Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

サスペンス映画

『六人の嘘つきな大学生』映画原作ネタバレあらすじと感想評価。密室ミステリーおすすめ!トリックと告発文が運命を狂わす

  • Writer :
  • 星野しげみ

浅倉秋成の人気小説『六人の嘘つきな大学生』が映画になります!

小説『六人の嘘つきな大学生』は、浅倉秋成による大ヒットミステリー小説です。

就活中の大学生たちが、「6人でチームを作り、1カ月後のグループディスカッションに臨む」という課題を与えられますが、採用者は自分たちで選出した1名のみと知らされます。

なんとしても採用されたい6人の大学生ですが、選出者を決める会議室という密室で、6人の本当の姿が次々と暴かれていきます。

小説『六人の嘘つきな大学生』は『』(2018)『シティーハンター』(2024)の佐藤祐市監督によって、映画化されます。

映画『六人の嘘つきな大学生』は、2024年11月22日(金)に全国ロードショー!

映画公開に先駆けて、小説『六人の嘘つきな大学生』をネタバレありでご紹介します。

小説『六人の嘘つきな大学生』の主な登場人物

【波多野祥吾(はたの しょうご)】
立教大学経済学専攻。実直な性格。

【嶌衣織(しま いおり)】
早稲田大学社会学専攻。洞察力が高い。

【九賀蒼汰(くが そうた)】
慶應大学総合政策学部(キャンパスは湘南藤沢)。冷静で正確なリーダーショップがとれる

【袴田亮(はかまだ りょう)】
明治大学国際日本学部。明るいムードメーカー気質。

【矢代つばさ(やしろ つばさ)】
お茶の水女子大で国際文化専攻。語学力に優れている。

【森久保公彦(もりくぼ きみひこ)】
一橋大学社会部。一浪しているため他5人より年上。口数少ないが分析力に優れている。

【鴻上達章(こうがみ たつあき)】
スピラリンクス人事部長。

小説『六人の嘘つきな大学生』のあらすじとネタバレ


浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』(角川文庫)

新卒総合職採用を開始した、IT企業スピラリンクス。仕事内容といい、高い初任給といい、破格の条件に多くの学生が飛びつきました。

渋谷駅前の大型商業に入居のスピラリンクスでの最終面接に残ったのは6人の男女。明治大学の波多野もその1人でした。

人事部長から1ヶ月後の4月27日にグループディスカッションの実施を告げられました。内容によっては、6人全員の内定もありえると言われ、直後にファミレスに6人で集まり自己紹介をしました。

リーダーショップをとるイケメンの九賀蒼汰。ガタイがよくおおらかな袴田亮。饒舌で洗練された美人の矢代つばさ。少し陰気な感じのする森久保公彦。洞察力が鋭く明るい嶌衣織。そして、波多野祥吾の6人でした。

その後も何度か集まり対策を練っていたところ、人事部長から、選考方法と採用者数を1人に変更すると各々にメール通知が来ました。

4月27日、グループディスカッションの日が訪れました。2時間半の時間が与えられ、6人のうち誰が一番スピラリンクスにふさわしいかと、自分たちで選出しなければなりません。

波多野の提案で、30分ごとの投票で選出者を決めることになりました。

一回目の投票が終わったところで、九賀と袴田が2票ずつとって並びました。2回目の投票に入るまでの間に、部屋に不審な大きな封筒があるのが発見されます。

最初に九賀が開けたところ、中から袴田の過去を告発する内容の紙が入っていました。

おまけに手紙の最後には「九賀蒼汰の写真は森久保公彦の封筒の中に入っている」と、各々宛に別な人物の過去を告発し、さらに次の標的となる告発文の所在まで明記されていました。

袴田の告発内容は、高校時代の部活でのいじめで部員の1人が自殺したというもの。それにより、皆は驚愕し、2回目の投票は袴田への投票は0でした。

次に封筒を開けられたのは、九賀蒼汰。告発内容は、交際相手を妊娠させ中絶し、捨てたというものでした。

その次には、矢代つばさはファミレスでアルバイトしていると言っていたがそれは嘘で、本当のバイト先はキャバクラだったという告発、また森久保公彦は高齢者詐欺の片棒を担いでいたという告発文が暴露されます。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには小説『六人の嘘つきな大学生』ネタバレ・結末の記載がございます。小説『六人の嘘つきな大学生』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。

告発の内容に皆が驚愕しますが、こんな告発文を作成したのは「誰か」。犯人は誰かという一点に皆の疑惑は絞られます。

封筒を部屋に置いた人物が犯人ではと思われ、人事部によるディスカッション録画の監視カメラを止めて、再生視聴しました。これによって不審な動きをしていたのが、森久保でした。

