連載コラム「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第91回
深夜テレビの放送や、レンタルビデオ店で目にする機会があったB級映画たち。現在では、新作・旧作含めたB級映画の数々を、動画配信U-NEXTで鑑賞することも可能です。
そんな気になるB級映画のお宝掘り出し物を、Cinemarcheのシネマダイバーがご紹介する「B級映画 ザ・虎の穴ロードショー」第91回は、ルーベン・フライシャー監督が演出を務めた、映画『L.A.ギャングストーリー』です。
1949年、アメリカ・ロサンゼルス。自らを「神」と豪語し、売春で得た金を使って警察や政治家を意のままに操り街を支配するギャングがいました。
そんなギャングを打倒するべく、警察官という素性も名前も隠し命懸けの任務に就いたロス市警の警察官たちの姿とは、具体的にどんな姿だったのでしょうか。
1940年代から1950年代のロサンゼルスで起きた実話をもとに描いた映画『L.A.ギャングストーリー』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
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CONTENTS
映画『L.A.ギャングストーリー』の作品情報
【公開】
2013年(アメリカ映画)
【原作】
ポール・リーバーマン
【監督】
ルーベン・フライシャー
【キャスト】
ジョシュ・ブローリン、ライアン・ゴズリング、ショーン・ペン、ニック・ノルティ、エマ・ストーン、アンソニー・マッキー、ジョヴァンニ・リビシ、マイケル・ペーニャ、ロバート・パトリック、ミレイユ・イーノス、サリヴァン・ステイプルトン、ホルト・マッキャラニー、ブランドン・モラーレ
【作品概要】
「ゾンビランド」シリーズや「ヴェノム」シリーズなどを手掛けたルーベン・フライシャーが監督を務めた、アメリカのクライムアクション作品です。
本作はR15+指定作品のため、15歳以上の方しか視聴できません。
『メン・イン・ブラック3』(2012)のジョシュ・ブローリンが主演を務めています。
映画『L.A.ギャングストーリー』のあらすじとネタバレ
1949年、アメリカ・ロサンゼルス。自らを「神」と豪語し、麻薬や売春宿で得た金を使って警察や政治家を意のままに操り、街を支配するギャングがいました。
そのギャングの名はミッキー・コーエン、暴力に忠誠を誓った元プロボクサーの彼が支配するこの街には、売春や麻薬や暴力が溢れていました。
街の人々はコーエンを恐れて見てみぬふりをし、警察は彼を取り締まろうとしません。
そんな中、コーエンを恐れずに正義を執行する警察官がいました。その警察官の名は、ロス市警の殺人課の巡査部長ジョン・オマラです。
ジョンはコーエンの売春宿に乗り込み、囚われていた少女たちを救出。コーエンの手下3人を逮捕しました。
しかしコーエン配下のカーター判事によって、手下たちはすぐに釈放されてしまいます。
コーエンは他の手下たちに命じて、警察官に売春宿を摘発されるようなヘマをした彼らを、エレベーターの中に監禁し焼き殺しました。
ロス市警の本部長ビル・パーカーはジョンに目をつけ、正式な取り締まりではなく非合法なやり方でコーエンもろとも彼の組織を叩き潰す極秘作戦を打ち明けます。
元軍人でゲリラ作戦にも従事したことのあるジョンはこれを承諾し、コーエン打倒のための作戦に必要なチーム編成を行うことに。
ジョンの子供を身籠っている妻のコニーは最初反対するも、彼の熱意に根負けし、チーム編成を手伝うことにしました。
その結果、ジョンは投げナイフの使い手であり、セントラル通りで麻薬の取り締まりに力を入れている保安官のコールマン・ハリス巡査、数々の武功を立てた凄腕のガンマンのマックス・ケナード巡査、元アメリカ陸軍の諜報部員で署内で一番盗聴工作に長けているコンウェル・キーラー巡査の3人をチームに引き入れました。
一方ジョンの同僚であるジェリー・ウーターズ巡査部長は、コーエンの配下ではないものの面倒ごとには関わらない主義で、情報屋の友人ジャック・ウェイレンとつるんでいました。
コーエンとその一味の溜まり場となっているダンスバーで飲んでいた時、ジェリーはコーエンの世話係兼恋人のグレイス・ファラダーに一目惚れして、彼女と禁断の恋に落ちました。
ジャックが忠告せずとも、もしこの件がコーエンに露見すればどんな危険な目に遭うか、2人は理解していました。
ジョンが声を掛けた3人は、成功しても自分たちの名は公表されない、勲章も昇進もない危険な作戦であることを了承します。
いざ極秘作戦を実行しようとしたその時、ケナードの部下ナビダ・ラミレス巡査が登場。こっそり彼らの後をつけて話を聞いていたのです。
