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【ネタバレ】『湯道』あらすじ感想と結末の評価考察。生田斗真が裸体で魅せたお風呂を通じて交差する人間模様

  • Writer :
  • もりのちこ

い~い湯だな。
湯気が天井からポタリと背中に。

『おくりびと』などの脚本家で「クマもん」の生みの親・小山薫堂が、以前から提唱していた日本の入浴文化“湯道”を題材に、このたび完全オリジナル脚本を製作、映画化となりました。

舞台は“まるきん温泉”という名の銭湯。ここには、常連客をはじめ様々な人が湯に浸かりにやってきます。

“湯道”なるものを学ぶ郵便局員。湯に浸かり歌う夫人。近所の料理屋の夫婦。長年連れ添った老夫婦。廃材をくれる風呂仙人。皆、この“まるきん温泉”が大好きです。

父が亡くなり銭湯を継いだ弟のもとに、東京で建築家として働いていた兄が戻ってきます。銭湯を閉め、ここにマンションを建てようというのです。

兄弟は、遺された銭湯をめぐり反発し合うことに。果たして、“まるきん温泉”はどうなるのか。この町に、この日本に、銭湯は必要なのか。

まるで湯に入った後のような、ほっこり心温まる銭湯群像劇『湯道』を紹介します。

映画『湯道』の作品情報


(C)2023映画「湯道」製作委員会

【公開】
2023年(日本映画)

【脚本・企画】
小山薫堂

【監督】
鈴木雅之

【キャスト】
生田斗真、濱田岳、橋本環奈、小日向文世、天童よしみ、クリス・ハート、戸田恵子、寺島進、厚切りジェイソン、浅野和之、笹野高史、吉行和子、ウエンツ瑛士、朝日奈央、梶原善、大水洋介、堀内敬子、森カンナ、藤田朋子、生見愛瑠、吉田鋼太郎、窪田正孝、夏木マリ、角野卓造、柄本明、秋山ゆずき、おかやまはじめ、酒井敏也

【作品概要】
日本人の風呂に入る習慣を文化と捉え究める“湯道”を提唱してきた、脚本家・小山薫堂が、自ら脚本を製作。

マスカレード」シリーズの鈴木雅之監督により、湯を通して交差する人間模様を描いた群像ドラマが完成しました。

主演は生田斗真。弟役には濱田岳。その他、橋本環奈、窪田正孝、小日向文世、戸田恵子、夏木マリ、柄本明など豪華俳優陣に加え、天童よしみ、クリス・ハート、厚切りジェイソンなど、歌手から芸人まで幅広いジャンルのタレントが勢揃いとなりました。

誰がどこで出てくるのか。個性豊かな登場人物たちに注目です。

映画『湯道』のあらすじとネタバレ


(C)2023映画「湯道」製作委員会

日本には、ひたむきに精進を重ねる“道”と呼ばれるものがあります。“茶道”“華道”“書道”、そして湯の道を究める“湯道”。

ここは、“まるきん温泉”という名の銭湯。銭湯を切り盛りしているのは、亡き父が遺した銭湯を継いだ三浦悟朗と、銭湯を愛する住み込みバイトの秋山いづみです。

今日も近所の常連さんが次々と湯に浸かりにやってきます。行き届いた掃除に丁寧に入れられたお湯。

「今日も良い湯だったよ、ありがとう」。湯から上がった人々の顔は、皆満足そうです。

そんな“まるきん温泉”に、ひとりの男がやってきます。悟朗の兄・史朗です。史朗は都内で建築家として働いていましたが、経営に行き詰まり、古い銭湯をマンションに建て替える相談をするために戻ってきたのです。

父の葬儀にも忙しいと顔をださなかった史朗に、悟朗は反発します。「困ったときだけ実家に頼る。カッコ悪いんだよ」。

女風呂から竹内まりやの「ケンカをやめて」の歌声が聞こえてきます。誰もいない風呂で歌うのが好きな常連さん・小林良子です。

一方その頃、湯道会館では、体調のすぐれない家元・薫明にかわり内弟子の梶斎秋が、湯に対する心得と入浴の所作、すなわち“湯道”を解いていました。

参加者の中には、定年間近の郵便局員・横山正の姿もあります。彼は、唯一の趣味“お風呂”が高じて“湯道”を学びはじめ、退職金で家に桧風呂を作ることが夢でした。妻や娘たちは、反対のようですが。

“まるきん温泉”に、超辛口な温泉評論家として有名な太田与一先生がやってきます。ここが井戸水を沸かしている銭湯だということに気付き、何やら腹を立てています。

「温泉じゃないのに温泉を名乗るとは何事か。源泉掛け流し以外の温泉に入ってる暇はないのだよ」。湯に浸かりもせず引き返していきました。

史朗は久々に実家の銭湯に入ることに。掛け湯をして入ろうとする史朗に「あまいっ」と、お叱りの声が。ゴシゴシ洗い直し、湯に入る史朗。

あまりの熱さに跳びはねます。水を出して割ろうとすると「さむいっ」と、またお叱りの声が。長く伸びた白い髪と髭、“まるきん温泉”に廃材を届ける代わりに、風呂に入って帰る風呂仙人と呼ばれる人物です。

