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Entry 2024/07/08
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【ネタバレ】フンパヨン呪物に隠れた闇|ラスト結末あらすじと感想考察。最強ガチな古呪物が襲いかかるタイ発ホラー映画

  • Writer :
  • 菅浪瑛子

タイ古来の呪物「フンパヨン」をめぐるホラー映画が誕生!

タームは出家した兄のティーに会うため、ドンシンタム島の寺院を訪れます。すると「ティーは僧侶を殺し、逃亡した」と告げられます。

兄がそんなことをするわけがないと思ったタームは、兄の失踪について調べ始めます。しかし島では、恐るべき出来事が次々と起こり始めていきます。

タイに古来から伝わる呪物「フンパヨン」をモチーフにしたホラー映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』。

タイのドラマ『Lovely Writer The Series』(2021)『Step by Step』(2023)に出演し「Up」の愛称で親しまれるプーンパット・イアン=サマンと、『The Gifted Graduation』(2020)『Fish Upon the Sky』(2021)に出演し「Phuwin」の愛称で親しまれるプーウィン・タンサックユーンの若手俳優2人が共演しました。

また監督を『祟り蛇ナーク』(2020)のポンタリット・チョーティグリッサダーソーポンが務めています。

映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』の作品情報


(C)Five Star Production Co., Ltd. 2023

【日本公開】
2024年(タイ映画)

【原題】
Hoon Payon

【監督】
ポンタリット・チョーティグリッサダーソーポン

【キャスト】
プーンパット・イアン=サマン、プーウィン・タンサックユーン、クナティップ・ピンプラダブ、プーリパット・ウェーチャウォンサーデーチャーワット、タソーン・クリンニウム、パンナウィット・パッタナシリ、ワラティップ・キッティパイサン

【作品概要】
「フンパヨン」とは、釈迦の時代から存在する一種のお守りのこと。呪術師によっては呪いを込めることも、身を守るものにもなるフンパヨンですが、果たして本作に出てくるフンパヨンに込められたものとは……。

人気急上昇中のタイの若手俳優プーンパット・イアン=サマン、プーウィン・タンサックユーンが共演するほか、ホラーコメディ「Make Me Shudder」シリーズ(2013〜2015)のクナティップ・ピンプラダブが出演。

祟り蛇ナーク』(2020)のポンタリット・チョーティグリッサダーソーポンが監督を務めました。

映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』のあらすじとネタバレ


(C)Five Star Production Co., Ltd. 2023

タームは、出家した兄のティーに会うためにドンシンタム島の寺院を訪ねます。船を降りたところで出会った純粋な青年のテに案内してもらい、森の中の寺院へと向かいます。

僧長に「ティーは前の僧侶を殺して行方不明になっている」と知らされ衝撃を受けるターム。兄がそんなことするわけがない、何があったのか知りたいとタームは寺院に残り、調べることにします。

正義感の強いタームは、テを虐める僧に食ってかかり、何かと問題を起こします。余所者のタームをよく思わない僧もいる中、ティーを慕っていた少年僧のブリーズをはじめウンらなどはタームに協力してくれます。

タームは信心深い村の人々に疑問を感じ、皆が慕う人の形をした像「ポープー」に、力があるなら自分に見せてみろと挑戦を突きつけ、その供え物を壊してしまいます。

そんなタームに、人形師のジェットは「信じなくてもいい、否定するな」と言います。

以下、赤文字・ピンク背景のエリアには『フンパヨン 呪物に隠れた闇』ネタバレ・結末の記載がございます。『フンパヨン 呪物に隠れた闇』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)Five Star Production Co., Ltd. 2023

テは、少年僧ブリーズの姉であるミーナーに思いを寄せ「ミーナーはテの」と言い、タームに近寄るなと言います。ミーナーは、ブリーズや皆のためにお弁当をいつも持ってきます。その帰りに、ある僧からお守りを手渡されます。

不審に思いつつもそのお守りを持ち帰ったミーナーは何かの呪いにかかり、様子がおかしくなってしまいます。

タームは病院に見せた方がいいと言いますが、誰も病院に見せようとはせず、寺院にやってきて儀式を始めます。するとミーナーは突如暴れ出し、供え物を破壊し始めます。

そして「信仰していないなら無理に儀式をさせなくてもいい」と僧侶は言い、ミーナーは家に帰されますが、症状がおさまる様子はありません。

ある日「ミーナーの姿がない」と母親が慌てて寺院にやってきます。皆で彼女を探しますが、その姿はどこにもなく……やがて、川で溺れ、変わり果てた姿で亡くなったミーナーが見つかります。

その後も不可解な事件が寺院で巻き起こり、ミーナーにお守りをあげたとされる僧が土の中で絶命した状態で発見されたほか、木の上で首を吊っている僧も見つかりました。

どう見ても自殺ではないのに、寺院や村の警察は「自殺」として処理し調べようとしません。タームは納得できないと僧侶や村の人々に訴えますが、誰も聞き入れないどころか「タームが来てからおかしな事件が増えた」と彼に島から出ていくように言います。

