Cinemarche

映画感想レビュー&考察サイト

ヒューマンドラマ映画

ニューヨーク・オールド・アパートメント|あらすじ感想と評価解説。アメリカンドリームを夢見る移民母子を襲った悲劇を温かに描く

  • Writer :
  • 谷川裕美子

『ニューヨーク・オールド・アパートメント』は2024年1月12日(金)より新宿シネマカリテほかで全国ロードショー

大都会ニューヨークの片隅で懸命に生きる移民家族に訪れた悲劇を優しいまなざしで描いたヒューマンドラマ『ニューヨーク・オールド・アパートメント』が2024年1月12日(金)より新宿シネマカリテほかで全国ロードショーとなります 。

オランダの作家アーノン・グランバーグの小説『De heilige Antonio』を原作とした、第89回アカデミー賞短編映画賞にノミネートされたマーク・ウィルキンス監督の長編初作品です。

出演はオーディションで選ばれたペルー出身の双子アドリアーノ&マルチェロ・デュラン、『悲しみのミルク』(2011)のマガリ・ソリエル。

ひどい差別を受ける毎日の中で、次第に自分を“透明人間”のように感じるようになっていくペルー出身の双子の兄弟。そんな彼らがさまざまな経験を経て成長していくさまが描かれます。

映画『ニューヨーク・オールド・アパートメント』の作品情報


(C)2020 – Dschoint Ventschr Filmproduktion / SRF Schweizer Radio und Fernsehen / blue

【日本公開】
2024年(スイス映画)

【原作】
アーノン・グランバーグ

【監督】
マーク・ウィルキンス

【脚本】
ラニ=レイン・フェルタム

【編集】
ジャン・アルデレッグ

【キャスト】
マルチェロ・デュラン、アドリアーノ・デュラン、マガリ・ソリエル、タラ・サラー、サイモン・ケザー

【作品概要】
短編『ボン・ボヤージュ』が第89回アカデミー賞短編映画賞にノミネートされたマーク・ウィルキンスが、オランダの作家アーノン・グランバーグの小説『De heilige Antonio』を原作に、監督を務めたヒューマンドラマ。

アメリカンドリームを夢見る母と息子たちに訪れた悲劇と成長を、ドキュメンタリータッチで描きます。

ペルーでのオーディションで選ばれた双子アドリアーノとマルチェロ・デュランが2人の息子役を演じ、映画デビューを果たしました。

ベルリン国際映画祭金熊賞を受賞した『悲しみのミルク』(2011)の国際派女優マガリ・ソリエルが母ラファエラを演じます。

注目の若手女優タラ・サラー、ベテラン個性派俳優サイモン・ケザーらが共演。

映画『ニューヨーク・オールド・アパートメント』のあらすじ


(C)2020 – Dschoint Ventschr Filmproduktion / SRF Schweizer Radio und Fernsehen / blue

安定した生活を求めて祖国ペルーからアメリカへ渡り、ニューヨークで不法移民として暮らすデュラン一家。母のラファエラはウェイトレスの仕事をしながら双子の息子ポールとティトを育てており、息子たちも配達員として家計を支えています。

経済的な苦しさに加えて、見つかってしまえば国外追放されてしまうという恐怖がいつもありました。

街から疎外された自分を“透明人間”だと憂うポールとティト。やがて彼らは、英会話学校で謎めいた美女クリスティンと出会い恋に落ちます。

一方、ラファエラは白人男性の恋人の誘いに乗ってレストランを開業しますが……。

映画『ニューヨーク・オールド・アパートメント』の感想と評価


(C)2020 – Dschoint Ventschr Filmproduktion / SRF Schweizer Radio und Fernsehen / blue

大都市ニューヨークにやっとの思いでたどり着き、ひどい人種差別の中で必死で生きるペルー人母子の運命を温かく厳しい目で描き出した作品です。

若く美しい母ラファエラと双子の息子ポールとティトは、大変な思いをしてアメリカに不法入国し、互いに助け合って暮らしていました。

ポールとティトは、毎晩聖母に祈る信仰心の厚い純粋な心の持ち主です。母のラファエラも、我が子のために美貌を武器に男性の力を得て日々を乗り越えています。息子たちもまた、そんな母を心から愛していました。

ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作『悲しみのミルク』で主演を務めた実力派マガリ・ソリエルが、強く美しい母ラファエラを感動的に演じます。子どもたちを愛し、愛される魅力的な母の姿は必見です。

彼らの受けるひどい差別はショッキングで、見ていて胸を締め付けられずにいられません。相手に恨み言すら言おうとしない彼らからは、優しさとともに深い諦めが伝わってきます。

