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Entry 2024/12/13
Update

映画『早乙女カナコの場合は』原作ネタバレあらすじ感想と評価レビュー。【早稲女、女、男】で描く10年越しのラブストーリー

  • Writer :
  • 星野しげみ

柚木麻子の小説『早稲女、女、男』が『早乙女カナコの場合は』のタイトルで映画化に!

作家・柚木麻子の小説『早稲女、女、男』(祥伝社文庫刊)は、早稲田大学の女学生の総称「早稲女」を地でいく主人公早乙女香夏子と、早稲田大学の先輩長津田の10年に渡るつかず離れずの恋愛模様を描いた作品です。

この小説が『早乙女カナコの場合は』というタイトルで、『さくら』(2020)の矢崎仁司監督によって映画されます。

映画『早乙女カナコの場合は』は、2025年3月14日(木)に全国ロードショーされます。

映画公開に先駆けて、原作小説『早稲女、女、男』をネタバレありでご紹介します。

小説『早稲女、女、男』の主な登場人物

【早乙女香夏子】
早稲田大学に通う主人公。早稲女という観念に捉われている

【長津田啓士】
早稲田大学大学生氏。香夏子の先輩であり、彼氏でもある

【吉沢洋一】
早稲田大学OB。永和出版社の編集員で、香夏子に一目ぼれ

【立石三千子】
立教大学の学生。香夏子の幼なじみ

【本田麻衣子】
日本女子大学の学生。長津田に一目ぼれしている

【早乙女習子】
学習院大学に通う、香夏子の妹

【慶野亜依子】
慶応義塾大学出身。香夏子の就職先である永和出版社の先輩、吉沢の元カノ

【青島みなみ】
青山学院大学に通う学生。旅行先で香夏子と知り合う

小説『早稲女、女、男』のあらすじとネタバレ


柚木麻子:『早稲女、女、男』(祥伝社文庫版)

早稲田大学四年の早乙女香夏子。金沢の中高一貫私立女子高からの大親友の立教大学に通う立石三千子と、学習院大学の裏にある女性専用マンションで暮らして3年半になります。

今年から学習院大学に通うことになった香夏子の妹習子も同居し、賑やかに暮らしています。

香夏子には、留年を繰り返す同じ早稲田大学生の脚本家志望のダメ男・長津田という腐れ縁の彼氏がいました。ですが、喧嘩ばかりで現在は上手くいっていません。別れたのも同然の有り様です。

融通がきかない、男っぽい、闘志むき出しなど、冗談半分に言われる、早稲田大学の女子通称「早稲女」のイメージに律儀に寄り添い、化粧もオシャレもしない早稲女の香夏子。

三千子はそんな香夏子の恋にヤキモキして、つい長津田にダメ出しをしていました。

ある日、三千子は香夏子の就職内定祝いをかねたサークルの飲み会に誘われて同席します。そこには早稲田の学生ばかりか、他の大学生もゲストとして参加していました。もちろん、長津田も来ていました。

ところが長津田は、飲み会に来た日本女子大学の麻衣子とイチャイチャしています。

一方香夏子はといえば、内定をもらった出版社の先輩でもある吉沢に告白されたのですが、長津田に未練があり、良い返事をしていません。

三千子が長津田の気持ちを確認すると、長津田は「香夏子はダメな自分に尽くしてくれるけど、麻衣子は頼ってくれるから居心地が良い」と自分勝手な返事が返って来ました。

そんな長津田に「もっと気楽につきあえ」と三千子は言いますが、反対に長津田は聞いてくれません。

当の三千子はというと、別れた美容師の元カレに未練があり、それを隠して彼と友だちづきあいを続けています。

さて、話の元となった日本女子大学の麻衣子。麻衣子は日本女子大生だけど他の大学の男性からサークルに誘われ、そこで早稲田大学の長津田先輩に一目惚れしました。

ロン毛ヒゲモジャでジョニデに似ている長津田には恋人がいるらしい。けれど、化粧もしないがさつな早稲女なんかに渡さないぞ!と頑張って長津田を略奪しようとします。

三千子の元カレが勤める美容院で髪を切った長津田にちょっとガッカリし、更に香夏子が手伝っている作家の有森樹李のサイン会に行く長津田にも呆れるのですが、やっぱり長津田のことが好きだと自覚します。

長津田のカノジョと言われる香夏子と話してみて、彼女が思っていたほど嫌な女じゃないとわかったのですが、麻衣子は「長津田のことは諦めません」と宣戦布告しました。

香夏子の方は別れたはずの長津田に未練タラタラ。長津田が麻衣子とバイク旅行することにショックを受けて、妹の習子と飲みに行き、泥酔します。

香夏子から長津田との思い出の指輪を捨ててと言われ、習子は大学の沼に指輪を放り投げました。

ですが、吉沢に介抱されて帰宅した香夏子に今度は「指輪は捨てないで」と言われ、急遽、吉沢と共に指輪を探すことになりました。はた迷惑な香夏子にうんざりします。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには小説『早稲女、女、男』ネタバレ・結末の記載がございます。小説『早稲女、女、男』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