さらにタームや他の僧は、土の像「フンパヨン」が動いているのではないかと思うような不可解な恐怖にも襲われていました。

恐怖を感じながらも真相を解明しようとするターム。対してジェットは、疑問を感じながらも問題を起こすよりは、そういうものとして受け入れてきたと話します。

しかしタームは納得せず、怪しいと感じた地下の洞窟に入っていきます。そこにいたのは住職でした。住職は人間を使ってフンパヨンを作っていたのです。

さらに住職は修行を受けて僧侶になったわけではなく、その正体は凶悪犯として逮捕された囚人でした。その事実に僧侶グラーは薄々気づいていましたが、事を荒立てないよう真相を確かめずにいました。

住職によってフンパヨンにされそうになっていたタームを、少年僧やジェットらが助けにきます。何とかタームを救出したところに、大量のフンパヨンが襲いかかってきます。

そのうちの1体は、何と失踪していたタームの兄ティーでした。タームはティーに話しかけ、襲うのをやめるように説得します。少し残っていたティーの意識がタームの声に反応し、襲うのをやめます。

住職の正体が判明し、その悪事も止めることができたグラーはこれ以上見て見ぬふりをせず、寺と島の人々を守っていく決意を新たにします。

そして、兄が真相を解明しようとして住職によって殺されたことを知ったタームは、島を出て自分の住む街に戻ることにします。身寄りのないテに「ともに街に行かないか」と誘い、テは島を出ることを決めました。

その頃、島ではある少年僧が衝撃の事実を口にします。

「テをこの島から出してはいけない!」……実は寺院で亡くなった人々を殺害したのは、住職ではなくテの仕業でした。

テはミーナーを自分のものにしたいと思うあまり、呪いをかけたフンパヨンを渡しました。またテを虐めていた僧や、盗みを働いた僧を殺したのもテの仕業でした。それら全てのことを、テは悪いとも思っていなかったのでした。

しかし時すでに遅く、タームとともに船に乗ったテは島を後にするのでした。

映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』の感想と評価


(C)Five Star Production Co., Ltd. 2023

紛れ込んだ悪と純粋過ぎる悪

古来から伝わる呪物「フンパヨン」をモチーフとしたタイのホラー映画『フンパヨン 呪物に隠れた闇』。

本作では、生身の人間からフンパヨンを作り操る「人形師」こと住職の正体が、実は凶悪犯であったという犯人の種明かしにとどまらず、寺院で起こった殺人事件の真の犯人は、純粋な青年テの仕業であったという衝撃の事実が最後に明かされます

両者の悪は目的も求める欲求も大きく異なっています。人形師の場合は、享楽殺人に近い殺して操ることを目的としています。しかしテの場合は、自分が悪いことをしているという認識のない純粋さがかえって恐ろしく「無垢なる悪」といえます。

ミーナーは自分のもの、テを殴ったやつに報復する……それによって越えてはならぬ一線を超えたことに無自覚なテは、周りにとってもピュアで無害な人間だと思われています。

一方で「人形師」であった住職は修行をした僧ではなく、その正体は更生のため寺院にやってきた前科者でした。生身の人間を使って人形を作って捕まった住職は、更生のためやってきた寺院で邪魔者を排除して現在の地位についたのでしょう。

ティーはその正体を知り、このまま彼を野放しにはできないと真実を明らかにしようとしますが、殺されてしまいます。グラーも住職が正式な僧ではないことや、ティーが殺された真相も薄々感づいていましたが、秩序が乱れることを嫌い、隠蔽しようとする地元警察らの圧力に負け、口を閉ざしてしまいます。

ティーのような勇気が出なかったことを悔やんでいたグラーは、兄と同じように「そういうもの」と見て見ぬふりすることができず、ぶつかっていくタームの姿に目を覚まさせられたのです。

信心深い村人たちの事なかれ主義、閉鎖的な社会がテのような無垢なる悪を生み出した側面もあります。テはその純粋さを利用されたり、純粋ゆえにバカにされ抑圧も受けてきました。

村社会の人々の深層心理と、森の中にある寺院、大量のフンパヨンとアジアホラーの独特な雰囲気が人々の恐怖を誘います

まとめ


(C)Five Star Production Co., Ltd. 2023

国民の約9割が仏教徒であることで知られるタイ。信仰の自由もありますが、地方の小さな村や島では、地域のコミュニティと寺院が密接に関わっている場所が大半でしょう。

またタイにおいて、男性は一生に一度は出家をして修行を積むとされており、出家が許されていない女性は、出家している家族がいると食べ物を納めたり、寄進をしたりするといいます。

地域にとって寺院が欠かせないものであると同時に、寺院にとっても人々の寄進は欠かせないもので相互に作用しているといえます

『フンパヨン 呪物に隠れた闇』作中では、警察ですらも寺院とつながりを持ち、島の秩序を保つために真実が隠されてきました

そんなコミュニティに対し、外部の者であるタームが真っ向からぶつかってきます。その結果タームの身にも危険が降りかかりますが、最後には彼の行動のおかげで、グラーはこれ以上見て見ぬふりをするわけにはいかないと真実に目を向けます。

さらに、これから寺院の立て直しをはかる決心もするグラー。外部の力によって解体されるのではなく、それによって内部の人々の意識が変わっていくという希望のある展開になっています

それでもホラー映画らしく、衝撃の真実によってバッドエンディングを迎えることに……。

タイの宗教をベースに、おどろおどろしい森の中の寺院や石の像が襲ってくるという視覚的なインパクトによって恐怖を誘う演出と、タイ映画らしいエンタメ要素もあるホラーになっています。



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