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【ネタバレ】レ・ミゼラブル(2012)|あらすじ感想評価レビュー。名作に挑む出演者は激動の時代のそれぞれ人々の愛に挑む

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

ヴィクトル・ユーゴー原作の大ヒットを記録した有名ミュージカルを映画化

パンを盗んだ罪で19年間服役したジャン・バルジャン。

仮釈放後、情けをかけてくれた司教のもとで盗みを働いてしまいますが、改心し生まれ変わることを決意します。

その後、不幸なフォンテーヌから娘のコゼットを託されたジャン・バルジャンはジャベール警部の追跡を逃れながらコゼットを育てますが、激動の時代の波に巻き込まれていきます。

英国王のスピーチ』(2011)でアカデミー監督賞を受賞したトム・フーパーが監督を務めました。

ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイと豪華なキャスト陣が顔を揃え、アン・ハサウェイは本作でアカデミー助演女優賞に輝きました。

映画『レ・ミゼラブル』の作品情報


(C)2012,2023 UNIVERSAL STUDIOS

【公開】
2012年公開(イギリス)

【原題】
Les Miserables

【原作】
ヴィクトル・ユーゴー

【監督】
トム・フーパー

【キャスト】
ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイ、アマンダ・セイフライド、エディ・レッドメイン、アーロン・トベイト、サマンサ・バークス、イザベル・アレン、ダニエル・ハトルストーン、コルム・ウィルキンソン、ヘレナ・ボナム・カーター、サシャ・バロン・コーエン

【作品概要】
1862年に出版されたヴィクトル・ユーゴーの小説『レ・ミゼラブル』は、1980年代からミュージカルとして上映されるようになります。そして、世界43カ国で上演されて大ヒットを記録しました。

ヴィクトル・ユーゴーの原作を元に映画化、テレビドラマ化された作品も数多くありますが、本作はヴィクトル・ユーゴーの原作を元にしたミュージカルの映画化となっています。

ヒュー・ジャックマンやラッセル・クロウ、アン・ハサウェイ、アマンダ・セイフライド、エディ・レッドメインら豪華キャスト陣が歌う名曲の数々が見どころです。

映画『レ・ミゼラブル』のあらすじとネタバレ


(C)2012,2023 UNIVERSAL STUDIOS

1815年。フランス革命から26年経ち王政復古となったフランス。飢えていた妹の子供のためにパンを盗んだ罪で捕えられたジャン・バルジャン。19年に及ぶ刑務所生活を経て仮釈放となります。

仮釈放となっても自由ではなく、呼ばれたら出頭しなければなりません。仕事をするにも、食事をするにも身分証を見せて囚人であることがわかると、皆冷たい対応をします。

そんなジャン・バルジャンに手を差し伸べ、温かい食事と寝床を与えてくれたのは司教でした。しかし、ジャン・バルジャンはそこから銀食器などを盗み明け方に教会を抜け出します。

すると警察に捕まり、教会に連れ戻されます。「司教がくれた」というジャン・バルジャンの嘘を咎めることなく司教は「その通りだ、私があげた」と言います。

驚いているジャン・バルジャンに司教は「兄弟よ、慌てすぎて一番大事なものを忘れている」と蝋燭台を差し出します。

司教の優しさにジャン・バルジャンは己を悔い、神の前で「正しい」人間に生まれ変わることを誓います。

時が立ち、ジャン・バルジャンはマドレーヌと名前を変えて工場経営で成功し、モントルイユの市長になっています。

ジャン・バルジャンが経営する工場で働くファンテーヌは工場長から性的な嫌がらせをうけていましたが、クビになるわけにはいかず耐えています。

しかし、手紙からファンテーヌに子供がいることが知られ、「大人しい顔して夜は淫売か」とクビにされてしまいます。ファンテーヌは娘を宿屋に預けていましたが、娘が熱を出しお金が必要だと言われています。

