マーベル初の本格ミステリー・サスペンス!
S・J・クラークソンが脚本・監督を務めた、2024年製作のアメリカのミステリー・サスペンス映画『マダム・ウェブ』。
舞台はアメリカ・ニューヨーク。救命士のカサンドラ・”キャシー”・ウェブは、生死の境をさまよう大事故に遭ったことをきっかけに、未来を予知する能力を手に入れます。
ある日、キャシーは偶然出会った3人の少女が謎の男に殺される未来を見たことから、少女たちを守ることを決意。しかし何度も危機を回避しても、謎の男はどこまでも追いかけてきて………。
マーベル映画初の本格的なミステリー・サスペンス映画『マダム・ウェブ』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
映画『マダム・ウェブ』の作品情報
【公開】
2024年(アメリカ映画)
【原案】
ケレム・サンガ
【監督】
S・J・クラークソン
【キャスト】
ダコタ・ジョンソン、シドニー・スウィーニー、イザベラ・メルセド、セレスト・オコナー、タハール・ラヒム、マイク・エップス、エマ・ロバーツ、アダム・スコット、ケリー・ビシェ、ゾーシャ・マメット、ホセ・マリア・ヤスピク
【作品概要】
アメリカのテレビドラマ「ジェシカ・ジョーンズ」シリーズ(2015~2019)などを手掛けたS・J・クラークソンが脚本・監督を務めた、アメリカのミステリー・サスペンス作品。
アメリカの漫画出版社「マーベル・コミックス」のキャラクター、マダム・ウェブを主役に描いた、コロンビア・ピクチャーズとマーベルが共同で製作した「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」(SSU)の第4作目です。
『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(2015)や『サスペリア』(2018)などに出演するダコタ・ジョンソンが本作の主演を務め、ある日突然未来予知の能力に目覚めた本作の主人公マダム・ウェブことカサンドラ・”キャシー”・ウェブ役を演じています。
映画『マダム・ウェブ』のあらすじとネタバレ
1973年、ペルーのアマゾン熱帯雨林。臨月の妊婦である科学者コンスタンス・ウェブは、探検家のエゼキエル・シムズと一緒にクモの研究をしていました。
探していた、細胞構造を強化する効果がある毒「ペプチド」をもち、その毒が大勢の人々の命を救う万能の薬になる可能性を秘めた希少なクモを手に入れた瞬間、コンスタンスはシムズに撃たれ、クモを奪われてしまいます。
そこへ現れた、手から毒を出して悪者を倒す伝説上のクモ人間ラス・アラニャスによって命を救われたコンスタンスでしたが、彼らの巣で娘を出産後に命を落としてしまいました。
それから時は流れ、2003年のアメリカ・ニューヨーク。コンスタンスの娘カサンドラ・ウェブ(愛称はキャシー)は救命士として働き、一人でも多くの命を救うため日々奮闘していました。
そんなある日、橋の上で車両3台による交通事故が発生。相棒のベン・パーカーと一緒に横転した車から男性を救助したキャシーでしたが、その車に閉じ込められ橋から転落。3分間川に沈んで生死の境を彷徨いました。
その事故をきっかけに、未来予知の能力を手に入れたキャシーは、まるでデジャブのような奇妙な体験を重ね戸惑っていました。
救命措置をしてくれたベンが、キャシーの血中酸素の数値を調べ、ちゃんとした医者による精密検査を受けるように言ったこと。
ベンの妊娠中の義理の妹メアリー・パーカーと、彼女のお腹の子を祝福するパーティーイベント「ベビー・シャワー」での出来事。
そのベビー・シャワー中に招集がかかったクイーンズの埠頭での火災現場での出来事。火災現場から救急車を走らせた2人の同僚であり友人のオニールの悲劇的な死。
医者の精密検査を受けた結果、キャシーの視力は正常で身体面も問題なし、頭部CTもMRIも異常なしでした。
オニールの死を見たはずなのに、その未来を変えることができなかったことに落ち込むキャシー。ですが休養中、自宅の窓ガラスに激突して死んだ鳩の未来を変えることができたのです。
