連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第140回
ラテン部門の日本チャンピオン・鈴木信也と、スタンダード部門の日本チャンピオンで世界2位の杉木信也。名前が一字違いの2人は互いを意識していました。
ある日、杉木は鈴木に共に「10ダンス」でチャンピオンを目指さないかと誘います。性格は真反対の2人ですが、ダンスを教え合い、高め合っていくうちに互いに惹かれあっていきます。
井上佐藤のBL漫画を「るろうに剣心」シリーズの大友啓史監督映画化。
鈴木信也と杉木信也を演じたのは、『アキラとあきら』(2022)の竹内涼真と、『ミステリと言う勿れ』(2022)の町田啓太です。
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映画『10DANCE』の作品情報

Netflix映画「10DANCE」2025年12月18日(木)よりNetflixにて世界独占配信
【配信】
2025年(日本映画)
【監督】
大友啓史
【脚本】
吉田智子、大友啓史
【原作】
井上佐藤
【キャスト】
竹内涼真、町田啓太、土居志央梨、石井杏奈、浜田信也、前田旺志郎、ナディヤ・ビシュコワ、スージー・トレイリング、パスクアーレ・ラ・ロッカ
【作品概要】
時にぶつかり、時に認め合う2人の男性トップダンサーの苦悩と葛藤。そして情熱的な愛を描いた井上佐藤のBL漫画『10DANCE』を『るろうに剣心』シリーズの大友啓史監督がNetflixオリジナル映画として映画化。
スタンダードのチャンピオン・杉木信也を演じたのは『ミステリと言う勿れ』(2022)の町田啓太。ラテンチャンピオンの鈴木信也は、『アキラとあきら』(2022)の竹内涼真が演じました。
また、それぞれのダンスパートナー役を務めたのは連続テレビ小説『虎に翼』の土居志央梨と映画『楓』(2025)の石井杏奈。
映画『10DANCE』のあらすじとネタバレ

Netflix映画「10DANCE」2025年12月18日(木)よりNetflixにて世界独占配信
社交ダンスの競技には、スタンダードとラテンアメリカンの2種類があります。
両者は基本的に競うことはありませんが、一つだけ例外があります。それは「10ダンス」と呼ばれる、スタンダード5種類とラテン5種類全てのダンスで競い合うワールドカップ。1日に40曲踊る体力と精神力を必要とする、ゴージャスなトライアスロンというべき大会です。
社交ダンスのラテンアメリカン部門の日本チャンピオン・鈴木信也と、スタンダード部門の日本チャンピオンの杉木信也。一文字違いの2人は互いに意識し合っていました。
ある時、鈴木は杉木に共に10ダンスでチャンピオンを目指さないかと誘われます。そのことを聞いた鈴木のダンスパートナーのアキは「一度でいいから杉木先生のリードで踊りたかった」と残念そうに言います。
「あっちはワールドチャンピオンだ、レベルが違う」と鈴木が言うと「2位です。私は一度もワールドチャンピオンになったことはありません」とどこからかやってきた杉木が答えます。
日本チャンピオンで満足して世界に挑戦する気のない鈴木に、杉木は「私の見込み違いでしたね、センスと体格だけは抜群なのに」と言います。
杉木の言葉に火をつけられた鈴木は「逃げんの?」と10ダンスに挑戦する覚悟を決めます。
杉木のレッスン場にやってきた鈴木とアキ。杉木はどの程度踊れるのか確認すると、鈴木と組んで踊り始めます。しばらくして杉木は手を離し、杉木から離れ「チンコ当ててくる」と反発します。
互いに反発し合いながらも、手を合わせフォームを確認し、踊っているうちに、杉木は「手を通して感情が伝わってくるんだよ」と言います。
そんな鈴木を見たアキは「恋しているみたい」と言いますが、杉木への思いを鈴木は認めようとしません。
映画『10DANCE』の感想と評価

