『るろうに剣心 最終章 The Beginning』で剣心の十字傷の謎が解ける!
佐藤健主演&大友啓史監督で実写映画化した時代劇アクション「るろうに剣心」シリーズ。
『るろうに剣心 最終章 The Beginning』は、その完結編2部作の第2弾目です。今まで明かされなかった剣心の十字傷について描かれています。
人斬りとして暗躍する緋村剣心のもとへ現れた謎の美女。殺しの現場を見られたこともあり、剣心は彼女を傍に置いて様子を見ることにしたのですが……。
緋村剣心は佐藤健、謎の美女雪代巴に有村架純が扮し、十字傷に纏わる美しくも切ないラブストーリーが展開します。
CONTENTS
映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の作品情報
【公開】
2021年(日本映画)
【原作】
和月伸宏:『るろうに剣心 明治剣客浪漫譚』(集英社)
【監督】
大友啓史
【脚本】
大友啓史
【音楽】
佐藤直紀
【キャスト】
佐藤健、有村架純、高橋一生、村上虹郎、安藤政信、北村一輝、江口洋介、藤本隆宏、和田聰宏、池内万作、大西信満、中村達也、荒木飛羽、窪田正孝
【作品概要】
和月伸宏の人気コミックを佐藤健主演&大友啓史監督で実写映画化した時代劇アクション「るろうに剣心」シリーズ。完結編となる2部作の第2弾です。
第1弾の『るろうに剣心 最終章 The Final』は、シリーズ最強の敵とされる雪代縁との闘いを描き出しました。最終章の第2弾では、原作の「追憶編」をベースに、剣心が不殺の誓いを立てるに至るまでの物語と、彼の頬に刻まれた十字傷の謎に迫ります。
緋村剣心役の佐藤健、剣心の妻となる巴を有村架純が演じ、新選組の斎藤一を江口洋介、桂小五郎を高橋一生、高杉晋作を安藤正信と、幕末の主要人物たちをベテランキャスト陣がそれぞれ演じています。
映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』のあらすじとネタバレ
1864年、動乱の幕末。幕府を擁護する佐幕派と、新しい世の中にしたい倒幕派は激しく争っていました。
ある日、京都の佐幕派・対馬藩邸にあやしい男が捉えられました。前日に藩士を何人も斬られている藩士たちは、その男がやったのではないかと言い、男は両腕を荒縄でしばられています。
尋問しようとした藩士たちに、その男は「新しい世の中を作るためだ」と言い、いきなりそばにいた藩士に体当たりして、刀を口で咥えて、反撃に出ました。
両手を縛られて身体の自由が利かないはずなのに、口で咥えた刀で向かってくる藩士たちをかたっぱしから切っていきます。あっという間に、その場にいた藩士たちを全員斬り殺し、自分の縄を斬った男は退散。
その後すぐに駆け付けた新選組は、悲惨な状況に息をのみます。
「こんなに腕のたつ奴は、人斬り抜刀斎しかいない」。
倒幕派を率いる桂小五郎(高橋一生)の元、陰の暗殺者人斬り抜刀斎こと緋村剣心(佐藤健)はこうして毎日のように、暗躍をしていました。
ある夜、いつもなら簡単に皆殺しができる武士の一群の中に、一人だけ斬っても斬っても立ち向かってくる男がいました。
その男・清里明良(窪田正孝)は、「俺には大事な人がいるから死ぬわけにいかない」と言って、絶命前の最期の一太刀で剣心の左頬に一本傷をつけました。
その頃、小さな旅館・小萩屋を桂たちは隠れ家とし、剣心ももちろんこの宿の奥の一室をアジトとしていました。
桂と剣心の出会いは1年前。高杉晋作(安藤政信)がつくった奇兵隊に剣心が入隊した時でした。
人並はずれた剣の腕前を持つ剣心を見て、桂はすぐに剣心を暗殺者にすることにします。以来、剣心は良き時代を作るために人を斬り続けることになったのです。
ある日、剣心は小萩屋の吞み処で男にからまれる女性を助けました。そして店を出た所で、何者かに襲われて返り討ちにしますが、その様子を助けてもらった礼を言おうと後を追ってきた女性に見られてしまいます。
急に降り出した雨の中、血しぶきをあびて呆然と立つ女性は、「あなたはいつも血の雨を降らせるのですね」とつぶやき、気を失ってしまいました。
現場を見られてしまった剣心は、口封じのためにその女性・雪代巴(有村架純)を傍に置くことにし、小萩屋へ連れて行きました。
帰るところもないと言う巴は次の日から、かいがいしく宿の仕事を手伝います。
ほとんど無表情で剣心に接する巴ですが、やがて剣心の人斬りをそれとなく諫め始めました。
「俺が斬るのは、刀を持った武士だけで、市井の人は斬ったりしない」という剣心に、巴は「では私が刀を持ったら、斬るのですか?」と尋ねます。
返答につまる剣心に「答えがわかった時、教えてください」という巴。
巴はさらに祇園祭でにぎわう京の町に剣心を連れ出し、「平和のための戦いなど本当にあるのでしょうか」と問います。
