連載コラム「シネマダイバー推薦のNetflix映画おすすめ」第87回
「ハロウィン」シリーズや「13日の金曜日」シリーズなど、現代のスラッシャー映画の基礎となった伝説的名作と呼ばれる作品たち。
その中でも「チェーンソー」という凶器によって圧倒的な存在感を放つ「悪魔のいけにえ」シリーズは特に人気の高いシリーズです。
今回はNetflixで独占配信された「悪魔のいけにえ」シリーズの最新作『悪魔のいけにえ -レザーフェイス・リターンズ-』(2022)を、ネタバレあらすじを含めご紹介させていただきます。
【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら
CONTENTS
映画『悪魔のいけにえ -レザーフェイス・リターンズ-』の作品情報
【配信】
2022年(アメリカ映画)
【原題】
Texas Chainsaw Massacre
【監督】
デヴィッド・ブルー・ガルシア
【脚本】
フェデ・アルバレス、ロド・サヤゲス、クリス・トーマス・デヴリン
【キャスト】
サラ・ヤーキン、エルシー・フィッシャー、ジェイコブ・ラティモア、ネル・ハドソン、オルウェン・フエレ、アリス・クリーグ、ウィリアム・ホープ、マーク・バーナム
【作品概要】
トビー・フーパーによって製作された伝説的ホラー映画『悪魔のいけにえ』(1975)から始まった殺人鬼「レザーフェイス」を題材とした映画シリーズ第9弾。
『ドント・ブリーズ』(2016)を手掛けたフェデ・アルバレスが脚本として参加し、『ハッピー・デス・デイ 2U』(2019)に出演したサラ・ヤーキンが主演を務めました。
映画『悪魔のいけにえ -レザーフェイス・リターンズ-』のあらすじとネタバレ
1973年、テキサスの郊外で5人の男女が人の顔の皮を被った殺人鬼、通称「レザーフェイス」に襲撃され死傷しました。
「テキサスの大虐殺」と呼ばれ有名となったこの事件でしたが、唯一の生存者サリーは事件について詳しく語ることは無く、その後もレザーフェイスは捕まることはありませんでした。
約40年後のテキサス州ハーロウ、ゴーストタウンとなった町の再興を掲げるメロディとその妹ライラ、メロディの親友のダンテとダンテの彼女であるルースはハーロウの町に足を踏み入れます。
町で修理工を営むリヒターや保安官のハサウェイと遭遇し、訝しまれながらも町へと受け入れられたダンテとメロディ。しかし、既に閉鎖済みの「ハーロウ児童養護施設」に白人至上主義を掲げた「アメリカ連合国」の旗がかけられていたことから、午後に行われる競売への影響を恐れ侵入します。
この建物は銀行の差し押さえ物件であり既にダンテが買い取っているはずでしたが、建物内には児童養護施設だった頃の管理人のマック夫人が住んでいました。
ダンテとメロディは権利を自分たちが持っていると言いマックに退去を促しますが、彼女は銀行から権利を買い戻しており自身の所有物であることを主張。
「アメリカ連合国」の旗の件もあり黒人のダンテは苛立ち、ハサウェイを呼び出しマックの強制退去を求めます。
マックは問題行動を繰り返している女性だったこともあり、ハサウェイは部下とともに彼女を連れ出そうとしますが、心臓を弱めているマックはショックによりその場に倒れてしまいます。
建物に隠れ住んでいた児童養護施設で育った巨漢の男はマックに連れ添い、病院に運ぼうとするハサウェイたちの車に同行。
責任を感じるメロディはルースにマックへの同行をお願いし見送ると、町へとやって来た競売参加者の集団をダンテとともに案内し始めます。
田舎町と言うこともあり病院への道のりは長く、マックは護送車の中で息を引き取ります。
マックの死に憤る巨漢の男は怒り狂うとハサウェイとその部下を殺害し、死亡したマックの顔を剥ぎ取り自身に被せ「レザーフェイス」として復活。
