デビッド・O・ラッセル監督の映画『アムステルダム』がついに公開に!
『アムステルダム』は、かつて第1次世界大戦の戦地で知り合った2人の男性と1人の女性の物語。3人は固い友情で結ばれていましたが、ある日殺人事件の犯人にされ、次第に巨大な陰謀に巻き込まれていきます。
『アメリカン・ハッスル』(2013)『世界にひとつのプレイブック』(2012)のデビッド・O・ラッセル監督が、クリスチャン・ベール、マーゴット・ロビー、ジョン・デビッド・ワシントンら豪華キャストを多数迎えて映画化しました。
米国史に存在する実際のクーデター事件を、独自の解釈で映像化した意欲作『アムステルダム』。
衝撃的なその内容と豪華キャストという前評判で公開が待たれた本作を、ネタバレ有でご紹介します。
CONTENTS
映画『アムステルダム』の作品情報
【日本公開】
2022年(アメリカ映画)
【原題】
Amsterdam
【製作】
アーノン・ミルチャン クリスチャン・ベール
【脚本・監督】
デビッド・O・ラッセル
【編集】
ジェイ・キャシディ
【キャスト】
クリスチャン・ベール、マーゴット・ロビー、ジョン・デビッド・ワシントン、クリス・ロック、アニヤ・テイラー=ジョイ、ゾーイ・サルダナ、マイク・マイヤーズ、マイケル・シャノン、ティモシー・オリファント、アンドレア・ライズボロー、テイラー・スウィフト、マティアス・スーナールツ、アレッサンドロ・ニボラ、ラミ・マレック、ロバート・デ・ニーロ
【作品概要】
『アムステルダム』は、第1次世界大戦で知り合った3人の男女の行く末を、史実とフィクションを巧みに交えて描いたクライムストーリー。
監督は、『アメリカン・ハッスル』(2013)『世界にひとつのプレイブック』(2012)のデビッド・O・ラッセル。
クリスチャン・ベール、マーゴット・ロビー、ジョン・デビッド・ワシントンが物語の中心となる3人を演じ、ラミ・マレック、ロバート・デ・ニーロをはじめ、クリス・ロック、アニヤ・テイラー=ジョイ、ゾーイ・サルダナ、マイク・マイヤーズ、マイケル・シャノン、テイラー・スウィフトら豪華キャストも多数集結。
映画『アムステルダム』のあらすじとネタバレ
1930年代のニューヨーク。かつての第1次世界大戦で生き延びた医師バート(クリスチャン・ベール)は、自分と同じ復員兵に寄り添った治療をする医院を開いていました。
身体の傷とともに心の痛みも抱える復員兵たちに、痛み止めを惜しげもなく差出し、新薬と称して国が承認していない薬も作り出して治療にあたっています。
バートには戦地で知り合った親友たちがいました。ある日、その親友の一人黒人弁護士のハロルド(ジョン・デビッド・ワシントン)から呼び出されます。
軍隊でお世話になった将軍の娘リズ・ミーキンズ(テイラー・スウィフト)から、変死した父を解剖して死の原因を突き止めてほしいと頼まれたと言うのです。
バートとハロルドがリズに頼まれて、2時間でミ―キング将軍の死体を解剖しましたが、詳しい検査結果が出るまでまだ少し時間がかかるようでした。
それでも胃の中には白い液体があり、やはり何者かの手によって殺害された可能性があるとわかったので、それをリズに報告しようと彼女と路上で会いました。
リズは誰かに脅かされたようで、もう調べなくてもいいと言いますが、何か言いかけた時、突然建物から飛び出してきた男がリズを車道に突き飛ばしました。
そこへ車が走って来てあっという間にリズはひき殺されてしまいます。
呆然とするバートとハロルドですが、リズを突き飛ばした男は2人を指さし、「あいつらが彼女を突き飛ばしたんだ」と叫び始めました。
周囲の人たちもバートたちの味方をしてくれません。警察も来て騒ぎも大きくなり、2人はあわてて逃げ出しました。
逃げながらバートは初めてハロルドと出会った時のことを思い出します。
バートが激戦地に派遣された時、黒人兵たちが命令を聞こうとはしませんでした。黒人兵を平等に扱えと当時の部隊の上官に申し立てていたのです。その中心人物は、黒人兵のハロルドでした。
ミーキンズ将軍が騒ぎをききつけ、自分の部隊は人種差別のない部隊にすると断言。即座にバートをハロルドたちの上官に指名します。
ハロルドはバートに「命をかけて俺たちを護ってくれるのか」と尋ね、バートは承諾します。
部隊は激しい戦闘をし、バートもハロルドも大怪我をして病院に担ぎ込まれます。
そこで看護師として働いていたヴァレリー(マーゴット・ロビー)は、必死に2人の怪我を手当しました。
バートは片目を失い、腰のコルセットが離せないうえに背中に醜い弾の跡が残る身体となり、ハロルドもまた左頬に醜い傷跡が残りました。