「コンコン」。男湯から桶で叩く音が響いてきました。女湯から返事のように「コンコンコン」と返ってきます。近所の料理屋“寿々屋”を営む高橋夫婦です。

ケンカしながらも、風呂上がりの牛乳を一緒に楽しむ堀井さんとこのおじいちゃんおばあちゃん。“まるきん温泉”は、いつも賑やかです。

そんな常連客と触れ合いながら、史朗はいよいよ銭湯をどうするか、悟朗と話し合おうと決意します。

史朗は、自ら作ったマンションの設計図をみせ、「今の世の中で銭湯を続けていくのはお前も無理だってわかるだろ」と説得します。

悟朗は設計図をボイラー室の火の中に放り投げます。「何するんだよ」。銭湯の中で取っ組み合いのケンカが始まりました。風呂に落ちた2人はびしょ濡れになりながらも、つかみ合います。

いづみが、桶に熱湯を入れ、2人の兄弟にぶっかけます。その時です。ボイラー室から火災が発生。消火にあたる悟朗が、爆発に巻き込まれてしまいます。

幸い、悟朗は大した怪我はありませんでしたが、しばらく入院することになります。“まるきん温泉”も、しばらく閉めることになりそうです。

史朗は、幼い頃2人で入った銭湯を思い出していました。いづみは史朗に、自分が銭湯を好きになったきっかけを話してきかせます。

華やかなファッション業界でデザイナーとして働いていた、いづみ。いつしか自分には実力がないことを思い知らされます。

仕事を辞め、身も心もボロボロだったいづみを救ったのは、おばあちゃんの家のお風呂でした。「人は裸になったら、みんな一緒」。

「他にもそんな風に、風呂で救われる人がいるのかな」史朗は問いかけます。「もちろん」。いづみの話を聞いて史朗は、悟朗のいない間、“まるきん温泉”を開けることを決めました。

銭湯の仕事はとても大変なものでした。ボイラーの火おこしは、風呂仙人が手伝ってくれました。掃除もままならず、お湯の温度も高すぎます。それでも、常連客は喜んでくれました。

表の暖簾の脇に掛けられる「わ」の文字が書かれた板。「わ」は、湯がわいたという意味です。

「コンコン」。桶を打つ音は、風呂を出るよという合図。「コン」1回は「はい」の意味。「コンコンコン」3回は「いいえ」の意味です。

番頭から見ていると、皆が銭湯に集まる理由がわかってくるようです。1人ひとりに物語があり、銭湯を通して繋がっているのです。

以下、『湯道』ネタバレ・結末の記載がございます。『湯道』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。


(C)2023映画「湯道」製作委員会

悟朗が退院してきました。悟朗は史朗に、父の遺言状を見せます。「史朗、お前の言っていた通り、このまま銭湯を続けても大変なだけだ。閉めよう」。

父からの遺言には、“まるきん温泉”は継がず売却するようにと書かれていました。「続けていたのは俺のエゴだったかもしれない」。悟朗は今月いっぱいで銭湯をたたむことにします。

次の日、いづみが姿を消しました。いづみが消えて、いかに“まるきん温泉”にとって、いづみが必要な人材だったか気付く史朗たち。兄弟は探し回ります。常連客もいづみがいなくなって心配しています。

そんなとき、家の風呂が故障し銭湯に顔をだしていた横山が、以前、いづみと究極の風呂について話したと言います。

それは“湯道”の家元に人生一番の風呂を尋ねた時、人里離れた山奥にあった“くれない茶屋”という場所を教えてくれたという話でした。

“くれない茶屋”の名前を聞いたいづみは、凄く興味を持っていたということです。いずみを探して山に入っていく史朗と悟朗。

たどり着いた先に茶屋はなく、一軒の日本家屋が建っています。中からひとりのおばあさんが顔をだしました。「ここに、若い女性の客が来ませんでしたか?」。

以前は旅人あいてに茶屋をしていたが、今はやっていないので、客はこないということでした。せっかくなので、お風呂を体験したいとお願いする2人。

おばあさんが案内してくれた風呂は、景色の良い高台に置かれた五右衛門風呂でした。自分たちで、少し離れた川から何往復も水を汲み、山から薪を集め湯を沸かします。

やっと湧いた風呂に兄弟で浸かります。「はぁ~最高」。「いづみちゃんのおかげで、こうして兄弟で話せるようになったな」。自然と笑顔がこぼれます。

そこに、いづみがやってきました。なんと、この家は、いずみの祖母の家でした。“湯道”の家元だけではなく、いづみもこの風呂で癒されたひとりです。そして、今、その風呂に史朗と悟朗が入っています。

「最後の最後まで全力で普通に営業したいんだ」。悟朗の想いを知り、いづみが“まるきん温泉”に帰ってきました。

「おかえり」。3人の帰りを常連客の皆が待っていてくれました。親子の再会を果たした良子と竜太の歌声が聞こえます。風呂好きで知られる人気DJ・フロウや、家元の姿もあります。“まるきん温泉”今日は一段と賑やかです。