自分の行動で未来を変えることができた。そう実感したキャシーは元気を取り戻し、オニールの葬儀が行われるポキプシーへ向かうことに。
しかし偶然、同じ列車の車両に乗っていた10代の少女3人、ジュリア・コーンウォールとマティ・フランクリンとアーニャ・コラソンが、謎の男に殺される未来を見てしまいます。
それがこれから起きる未来の出来事だと確信したキャシーは、彼女たちを助けることを決意しました。
まるで着ればクモ人間のようになれる特殊な黒いスーツを纏った謎の男の執拗な追跡から逃れ、タクシーを盗み逃げこんだ森の中で、ジュリアたちに事情を説明するキャシー。
すると意外なことに、彼女たちと接点があったことに気づきます。キャシーはジュリアの継母を助け、病院で会っていました。
ジュリアの継母を救急搬送中、キャシーはスケボーに乗っていたマティに、進路妨害された挙句、中指を立てられました。
また、キャシーとアーニャは同じアパートに住んでいました。
謎の男のことをクモ人間のようだと表現したジュリアの言葉を聞いて、キャシーは一旦、彼女たちをその場に残して家に帰りました。
母の遺品の手帳に、ラス・アラニャスのことが記されていたことを思い出したからです。
「現地の民間伝承によれば、彼らはクモの毒からパワーを獲得。素早く動き、圧倒的な力を誇り、クモのように登る」、まさに謎の男と同じでした。
「ラス・アラニャスは、予知能力に似た第六感を持つと言われている」、まさにキャシーと同じでした。
さらにその手帳の中には、母と一緒にいる謎の男の写真があり、キャシーは謎の男がエゼキエルであることを知ります。
コンスタンスから奪ったクモで富を築いたシムズは、毎晩同じ展開で、特殊なスーツを纏った3人の女性に殺される自身の未来を夢で見て苦しめられていました。
国家安全保障局(NSA)が顔から個人を特定する技術を開発したという噂を耳にしたシムズは、NSAの女性職員を誘惑して街中のすべての監視カメラを見れるNSAのシステムを盗みました。
金で雇った天才ハッカーのアマリアに頼んで、夢で見た3人の現在の顔の映像化・特定させました。その3人が、ジュリア・マティ・アーニャでした。
その頃ジュリアたちは、ジュリアとマティの身の上話をしていました。
ジュリアは学校でのいじめや両親の離婚が理由で、強くなりたいと思いテコンドーを習得。父親の新しい家族と一緒に暮らしていること。
マティは裕福な家庭に生まれたものの、父親はプラ製品で大儲けし、母親はクズ芸術に夢中になり北京にいってしまい家にいない状況。
お腹をすかせた3人は、来る途中で見かけたチャーチ・ヒルのダイナーに食事をしに行くことに。
しかし駅での出来事は新聞やニュースに大きく報じられていたため、3人に気づいた男性客が警察に通報してしまいます。
そうとは知らず、キャシーは3人が待っているはずの場所に戻りました。その瞬間、彼女はダイナーにいる3人を見つけ出した直後に現れたエゼキエルによって、ジュリアとマティと自分が順に殺されるという恐ろしい未来を予知します。
キャシーはナンバープレートを外してきたタクシーに乗り、3人がいるダイナーへと急行。ダイナーに現れたエゼキエルに向かって突っ込み、3人を車に乗せて全速力で逃げました。
ダイナーから離れたモーテルの一室に避難したキャシーたち。キャシーはとりあえずここで一夜を明かし、明日3人を親元に返すといいました。
キャシーを信じずにした自分たちの勝手な行動を反省したジュリアは、それを聞いて「無理よ」と反対しました。
実の母親は離婚後に心を病んで病院に入院しており、父親と新しい家族にとって、自分は厄介者だから捜すことも助けることもしないだろうと言いました。
つまりジュリアが列車に乗っていたのは、父親が自分を捜してくれるかどうか試すためだったのです。
つづけてマティも、両親の海外出張の理由は「子供は負担で面倒」だからだと告白しました。マティが頼んでも、両親は戻ってこないと………。
