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Entry 2019/03/31
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コリン・ファレル映画『ダンボ』主演ホルト役のインタビュー【ダンボの明快なビジョン】FILMINK-vol.5

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  • FILMINK

FILMINK-vol.5「Colin Farrell: Dumbo’s Clarity of Vision」

オーストラリアの映画サイト「FILMINK」が配信したコンテンツから「Cinemarche」が連携して海外の映画情報をお届けいたします。

©︎FILMINK

「FILMINK」から連載5弾としてピックアップしたのは、2019年3月29日(金)より全国公開されたティム・バートン監督『ダンボ』出演のコリン・ファレル

俳優コリン・ファレルの映画への関わり方をギル・プリングルのインタビューでご紹介します。

【連載レビュー】『FILMINK:list』記事一覧はこちら

ハリウッドきっての売れっ子

一時は遊び人として悪名高かったコリン・ファレルですが、今やハリウッドきっての多忙な人気俳優となり、ディズニーの名作アニメ『ダンボ』の実写化作品に出演しています。

ですが子ども向けの映画に出ているとはいえ、まだまだ彼の噛み付き癖は健在なようで…。

『ダンボ』におけるキャラクター

──あなたが演じたキャラクターについて教えてください。

コリン・ファレル:私が演じたのは復員兵の役です。物語が始まる4、5年前、彼は妻と4歳、5歳の 2人の子どもを残して、戦争の最前線へと旅立ちました。彼が戦地から戻ったら、妻は結核により既に亡くなっていて、子ども達はサーカス団によって育てられていました。

私が演じた役は戦地で左腕をなくしたため、肉体的に欠落してしまっています。そして感情的にも心理的にも、彼はかつての自分ではなくなって、戻ってきた世界も彼にとってはまるで別世界。父親としてのあり方も分からない。

自分自身を許し、喪失感と罪悪感を認めるというのが彼の旅なんです。この映画で彼が学んだのは、親になる方法を知らなくても大丈夫ということだと思います。自力で物事を考え成長してゆく子ども達を、ただそこにいて観察する。

ダンボは最初、サーカスの全員と私たちみんながどう受け止めたら良いかわからない存在として登場します。初めてダンボを目にした時は「なんだこいつ?」という印象を受け、サーカスの観客や、社会にも上手く受け入れられることのない存在であろうということがよく分かります。

ダニー・デヴィート演じるキャラクターが買ったのは、思い描いていたような可愛くて完璧な像の赤ちゃんではありません。しかし、映画の最初で障がいとなり、冷笑される原因となるようなものは、本当は素晴らしいもので、物語が進む中で各キャラクターの魂を呼び起こして行くんです。


©︎FILMINK

コリン・ファレルを驚嘆させたセット

──あなたはCGを駆使したブロックバスター作品に多く出演されていますが、『ダンボ』は少し違いますね。本作への出演はいかがでしたか?

コリン・ファレル:長年に渡って、芸術性豊かな作品に出会えたことは、とても幸運でした。『アレキサンダー』(2004)や『トータル・リコール』(2012)のセットは並外れて素晴らしいものでした。ですが、子ども心を呼び覚ますようなセットに入って行ったことは今まで無かったと思います。

『ダンボ』では、マイケル・キートンのキャラクターが統括する巨大なテーマパーク、“ドリームランド”のセットに入るところから始まりました。セットは、その昔ツェッペリン型飛行船や、長さ800フィートに高さ250フィートほどの気球が作られていた航空機の格納庫内に建設されていました。そこには約500フィートほどの木製の渡り板があって、その最後には大きなサーカスのテントがあったんです!

セットは3、4階立てで、すべてのライトはチカチカ瞬いて、ポップコーンスタンドも立っていて、400人のエキストラに約12頭の馬、20世紀初頭のフォードのモデルが8台、それからジャグリングやバランス感覚抜群の40人のパフォーマーたち…。

セットに入った瞬間「これはヤバいぞ」と思いましたよ。泣きそうなくらいに、それは本当に見事でした。数日のうちになんとか目は慣れたんですが、それほど素晴らしかったんです。

©︎FILMINK

今までの出演作との違いは

──あなたは近年TVドラマ『TRUE DETECTIVE/ロサンゼルス』(2015)や映画『ロブスター』(2015)、『聖なる鹿殺し』(2017)等に出演されました。どれも『ダンボ』とは非常に異なる作品ですが、どのように本作に繋がり、また他作品と比べてどのようにお考えですか?

