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『ファウンダーズデイ殺戮選挙』あらすじ感想評価。スラッシャームービーの欲望渦巻く秀作!

  • Writer :
  • 糸魚川悟

映画『ファウンダーズデイ/殺戮選挙』は2024年9月20日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷他で全国順次公開!

国であったり県であったりと規模に大小はあれど、特定の集団の長を決める「選挙」の期間は世の中に異質な空気が流れるものです。

候補者たちは自身が長にふさわしいと様々な方法で宣伝し、有権者は多くの情報の中から自分自身で投票先を決めなければいけません。

今回はそんな「選挙」の最中に巻き起こる猟奇殺人事件を描いた最新スラッシャー映画『ファウンダーズデイ/殺戮選挙』(2024)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。

映画『ファウンダーズデイ/殺戮選挙』の作品情報


(C)2023 Mainframe Pictures. All Rights Reserved.

【日本公開】
2024年(アメリカ映画)

【原題】
Founders Day

【監督】
エリック・ブルームクイスト

【脚本】
エリック・ブルームクイスト、カーソン・ブルームクイスト

【キャスト】
ナオミ・グレイス、デヴィン・ドルイド、ウィリアム・ラス、エイミー・ハーグリーヴス、オリヴィア・ニッカネン、エリック・ブルームクイスト

【作品概要】
ショートムービーである『Midnight Brew』(2013)や『The Cobblestone Corridor』(2015)で高い評価を受けた監督であり、本人自身も俳優としてさまざまな作品に出演するエリック・ブルームクイストが監督・脚本を務めたホラームービー。

ドラマ「NCIS 〜ネイビー犯罪捜査班」に複数エピソードしたナオミ・グレイスが本作で主演を務め、ドラマ「13の理由」にレギュラー出演したデヴィン・ドルイドや、同じく「13の理由」で主人公の母親役を演じたエイミー・ハーグリーヴスが本作に出演しました。

映画『ファウンダーズデイ/殺戮選挙』のあらすじ


(C)2023 Mainframe Pictures. All Rights Reserved.

アメリカ合衆国のニューイングランド地方に位置する小さな町では、新たな町長を決めるための「選挙」の日が迫っていました。

現職のブレア・グラッドウェルと彼女に対抗する形で出馬したハロルド・フォークナーの二人の候補者が舌戦を繰り広げる中、町で候補者の家族が襲撃されます。

大切な人を目の前で失い強いトラウマを抱えることとなったアリソンは事件を調べ始めますが、町では新たな殺人が起きることになり……。

映画『ファウンダーズデイ/殺戮選挙』の感想と評価


(C)2023 Mainframe Pictures. All Rights Reserved.

「スラッシャー」の定番でありながら虚をつく展開

ホラー映画のサブジャンルとして長い人気を誇る「スラッシャー」と言うジャンル。

悪魔のいけにえ』(1975)や『ハロウィン』(1979)などの作品が「スラッシャー」の代表作として有名かつ人気であり、「スラッシャー」と言えばこれらの作品を思い浮かべる人も多くいると思います。

上記の作品は『悪魔のいけにえ』であればレザーフェイス一家、『ハロウィン』であればブギーマンなど襲撃者の正体が鑑賞者に明かされていますが、一方で「スラッシャー」は襲撃者の正体が終盤まで明かされない「ミステリ」と組み合わされることも多くあります。

ハロウィンマスクを被った殺人鬼による連続殺人を描いた『スクリーム』(1997)での物語の終盤で明らかになる犯人の正体が、命を狙われているはずの登場人物たちの中にいたことが判明する展開が評価を受け、この作品を起点に「ミステリ」との融合が「スラッシャー」の中で定番化していくことになりました。

映画『ファウンダーズデイ/殺戮選挙』は、今や「スラッシャー」の定番となった「ミステリ」とのかけ合わせが行われている作品ではありますが、「ミステリ」の肝である「誰が犯人か」を分からせないようにする物語展開はもちろんですが、徹底的に「誰が重要人物なのか」を鑑賞者に悟らせない脚本に拘ったことが分かる作品。

誰がいつどんなタイミングで襲われるのか、そして誰が本当に信用できる人間なのか、「ミステリ」との融合作は数多くあれど、本作ほど徹底して展開を読ませないように意識した作品は珍しいと言える「スラッシャー」映画となっていました。

「選挙」と「殺戮」の饗宴


(C)2023 Mainframe Pictures. All Rights Reserved.

本作の舞台となる町では町長を決める「選挙」が行われています。

現職のブレアと挑戦者となるハロルドで町民たちは真っ二つに割れる状況となっており、町はさまざまな理由から何が起きてもおかしくないような情勢となっています。

このような特殊な状況下で殺人が発生したことで、町民たちは事件に「選挙」を紐づけさらに対抗派閥への疑心暗鬼を強めていくことになると言うように、本作では「選挙」と「殺戮」が町をより暗い影で覆っていく、これ以上ない「舞台装置」として機能していました。

同じ「スラッシャー」映画となる『ハロウィン』では「ハロウィン」、イーライ・ロスが手掛けた『サンクスギビング』(2023)では「感謝祭」の日を描くなど、特殊な状況下で巻き起こる殺人は「舞台装置」として優秀であり、観る人を強く惹きつける効果があります。

長を決める「選挙」でありながら、その候補者たちは手放しで絶賛することができないような裏を持っている……。そんな状況下で「選挙」の中心人物の家族が殺人者によって次々と狙われていく、果たしてこの「選挙」と「殺戮」はどのようなエンディングを迎えることになるのでしょうか。

まとめ


(C)2023 Mainframe Pictures. All Rights Reserved.

静かな町で巻き起こる連続殺人事件。

大切な人を奪われたアリソンが真実と対峙した時、彼女は町にとって重大な判断を下す役目を負うことになります。

「選挙」と「殺戮」が嫌すぎるほどに奇跡の融合を果たした映画『ファウンダーズデイ/殺戮選挙』(2024)は、2024年9月20日よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、シネマート新宿他全国ロードショー。

「スラッシャー」映画が大好きな人にぜひとも観てほしい、オススメの作品です。



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