ジョンたちは渋々ナビダをチームに加え、バーバンクにあるコーエンのカジノを襲撃しに行きました。しかしそこは、コーエン配下のバーバンク市警の警察官が用心棒をしているカジノだったのです。
それを知らず襲撃したジョンたちは逆に追い返され、挙句の果てにジョンとハリスが逮捕されてしまいました。
一方コーエンは、以前からロスの覇権を争っていたシカゴのギャング、トミー・ルッソを惨殺。
それに文句を言ってきたシカゴのギャング、ジャック・ドラグナは路上で襲撃するよう、配下の殺し屋であるレヴォックらに命じます。
突然激しい銃撃に晒されたドラグナですが、辛くも生き延びました。偶然現場にいたジェリーと、靴磨きの少年ピートが銃撃に巻き込まれ、ピートは流れ弾に当たって死んでしまいました。
親しかった彼が殺され、激怒したジェリー。襲撃犯を殺し、その足でダンスバーにいるコーエンを殺そうとします。
ジャックは慌てて止めに入り、ジェリーを外に連れ出してから、コーエンのカジノが襲撃されたことを知らせました。
その件でバーバンク市警に逮捕された2人のうち、1人はジョンだと察したジェリーは、彼らの身柄を引き取りに行くコーエンの手下に扮して、バーバンク市警を襲撃。
ケナードとナビダ、キーラーらの手伝いもあって、ジョンたちの脱獄は成功。これを機に、ジェリーもチームに加わることになりました。
映画『L.A.ギャングストーリー』の感想と評価
ロス市警の少数精鋭のチーム「ギャング部隊」
パーカー本部長の命を受けたジョンは、コーエンとその組織を壊滅させるためのチーム「ギャング部隊」を結成します。
ギャング部隊のメンバーのほとんどは、ジョンと同じようにゲリラ戦に長けており、地位や名誉を捨ててでもロサンゼルスを守るために戦おうとする正義感の強い男たちです。
中にはキーラーのように、自分の子供に格好良いところを見せたい一心でチームに加わった者もいます。
コーエンを逮捕し、彼の組織を壊滅させたのは彼らギャング部隊のおかげですが、作中でジョンがチームメンバーに言っていたように、彼らの名前は公表されず、誰かに賞賛されることもありません。
ジョンたちが命懸けでコーエン打倒のために戦っていたことは、ジョンたちの身近な人たちと、そして本作を視聴した人だけが知っており、彼らがロサンゼルスを支配する悪を倒した英雄だとわかっています。
なので画面越しにでも、命懸けの任務を達成しロサンゼルスに平和をもたらしたジョンたちギャング部隊に、大きな拍手を送ってあげてください。
ロサンゼルスを支配するギャング、ミッキー・コーエン
麻薬や売春宿で得た金を使って警察や政治家を買収し、ロサンゼルスを支配したギャング、ミッキー・コーエン。
彼は元プロボクサーということもあり、銃が無くても元軍人のジョンと互角に戦えるほど格闘戦に長けています。
そして作中では、ギャング部隊によってカジノや胴元組織を潰され、激怒するコーエンの姿がよく描かれていますが、彼は頭もキレる男でした。コーエンは怒りに燃えながら、冷静に襲撃した犯人が誰かを分析。
その結果、パーカーが差し向けたジョンたちギャング部隊の仕業によるものだと気づき、すぐに彼らの情報を調べ、関係のないジョンの家族にまで手をかけました。
ロスの覇権を巡って争っていたシカゴのギャングはもちろん、コーエンは自分の権力を脅かす者には容赦しません。
そんな頭のキレる最恐のギャングであるコーエン。冷酷非道に敵を完膚なきまでに潰す様は身の毛もよだつほど恐ろしいですが、意外にも礼儀作法にこだわっている面もあるどこか憎めないキャラクターです。
まとめ
ロサンゼルスを舞台に、ロス市警の少数精鋭のチーム「ギャング部隊」と、ロサンゼルスを支配するギャングが激闘を繰り広げていく、アメリカのクライムアクション作品でした。
本作の見どころは、権力に屈さず純粋にロサンゼルスの街を守るために身分を隠して命懸けで戦ったジョンたちの活躍と、ジョンとコーエンの一騎討ちです。
実際に1940年代後半から1950年代にかけて、ロス市警とギャングが激闘を繰り広げていたことを思うと、ジョンたちの戦いがよりリアルなものに感じて、終始ハラハラドキドキさせられます。
本作の予告編公開後の2012年7月20日、コロラド州オーロラで銃乱射事件が起きました。
これを受け、配給会社のワーナー・ブラザースは、ハリウッドにある世界的に著名な劇場「グローマンズ・チャイニーズ・シアター」で、男たちが短機関銃を乱射する場面が含まれていたこの予告編の映画での上映およびインターネットへの掲載を中止。
さらに本作は再撮影が行われ、北米と日本での公開が延期されることとなりました。そして翌年の2013年1月11日にアメリカで、同年5月3日に日本で無事劇場公開されました。
ジョシュ・ブローリンやショーン・ペンら実力派俳優にはまり役の登場人物たちが大暴れする、手に汗握るクライムアクション映画が観たい人に、とてもオススメな作品です。