映画『99%、いつも曇り』が東京国際映画祭Nippon Cinema Now部門に正式出品!
アスペルガー傾向(発達障害グレーゾーン)にある女性の生きざまを描く映画『99%、いつも曇り』が東京国際映画祭Nippon Cinema Now部門に正式出品されます。
瑚海みどりが初の長編監督を務め、自身も感じている発達障害の人が生きる難しさと、他者と共に生きることのメッセージを届けようとする本作は、瑚海自らが主演を務めるほか、二階堂智、永楠あゆ美が出演しました。
同映画祭では角川シネマ有楽町にて10月26日(木)10:20、及び丸の内ピカデリー2にて10月31日(火)21:05より上映され、12月15日(金)からはアップリンク吉祥寺にて劇場公開を迎える『99%、いつも曇り』。
発達障害を持つ人の生きづらさとともに、周囲の人たちとの温かなつながりを丁寧に描いた一作です。
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映画『99%、いつも曇り』の作品情報
【上映】
2023年(日本映画)
【監督・脚本】
瑚海みどり
【出演】
瑚海みどり、二階堂智、永楠あゆ美、Ami Ide、KOTA、曽我部洋士、亀田祥子
【作品概要】
短編映画『橋の下で』で数々の映画賞を受賞した瑚海みどりによる初長編監督作品。自身と同じアスペルガーのヒロインが、子どもを持つことをめぐって社会との関わり方を模索する姿を描きます。
瑚海監督自身が主人公・一葉を、その夫・大地役を二階堂智が演じます。濃密なふたり芝居から目が離せません。
映画『99%、いつも曇り』のあらすじ
母親の一周忌で会った叔父から「子どもはもう作らないのか」と声をかけられ、心大きく揺れる楠木一葉。生理も来なくなったので子どもは作れないと、彼女は興奮して言い放ちます。
一葉は夫の大地が子どもを欲しがっていることを知っていましたが、流産した経験もあることから子作りに前向きになれずにいました。自分がアスペルガー傾向にあることにも悩んでいます。
里親になることを居酒屋のママから薦められ、一葉はすぐに乗り気になります。しかし、子どものことをきっかけに、一葉と大地の気持ちは次第にズレていき……。
映画『99%、いつも曇り』の感想と評価
自身もアスペルガー傾向がある瑚海みどり監督が、同じ症状を持つヒロイン・一葉を主人公に描いたヒューマンドラマです。
初っ端からせかせかとせわしなくマイペースで話し、動き回る一葉。周囲からの視線やかけられる言葉から、彼女の“生きづらさ”がヒリヒリと伝わってきます。
「普通」という言葉に敏感で、自分が「普通」ではないことに傷つく妻に、夫の大地は寄り添ってきました。肉親を亡くし、家族は一葉ひとりきりである大地は、難しい性格の妻を大切にしています。
一葉は相手の言葉の裏を読み取ることができず、はっきり言ってもらわないと理解できません。そのために人と衝突を繰り返してきました。また、ひとつのことに気持ちがいくと、それまでしていたことをすっかり忘れてしまうので、蛇口の水は出しっぱなし、掃除機のスイッチは入れっぱなしになります。
いつも物事に一心に付き進む一葉の後には、さまざまなものがなぎ倒されたままになっていきます。さながら台風が通り過ぎた後かのようです。
子どもを欲しがっている夫の気持ちを思った一葉は、自分で生めないなら里親になろうと直情的に考えてしまいます。当然、大地はその嵐のような思考についていくことはできません。
大地は妻とのジェットコースターのような日々を心から愛していましたが、子どもを持つことをめぐってふたりの心はすれ違っていきます。
自分がアスペルガーであるが故に苦しむ一葉の姿には、同じく発達障害を持つ珊瑚海監督自身の気持ちが投影されており、胸が締め付けられます。
一方で、一葉はたまらなくチャーミングに描かれています。さっぱりとした明るい気性に、厚い人情。いつも一生懸命な彼女からは、生きるエネルギーと喜びが絶え間なく発せられており、大地が彼女を愛さずにはいられない気持ちがよく伝わってきます。
夫婦がどのような結論にたどり着くのか、どうぞ最後まで見届けて下さい。
まとめ
発達障害を持つ主人公・一葉と、そんな妻を見守る夫・大地の夫婦の姿を描いた『99%、いつも曇り』。
普通の人とは違う予想外の行動をとってしまう一葉の生きづらさと共に、彼女とつながる人々の温かさを丁寧に映し出します。
「みんな違っていいのだ」という強いメッセージを感じる一作です。
映画『99%、いつも曇り』は第36回東京国際映画祭Nippon Cinema Now部門にて上映後、2023年12月15日(金)よりアップリンク吉祥寺にて劇場公開!
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