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【ネタバレ感想】『スーパーサイズミー』感想と結果。30日間ハンバーガーを食べ続けた男に待つものとは|だからドキュメンタリー映画は面白い14

  • Writer :
  • 松平光冬

連載コラム『だからドキュメンタリー映画は面白い』第14回

人間は、30日間ファストフードを食べ続けたら一体どうなる?世界中にセンセーショナルを巻き起こした、異色ドキュメンタリー!

『だからドキュメンタリー映画は面白い』第14回は、2004年公開の『スーパーサイズ・ミー』。

ハンバーガーが肥満の原因になるのかを証明すべく、監督のモーガン・スパーロック自ら、1か月間ファストフードだけを食べ続けるという実験生活を実践します。

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映画『スーパーサイズ・ミー』の作品情報


©2004 Kathbur Pictures Inc.

【日本公開】
2004年(アメリカ映画)

【原題】
SUPER SIZE ME

【監督】
モーガン・スパーロック

【キャスト】
モーガン・スパーロック、アレクサンドラ・ジェイミソン

【作品概要】
モーガン・スパーロック監督が自分自身を実験台に、1日3食をマクドナルドのファーストフードにするという生活を実践。

それによって人体にどんな影響があるかを、克明に映していく異色ドキュメンタリーです。

日に日に容貌が変化していくスパーロックが大きな話題を呼んだ本作は、アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にもノミネートされました。

映画『スーパーサイズ・ミー』のあらすじ


©2004 Kathbur Pictures Inc.

アメリカで、肥満症の10代女性2人が、その原因が大手ファストフードチェーンのマクドナルドにあるとして訴訟を起こしたというニュースが話題に。

判決として、肥満の原因はマクドナルドにあることは立証できないと退けられるも、少女側が毎日同じ食事を摂り続けることが危険だと示せるのならば、再提訴が可能であると言い渡されます。

そのニュースを見たCMディレクターのモーガン・スパーロックは、本当に肥満の原因はハンバーガーにあるのかを証明すべく、自分自身を実験台にし、1か月間ファストフードを食べる計画を行うことにしました。

モーガンは、医師や専門家にメディカルチェックをしてもらったのちに、いくつかのルールを自分に課して実験をスタート。

そのルールとは、「1日3食必ずマクドナルドを食べる」、「店員から『スーパーサイズ』と呼ばれる超特大メニューを勧められたら必ず食べる」、「1日の歩数をアメリカ国民の平均値である5000歩以下にする」など。

しかし、実験開始3日目にしていきなり体調を崩すスパーロック。

交際中のベジタリアンの彼女や医師が止めるも、実験をやり遂げようとするスパーロックを待つ結果とは如何に?

監督・主演のモーガン・スパーロックとは

監督・主演のモーガン・スパーロックは、元々はミュージックビデオやCM制作のディレクターとして活動。

本作『スーパーサイズ・ミー』で商業用映画デビューをはたして以降は、テレビ「モーガン・スパーロックの30デイズ」シリーズ(2005-08)や、映画『ビン・ラディンを探せ! スパーロックがテロ最前線に突撃!』(2008)といったドキュメンタリー企画を発表しています。

それ以外に、元々のミュージックビデオ制作の腕を活かし、人気バンド、ワン・ダイレクションの素顔に迫った『ワン・ダイレクション THIS IS US』(2013)も手がけています。