ですが、森久保は「自宅のポストに投函された手紙に、会議室においておけと書いてあったから持ってきた」と言いました。

その間にも30分ごとの投票は行われ、告発文で過去を挙げられた者たちはどんどん票を落としていきます。

告発文のそれぞれの現場と各々大学内での盗撮写真が添付されていましたが、盗撮写真の撮影日が全て2011年4月20日でした。

撮影したカメラも同一であることが判明したことからアリバイの確認が行われ、森久保にはアリバイがあったことが判明。唯一その日にアリバイのなかったのは、波多野祥吾だけでした。

おまけに波多野の告発文を開けてみれば、波多野のブログから引用したと思われる大学の入学歓迎花見会での飲酒の写真がでてきました。未成年での飲酒は罪は罪ですが、あまりに軽すぎる告発に、波多野の犯人説が固まりかけました。

波多野は自分の告発文を読んで、真犯人が誰かわかったと思いました。波多野は犯人をかばうつもりで、たった一枚残った未開封の封筒を手にとって、現場から去って行きました。

それから8年後、あの日のグループディスカッションで選出された嶌衣織は、スピラリンクスに社員として勤務していました。

ですが、告発文を書いた犯人がはっきりとわからず気になるので、封筒を用意した人物を突き止めようと、当時の関係者を訪ねて話を聞いていました。

そして、2019年に波多野祥吾が病死したことを波多野の妹から伝えられました。遺品の中に名指しされた封筒があったと言います。

波多野が書いたと思われる「犯人、嶌さんへ」と書かれた封筒を見た嶌は、私と犯人宛の手紙だと思いました。

そして波多野の告発文に使われた写真を再度確認。正式にHPに掲載されたその写真で波多野が手に持っているのは、スミノフという一見アルコールに見えないお酒でした。

告発文では、波多野がサイトのゴミ箱に入れていたキリンラガービールを持っている写真が使われていました。

つまり、告発文を作った犯人は、お酒に興味がなくスミノフが酒類とは知らず、未成年飲酒罪を確定するために、写真を取り替えたということになります。

確かに嶌はお酒が飲めませんでしたが、6人の中にはもう1人、お酒が苦手な人がいたのです。

嶌はやっとの思いでその人物・九賀に辿り着きます。九賀と対面し、自分の告発文には何が書いてあったのか問いただしますが、九賀は教えてくれません。

嶌は波多野の遺品のパソコンデータ、ZIPファイルの暗号をやっと解き、自分の告発文も見つけました。

「嶌の兄は人気歌手で薬物依存症である」と書かれた告発文。こんなものに何年も振り回されていたのかと、嶌はほろりと涙を流しました。

就活とはいったい何だったのか。誰もが自分をよく見せるために少なからず嘘をついていたのだろうか。

悩む嶌は「相手の本質を一瞬で見抜くテクニックを教えてほしい」と人事部長に相談します。「そんなものはない」と言われますが、アドバイスはくれました。

その後、嶌はスピラリンクスで新規採用試験の面接官をして、面接会場で繰り返される大学生の嘘と真実の話を聞き、あの頃の自分たちに思いを馳せています。

小説『六人の嘘つきな大学生』の感想と評価

『六人の嘘つきな大学生』は、就職活動に悩む大学生の心情がよく描かれた、浅倉秋成人のミステリー小説でした。

希望企業の最終面接に残った6人の大学生。お互いに同期という仲間意識が芽生え始めていたのに、グループディスカッションで自分たちの中から1人だけ合格者を選ぶというミッションを与えられます。

お互いがライバルとなった結果、各人の触れられたくない過去の過ちが暴露されていくという事態に陥りました。しかも、告発文という形で……。

受験と同様に、就職活動の合否はその人の人生を左右するものです。どうしてもその会社に入社したい6人は、自分たちの過去の出来事に色をつけたり、大袈裟に言ったり、また全くの嘘をついたりと、自分を少しでも良く見せようとします。

そんな人間の心理がよく描かれ、それによって物語はこれでもかと二転三転し、告発文を書いた犯人がラストまで分からない展開が続きます。最後のどんでん返しに唸ってしまうことでしょう。

物語の中で印象深いのは、「面接などの短い時間の対面だけでは、学生のことは見極められない」という人事部長の言葉です。

では就活の合否はどうやって決定するのでしょう。対面の質疑応答だけでは、簡単な嘘もつけてしまいます。その時間内で1人の大学生の全てを理解することはやはり無理。‟人を見る目”は、そう簡単に身に付かないのです。