一方、吉沢の務める出版社には、テレビ局に就職したかったけど落ちて大して本好きでもなかったけど慌てて決めて出版社に就職した慶野亜依子がいました。

彼女は、実は吉沢の元カノ。5年つきあったのに「好きな子ができたから」とあっさりふられたけど、こちらも吉沢に未練タラタラ。

そんなとき、就職内定が決まった香夏子が亜依子の下で営業の勉強をすることになりました。香夏子が吉沢の想い人と知って、内心穏やかでない亜依子。おまけに本好きをアピールする香夏子に不愉快度は高まります。 

ですが、日がたつにつれて最初の印象と異なり、きちんとつきあってみると香夏子は悪い子じゃないと分かりました。

更に吉沢は香夏子にゾッコンのようですが、香夏子は元カレに未練があって吉沢とはあまりうまく行ってないみたいで、香夏子を憎む気持ちはなくなります。

亜依子は、お気に入りだった手帳が京都本社でしか販売されなくなって「あの手帳じゃないとダメなのに」とイライラしていました。

ですが、香夏子から自分は手帳は手作りしていると言われて、自分でも手帳を作ることにしました。

それからしばらくして、大学の卒業式を終えた香夏子は、メキシコ行の飛行機に乗っていました。卒業旅行と称して、メキシコへパッケージツアーで一人旅をすることにしたのです。

偶然行きの飛行機で隣の席に座ったのが、中南米の雑貨が好きで、バイトしていた雑貨店への就職が決まった青山みなみでした。

実はみなみも、彼氏と元カレとの間で気持ちが揺れ動いている状況でした。同年齢で生活環境もよく似た2人は、すぐに仲良しになります。

メキシコに着くとそれぞれの予定に従って別れたのですが、みなみが高山病で観光ツアーに行けず一人ホテルにいたら、香夏子が遊びに来てくれて一緒に街歩きをすることになりました。

雑貨が好きで、なんにでも「可愛い」を連発するみなみでしたが、香夏子から「スペインがマヤを文明を滅ぼして支配したという過去の歴史を感じろ!」と厳しいことを言われ、ムッとします。

香夏子は旅先でも長津田と吉沢どっちを選んだら良いか迷ってましたが、長津田への未練を断ち切り、吉沢とも別れると決めました。

そして、長津田との思い出の指輪をアクセサリーを扱う店で売ってしまい、すっきりした気分になりました。

ところがみなみの方は「二股を続ける!」と決意。正反対の結論を出した香夏子とみなみですが、なんだかんだでさらに仲良くなりました。

月日は流れ、香夏子が卒業して6年がたち、香夏子は28歳になりました。まだ独身です。

香夏子は、作家の有森と後輩の菜穂子と共に、早稲田の学園祭を訪れました。

菜穂子も早稲女なのに自虐しないし、スマートだし、ちょっと合わないと感じていました。ですが、菜穂子に「男性恐怖症じゃないですか? なぜそんなに早稲女というブランドに捉われているのですか?」と言われてビックリします。

そこで香夏子は6年ぶりに長津田に電話しました。長津田はまだフラフラしていたけど、友だちの働く芸能事務所でマネージャー業をしていました。

そのまま2人は一夜を過ごしました。香夏子は自分はずっと恋人がいなかったのに、長津田には、2カ月ほど前に別れたカノジョがいたという事実を知り、モヤモヤした気分になります。そんなときに三千子から合コンの話が入りました。

男性は独身を集めたのですが、集まった女子は香夏子を入れて6人。

就職したレストランを辞めて職を転々としたが雑貨店兼カフェの雇われ店長になり、店の客と結婚した三千子に、早稲男に見切りをつけて商社に就職して寿退社した麻衣子。

会社に出入りしていた年下のバイトと結婚後、夫をサポートして広告代理店に入社させて、娘が2人いる亜依子と、恋人の賢介と結婚して教師になった妹の習子。

それに、雑貨輸入会社のバイヤーになり泥沼不倫のあと、包容力のある男と結婚したみなみ。あきれたことに全員既婚者で、独身女は香夏子だけでした。

自分を気遣っての合コンとわかるのですが、香夏子はうっかり「元カレをセフレにしている」と言ってしまい、自ら合コンを潰してしまいます。

その後、みなみから渡されたのが長津田との思い出のカリオストロの指輪でした。メキシコに仕入れに行ったら売っていたというのです。

みんなから諭され、アドバイスもされ、指輪をもらった香夏子は長津田の家へ行きました。

長津田から「文学賞の戯曲部門で佳作に入賞した」と聞かされてビックリ。更にプロポーズらしきセリフを言われて混乱します。

長津田もカリオストロの指輪を捨てられずにいて、入賞したら香夏子に連絡するつもりだったと言います。

そんな都合のよい話があるものか。自分はまた長津田に騙されているのではないか。でも……。あるべきものに自分をすり合わせるのではなく、本当に求める物を探るべきはないのか。

