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ネネ エトワールに憧れて|あらすじ感想評価レビュー。バレエ界に独りの黒人少女が人種差別や才能への嫉妬に苦悩しながらもパリ・オペラ座のエトワールを目指す奮闘とは?

  • Writer :
  • 桂伸也

映画『ネネ エトワールに憧れて』は2024年11月8日(金)より全国順次公開!

バレエを通して新たな未来へのポジティブな道を問う映画『ネネ エトワールに憧れて』

パリ・オペラ座の現役エトワールも参加、美しく荘厳なバレエの世界に向かう厳しい道を舞台に、一人の黒人少女がスターを目指し奮闘する姿から人種、芸術などといった問題に対するさまざまな課題を浮き彫りにします。

作品を手がけたのは、フランスの新鋭ラムジ・ベン・スリマン。映画祭の受賞歴などもない作品ながら、美しいバレエダンスを背景に非常に社会的なメッセージを持った作品であります。

映画『ネネ エトワールに憧れて』の作品情報


(C)2023 Kare Productions – France 3 Cinema – Marvelous Productions – Umedia

【日本公開】
2024年(フランス映画)

【原題】
Neneh Superstar

【監督・脚本】
ラムジ・ベン・スリマン

【出演】
オウミ・ブルーニ・ガレル、マイウェン、アイッサ・メガ、スティーブ・ティアンチュー、セドリック・カーン、レオノール・ボラック、アレクサンドル・ステイガー、リシャール・サムエル、ナタリー・リシャールほか

【作品概要】
周辺の人間による人種差別や才能への嫉妬に苦悩しながらもパリ・オペラ座の最高位エトワールを目指す少女の奮闘を描いたドラマ。

作品を手がけたのは、『Ma révolution (2016)』『Mon homme (2007、脚本のみ)』(いずれも日本未公開)のラムジ・ベン・スリマン監督。主人公ネネを務めたのは、俳優ルイ・ガレルとバレリア・ブルーニ・テデスキの養女オウミ・ブルーニ・ガレル。

他にも『ジャンヌ・デュ・バリー 国王最期の愛人』(2023)のマイウェン、『魂のゆくえ』(2017)のセドリック・カーンらが出演を果たしています。またオペラ座の現役エトワールであるレオノール・ボラックが、作中で本人役にてバレエを披露しています。

映画『ネネ エトワールに憧れて』のあらすじ


(C)2023 Kare Productions – France 3 Cinema – Marvelous Productions – Umedia

パリ郊外の団地に暮らす労働者階級の家庭に生まれ育った12歳の黒人少女ネネ。

エトワールに憧れる彼女は、バレエ界でも最難関の誉れ高いパリ・オペラ座の入学試験に見事合格、熱心にレッスンに励み才能を開花させていきます。

ところが伝統を守ることに固執する元エトワールの校長マリアンヌは、バレエに対し白人至上主義を貫き、彼女をまともに扱おうとしません。

さらにネネの才能に嫉妬する同級生たちは彼女に嫌がらせ。彼女オペラ座での生活に悩んでしまいます。

そんなある日、校長マリアンヌのある秘密が明らかとなり……。

映画『ネネ エトワールに憧れて』の感想と評価


(C)2023 Kare Productions – France 3 Cinema – Marvelous Productions – Umedia

「黒人のバレエダンサー」という本作の特色は特異な印象をおぼえさせながら、主演を務めたオウミ・ブルーニ・ガレルのダンスシーンはそれでも美しく、非常に説得力のある存在感を見せています。

そんな彼女の劇中における立ち振る舞いは、バレエという芸術をテーマとして改めて「芸術とはなにか」を考えさせられるものであります。

表現する豊かな才能にあふれながら、人種の壁という障害に阻まれ、自身の夢を叶えることが困難な少女ネネ。物語の中で壁として立ちはだかっているのは、バレエという芸術における伝統というもの。

本来、人が人として生きる上で自由な権利を主張できるものが芸術であるはずなのに、その表現をなにかの都合で阻まれる。この物語はこの矛盾、不自然な点を表現し、一つのメッセージとして示しているわけです。


(C)2023 Kare Productions – France 3 Cinema – Marvelous Productions – Umedia

また物語のさらに印象的なポイントとして、ネネが同級生から受ける嫌がらせ、執拗なイジメの構図があります。

このシーンは、単純な妬みと人種的差別といったわりに明確な争いの構図が見えてくるわけですが、一方で「子供のケンカ」の中に社会的な対立構造の根源のようなものまでもが感じられます。

子供同士だけのコミュニティであれば、果たして彼女らは対立したのか。バレエという伝統を重んじる組織の中でその存在を認められないからこそ、主人公ネネはいわれもなく責められ、隅に追いやられる。そこには単純な力関係が他に認めるべき素養を打ち壊している構図も見えてくるでしょう。

そしてそんなさまざまなトラブルが起きながらも、やはり最後に披露されるバレエシーン、そして踊るものたちの姿は美しいと感じられ、本来伝統などといった事情でその美の追究を阻むということには疑問すら覚えるものであります。

その意味では「バレエの美しさ」という伝統の素晴らしさ、そして「美を求めるための壁を乗り越えること」という二つの点に言及した物語ともいえ、フランスならではという雰囲気も感じられる非常に深いメッセージ性をたたえた作品という印象でもあります。

まとめ


(C)2023 Kare Productions – France 3 Cinema – Marvelous Productions – Umedia

本作を手がけたラムジ・ベン・スリマン監督は、これまでチュニジアのジャスミン革命、そして当時独裁政治をおこなっていたベンアリ大統領失脚という歴史的事件の一端で生活していた一人の人間の生活を描いた『Ma révolution』(2016:日本未公開)を発表しています。

また本作の後に発表された作品『Le jeune Imam』(2023:日本未公開)では脚本を担当、若くしてイスラム教コミュニティの指導者となった青年の物語を描きました。

その意味では、国籍としてはフランス人として非常に人種差別という課題に対する視野の広さをもった監督である印象を持ちます

一方で本作は主演を務めたオーミー・ブルーニ・ガレルと、未踏の領域「バレエ」に足を踏み入れた大きなチャレンジ。今後の作品でどのように新進的なメッセージを投げかける作品が作られるか、期待できるところでもあります。

映画『ネネ エトワールに憧れて』は2024年11月8日(金)より全国順次公開!


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