嘘をつく努力や知恵も必要ですが、自分が持っている真の魅力を発揮する力も大切と思われます。

就活での面接とは、就活生と面接官との真剣勝負! 人生においてたった一度と言える緊張感ある勝負戦です。

そこでの一連の出来事を綴った物語『六人の嘘つきな大学生』からは、嘘をつきたくなる人間の本質が鋭く描かれていました。

映画『六人の嘘つきな大学生』の見どころ


(C)2024「六人の嘘つきな大学生」製作委員会

主要な登場人物が多い上、それぞれの性格や過去の醜い出来事が詳細に描かれていく小説を映像化。個性的な6人のキャラクターは誰が演じるのかと興味が湧いてきます。

小説では波多野祥吾が主人公となっていますが、映画での主人公は、洞察力に優れた嶌衣織という設定です。

そんな嶌衣織を演じるのは浜辺美波、そして、まっすぐな性格でムードメーカーとなる波多野祥吾は赤楚衛二が演じます。

さらに、冷静で的確なリーダーシップをとる九賀蒼太を佐野勇斗、語学力と人脈に自信を持つ矢代つばさを山下美月、口数が少なく分析力に優れた森久保公彦を倉悠貴、スポーツマンでボランティアサークルの代表を務める袴田亮を西垣匠が演じています。

過去の犯罪や心の傷をさらけだす告発文を書いたのは誰か。小説は波多野目線でストーリーが展開し、嶌衣織が犯人ではと思わせる設定になっています。

映画の主役は嶌衣織ですから、波多野とはまた違った視点で事件の全貌が描かれていくことでしょう。

』(2018)『シティーハンター』(2024)の佐藤祐市が監督を務める本作。犯人が判明するまでの6人の心理描写が楽しみです。

映画『六人の嘘つきな大学生』の作品情報


(C)2024「六人の嘘つきな大学生」製作委員会

【日本公開】
2024年(日本映画)

【原作】
浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』(角川文庫)

【監督】
佐藤祐市

【脚本】
矢島弘一

【製作】
市川南、遠藤徹哉

【キャスト】
浜辺美波、赤楚衛二、佐野勇斗、山下美月、倉悠貴、西垣匠

まとめ

浅倉秋成の大ヒット小説『六人の嘘つきな大学生』をご紹介しました。

就職活動中において、いかに自分をアピールして企業に選んでもらうか。就活中の大学生の悩みや気苦労が余すところなく描かれた小説でした。

少しでも自分をよくみせるために、嘘もつかなければならない場合もあるでしょう。嘘をつくことでこれからの人生が変わってしまうという事実に切なくなります。

小説では物語が進むにつれて、六人の印象もどんどん変わっていきます。映画になったら、キャストはどのようにそんな‟嘘つき大学生たち”を魅せてくれるのかと、期待は高まります

映画『六人の嘘つきな大学生』は2024年11月22日(金)に全国ロードショーです。


関連記事

サスペンス映画

映画『十二人の死にたい子どもたち』9番ノブオ役は北村匠海。演技力とプロフィール紹介

『天地明察』で知られるベストセラー作家の冲方丁(うぶかた・とう)の小説を原作とした映画『十二人の死にたい子どもたち』が2019年1月25日に公開されます。 演出は『イニシエーション・ラブ』『トリック』 …

サスペンス映画

映画『ALONE/アローン』ネタバレ感想。地雷を踏んだマイクが結末で見たものとは

地雷を踏んでしまい、一切の身動きを封じられた米軍兵の、悪夢のような52時間を描いたワンシチュエーションスリラー。 今回は6月16日(土)より新宿シネマカリテほかで全国公開中の、映画『ALONE/アロー …

サスペンス映画

映画『よこがお』あらすじと感想レビュー。原作なしで筒井真理子という女優に惹かれた深田晃司監督がオリジナル作品で臨んだ真骨頂

映画『よこがお』は、7月26日(金)より角川シネマ有楽町、テアトル新宿ほか全国公開 2016年の『淵に立つ』でカンヌ映画祭“ある視点”部門審査員賞を受賞した深田晃司監督。同作で競作した筒井真理子を主演 …

サスペンス映画

映画『バーンアウト』ネタバレ感想とラストまであらすじ。バイクと印象的な結末が魅せるクライムサスペンス

Netflix映画『バーン・アウト』 その身を外気に晒し、命を懸け、より速いスピードを求めるバイクレーサー。 今回は、そんな常に死と隣り合わせなスリル満点の世界に生きる男が闇社会に飲み込まれていく様子 …

サスペンス映画

【ネタバレ】恐怖のメロディ|あらすじ結末感想と評価考察。巨匠イーストウッド監督デビュー作にはドン・シーゲルも友情出演!

女性ストーカーに襲われる人気DJの恐怖 ハリウッドを代表するスター、クリント・イーストウッドが初監督を務めた1971年製作の『恐怖のメロディ』。 イーストウッド演じるラジオの人気ディスクジョッキー(D …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学