ですが、精一杯に看護をしてくれたヴァレリーと意気投合し、3人は信頼のおける親友同士となります。
オランダのアムステルダムに行けば、義眼を作ってくれるいい技師がいるとヴァレリーが言い、ハロルドも一緒に3人でアムステルダムへ行きました。
そこでの療養生活はとても楽しいものでした。義眼を得たバート、ヴァレリーのハートを射止めたハロルドと、2人は心行くまで身体と心の傷を癒していました。
しかし、アメリカに妻をおいてきたバートは、傷がそこそこ癒えると、家に戻ることにします。
アメリカでのバートがモルヒネ依存症になってしまったのを知り、ハロルドも彼を救うためにアメリカへ帰ることを決意。
ヴァレリーを連れてアメリカに帰ろうとした翌日、彼女は置手紙をして消えてしまったのです。
映画『アムステルダム』の感想と評価
ユニークなクライムストーリー
『アムステルダム』は、史実であるクーデター事件を、デビッド・O・ラッセル監督が独自の解釈で映像化した作品です。
ほとんど事実と言われるストーリーで国家をあげての陰謀が潜む本作は、シリアスで重苦しい雰囲気という先入観があったのですが、実際はポジティブなユーモアたっぷりで楽しめました。
それというのも、主人公3人がコントをしているような温かいオーラを醸し出しているからです。
ちょっとお気楽トンボで女性の母性本能をくすぐる医師バーク。演じるクリスチャン・ベールが、何かあればすぐにコロリと落ちる義眼を大切にしている様子も笑いを誘います。
正義感の強い黒人弁護士のハロルド。バークとの掛け合いは、噛み合うようで噛み合わず、どことなくユニークです。演じているのはジョン・デビッド・ワシントンで、力強い存在感を放っています。
美人看護師・ヴァレリーを演じたのは、マーゴット・ロビー。黙っていても絵になる美しさと華やかさで、暗くなりがちな作品を盛り上げます。
共演者として有名な俳優も数多く、男性陣も負けてはいません。
悪役として登場する『ボヘミアンラプソディ』のラミ・マレック。今にもマイクを持ってあの歌を歌いだすのでは?と気になってしまうことでしょう。
ロバート・デ・ニーロの重厚な演技も作品に重みをもたせています。
ラスト結末には事の真相が暴露され、3人組が国絡みの陰謀を阻止しようと頑張る姿に思わず拍手も……。
スリリングな事件がスピーディに展開され、国家の悪事をあばくという小気味のよい痛快アクションドラマでした。
美女が繋ぐストーリーなど盛りだくさんの仕掛け
本作は、ラッセル監督の7年ぶりの最新作であり、主役、共演者も含めて超豪華なキャストを揃えていることも話題を呼んでいます。
また、凄いのは作品関係者のアカデミー賞ノミネートと受賞の数。主役の3人をはじめとするキャストと監督のその数を合計すると38部門にもなりました。
注目度高い本作で注意しながら見ていくと、物語の始まりは美女からの遺体解剖依頼であることに気が付きます。
この美女は、バークとハロルドの軍隊時代の将軍の娘リズ。テイラー・スウィフトが演じていて、物語の舵を取ります。
そして、黒人の解剖専門看護師のイルマ役としてゾーイ・サルダナが登場し、次には資産家トムの妻リビー役でアニヤ・テイラー=ジョイも出演します。
謎の美人看護師として主役の一人を担うマーゴット・ロビーを筆頭に、眩しいばかりの美女たちが次々と現れて作品に華を添えてくれました。
一方、ディレンベック・ギル将軍のモデルとなったのは、第一次大戦で軍最高位の名誉勲章を2度も授与された伝説的軍人のスメドレー・バトラーです。
エンディングで、スメドレー・バトラーが演説する実際の映像と映画のワンシーンとが並べて流されますので、お見逃しのないようご覧ください。
まとめ
デビッド・O・ラッセル監督の最新作『アムステルダム』をネタバレ有でご紹介しました。
固い友情で結ばれた3人がひょんなことから国家の陰謀に巻き込まれるという、史実に基づくクライムストーリーです。
豪華絢爛なキャスト陣に注目が集まりますが、このお話が史実であることも忘れてはならないでしょう。
戦争によって身も心もボロボロになった人たちがいる一方で、少数の軍事企業家に莫大な富が集中し、権力を伸ばし続けているのです。
本作では戦争への予知のような不安も匂わせ、戦傷を負いながらも懸命に生きて陰謀を阻止した勇気ある3人組を描いています。
国家が闇に葬ろうとした実話を温かみのあるドラマに仕上げたデビッド・O・ラッセル監督の手腕に頭が下がります。
また全員主役級の顔ぶれのキャスト陣も楽しみながらご覧ください。