同行していたルースは無線で助けを求めますが、レザーフェイスによって腹を裂かれ死亡しました。
その頃、かつて学校で銃の乱射事件に巻き込まれ奇跡的に生き残った過去を持つライラは、町に嫌な雰囲気を覚えていました。
メロディはそんな彼女を心配し競売の終わりと共に都会へと帰ろうとしますが、殺害される前にルースが送信した「マックが死亡した」と言うメッセージに責任を感じダンテを問い詰めました。
権利書が手元にないと言うダンテを連れてメロディは施設内を調べるとマックの部屋に施設の権利書を見つけ、マックの言っていたことが事実であったことを知ります。
すると戻ってきたレザーフェイスによってダンテは口を裂かれ、その様子を見たメロディは咄嗟にベッドの下に逃げ込みました。
レザーフェイスはマックの服を抱きしめると、施設の外から聞こえる競売参加者たちの「町は俺たちのものだ」と言う言葉に激怒し、壁の中に封印していたチェーンソーを取り出しました。
映画『悪魔のいけにえ -レザーフェイス・リターンズ-』の感想と評価
チェーンソーの恐怖再び!絶望感の高い完全復活作
「ハロウィン」シリーズの殺人鬼「ブギーマン」は静かに人に近づき殺していき、「13日目の金曜日」の殺人鬼「ジェイソン」は人知を越えた耐久力で生存者を追い詰めます。
「悪魔のいけにえ」の殺人鬼「レザーフェイス」はタフであるとは言え、ジェイソンのような耐久力もブギーマンのような隠密性もありません。
しかし、彼の代名詞とも言える凶器の「チェーンソー」はそのエンジン音ひとつで恐怖に陥れる圧倒的な存在感を放っており、最新作である本作でもチェーンソーの音色は絶望の音を奏でています。
特に中盤のバス内でのシーンは逃げ場のない密室空間とチェーンソーの恐怖が合わさることで唯一無二のホラーシーンとなっており、スラッシャー映画ファンには必見のシーンになっていました。
レザーフェイスの意外な顔が明らかになる「復讐」の作品
本作『悪魔のいけにえ -レザーフェイス・リターンズ-』はシリーズ1作目となる『悪魔のいけにえ』から地続きの物語が展開されます。
初代主人公のサリーを演じたマリリン・バーンズの死去によって同俳優での再登場は叶わなかったものの、本作には初代主人公のサリーが長い時を経て再登場。
サリーによるかつてレザーフェイスによって殺害された友人たちの「復讐」が1つの軸となっている本作ですが、実はメインとなるのはレザーフェイスによる「復讐」劇です。
40年前の事件以降、児童養護施設に身を寄せていたレザーフェイスは大きな問題を起こすことなく、施設の管理人のマック夫人とともに静かな毎日を過ごしていました。
しかし、主人公のメロディたちの勘違いによって夫人が死亡し、レザーフェイスは怒りから封印していたチェーンソーを取り出し殺戮に身を染めます。
本作ではレザーフェイス個人の思想が描かれており、凶行を重ねる恐怖の対象でありながら切なさも同時に残す、新たなレザーフェイスの一面を見ることのできる作品でした。
まとめ
『ハロウィン』(2018)や『ターミネーター:ニュー・フェイト』(2019)など、シリーズの初代主人公をカムバックさせる物語が流行となっている映画界。
シリーズ第9弾となる『悪魔のいけにえ -レザーフェイス・リターンズ-』もそんな流行に乗った作品ではあるものの、ただ便乗しただけではなく類似のコンセプトを持つ映画では考えられないような独特な展開を見せてくれます。
その音だけで人々を恐怖に陥れる、チェーンソーを使う殺人鬼レザーフェイス。
彼の目を背けたくなるような凶行に怯えながらも、垣間見える人間性に心が揺さぶられる最新作の完成度をぜひその目で確認してみてください。
【連載コラム】「Netflix映画おすすめ」記事一覧はこちら