2026年2月27日(金)より映画『死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ』は、シネマート新宿、シネスイッチ銀座ほか全国公開!
歴史的な悲劇の舞台ともいえる第二次世界大戦時のアウシュビッツ強制収容所。その中で「死の天使」として知られた残酷な医師ヨーゼフ・メンゲレの逃亡劇を描いた『死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ』。
本作は、メンゲレの終戦後の潜伏生活を軸に、彼の息子との対話やモサドによる追跡を交錯させながら、ナチズムに支配された男の狂気を独特の画風で描き出します。
原作は、フランスで最も権威ある文学賞の一つであるルノードー賞を受賞したオリビエ・ゲーズの世界的ベストセラー小説。
後年<ナチスが生み出した最大の悪>とまで形容される、恐るべき所業を行っていた一人の男の真実を、その知られざる日々と心の深淵の光景で活写します。
映画『死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ』の作品情報

(C)2024 CG CINÉMA / HYPE STUDIOS / LUPA FILM / CG CINEMA INTERNATIONAL / BR / ARTE FRANCE CINEMA
【日本公開】
2026年(フランス・ドイツ合作映画)
【原題】
Das Verschwinden des Josef Mengele
【監督・脚本】
キリル・セレブレンニコフ
【キャスト】
アウグスト・ディール、マックス・ブレットシュナイダー、デビッド・ルランド、フリーデリーケ・ベヒト、ミルコ・クライビッヒ、ダナ・ヘルフルト、カーロイ・ハイデュク、ブルクハルト・クラウスナー ほか
【作品概要】
第二次世界大戦時、アウシュビッツ強制収容所で数々の残虐な人体実験を行ったことで知られる医師ヨーゼフ・メンゲレの、知られざる戦後の潜伏生活と心の深淵を描きます。
フランス人作家オリビエ・ゲーズの世界的ベストセラー小説『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』を原作に映画化。監督は『チャイコフスキーの妻』(2022)『リモノフ』(2025)『LETO -レト-』(2021)『インフル病みのペトロフ家』(2021)などを手がけたキリル・セレブレンニコフ。主演は『名もなき生涯』(2019)のアウグスト・ディール。
映画『死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ』のあらすじ

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医師という身分の中で「優生学」にとり憑かれ、第2次世界大戦中にアウシュビッツ強制収容所で数々の残虐な人体実験を行い「死の天使」と呼ばれた医師ヨーゼフ・メンゲレ。
ドイツの敗戦が決まった後、彼は極秘ルート「ラットライン」を使って南米へと逃亡します。
ナチス時代の仲間が次々と捕まるも、メンゲレはモサド(イスラエル諜報特務庁)の追跡網を巧妙にくぐり抜けます。
逃亡の最中でも、その歪んだ思想を保っていた彼でしたが……。
映画『死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ』の感想と評価

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理解も救済も拒む、一人の戦犯の逃亡劇
ナチス・ドイツのSS医師としてアウシュビッツ強制収容所に関与し、戦後は戦犯として追われながらも裁かれることなく生涯を終えたヨーゼフ・メンゲレ。その逃亡生活を描く本作は、歴史的事実をたどる伝記映画でも、悪を断罪する告発映画でもありません。
むしろ「裁かれなかった悪が、どのような時間を生き延びたのか」を、冷酷な距離感で見つめ続ける作品であるといえます。
本作におけるメンゲレは、しばしば激しい感情を露わにします。観客の目にはそれは「怒り」として映るかもしれません。
しかしその怒りは単純な感情の発露ではなく自己正当化、被害者意識、妄念、そして絶え間ない恐怖が混ざり合い、出口を失った結果として噴き出したものに近い。
彼自身の中では一貫した論理を持っていますが、観る側には理解不能な感情の集合体としてしか映らないでしょう。この感情の非対称性が、本作の観賞体験を終始居心地の悪いものにしています。

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メンゲレは決して自らを「悪」とは認識しておらず、常に自身の行為を使命として語り、歴史の中で歪められた正義の担い手であると信じています。
本作はその内面を掘り下げながらも、彼を理解させようとはしません。観客は彼の思考回路に近づかされますが、同時にそこから距離を取らされ続けます。
この「接近」と「拒絶」の反復こそが本作の最大の特徴であり、安易な共感やカタルシスを拒む理由でもあるわけです。
映像表現もまた、その歪んだ主観を可視化する装置として機能しています。戦後の逃亡生活はモノクロで描かれ、アウシュビッツでの過去や恋人ローレンとの記憶のみがカラーで表現されていますが、このカラーは一般的な映画文法における「希望」や「救済」とは無縁といえるものです。
むしろ、それはメンゲレ自身が肯定的だと信じていた瞬間――彼にとって意味と価値を持っていた時間だけが色を帯びている、という歪んだ自己認識の反映。
観客にとって最もおぞましい記憶が、彼にとっては輝いて見えていたという事実が、ここで残酷な対比として浮かび上がっていきます。

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アウシュビッツにおける彼の記憶の描写は決して多くありませんが、選別や解剖といった行為は断片的に、しかしはっきりと映し出されます。これは惨状を煽るための描写ではなく、むしろこれ以上踏み込めば映像が耐えきれなくなる、そのぎりぎりの線を示しているようにも見えます。
もしこれらの場面がなければ、観客はメンゲレの逃亡を単なる心理劇として消費してしまうでしょう。その意味で本作は、彼が何から逃げているのかを、最小限ながら決定的な形で突きつけていきます。
南米という舞台も、物語として重要な意味を持っています。
アルゼンチン、パラグアイ、ブラジルと逃げ続けるメンゲレの姿は、個人の逃亡であると同時に戦後世界が生み出した「忘却の構造」を映し出しています。彼を匿い、見逃し、沈黙した人々の存在が、背景として確かに示されることで「裁かれなかった悪」は、個人の問題ではなく社会の問題として立ち上がってくるわけです。
まとめ

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クライマックスで描かれるのは「劇的な裁き」ではありません。
彼は妄想の中で何かに追われ続け、孤独な死を迎えます。その最期は因果応報と呼ぶにはあまりにも空虚で、救いもありません。
しかし、この空虚さこそが、本作の核心といえるもの。「裁かれなかった」という事実が観客に倫理的な不満を残し、その代わりに「惨めさ」だけが提示される。この置き去りにされた感情を、観る側がどう引き受けるかが問われているわけです。
本作は終始、居心地の悪さと嫌悪感に満ちています。しかしそれは観客を突き放すためのものではありません。
メンゲレを「怪物」として切り捨てることも、理解可能な人間として救済することも拒み、ただ「人間の弱さと過ち」がどこまで深い場所へ転がり落ちうるのかを凝視させ、その不快さを抱えたまま考え続けること――そのもの自体が、この映画が観客に求めている態度であると言えるでしょう。
2026年2月27日(金)より映画『死の天使 ヨーゼフ・メンゲレ』は、シネマート新宿、シネスイッチ銀座ほか全国公開!





