長津田の家から飛び出した香夏子を追いかけた長津田。転んだ香夏子にぶつかり路上に倒れ込みます。

倒れ込んだままの2人は、お互いに笑顔を交わしました。

小説『早稲女、女、男』の感想と評価

『早稲女、女、男』は、早稲田大学、立教大学、日本女子大学、学習院大学、慶応義塾大学、青山学院大学と、名だたる大学に通う女子たちとその恋愛模様を描いた作品です。

主役の早稲田大学の早乙女香夏子は、男っぽく融通がきかないがさつな「早稲女(ワセジョ)」と呼ばれる代名詞そのままの女子。

そんな香夏子の恋人は、同じく早稲田大学の学生ですが、留年を繰り返しているうだつの上がらない「早稲男(ワセダン)」です。大学入学以来の交際ですが、腐れ縁のようにずるずると引き摺って今日に至っています。

そこへ現れた恋敵、「ポン女」の麻衣子。長津田を略奪しようと彼に付き纏います。また香夏子にも、内定した就職先の永和出版社の編集員吉沢からの告白という衝撃的な出来事が起こります。

長すぎた春のような関係で、別れたはずの恋人同士の香夏子と長津田。未練タラタラな女子の気持ちを知ってか知らずか、他の大学生の友人たちが見守り、あるいは心変わりのチャンスとばかりに窺っていました。

うだつの上がらない男ですが付き合いだして10年……。どうしても忘れることのできなかった男の存在に気が付いた香夏子。早稲女が右往左往してやっと掴んだ幸せに納得せざるを得ません。

小説の女性の登場人物の名前に在学大学の一字がはいっていることや、目次が全部大学の校歌の一部から選出していることも面白い趣向でした

また、香夏子の就職先の永和出版の小説家として、『私にふさわしいホテル』の有森樹李が再登場しています。こちらの小説も映画化され、2024年12月に公開となっています。

たくましい作家有森樹李の再登場は、柚木麻子ファンには嬉しいサービスに違いありません。

映画『早乙女カナコの場合は』の見どころ


(C)2015 柚木麻子/祥伝社 (C)2024「早乙女カナコの場合は」製作委員会

奇抜なタイトルの『早稲女、女、男』が、『さくら』(2020)の矢崎仁司監督の手腕で、『早乙女カナコの場合は』と意味深なタイトルの映画になりました。

早乙女カナコを演じるのは、『さよならドビュッシー』(2013)『熱のあとに』(2024)の橋本愛。

カナコと付かず離れずの関係を続けているうだつが上がらない脚本家志望の学生・長津田役には、『犬部!』(2021)『碁盤斬り』(2024)など、幅広く活躍をしている若手実力派俳優・中川大志。

橋本愛と中川大志の共演は本作が初となるそうですが、凸凹な恋人たちの腐れ縁のような関係を、切なくかつ美しく演じてくれることでしょう

小説の「香夏子」という漢字名は、映画では「カナコ」のカタカナ名に変わっています。この辺りにも監督の思惑が潜んでいるようで、2人のロマンスの結末に期待は膨らみます

映画『早乙女カナコの場合は』の作品情報


(C)2015 柚木麻子/祥伝社 (C)2024「早乙女カナコの場合は」製作委員会

【日本公開】
2025年(日本映画)

【原作】
柚木麻子:『早稲女、女、男』(祥伝社文庫版)

【監督】
矢崎仁司

【脚本】
朝西真砂、知愛

【キャスト】
橋本愛、中川大志、山田杏奈、臼田あさ美、中村蒼

まとめ

柚木麻子の小説『早稲女、女、男』をネタバレ有りでご紹介しました。本作は春に『早乙女カナコの場合』というタイトルで映画化されます。

「早稲女(ワセジョ)」とは、早稲田大学在学中もしくは卒業生の女性を指す言葉で、主に「女性らしさを武器にしない(できない)元気な人たち」という意味があります。

良い意味で社会に出て男性に負けずにバリバリ仕事をするイメージがありますが、ラブの方はいかがなものでしょう。

小説『早稲女、女、男』では主人公の香夏子が、苦節10年をかけて本当の愛を貫きました。登場人物の多い原作と比べて、映画の方はもう少し周囲の環境を簡素化しているようですが、果たしてその結末はどうなるのでしょう。

映画『早乙女カナコの場合は』は2025年3月14日(木)に全国ロードショー!

香夏子と長津田を演じる、橋本愛と中川大志のラブストーリーが楽しみです。




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