Netflix映画「10DANCE」2025年12月18日(木)よりNetflixにて世界独占配信
井上佐藤の人気BL漫画を映画化した『10DANCE』。トップダンサーとしてのプライド、葛藤、そしてダンスを通して激しく惹かれ合う2人。
スタンダードとラテンアメリカの違いだけでなく、2人の性格は真反対で、常に反発し合います。同時に自分にないものを持っている相手に憧れを抱き、次第にそれが恋心となり、互いに互いしか見えなくなっていきます。
スタンダードの日本チャンピオンである杉木は、まさにエンペラーのように紳士でありながら強引にリードする力強さを感じさせます。杉木のレッスンは、正確なポジションで正確なカウントを体に叩き込むスタイルです。
一方、キューバ人と日本人の両親をもち、キューバで生まれ育った鈴木は、体が楽器のように音楽を鳴らしパッションで踊っています。
杉木のレッスンが合わず反発していた鈴木が少しずつ変わってきたのは、反発しながらも手を取り踊ることで杉木のダンスへの熱、ポーカーフェイスのようでも水面下で揺れ動く感情に共鳴したからです。
自分とはタイプの違う鈴木の存在は、引退を考えていた杉木にダンスへの情熱を呼び起こします。
憧れの存在でもあった鈴木とのレッスンは、杉木にとって初めて自分がコントロールできない存在との対峙とも言えるかもしれません。
日本の大会にしか出ていない鈴木と違って、杉木はワールドチャンピオンにはなっていないとはいえ、2位の実力者です。
ラテンアメリカを学ぶのに鈴木でなければならないと杉木が思っていたのは、杉木にとって鈴木は憧れであり特別な存在だからです。
なかなか上達までも時間がかかり、途中でやめてもよかったはずなのにやめなかったのは、杉木が鈴木に執着しており、そこに愛があったからではないでしょうか。
しかし、杉木は鈴木に執着すると共に、自分の感情がコントロールできなくなっていくことに恐怖も感じ始めます。このまま杉木にのめり込んだら自分が壊れてしまうのではないか、そんな恐怖ゆえに杉木は「君とは交われない」と突き放してしまうのです。
突き放す杉木に対し、鈴木は自分以外見えなくなるように、ダンスで証明しようと決意します。
ラテンアメリカでワールドチャンピオンになること、そして10ダンスで杉木に勝つことが、その証明になるとダンスにより本気になっていく鈴木。ラストは、そんな2人の第二章が始まりそうな予感を残して終わります。
本作は真反対の2人がダンスを通して時にぶつかり合いながらも互いに惹かれていく姿を映し出します。自分に芽生え始めた感情に戸惑い、プライド故に素直になれない姿は、杉木も鈴木も同性にここまで強く惹かれたのが初めてであったという側面も関係してくるでしょう。
同性への恋だからこそ、自分自身が壁となり感情への向き合い方がわからず、近づいては突き放し、相手の感情を受け止める怖さも感じていると言えます。だからこそ、そんな2人の感情が溢れ出した電車のシーンは鮮烈な場面として観客の心に残ります。
しかし、2時間という尺の関係もあり、駆け足で描かれていた印象は拭えず、水面下の感情の揺れ動き、心の距離が近づいていく様子がもっと丁寧に時間を使って描けていれば2人の感情の高まりがグッと共感できるものになったかもしれません。
まとめ

Netflix映画「10DANCE」2025年12月18日(木)よりNetflixにて世界独占配信
時にぶつかり合いながらも、激しく惹かれていく2人のトップダンサーの姿を描いた映画『10DANCE』。
本作で杉木信也を演じた町田啓太と、鈴木信也を演じた竹内涼真は未経験から本作に向けダンスの練習を始めたといいます。
演じるのはそれぞれ社交ダンスの日本チャンピオンです。チャンピオンに見える演技というプレッシャーもあったでしょう。ダンスシーンが重要な本作にとって2人の身体性も重要になっています。
原作においても印象的な、服を脱いで体でラテンのリズムを杉木に教える鈴木の腰の動きなどラテンの雰囲気を竹内涼真が見事に体現していました。
一方で、ストイックに自分を追い込みダンスと向き合う杉木の近寄りがたさ、孤高な姿も印象的です。そして、そんな孤高な杉木の近寄りがたさを壊して飛び込んでいくのが鈴木の存在でもあります。
言葉以上にダンスを通して身体で交流する2人は、まさに2人だけの世界であり演じた2人の魅力がつまっていると言えます。

































