線を放つ場面はなく、その代わりに鋭く尖った脚での攻撃や、ラドンを倒す際に使用したお尻に隠したハチのようなでの針での攻撃など日本版では見られない攻撃手段が登場しました。
ラドン
ラドンもまた「東宝三大怪獣」の一体であり、プテラノドンがモチーフの怪獣にして高速飛行が持ち味の怪獣です。
出現場所について
日本版ラドンは『空の怪獣 ラドン』(1956)及び『三大怪獣 地球最大の決戦』(1964年)に登場し、熊本県・阿蘇山から出現しています。
本作ではその設定を踏襲し、スペインのイスラ・デ・マーラ島内にある火山から出現しています。
容姿について
ラドンはプテラノドンをモチーフにしており、長いくちばし、頭のトサカが特徴的な怪獣です。
本作では日本版ラドンには見られない鋭い歯や、両翼に存在する三本の爪など、プテラノドン以外の特徴を取り入れているのが分かります。
また、翼の表面には溶岩が流れているかのような赤い光が幾つも走っており、「火山に生息する生物」という日本版からの設定をより深めていました。
戦闘シーンについて
本作では、ラドンが自身を取り囲む戦闘機を旋回行動によってしならせた翼で叩き落としてゆく場面が印象的で、この表現は日本版では見られていません。
また、戦闘機を足の爪で鷲掴みにする場面がありますが、その攻撃手段は『空の怪獣 ラドン』でも同様の場面がありました。
日本版からの影響
劇中で使用されたBGM
ゴジラが登場する時に流れたBGMは『ゴジラのテーマ』のアレンジ楽曲が使用されています。
また、モスラ(成虫形態)が登場した際には同じく『モスラの歌』のアレンジ楽曲が流れており、BGMからもシリーズへの敬意がうかがえました。
オキシジェン・デストロイヤー
劇中、メキシコ沖で戦うゴジラとキングギドラの双方を抹殺しようとし米軍が投入した新兵器がオキシジェン・デストロイヤーですが、シリーズ第1作『ゴジラ』(1954)でゴジラを抹殺するための兵器として登場します。
周囲の酸素をすべて破壊、生物が生きられない状況を作り出す点は同じ。また爆発した際に緑色の光を発している点は、『ゴジラVSデストロイア』(1995)にてオキシジェン・デストロイヤーの溶液が緑色として描かれていた事に由来しているのではないかと考えられます。
また、『ゴジラ』の登場人物でありオキシジェン・デストロイヤーを開発した芹沢大介博士と、同作の監督を務めた本多猪四郎は、渡辺謙演じる「芹沢猪四郎」博士のモチーフおよびネーミングの由来となっています。
アイリーン・チェン、アイリーン・リン姉妹
チャン・ツィイー演じる双子の姉妹で二人とも考古学者であり、チェンは芹沢と共に行動し、リンは繭になったモスラが成虫になり飛び立っていくのを見守っていました。
日本版モスラでは人の容姿をした双子の妖精が登場し「小美人」「コスモス」「アリエス姉妹」と名称は異なりますが、モスラと意思疎通が可能で行動をともにしています。
チェンとリンの姉妹もモスラから何かを感じ取っている場面が表現されており、日本版における双子の妖精の存在に影響を受けていると考えられます。
坂野義光、中島春雄の存在
本作のエンドロールの最後には、いずれも2017年にこの世を去った坂野義光と中島春雄の名前が紹介されています。
坂野は『ゴジラ対へドラ』(1971)で監督を務め、前作『GODZILLA ゴジラ』でもエグゼクティブプロディーサーとして参加。本作の制作に関わっていました。
また中島は初代ゴジラのスーツアクターとして知られ、「ミスター・ゴジラ」として国内外に知られていました。
映画『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』の感想と評価
本作ではゴジラに引き続き、キングギドラ、モスラ、ラドンがハリウッドで映像化され、大迫力のバトルを繰り広げていました。
日本版とは異なり、CGを駆使し表現された怪獣達は生物として描くことが意識されており、しなやかに動くラドンの翼や風にはためくモスラの羽、くねくねと動くキングギドラの首など、リアルな「怪獣」を表現していました。
また、本作は怪獣同士の戦いが見どころではあるのですが、世界の危機に立ち向かう人類の奮闘も描かれています。
特に、自らの命を顧みずマディソンを探し走り回るマークの二度と家族を失うものかと言う意思、思いの強さに「父親の強さ」を感じ、胸を打たれました。
まとめ
最大の強敵、キングギドラを撃破したゴジラですが、作品の最後でジョナがキングギドラの頭部を手に入れる場面がありました。
ジョナの企みが気になるところですが、エンディングでは『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)に登場した髑髏島で怪獣の活動が活発になっているという場面も描かれており、キングコングの再びの登場が示唆されています。
キングコングはなぜ、目覚めようとしているのか?そして、ゴジラはどうするのか?
この二人の直接対決を描く『ゴジラVSキングコング』は早くも2020年5月に公開が決定。日本からは小栗旬が参加することがアナウンスされています。
ゴジラとキングコングの対決の行方は?そして、ジョナの次なる企みは?
今後も、怪獣たちが活躍する「モンスター・バース」の世界は広がり続けていきそうです。