Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

SF映画

インド映画『カルキ 2898-AD』あらすじ感想と評価考察。ボリウッドが神話SFファンタジーを壮大なスケールと予算で生み出す⁉︎

  • Writer :
  • 糸魚川悟

映画『カルキ 2898-AD』は2025年1月3日(金)より全国劇場でロードショー

インド映画に対して、ド派手なアクションと歌や踊りと言ったミュージカル要素がどんな映画にも挿入されているというう印象を持っている方は少なくないのではないでしょうか。

これらの要素はもちろん作品のジャンルによって含まれていたり含まれていなかったりはするのですが、日本でも人気を集めた「バーフバリ」シリーズや『RRR』(2022)と言った作品がよりその印象を強めたと言えます。

そして2025年の年明け早々、そんなインド映画のイメージをしっかりと踏襲した上で、さらに映画としてすべての要素をスケールアップした作品が日本で公開予定。

今回は神話とSFを組み合わせた壮大なスケールのインド映画『カルキ 2898-AD』(2025)の魅力をご紹介させていただきます。

映画『カルキ 2898-AD』の作品情報


(C)2024 VYJAYANTHI MOVIES. All Rights Reserved.

【日本公開】
2025年(インド映画)

【原題】
Kalki 2898 AD

【監督】
ナーグ・アシュウィン

【キャスト】
プラバース、アミターブ・バッチャン、ディーピカー・パードゥコーン、カマル・ハーサン、サースワト・チャテルジー、ディシャ・パタニ

【作品概要】
西暦2898年の未来を舞台にヒンドゥー教の神話をベースとした物語を描いたSFファンタジー映画。

大規模映画初製作となるナーグ・アシュウィンが監督を務め、全世界で大ヒットを記録したインド映画シリーズ「バーフバリ」で主演を務めたプラバースが、本作の主人公となる賞金稼ぎバイラヴァを演じました。

映画『カルキ 2898-AD』のあらすじ


(C)2024 VYJAYANTHI MOVIES. All Rights Reserved.

胎児を殺害しようとした罪として不死の呪いをかけられたアシュヴァッターマン(アミターブ・バッチャン)は、呪いを解くため、いつかこの地に生まれ落ちる「運命の子」の守護を使命としていました。

それから6000年の月日が流れた2898年、スプリーム・ヤスキンが支配する都市カーシーが、地球上の資源をほぼすべて独占し、世界は荒廃。

反乱軍は「悪を一掃する」とされる「運命の子」の生誕を待ち望み、要塞コンプレックスから圧政を続けるヤスキンに対抗し続けています。

ある日、賞金稼ぎのバイラヴァ(プラバース)が金だけを目的に反乱軍の確保に動き出したことをきっかけに、身を隠していたアシュヴァッターマンが「運命の子」の誕生が近いことを感じ取り……。

映画『カルキ 2898-AD』の感想と評価


(C)2024 VYJAYANTHI MOVIES. All Rights Reserved.

インド映画最大のスケールで描かれるSF映画

日本の実写映画では全国規模の作品であっても、多くは10億円を下回る額の製作費で映画が撮影されており、日本映画として大規模予算とされる時代劇映画『レジェンド&バタフライ』(2022)でも、20億円の製作費であったとされています。

映画の本場とも言われ予算感が大きく異なるハリウッドの大作『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)では、製作に使われた金額は3億5000万ドル以上とも言われ、日本円にして10倍を遥かに超える額の製作費を映画に投入していました。

製作費15億円とされる『ゴジラ-1.0』(2023)のアカデミー賞での躍進によって、製作費イコール作品のクオリティの指標ではないと証明はされましたが、製作費が物語のスケールに関わってくることは間違いありません。

一方、インドで製作された映画『カルキ 2898-AD』は製作費に600億ルピーが充てられたとされ、インド製作の映画内で最も高額な製作費の映画となりました。

600億ルピーと言う数字は大作映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』の製作費の倍以上であり、本作で描かれる圧倒的なスケールの物語が数字だけでも伝わってくると思います。

本作は近未来を舞台としており、レーザー銃や形を自由に変える車、ホログラムを使った戦闘と言ったSFにお馴染みの数々のガジェットや、大規模な集団戦闘などが予算に違わぬ高クオリティで詰まっているため、3時間弱の上映時間内で全く退屈することがない、まさにエンターテインメント性抜群のSF映画となっていました。

神話とSFの見事な融合作


(C)2024 VYJAYANTHI MOVIES. All Rights Reserved.

