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Entry 2023/05/31
Update

『ピストルライターの撃ち方』あらすじ感想と評価考察。眞田康平監督による“架空の原発事故”と主人公達也を体現する“奥津裕也の演技”に注目!

  • Writer :
  • 谷川裕美子

映画『ピストルライターの撃ち方』は2023年6月17日(土)より渋谷ユーロスペースほかで全国順次公開!

『サヨナラ家族』(2019)などを手掛けた眞田康平による待望の長編第二作『ピストルライターの撃ち方』が、2023年6月17日(土)より渋谷ユーロスペースほかにて全国順次公開されます。

眞田組には欠かせない俳優・奥津裕也と中村有、オーディションで選ばれた黒須杏樹がメインキャストを演じます。

原発事故が起き、立入禁止区域となった土地の隣町に暮らす主人公・達也と、偶然に運命共同体となった親友と風俗嬢の3人の絆と、関係の崩壊が描かれます。

果たして彼らを深く結び付けた理由とは何だったのでしょうか。奥深い人間心理を描きだす本作の魅力についてご紹介します。

映画『ピストルライターの撃ち方』の作品情報


(C)映画「ピストルライターの撃ち方」製作委員会

【日本公開】
2023年(日本映画)

【監督・脚本】
眞田康平

【出演】
奥津裕也、中村有、黒須杏樹、杉本凌士、小林リュージュ、曽我部洋士、柳谷一成、三原哲郎、木村龍、米本学仁、古川順、岡本恵美、伊藤ナツキ、橋野純平、竹下かおり、佐野和宏

【作品概要】
東京藝大修了作品『しんしんしん』(11)、『サヨナラ家族』(19)などを手掛けた眞田康平が、長年温めてきた企画を実現させた待望の長編第二作。

再び原発事故が起こった地方を舞台に、ヤクザの下で除染作業員を運ぶチンピラ、チンピラの親友で刑務所帰りの男、出稼ぎ風俗嬢による共同体の再生と崩壊を描いた群像劇。

実際に原発の隣町で育った監督が、ありえたかもしれない未来を通して人間の愚かさの中に僅かな救いや切なさを描き出しました。

主演を務めるのは、眞田組には欠かせない存在であり、瀬々敬久監督作品をはじめ多数の映画や舞台に出演、自身で劇団「狼少年」を主宰する奥津裕也。

眞田監督から深い信頼を寄せられる中村有、黒須杏樹がメインキャストを務めるほか、総勢800名近くのオーディションから選ばれた実力派キャストが脇を固めます。

映画『ピストルライターの撃ち方』のあらすじ


(C)映画「ピストルライターの撃ち方」製作委員会

遠くない未来、地方で再び原発事故が起こりますが、その隣町では一見変化のない生活が続いていました。

ピストル型のライターで煙草に火をつけるチンピラ・達也の下に、刑務所から出てきた親友の諒が現れます。諒の家は立入禁止区域になっていたため、達也は彼を家に連れて行きました。

ヤクザの下で立入禁止区域の除染作業員をタコ部屋まで運ぶバンの運転手をしている達也は、諒に手伝わせるようになります。

恋人が借金を踏み倒して逃げたため捕らえられた風俗嬢のマリの面倒も達也がみることとなり、行き場の無い3人の共同生活が始まります。

知人の翔子の結婚祝いの飲み会で、不機嫌になっていく達也。一緒について行った諒とマリでしたが、陰口を叩く男たちにマリが怒りをぶつけ、大騒動になってしまいます。

しかし、これをきっかけに達也たち3人は心を通わせるようになっていきました。

達也はヤクザに取り入り、故郷をどうにかして守ろうとしますが…。

映画『ピストルライターの撃ち方』の感想と評価


(C)映画「ピストルライターの撃ち方」製作委員会

もうひとつの原発事故の物語

実際に本作の舞台と同じく原発の隣町で育った眞田監督が、ありえたかもしれない未来を通して、人間の愚かさの中に僅かな救いや切なさを描きだした一作です。

原発の事故によって見捨てられた土地。そこに利益をむしり取ろうと乗り込んでくるヤクザたち。元々住んでいた人々は去っていき、いつしかはぐれ鳥ばかりが集い始めます。

すぐ隣が立入禁止区域となっているというのに、何事もなかったかのように暮らす人たち。だからこそ、尚更その土地の悲しさが際立ちます。

しかし、そんなどうしようもなく悲惨な世界を描きながらも、どこか人のおかしみや温もりを感じさせる空気感が常に漂う作品です。

主人公の達也はヤクザの下で、除染作業員をタコ部屋に運ぶ仕事をしているチンピラです。困っている人を見捨てることができない優しさを持つ彼は、ピストルそっくりなライターを使うなど、どこか子どもっぽさを残す憎めない男でした。

そんな達也のもとに刑務所帰りの親友・諒が現れたところから、物語は始まります。

故郷が立入禁止区域になってしまった諒を見捨てることができず、達也は彼の面倒を見始めます。諒もまた、この仕事には向かない優しすぎる達也を心配し、見守るような思いで一緒に暮らし始めました。口数の少ないふたりの間には、確かな信頼感が絶えず存在し、深い絆を感じさせます

眞田康平監督は、企画を練る前から達也役の奥津裕也と、諒役の中村有をメインに据えて作品を作りたいと考えていたと言います。その期待に応えるふたりの素晴らしい演技が醸す、独特の空気感に圧倒されることでしょう。

逃げた男の代わりに金を返すことになった出稼ぎ風俗嬢のマリの世話もすることになった達也は、躊躇せずに真実を見抜くマリの強さに惹かれ、心を通わせるようになっていきました

3人で他愛無いことに笑いあう日々。悲惨な現実を忘れたいかのように、彼らは普通の時間を過ごすことに懸命になっているようにも見えます

多くのものを背負い、逃げ出すことが叶わない達也。少しでも心満たす時間を求める彼らでしたが、取り巻く環境はさらに厳しくなっていき、次第に追い詰められていきます。

果たして、現実にがんじがらめになっている達也は最後にどんな選択をするのでしょうか。達也のやるせない表情を見事に体現する奥津裕也の演技に注目です。

まとめ


(C)映画「ピストルライターの撃ち方」製作委員会

近い未来に被災した架空の隣町を舞台に、格差社会のなかで取りこぼされて流れ着いた者たちがひたむきに生きる姿を描く『ピストルライターの撃ち方』。居場所を探す全ての人々へ向けて作られた作品です。

悲惨な現実のなかでもきらりと輝く、人間の生活に宿るわずかな救いや笑い、切なさが心を打ちます。

群像劇『ピストルライターの撃ち方』は、2023年6月17日(土)より渋谷ユーロスペースほかにて全国順次公開です。





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