映画『ピストルライターの撃ち方』は12月2日(土)より、広島 横川シネマにて公開、以後、名古屋シネマスコーレ近日公開ほか、全国順次公開中!
そう遠くない未来、原発事故が起きたとある地方で生きる人間たちの姿を描いた映画『ピストルライターの撃ち方』。
この作品を手がけた眞田康平監督が、2023年12月2日(土)に広島の映画館・横川シネマにておこなわれた初日の映画上映後の舞台挨拶イベントに登壇しました。
本記事ではその舞台挨拶イベントの模様をお届けします。
映画『ピストルライターの撃ち方』舞台挨拶リポート
2023年12月2日(土)に広島の横川シネマでおこなわれた、映画『ピストルライターの撃ち方』の公開後舞台挨拶では、本作で監督・脚本を手がけた眞田康平監督が登壇しました。作品は6月17日より東京で上映、以後全国での順次公開がおこなわれています。今回の横川シネマにおけるイベントでは、初日の2日より8日まで毎回実施されます。
企画の初期段階では「原発や放射能的なもの自体の恐怖より、その恐怖自体を忘れてしまっている、そんな人間たちの方が怖いんじゃないか、と思って企画していたと思います」と振り返る眞田監督。
一方で、こうした状況の中で「権力構造」というものが出来上がった状態を想定し「(構造の)下に行っちゃった人たちは、ずっと上がってこられず地べたで泥水をすすってしまう、それでもなんとか生きようとしている、そんな人間を描くことを最初の目標にしていました」と語ります。
撮影は主演の奥津裕也の地元である仙台で実施。眞田監督は自身のなじみの地ではなかったものの、撮影地の方々が非常に協力的でもあったことから「最初に上映してくれた時にも、熱心に見てくれてありがたかったです。先代だから戦えた、というところもあったなと思っています」と、感謝の気持ちを惜しみません。
もともとメインキャスト三人のイメージはある程度固まっていたものの、その他のキャラクターはイメージしておらず、タコ部屋の人たちの設定に関しては「キャストが決まった後に足しました」と回想する眞田監督。メインキャストである奥津、中村有以外のキャストはすべてオーディションによる選考で、企画から完成までの道のりで「オーディションが一番大変でした」と語ります。
予算やスケジュールの都合によリハーサルはメインとなる三人のみ、それでも実力派の俳優陣が集まったことで、多くが現場で直合わせながら「現場が大変だったということはあまりなかったと」と振り返ります。
また撮影を担当した松井宏樹のカメラワークについては、意図的に背景を狭くしていくような撮り方で「人間の居場所が減っていく」というイメージを作り上げた部分を挙げ、その手法が作品に与えた効果に対しても満足の様子を見せます。
そして、作品の完成度としては「(細かい部分の反省はあれど)本人的にはスタッフがすごくいい感じでやってくれたおかげで、やりたかったことを上手くやってくれたと思います」と、大いに満足していることを明かしました。
映画『ピストルライターの撃ち方』の作品情報
【公開】
2023年(日本映画)
【監督・脚本・プロデューサー】
眞田康平
【キャスト】
奥津裕也、中村有、黒須杏樹、杉本凌士、小林リュージュ、曽我部洋士、柳谷一成、三原哲郎、木村龍、米本学仁、古川順、岡本恵美、伊藤ナツキ、橋野純平、竹下かおり、佐野和宏ほか
【作品概要】
再び原発事故が起こった地方を舞台に、ヤクザの下で除染作業員を運ぶチンピラ、チンピラの親友で刑務所帰りの男、出稼ぎ風俗嬢による共同体の再生と崩壊を描いた群像劇。
オール宮城県ロケで撮影された本作を手がけたのは、東京藝術大学大学院・映像研究科修了作品『しんしんしん』(2011)が渋谷ユーロスペースはじめ全国10館で劇場公開された眞田康平。
瀬々敬久監督作品に多数出演し、自身も劇団「狼少年」を主宰する奥津裕也を主演に迎え、中村有、黒須杏樹の3人を中心に物語は描かれていく。また杉本凌士、小林リュージュ、柳谷一成、佐野和宏など実力派キャストが脇を固める。
映画『ピストルライターの撃ち方』のあらすじ
遠くない未来、地方で再び原発事故が起こった。しかしその隣町では一見変化のない生活が続いている。
ピストル型のライターで煙草に火をつける残念なチンピラの達也は、ヤクザの下で立入禁止区域の除染作業員をタコ部屋まで運ぶバンの運転手をしている。
そんな達也の下に、刑務所に入っていた親友の諒と出稼ぎ風俗嬢のマリが転がり込んできて、行き場の無い3人の共同生活が始まる。
達也はヤクザに取り入って、バラバラになっていく故郷や仲間をなんとか食い止めようと行動するが……。
まとめ
トークショーで眞田監督は企画段階で「恐怖自体を忘れてしまっている、そんな人間たちの方が怖いんじゃないか」という思いがあったということを語られました。
日々「忘れまじ」と言われながらも、徐々にその印象が薄らいできている、2011年の東日本大震災。さらに現在、世界を不安に陥れたコロナ禍の問題も日常生活の中から消えていく状況にあります。
そして本作では、震災が見せた「本当の怖さ」の部分を描いているわけですが、ここでは悲惨な状況下で泥臭くも懸命に生きる人々の姿が生々しく、鮮烈に映し出されています。
意外に「忘れてはならない大事なこと」とは、歴史書に掛かれる一行の要約文よりも、このような大事件の中にある人物のリアルな姿にその真意が隠されているのではないか?
本作はこのような問いに対しさまざまな思いを想起させてくれる作品でもあります。
映画『ピストルライターの撃ち方』は