困り果てたファンテーヌに、娼婦が声をかけてきます。ファンテーヌの髪を触り、「美しい髪だね、10フランで買おう」と言われます。

10フランあれば娘を病院に連れていくことができると、泣く泣く髪を売ります。そんなファンテーヌに人々が群がり、歯を売るように仕向けます。

更に追い討ちをかけるように、失うものは何もないと体を売るように仕向けます。娼婦となったファンテーヌは、客を選べる立場にもありませんが、乱暴をされて抵抗し、男性の顔に傷をつけてしまいます。

訴えられそうになったファンテーヌですが、その場に居合わせたジャン・バルジャンによって、病院へと連れて行かれます。

ファンテーヌは、自分のせいでクビになり、このような目に遭っていることを知ったジャン・バルジャンは謝罪をします。

ジャン・バルジャンの誠実さに触れたファンテーヌは、娘のコゼットをジャン・バルジャンに託しそのまま息を引き取ってしまいます。

コゼットを引き取りに行こうとしたジャン・バルジャンですが、数日前に警部として赴任してきたジャベールによって、ジャン・バルジャンではないかと疑われていました。

そしてジャベールは市長の正体が罪人であると報告しましたが、ジャン・バルジャンは捕まって裁判にかけられるというのです。

そのことを聞いたジャン・バルジャンはほっとする一方で、自分と間違われて刑務所に入れられる人がいることに罪悪感を感じています。

しかし、捕まったらコゼットの面倒を見ることはできません。それでも見殺しにできず、裁判所に出向き、ジャン・バルジャンは自分だと名乗り出ます。

「警部がそのことを知っているはずだ」と言い残し、ファンテーヌがコゼットを預けた宿屋に向かいます。

宿屋を営む夫婦はしたたかで良心の欠片もなく金を巻き上げるためなら何でもする夫婦でした。ファンテーヌに対しても何かと理由をつけては金を巻き上げ、娘のコゼットは奴隷のように働かせていました。

ジャン・バルジャンは彼らの言い値を払ってコゼットを引き取り、姿を消します。その後にやってきたのはジャベールでした。しかし、一歩遅く、ジャン・バルジャンを捕まえることはできませんでした。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『レ・ミゼラブル』ネタバレ・結末の記載がございます。『レ・ミゼラブル』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2012,2023 UNIVERSAL STUDIOS

更に時が立ち、パリでは王政に対し抵抗する学生運動家や労働者が結託し、市民蜂起を計画していました。学生運動家のマリウスは祖父はブルジョアでしたが、勘当されたと言ってパリで仲間と共にフランスの未来のため運動を展開していました。

夢想家な部分もある青年・マリウスに思いを寄せていたのが、宿屋の夫婦の一人娘であるエポニーヌでした。しかし、マリウスはエポニーヌの思いに気づいていません。

そんなマリウスが街中で美しい女性を見かけ、一目で恋に落ちてしまいます。その美しき女性は、成長したコゼットでした。ジャン・バルジャンの愛情を受け、コゼットは優しい素直な子に育ちました。

マリウスはエポニーヌの気持ちも知らず、街中で見かけたコゼットの家を探すよう頼みます。エポニーヌは、その女性がコゼットという名前だとしり、自分が幼い頃に共に暮らしていたあのコゼットだと気づきます。

愛され裕福な家庭で育ったコゼットと自分の境遇を比べ胸を痛めつつも、愛するマリウスの幸せのためコゼットの居場所を教えます。夜になってコゼットの家を訪ねたマリウスは、コゼットと話し、2人は互いに愛し合っていることを確信します。

コゼットを愛したことでマリウスは死ぬことを恐怖に感じはじめます。蜂起に参加することも躊躇っていましたが、自分は革命のために身を捧げると市民蜂起に参加します。

コゼットへの思いを綴った手紙を受け取ったジャン・バルジャンはとうとう娘を奪う存在が現れたと愕然とします。

そしてその手紙をコゼットに渡さず、ジャベール警部に捕まる前にイギリスに渡ることを決意します。突然イギリスに渡ると聞き、コゼットは困惑しますが、ジャン・バルジャンは何も説明しません。

その頃、街中では市民蜂起が起こり、市民と国民軍が衝突していました。。ジャベール警部は、有志軍になりすまし、市民軍側に潜入します。しかし、その正体を見破られ捕虜になってしまいます。