それを聞いたキャシーが、なら警察にと提案すると、今度はアーニャが反対しました。
アーニャが5歳の時に母親と死別し、父と2人だけの家族となりました。しかし実は彼女と父親は不法滞在者でした。
半年前、アーニャが家にいないときに父親が強制送還されたことで、彼女はその事実を知りました。だから18歳になるまで、警察には行けないのだといいます。
キャシーも孤児であることを明かしました。そんな彼女に、3人は助けを求めました。
映画『マダム・ウェブ』の感想と評価
生死の境をさまよう大事故がきっかけで、自分の中に眠っていたラス・アラニャスのクモの大いなる力の1つ、未来予知の能力に目覚めた救命士のキャシー。
突如覚醒した能力に戸惑い、しかも未来を予知しても友人の命を救えなかったことにひどく落ち込む彼女の姿は、画面越しからでも彼女の困惑と悲しみとやるせなさを感じて胸が痛いです。
予知したところで未来は変えられない、そう悲観してしまったキャシーが初めて、予知した鳩の運命を変えました。
さらに偶然同じ列車に居合わせた3人の少女の運命も変えてしまったのです。
しかも最初こそマティたちはキャシーとの信頼関係を築けず、勝手な行動ばかりして彼女をヒヤヒヤさせていました。キャシーも、彼女たちの未来を予知したから危機を救ったものの所詮は赤の他人、一度彼女たちをエゼキエルの言葉通り見捨てようとする描写があります。
ですがキャシーたちは、「ひとりぼっちで孤独である」という唯一の共通点を見つけて以降、互いに歩み寄り信頼関係を築いていきました。
エゼキエルとの最終対決では、キャシーが3人を、3人がキャシーをそれぞれ本気で救おうとしている姿が描かれていてとても感動します。
また物語の後半では、キャシーが母親の死の真相と、知らなかった母親の愛と自身の出自を知る描写がありました。
それまでなぜ、コンスタンスが身重の身でありながらクモの調査をしにアマゾンへ行っていたのか謎でしたが、それがこれから生まれてくる娘の病気を知って、娘を救うためだったなんて、もう涙腺崩壊して涙ダバー。
それを教えてくれたのが、傍観できずにコンスタンスの命を救ったラス・アラニャスのメンバーの1人、サンティアゴです。
サンティアゴと出会わなければ、キャシーは自身の力のことやエゼキエルのことを知ることができず、そしてマティたちを彼から救うことはできませんでした。
なのでホセ・マリア・ヤスピクが熱演するイケおじクモ人間、ラス・アラニャスのメンバーの1人サンティアゴのことも注目して観てほしいです。
まとめ
ニューヨークで救命士として働くキャシーが、生死の境をさまよう大事故をきっかけに未来予知の能力に目覚め、謎のクモ男に執拗に命を狙われている3人の少女の運命を変えていく、アメリカのミステリー・サスペンス作品でした。
本作の見どころの一つであるキャシーと、謎のクモ男ことエゼキエルに執拗に命を狙われる3人の少女ジュリア・マティ・アーニャの関係性の変化。最初は互いに信用できず、キャシーは勝手な行動をとる3人に振り回されてばかりでした。
ですがキャシーが赤の他人である自分たちの命を、未来を予知して救ってくれていることを実感したジュリアたちは、彼女に厚い信頼を寄せます。キャシーもそんな3人に心を開いていき、本気で彼女たちを救おうと決意。
エゼキエルとの最終対決を経て、彼女たちは共に戦う「家族」となり、スパイダーウーマンとして活躍していくことに。これがもう感動しますし、のちにスパイダーウーマンとして活躍することになるキャシーたちをもっと見ていたくなるほど好きになります。
一方本作の悪役であるエゼキエルが、ジュリアたちを執拗に追いかけ殺そうとする理由については、もし自分が未来の彼女たちに何度も殺される未来(ラス・アラニャスのクモを盗んだことによる呪いによるものと考察する)を毎晩のように見ていたら…と考えると、同じことを考えるかもしれないと同情する部分もありました。
ですが、もとはといえば、己の野望のために1人の科学者を利用して殺し、ラス・アラニャスのクモを盗んで富と力を手に入れたのですから、エゼキエルにお似合いの罰でしょう。