ファストフード・ジャンキー

実験開始初日こそ、「毎日マクドナルドが食べられるなんて、子供の頃の夢が叶ったみたいだ」と喜んでいたスパーロック。

ところが、3日目に初めてスーパーサイズに挑戦した彼は、一時間かけても食べきれず、ついには嘔吐してしまいます。

それでも実験を続けて5日目に診断してもらった彼の数値は、1日で約5000キロカロリーも摂取していました。

診断した医師も恋人のアレクサンドラも実験中止を促しますが、一度始めたことを途中で止める性格でないというスパーロックは、ひたすら食べ続けます。

すると、最初こそ食べるのに困難だったスーパーサイズも、平気で食べられるようになるほど胃袋が拡大。

その一方で、性格がイライラして集中力がなくなり、思考能力も落ちていきます。

しかし、イライラしてもマクドナルドに行ってビックマックとシェイクを口にすれば、心が落ち着くのです。

ファストフードが持つ中毒性を、スパーロックは身を持って実感します。

“肥満体国”アメリカの食生活事情も

スパーロックは、ハンバーガー以外のメニューも率先して食べます。

一見ヘルシーなヨーグルトやサラダですが、それらは甘口な上に、カロリーもハンバーガー以上あり、チキンナゲットに至っては、年老いた鶏の肉を小麦粉で固めたものと判明します。

実験をしながらも、スパーロックはアメリカの食生活事情について取材を敢行。

「子供たちの食生活を変えることが必要」としてこの実験に踏み切ったスパーロックは、いくつかの学校を訪ねます。

ある学校では、昼食としてフライドポテトや家から持ってきたお菓子を食べるほど荒んでいる一方で、健康食を取り入れたことで生徒の非行率が下がったという学校も。

しかし、健康食普及の背景には、食品会社の利益が最優先されているという実情もあったのです。

アメリカでは、肥満とされる人間が成人の3分の2も存在し、年間40万人以上が糖尿病や心臓麻痺で死亡しています(映画製作当時)。

それに付随するかのように、肥満治療やダイエットの最終手段として、脂肪吸引と胃袋縮小手術を受ける者が増加している現状も、本作では露わとします。

過酷な実験がもたらしたものとは

30日間のファストフード生活終了が近づいたスパーロックは、体重14キロ、体脂肪率は11パーセント、肝臓肥大、コレステロール値は危険域に入るなど、あらゆる面で増加してしまいます。

それに伴い、心臓病及び心不全のリスクも2倍となり、全ての数値を通常値に戻すまでに1年以上かかりました。

2004年にサンダンス映画祭で本作が公開されてから6週間後、マクドナルドがスーパーサイズの販売中止を発表するも、本作が中止の理由ではないとしています。

「『スーパーサイズ・ミー』を作ったのは、あらゆる点で効率性を重視し収益を上げようとする、『マクドナリゼーション』への問題提起をしたかったから」と語るスパーロック。

「マクドナリゼーション」の語源が何なのかは、言うまでもありません。

モーガン・スパーロックの「その後」

本作以降も、実験に基づいたドキュメンタリー企画を精力的に発表するスパーロック。

2005年開始のテレビドキュメンタリー「モーガン・スパーロックの30デイズ」シリーズでは、一人の人物を自分の信念と正反対の環境に30日間置き、考え方がどう変わっていくのかに密着。

キリスト教原理主義者の男性がイスラム教徒の家庭にホームステイした回では、アメリカで暮らすモスリムがいかに肩身の狭い思いをしているかを、男は身をもって体験。

また、不法移民を頑なに拒む国境警備員をメキシコからの不法移民一家に30日間住まわせた回では、不法入国の裏に、法律ではどうすることもできない政治や経済、何よりも人権問題が存在することを浮き彫りとするのです。

さらにスパーロックは2017年に、本作の続編にあたる『Super Size Me 2: Holy Chicken!(原題)』を発表。

スパーロック自身がチキンのファストフード店を限定オープンし、前作でも触れていた大手ファストフードチェーンの、チキン製品の開発の裏側に迫っています。

次回の「だからドキュメンタリー映画は面白い」は…

(C)Cable News Network. All rights reserved.

次回は、2019年5月10日から日本公開される『RBG 最強の85才』。

85歳(2019年3月で86歳)で現役の最高裁判所判事としてアメリカで広く知られる女性、通称“RBG”ことルース・ベイダー・ギンズバーグの軌跡をたどります。

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