イギリスへ経とうとしていたジャン・バルジャンでしたが、思い直し、マリウスを探しに市民蜂起の中に向かっていきます。市民軍にやってきたジャン・バルジャンは怪しまれていましたが、マリウスの手紙を渡した少年によって疑いが晴れます。

そして、ジャベール警部が捕虜になっているのを知ったジャン・バルジャンは、名乗りをあげ「この捕虜を任せてほしい」と言います。誰も見ていないところに行くとジャン・バルジャンはジャベール警部を解放します。

「解放したらまた追うぞ」と言うジャベール警部にジャン・バルジャンは、壁に向かって発砲し、捕虜を撃ったかのように見せかけ、そのままジャベール警部は立ち去ります。

徐々に市民軍は国民軍に倒れ、マリウスらがいる砦も国民軍に囲まれてしまいます。「無駄に死ぬことはない」と国民軍が降伏を呼びかけますが、市民軍は応じず、倒れてもまた誰かが立ち上がると言って、徹底抗戦の姿勢を崩しません。

国民軍の砲撃によって市民軍はどんどん倒れていきます。マリウスも銃で撃たれてしまいます。ジャン・バルジャンはそんなマリウスをかついで、下水道へと向かいます。

下水道にはあの宿屋の夫婦がいて、死体から金目のものを奪っていました。宿屋の夫婦の情報でジャベール警部もやってきます。

「なぜ助けた」と問い詰めるジャベールに「君のことを恨んではいない。職務を果たしただけだ」とジャン・バルジャンは言います。

「病院に連れて行かないとこの青年が死んでしまう」と言い、ジャベール警部に、自分の家の場所を言って「明日そこで捕まえたらいい、今は見逃してくれ」と言います。ジャベール警部は呆然とし、ジャン・バルジャンを見逃します。

自分が信じてきた法は何だったのか、善人と罪人の違いは何なのかと思い詰めたジャベール警部はそのまま自死をします。

病院で治療をうけ生き残ったマリウスでしたが、自分以外の仲間の死に絶望をし、明日を生きる希望も持てずにいました。そんなマリウスを献身的に支え、共に生きていこうとコゼットは言います。そんなコゼットの愛にマリウスは生きる希望を取り戻します。

コゼットとの結婚を許したジャン・バルジャンは自分の過去を全てマリウスに話し、自分は姿を消すから「コゼットにうまく言ってくれ」と託します。

幸せに包まれた結婚式で、ジャン・バルジャンがいないことに胸を痛めながらも幸せそうなコゼットとマリウス。

そこに宿屋の夫婦が紛れ込んでマリウスにジャン・バルジャンの居場所を教えます。ジャン・バルジャンは修道院で天の迎えが来るのを待っていました。

そこにコゼットとマリウスが駆けつけます。ジャン・バルジャンはコゼットによって自分の魂は救われたと涙ながらに言います。

ジャン・バルジャンのそばにはファンテーヌが現れ、皆に見守られながらジャン・バルジャンは息を引き取りました。

映画『レ・ミゼラブル』の感想と評価


(C)2012,2023 UNIVERSAL STUDIOS

因果と救い

本作の主人公であるジャン・バルジャンはパンを盗んだ罪で投獄されますが、刑期が19年に伸びたのは数回にわたって脱獄を試みたため、刑期が伸びたのです。

確かに投獄される必要があったのか、という罪ではありますが、その罪だけならば10年も経たずに出られたのです。

19年に及ぶ囚人生活でジャン・バルジャンの心は荒み、人を信じられなくなっていました。出所後も、世間から冷たい目で見られ、ジャン・バルジャンは世間に対し憎しみを募らせていました。

そんなジャン・バルジャンを人として扱い、温かい食事と寝床を与えてくれたのが、司教でした。更に盗みを働いたジャン・バルジャンを責めることなく、彼の嘘を肯定したのです。そんな人の優しさに触れたジャン・バルジャンは、「正しい人」に生まれ変わることを決意したのです。

コゼットを娘として愛し、育てたジャン・バルジャンは、娘を奪う若者がくること、そして自分の正体をコゼットに知られることを恐れていました。一方で、自分の罪を告白して許されたいという思いもあったのではないでしょうか。

