連載コラム『映画という星空を知るひとよ』第254回
『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』(2014)『ウルフウォーカー』(2020)などのアニメーション・スタジオ、カートゥーン・サルーン。
アイルランドの名門を誇るこのアニメーション・スタジオが、このたび設立25周年を迎え、『パフィンの小さな島』を製作しました。
映画『パフィンの小さな島』は、2025年5月30日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町他全国ロードショー。
本作は、絶滅危惧種に指定されている海鳥パフィン(ニシツノメドリ)の女の子ウーナたちと、嵐で故郷を失ったエトピリカのイザベルが、トンガリ島でさまざまな動物たちと出会い、優しさに触れながら自分の居場所を見つける物語。
可愛い動物たちが活躍し、なおかつ環境問題をも孕むアニメーションを、映画公開に先駆けてご紹介します。
映画『パフィンの小さな島』の作品情報
(C)2023 Puffin Rock and The New Friends
【日本公開】
2025年(アイルランド・イギリス合作映画)
【原案】
トム・ムーア、リリー・バーナード、ポール・ヤング
【脚本】
サラ・ダディ
【監督】
ジェレミー・パーセル
【声の出演】
上野樹里、新田恵海、田所あずさ、チョー
【作品情報】
『パフィンの小さな島』は、アイルランドの美しい島を舞台に個性豊かな生き物たちの冒険を描いた長編アニメーション。
アカデミー賞®長編アニメーション賞に4度ノミネートされ、アイルランドでは“ポスト・スタジオジブリ”と称されるアニメーション・スタジオ、カートゥーン・サルーンが、絶滅危惧種に指定されている海鳥パフィン(ニシツノメドリ)の姉弟を主人公に、個性豊かな生き物たちとともに、気候変動がもたらす影響について優しく描いた作品です。
監督は、『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』(2014)のジェレミー・パーセル。日本語吹替版では、ウーナたちの冒険を見守るお母さんパフィン役を、実力派俳優上野樹里が担当します。
映画『パフィンの小さな島』のあらすじ
(C)2023 Puffin Rock and The New Friends
アイルランドの西の海にある小さなトンガリ島に、海鳥パフィン(ニシツノメドリ)の女の子・ウーナと弟のババ、そして様々な動物たちが暮らしています。
ある時、大きな嵐のせいで故郷の島に住めなくなった動物たちが、トンガリ島にやってくることになりました。
その中に、エトピリカの一家もいました。トンガリ島に来ても、慣れない環境に戸惑うエトピリカの女の子・イザベル。
一緒にやって来たフェニックスはすぐにウーナたちと友だちになったのに、イザベルはなかなか周囲に打ち解けることができません。
寂しい気持ちで過ごすイザベルですが、ひょんなことからパフィンのタマゴの世話をすることになったのですが……。
イザベルが心ならずも巻き起こした“ある事件”を通じて、新たな友情が育まれていきます。
映画『パフィンの小さな島』の感想と評価
(C)2023 Puffin Rock and The New Friends
カラフルで印象的な色使いと、くりくりお目目の愛らしい動物たちが出て来るアニメーション『パフィンの小さな島』。
美しいアイルランドの島の景色はもちろん、登場する動物たちの優しく勇敢な心遣いが胸を打つ作品です。
映画では、両親が仲間を助けに行って一人にされ、「おうちに帰りたい」と呟くイザベルに、ウーナのお母さんパフィンは「そこがどんな場所でも、自分のおうちにするの」と優しく語りかけます。
日本語版でこの言葉を言うのは、お母さんパフィンの声を務める上野樹里。『のだめカンタービレ』(2010)や『隣人X 疑惑の彼女』(2023)で主役を務めた上野樹里が、 耳に心地よい優しい声で重みのあるセリフを語りました。
短い言葉ですが、どんな境遇になっても生き抜こうとする強い気持ちが込められ、島に来たものは仲間として受け入れようとする優しい思いに溢れています。
こんな優しい両親に育てられた娘のウーパ。仲間たちを助けるために島中を飛び回り、小さな命を護ろうとしました。
パフィンは生まれた場所に巣を作り、周りに仲間がいるときしか巣作りをしないと言います。絶滅危惧種でもあるこんなパフィンを主役にしているところに、制作陣の深い思惑があるようです。
本作で、動物たちが力を合わせて小さな島で仲良く暮らす様子から、共存で生きる意義とその大切さを見出せることでしょう。
(C)2023 Puffin Rock and The New Friends
まとめ
(C)2023 Puffin Rock and The New Friends
『パフィンの小さな島』は、アイルランドで“ポスト・スタジオジブリ”と称され、世界的に高く評価されているアニメーションスタジオ、カートゥーン・サルーンが、美しい島を舞台に個性豊かな生き物たちの冒険を描いた長編アニメーション。
パフィンたちの日常をとらえるシンプルな物語ですが、自然保護や周囲との調和といった深いテーマが美しい自然とともに映し出されています。
パフィンのほか、ウサギやカワウソ、アザラシ、ヤドカリ、キツネなどの様々な動物たちの愛らしい表情と仕草にも目を奪われることでしょう。
ポスターのキャッチコピー「みんなだれかの宝物」が心に染み渡って来る作品で、鑑賞後はほのぼのとした温かさに包まれ、和やかな気持ちになるのに違いありません。
映画『パフィンの小さな島』は、2025年5月30日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町他全国ロードショー。
星野しげみプロフィール
滋賀県出身の元陸上自衛官。現役時代にはイベントPRなど広報の仕事に携わる。退職後、専業主婦を経て以前から好きだった「書くこと」を追求。2020年よりCinemarcheでの記事執筆・編集業を開始し現在に至る。
時間を見つけて勤しむ読書は年間100冊前後。好きな小説が映画化されるとすぐに観に行き、映像となった活字の世界を楽しむ。