そこに、温泉評論家の太田与一先生が再びやってきました。「まったく銭湯は遺物だよ」相変わらず批判ばかりです。

「おかげで気付きました。湯は人を幸せにする力があると。そして、ここの尊さを。“まるきん温泉”は遺物なんかじゃない」。史朗はたまらず口を挟みます。

横山はじめ、常連客たちも参戦します。「ここは世の本質です。心の洗濯に、心を洗いにやってきます。だから銭湯はやめられない」。太田は居たたまれず逃げだしました。

最後の日。史朗と悟朗、いづみは銭湯に浸かります。女湯からいづみが合図を送ります。「コンコン。それで、どうするんですか?銭湯、続けますか?」。

史朗は桶を取り、悟朗の顔をみました。うなずき、返事を返します。「コン」。

「湯は何か。太陽である。心の中を照らすお日様のようである」。湯道会館では先代家元が亡くなり、新しい家元を迎えていました。長く白い髪の毛と髭。そう、その人物は、家元の弟であった風呂仙人でした。

映画『湯道』の感想と評価


(C)2023映画「湯道」製作委員会
放送作家で脚本家、「クマもん」の生みの親・小山薫堂のオリジナル脚本で、日本の風呂文化を賞賛する、風呂好きによる風呂好きのための「お風呂の映画」が誕生しました。

昨今は、サウナブームで、「整った~」という言葉もよく聞かれます。そんな中、なぜ今、風呂の映画なのか。

タイトルである“湯道”とは、もともと風呂愛好家であった小山薫堂氏が、日本の習慣になっている“入浴”を日本文化のひとつとして昇華させるべく、2015年から提唱しているものです。その後、一般社団法人湯道文化振興会まで設立しているというから驚きです。

たしかに入浴は日本人にとって習慣化されたものです。湯を沸かし浸かる、入浴という行為。世界を見ると、なんと贅沢なたしなみを日本人はほぼ毎日しているのだと感じます。

薫堂氏が提唱する“湯道”には、「感謝の念を抱く」「慮る心を培う」「自己を磨く」という3つの精神を核としています。まさに今作は、この精神が盛り込まれたストーリーとなっています。

まずはお風呂に入れることへの感謝の気持ちを大切にすることです。水の恵みに感謝。果ては自然に感謝。お湯を沸かしてくれた人への感謝。風呂に入ることは当たり前のことのようであり、そうではないということです。

銭湯では自分だけではなく他の方も利用しています。掛け湯をしてから入る習慣も、他人への気遣いからうまれたものでしょう。

さぶ~んと湯を溢れさせず、静かに入る。銭湯とは、相手を思いやること、慮る心を学ぶ良い場所なのかもしれません。

そして、湯に浸かり心の垢を落とし、汚れのない穏やかな気持ちになる。自分の内側と向かい合うことで、自己を磨き新しい活力を養う。そこには有意義な時間が流れています。

風呂も突き詰めれば“道”となる。“湯道”。侮ることなかれでした

風呂といっても、自宅のお風呂、温泉もありますが、今作では銭湯が舞台となっています。現代ではその数は減っていますが、昔から、裸のつきあいという言葉もあるように、銭湯には人と人との距離を縮める力があります。

“まるきん温泉”の常連客もみな、それぞれの素性は関係なく、互いにマナーを守り入浴しています。銭湯で生まれた絆は、優しく強いものでした。

物語が進むにつれ、伏線が回収されていくスッキリ感と、心温まるエピソードの数々にほっこり温かい気持ちになるはずです。


(C)2023映画「湯道」製作委員会

そして、今作の見どころのひとつに、豪華キャストの共演があげられます。主人公の史朗を演じているのは、脱ぎ役者として定着しつつある生田斗真。気持ちの良い程、安定の脱ぎっぷりに安心感すら覚えます。

史朗の弟・悟朗役には、名バイプレイヤーとして唯一無二の存在感で多くの作品に出演する濱田岳が登場。生田斗真との息の合った掛け合いで仲が悪くも、愛しい兄弟を演じています。

“まるきん温泉”になくてはならないバイトちゃん・いづみ役には橋本環奈。銭湯を軽やかに動き回り、皆に明るく声を掛ける姿は、本当に可愛らしく癒されます。こんな番頭さんがいたら、銭湯に通う人も増えるはず。

そして、湯道会館で“湯道”を極める内弟子役には、窪田正孝が登場します。鍛えられた体から醸し出されるセクシーさ、ムダのない見事な“湯道”の所作にほれぼれします。

その他にも、豪華キャストが次々と登場し、物語を盛り上げます。

まとめ


(C)2023映画「湯道」製作委員会

小山薫堂が提唱する“湯道”をテーマに、豪華キャストでおくる銭湯映画『湯道』を紹介しました。

銭湯をめぐり、様々な人たちの物語が交差する群像劇。笑って、泣いて、整う!?お風呂エンタメ映画です

お風呂とは体の汚れを流すだけではなく、心の垢を流す日本特有の素晴らしい文化でした。

そういえば最近は、ゆっくり湯に浸かっていませんでした。今夜はお風呂を沸かそうか。




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