コリン・ファレル:私がまたコカイン中毒のしょうもない警官を演じるかは分かりませんが…。どの出演作も、他の作品とは大きく異なります。『ロブスター』に出演した時、誰かに言われたんです。「これはあなたらしくない作品ですね」。だから私は「この作品はどの俳優にとっても“らしくない”ものですよ」そう思いました。

ヨルゴス・ランティモスは非凡な監督です。ヨルゴスはある意味、彼のビジョンにおいて類まれなる才能を発揮します。ティム(・バートン)は物語を紡ぐ上で、彼独自のやり方で視覚的にアプローチしていく才能があると感じます。それらは確かに、私にとって別のものです。でも『ダンボ』のテーマは非常に重大で痛みをもたらすもので、これはヨーロッパ的志向のインディペンデント作品に見られますよね。

親の死に向き合い、里親の元で育った子どもたちと向き合い、そして戦争で手足を失った男やもめを演じる。

つまり、ダンボが母親と引き離された時にあるのは強欲や虐待、家族の分裂といったテーマです。これらは非常に重いものですが、ティムが深堀りし過ぎないよう、独自のデザインとビジョンで描いています。だからこそテーマが尊重された映画になりました。これは大人だけが楽しむものではなく、子ども達に向けた作品だから。それは実に素晴らしいことです。

ティムは重いテーマでも敬遠せず、子ども達が付いて行けないような方法で提示することはありません。子ども自身が、何が起こっているのかを理解しようとすることに価値があるから。

それと、私は自分の子ども達が観られる映画に出演できたのがとても嬉しいんです。彼らの好みかはまだ分かりませんが…。観てくれるだろう作品に携われて嬉しいんです。

監督に求めるものは

──あなたは監督に何を求めますか?より良い仕事にするために、彼/彼女から何を必要としますか?

コリン・ファレル:それにははっきりとした答えはありません。何年もの間、いろんな監督から「リハーサルをしたいか、それともしたくないか」という質問を受けました。また時々こうも尋ねられます。「あなた独自の働き方はあるか?リハーサルしたいか、それともしたくないか」…。その質問に答えられたことはありません。適当にごまかしますが、ほんとのことを言うとそんな監督からは立ち去りたいですね。

私が監督に対して何かを求めないのはとてもラッキーだと思っています、なぜなら、何かを与えて欲しいと監督に期待して、もしそれがなかったら…、あーあ、なんだよってなりますから、ね。

一緒に働いたなかで、6週間の撮影のうち3回した話したことが無い監督も何人かいます。それはそれで大丈夫です。私がもし彼らの気に入らないことをしていて、その原因が3回の会話だとしたら、私に伝えてくるでしょう。

彼らとは別に、もっと親密な関係を築いている監督がいて、他の俳優と同じ部屋で3週間リハーサルをしました。それもクールですしとても楽しい経験です。なぜなら作品に携わり、脚本を落とし込む過程なんですから。

必要なものはわかりませんが、はっきりとしたビジョンを目指すのはすごく楽しいです。

FILMINK【Colin Farrell: Dumbo’s Clarity of Vision
written by Gill Pringle

映画『ダンボ』の作品情報


(C)2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved

【日本公開】
2019年(アメリカ映画)

【監督】
ティム・バートン

【キャスト】
コリン・ファレル、マイケル・キートン、ダニー・デビート、エヴァ・グリーン、アラン・アーキン、ニコ・パーカー、フィンリー・ホビンス、ジョセフ・ギャット、デオビア・オパレイ、シャロン・ルーニー、マイケル・バッファー、ラース・アイディンガー、ロシャン・セス

【作品概要】
1941年に製作のディズニー・アニメの古典的名作『ダンボ』を、ティム・バートン監督が実写化し、命を吹き込みます。

サーカス団の元看板スターでダンボの世話係を任されるホルト役にコリン・ファレル、空中ブランコ乗りコレット役にバートン作品に欠かせない存在となっているエヴァ・グリーン、ダンボを使って金儲けを企む企業家ヴァンデバー役にマイケル・キートン。

映画『ダンボ』のあらすじ

サーカスに、愛らしい子象が誕生しました。

大きすぎる耳を持った子象は“ダンボ”と呼ばれ、ショーに出演しても観客から笑いもの。

ある日、ダンボの世話を任されたホルトの子どもミリーとジョーが、悲しむダンボを元気づけるため遊んでいると、ダンボがその耳で飛べることを発見します。

空飛ぶ子象の噂は瞬く間に広がり、ダンボを利用し金儲けを企む興行師によって、ダンボは愛する母象ジャンボと引き離されてしまいました。

母を想うダンボに心を動かされたホルトの家族とサーカス団の仲間は力を合わせ、母象を救い出す作戦を立てはじめ…。

英文記事/Gill Pringle
翻訳/Moeka Kotaki
監修/Natsuko Yakumaru(Cinemarche)
英文記事所有/Dov Kornits(FilmInk)www.filmink.com.au

本記事はオーストラリアにある出版社「FILMINK」のサイト掲載された英文記事を、Cinemarcheが翻訳掲載の権利を契約し、再構成したものです。本記事の無断使用や転写は一切禁止です。

【連載レビュー】『FILMINK:list』記事一覧はこちら

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