本作はヒンドゥー教の神話をベースとしており、タイトルを冠している「カルキ」も「宇宙に跋扈するあらゆる悪を滅ぼす救世主」として知られています。

神話をベースとした物語となると前提の知識が無ければ楽しむことは難しいのでは、と観ることに抵抗感を覚えてしまう人もいるかもしれませんが、本作はジャンルとして「SF」をメインに敷いていることもあり、分かりやすくかつ派手に物語が進むため神話の前提知識を入れる必要なく鑑賞することが出来ます

もちろんヒンドゥー教の固有名詞が多く登場するため、名前を覚えることが難しく感じてしまう部分もありますが、本作を鑑賞後にヒンドゥー教の教えに触れると、「あの映画で登場した神だ!」と映画を映画だけでなく別の媒体で楽しむきっかけとなるかもしれません。

本作は遥か過去と遥か未来がリンクする、「スターウォーズ」シリーズのような壮大な「SF」でありながら「マッドマックス」シリーズのような荒々しさも持つ、神話と「SF」の見事な融合作となっている作品でした。

まとめ


(C)2024 VYJAYANTHI MOVIES. All Rights Reserved.

本作は既に全世界で製作費の倍以上の額の興行収入を記録しており、「カルキシネマティックユニバース」としての展開も始まっています。

続編の製作も順調に進んでおり、インド映画のみならず映画界全体で本作が「SF」映画としての代表作となることも近いのかもしれません。

壮大なスケールで描かれる映画『カルキ 2898-AD』は、2025年1月3日(金)より全国劇場でロードショー

新年映画初めとして、ぜひド迫力の本作を劇場で鑑賞してみてください。


関連記事

SF映画

ネタバレ感想『ヴェノム』詳細なあらすじ。トム・ハーディがマーベルの最凶最悪のキャラに続編へも意欲!

地球外生命体シンビオートに寄生され、ヴェノムとなった記者エディ。 エディは自分自身をコントロールできないことに戸惑い、また恐怖しますが、やがてその力に魅了されていきます。 マーベル史上、最凶最悪のヴィ …

SF映画

映画『ウィンター・ドリーム 氷の黙示録』感想レビューと結末考察

2017年7月15日からカリテ・シネマコレクションにて上映される映画『ウィンター・ドリーム 氷の黙示録』。 氷に覆われた2307年の未来の地球を舞台に、ミュータントと人類が繰り広げる死闘を描いた近未来 …

SF映画

映画『時計じかけのオレンジ』ネタバレ感想と解説。ラストで描いたメッセージとは⁈

世界中の映画監督に影響を与え、今もなお、多くの映画ファンから愛されているキューブリック 映画『現金に体を張れ』『2001年宇宙の旅』『シャイニング』など、様々な作品を世に送り出した20世紀を代表する監 …

SF映画

映画『ハードコア』ネタバレ感想と解説。ラストまでのあらすじも【山田孝之×山下敦弘監督】

間違っていることを間違っていると言いたいだけ。 東京の片隅で、まっすぐで不器用な男たちが、人生をもがきながら生きていました。 そんな男たちの前に現れた人工ロボット。 ひとりぼっちのロボットと男たちの、 …

SF映画

【テネット考察ネタバレ】逆行・逆再生をめぐる時間の謎と意味を解説・比較分析

映画『TENET テネット』は2020年9月18日(金)より全国ロードショー! 難解な映画として評判の、クリストファー・ノーラン監督作『TENET テネット』。 今までの映画に無かった科学的・SF的な …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学