しかし、そうすればジャン・バルジャンは罪人として刑務所にいき、罪人の娘としてコゼットは辛い人生を送らねばなりません。19世紀という時代において、コゼットの母・フォンティーヌが苦労したように、社会的地位の低い女性が1人で生きていくのは困難です。更に、罪人の娘となればもっと過酷な生活が待っています。

そのことが分かっているからこそ、ジャン・バルジャンはコゼットに真実を言うことができませんでした。

生まれ変わることを決意したジャン・バルジャンですが、ジャベール警部をはじめ様々な人によって己の犯した罪の因果から逃れられず、苦しみます

「正しい人」でいること、生まれ変わることはそう簡単ではありません

それは外的要因だけでなく、内面的な要因からもそうと言えるでしょう。19世紀を生きた人々だけではなく、現代を生きる私たちもそうです。自分は「正しい人」だと胸を張って言えるでしょうか。

誰かのために生きることは、全てがそうではないとしても、「正しい人」であろうとする表れかもしれません。人は1人では生きられないというのも、誰かの支えが必要という意味もそうですが、誰かを支えることも人は必要なのです。

ジャン・バルジャンを罪人たらしめたのは、恩赦のない法や貧しい人々に冷たい時代のせいでもありますが、ジャン・バルジャン自身でもあります。

妹のためにパンを盗んだことではなく、自分に手を差しべてくれた司教の銀食器を盗み、自分がここまで堕ちてしまったと絶望し、その罪を悔いています。そんなジャン・バルジャンの最期に訪れるのは、コゼット、そしてファンテーヌによる赦しという救いです。

己の罪を悔い続け、コゼットを守り育て、正しい人になろうとしてきたジャン・バルジャンの魂は祝福され神の御国への扉が開くのです。19世紀に書かれた原作ということもあり、キリスト教の思想が表れていますが、感動的な場面です。

まとめ


(C)2012,2023 UNIVERSAL STUDIOS

本作は、ヴィクトル・ユーゴーの原作の映画化ではなく、それを元にしたミュージカルの映画化となっています。

名曲が流れる名シーンも沢山あるなか、印象的なのはアン・ハサウェイ演じるファンテーヌの「夢やぶれて」(I Dreamed a Dream)ではないでしょうか。

恋した人は出て行き、1人娘のコゼットを育てるファンテーヌ。しかし、娘を預けた宿屋の夫婦は何かにつけお金をせびります。

必死に働いていたというのに、娘がいることを知られ工場をクビにされてしまいます。仕事がなければ娘を育てることはできないと絶望するファンテーヌにめざとく声をかける人々によってファンテーヌは髪を失い、次には歯も失い、失うものはないと体を売ります。

不幸ばかり降りかかり、絶望したファンテーヌの魂の叫びがまさに「夢やぶれて」なのです。本作でアカデミー助演女優賞を受賞したアン・ハサウェイの身を切るような演技が観客の心をとらえます

他にも印象的な曲として「民衆の歌」(Do You Hear the People Sing?)があるでしょう。ヴィクトル・ユーゴーの原作小説は、1830年の7月革命をモデルにしていると言われています。

この民衆蜂起により、シャルル10世が退位をし、立憲君主制に移行します。しかし、結局上層のブルジョワが権力を握り、選挙も普通選挙ではなく、制限選挙でした。労働者層を中心とした不満が1848年の二月革命につながっていきます。

革命に燃える学生や労働者の希望に満ちた思いと強い信念、そして王政に対する怒りが込められた「民衆の歌」は、その強いメッセージ、メロディー観客までもが拳を振り上げたくなるような高揚感に満ちています。

そんな信念も王軍に包囲されると絶望に満ちていきます。命が散ろうとも、最後まで戦い抜いた人々。その革命精神が受け継がれ、長きにわたる戦いと勝利につながっていきます。

歴史的背景を踏まえつつ、自由への叫び、信念を貫く姿は、普遍的なものでもあります。時代に翻弄されながらも愛と信念を胸に生き抜こうとした人々の姿、壮大な音楽に感動を覚えます


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