人間扱いしてもらえない毎日で双子の心はすり減り、自分を“透明人間”のように感じるようになっていきました

そんな中、双子は英会話学校で野性的で美しいクリスティンに出会います。兄弟の重苦しい日常に旋風を吹き込んだ彼女もまた、苦しい人生と戦っていました。

恋に憧れ、性の目覚めが訪れた少年たちは、クリスティンにどんどん魅かれていきます。キラキラと輝く彼らの純粋な瞳に思わず引き込まれることでしょう。

やがて、劇薬にも似た強烈な個性を持つミステリアスなクリスティンは、ポールとティトを思いもかけない世界へと連れていきます

理不尽な扱いや、襲い来る悲劇に胸が痛みながらも、観終えた後は清々しさを感じさせてくれる一作です。どうぞ最後まで、愛に満ちたペルーの一家の運命を見守ってください。

まとめ


(C)2020 – Dschoint Ventschr Filmproduktion / SRF Schweizer Radio und Fernsehen / blue

アメリカの大都会に暮らす不法移民の一家の運命を丁寧に綴る『ニューヨーク・オールド・アパートメント』

主人公の双子のポールとティト、その母のラファエルに加え、双子を魅惑するクリスティン、ラファエルの恋人のエドワルドら、すべてのキャラクターがとても魅力的に描かれ、濃密な人間関係が浮き彫りとなります。

どんな人間にも苦しみや悲しみがあり、それを乗り越える強さもあることを教えてくれる作品です。

ヒューマンドラマ『ニューヨーク・オールド・アパートメント』は、2024年1月12日(金)より新宿シネマカリテほかで全国ロードショーです 。



関連記事

ヒューマンドラマ映画

映画『月と雷』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も【初音映莉子×高良健吾の代表作】

直木賞作家・角田光代の小説『月と雷』が映画化され、監督を『海を感じる時』の安藤尋監督が務めたヒューマンドラマとして公開されました。 主演には初音映莉子、高良健吾を向かえ、田舎町で起こる「普通ではない」 …

ヒューマンドラマ映画

映画『叫びとささやき』ネタバレ感想と結末までのあらすじ。ベルイマン監督が家族の愛憎と人の欲望を“強烈な赤”で彩る

アメリカでのベルイマン代表作『叫びとささやき』 1973年にスウェーデンで公開された映画『叫びとささやき』は、死を間近に控えた次女と、その看病を任された二人の姉妹、そして召使の4人を描いたヒューマンド …

ヒューマンドラマ映画

映画『天使にショパンの歌声を』あらすじネタバレと感想!ラスト結末も

もうすぐ、高校生や大学生の最高学年は卒業を迎える3月ですね。 今回ご紹介するカナダ映画『天使にショパンの歌声を』は、そんな別れの季節にぴったりの女性の優しく、そして力強く別れに向き合う作品。 クラシッ …

ヒューマンドラマ映画

映画『The Little Stranger』ネタバレ感想レビュー。【ザ・リトル・ストレンジャー】

お化け屋敷の秘密と聞くと、ぞくりとしつつも思わず好奇心をくすぐられませんか? 今回取り上げるのは大きな寂れた屋敷に住むある呪われた家族を描いた、ホラー映画よりも恐ろしい物語『The Little St …

ヒューマンドラマ映画

映画『チア☆ダン』ネタバレ感想とあらすじ!実話ラスト結末も【広瀬すず×中条あやみ×山崎紘菜共演】

広瀬すず、中条あやみ、山崎紘菜共演映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』。 映画『チア☆ダン~女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話~』は、タイトルにある …

【坂井真紀インタビュー】ドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』女優という役の“描かれない部分”を想像し“元気”を届ける仕事
【川添野愛インタビュー】映画『忌怪島/きかいじま』
【光石研インタビュー】映画『逃げきれた夢』
映画『ベイビーわるきゅーれ2ベイビー』伊澤彩織インタビュー
映画『Sin Clock』窪塚洋介×牧賢治監督インタビュー
映画『レッドシューズ』朝比奈彩インタビュー
映画『あつい胸さわぎ』吉田美月喜インタビュー
映画『ONE PIECE FILM RED』谷口悟朗監督インタビュー
『シン・仮面ライダー』コラム / 仮面の男の名はシン
【連載コラム】光の国からシンは来る?
【連載コラム】NETFLIXおすすめ作品特集
【連載コラム】U-NEXT B級映画 ザ・虎の穴
星野しげみ『映画という星空を知るひとよ』
編集長、河合のび。
映画『ベイビーわるきゅーれ』髙石あかりインタビュー
【草彅剛×水川あさみインタビュー】映画『ミッドナイトスワン』服部樹咲演じる一果を巡るふたりの“母”の対決
永瀬正敏×水原希子インタビュー|映画『Malu夢路』現在と過去日本とマレーシアなど境界が曖昧な世界へ身を委ねる
【イッセー尾形インタビュー】映画『漫画誕生』役者として“言葉にはできないモノ”を見せる
【広末涼子インタビュー】映画『太陽の家』母親役を通して得た“理想の家族”とは
【柄本明インタビュー】映画『ある船頭の話』百戦錬磨の役者が語る“宿命”と撮影現場の魅力
日本映画大学