剣心は「祇園祭の稚児は、一番先頭にたって真っ先に結界を斬る。時代を進めるためには、このように、誰かが先頭に立って太刀を振らねばならないのだ」と答えます。
その後、部屋の片隅でうたたねをしていた剣心に、巴は上着をかけようとしました。人の気配に剣心は飛び起き、刀を巴につきつけます。
驚く巴に、やっと相手が誰かがわかり、謝る剣心。そして、「いつかの答えをだすが、どんなことがあろうと、あなただけは絶対に斬りはしない」と言いました。
巴が言った「平和のための戦い」という言葉は剣心の心に波紋を広げていき、剣心は、はたして自分のしていることは正しいことなのだろうかと、考え込みます。
映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の感想と評価
復讐か愛か、究極の選択
「るろうに剣心」シリーズ完結編となる2部作の第2弾。第1弾は剣心の強敵との戦いを描きますが、本当のラストとなる本作では、剣心の心の傷とも言える十字傷にスポットを当てています。
凄腕の人斬りの顔につけられた2本の傷。1本は生きることへの強い執着心を持った若い侍につけられたもの。もう1本は、その侍の婚約者と一緒に自分でつけたもの。
年月が経てば古傷も癒えていきますが、剣心の頬の十字傷はなかなか消えません。それだけ強い想いが籠ったものと理解していましたが、その傷は想像以上に切ないエピソードを孕んでいることに驚きます。
婚約者の仇を取りたいために剣心の弱みをさぐろうと近づいた巴ですが、剣心の持つ良い世の中を願う純粋さに次第に惹かれていきます。
一方の剣心も、巴の平和を願う真っ直ぐな優しい気持ちと包み込んでくれるような包容力に癒されていきました。それが敵からの内通者と知った時の衝撃は、想像するに堪えられません。
復讐するのか、そのまま愛してしまうのか。禁断のラブストーリーを演じることになったのは、佐藤健と有村架純です。
複雑な胸中を表現するのに、言葉は少なく眼の動きで伝える様は、近づきたくても近づけない2人の距離感をとても良く出していました。
巴の最後の言葉は、「ごめんなさい。あなた」です。
口の動きははっきりとそれとわかるのですが、大友監督はわざと「ごめんなさい」のところをオフにしたと言います。
巴は何を謝ったのでしょう。自分が内通者であったことでしょうか。それとも剣心に全てを打ち明けられなかった負い目でしょうか。
このシーンは、巴がつけた2本目の頬の傷の意味とともに、観る人に‟復讐”か‟愛”かの結論を委ねていると言えます。
集大成はラブストーリーで
本作は、シリーズの中で唯一の愛の物語です。派手なアクションばかりでなく、巴という女性の存在を交えて、自然描写や街の様子などを背景に、剣心の持つ人斬りとしての悩みを鮮烈に描いています。
新しい時代を迎えるために多くの人を斬らなければならないと思う剣心。
はた目には斬ることだけを楽しみとする狂人と見えるかもしれません。しかし、その内面はがたがたで、自分の行いに対して終始揺れ動いています。
人を斬れば自分もまた狙われます。だから油断や隙のない生活を強いられ、刀を抱いて座ったままの仮眠状態で休むことになります。
この状態で巴に起こされ、敵と思って刀を突きつける状況が、剣心の追い詰められた心境を物語っていました。
こんな複雑なぎりぎりの精神状態で敵と戦う剣心役を、佐藤健は10年もの期間を通して演じ切りました。剣心の成長ぶりは、剣心と同化したような佐藤健だから表現できたものでしょう。
最終章の第1弾に集結した他のキャストについても同じことが言えます。
シリーズの集大成を壮絶な悲恋のラブストーリーで締めくくるのも、「るろうに剣心」のルーツという意味があり、大きな成果と達成感を与えてくれる作品でした。
まとめ
「るろうに剣心」シリーズ最終章の第2弾で、文字通りシリーズを締めくくる作品となった映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』。
緋村剣心がなぜ殺さずの誓いを立てた経緯がわかり、頬の十字傷の謎もわかる作品です。そのラストは鳥羽伏見の戦いで、シリーズの第1作目2012年の『るろうに剣心』に繋がります。
作品タイトルが示すように、本作がるろうに剣心の‟始まり”になるわけです。この構成で、より一層、大友監督の作品への想いがストレートに伝わってきました。
可憐な有村架純が美しい巴役を熱演して、アクション映画のラストを飾ります。
たとえ残酷な結末であっても、それが剣心の生き様であり、「るろうに剣心」らしさを出していると言えます。
一人の人斬りだった若者の波乱に満ちた半生の物語は、この作品を持って幕を閉じます。感動的な圧巻の最終章でした。