2020年7月のロックダウン下のロサンゼルスで撮影されたパンデミックスリラー
『ブラック・ファイル 野心の代償』(2017)の脚本や、『悪魔の椅子』(2008)の監督・脚本を務めたアダム・メイソンが監督を務め、マイケル・ベイがプロデュース。
感染症の世界的拡大により、街で外出を許されているのは免疫者のみ、ゴーストタウン化した街で免疫者のニコは配達員の仕事をしています。
恋人のサラとは触れ合えず、いつか恋人と会えることを願いながら仕事に奔走するニコだったが、サラの身に危険が迫り……
主人公ニコを演じるのは、ドラマ「リバーデイル」シリーズのK・J・アパ、サラ役には『ディセンダント』シリーズのソフィア・カーソンが演じました。
2020年、ロックダウン下のロサンゼルスで、感染症対策などでスタッフをはじめ人数が制限されている中、スマートフォンやドローンを駆使して撮った映像のリアルさ、“破壊王”マイケル・ベイならではの手に汗握るアクションシーンも見どころです。
映画『ソングバード』の作品情報
【日本公開】
2022年(アメリカ映画)
【原題】
Songbird
【監督】
アダム・メイソン
【脚本】
アダム・メイソン、サイモン・ボーイズ
【キャスト】
K・J・アパ、ソフィア・カーソン、クレイグ・ロビンソン、ブラッドリー・ウィット、ピーター・ストーメア、アレクサンドラ・ダダリオ、ポール・ウォルター・ハウザー、デミ・ムーア
【作品概要】
ハリウッドの“破壊王”とも呼ばれ『トランスフォーマー』シリーズや『アンビュランス』(2022)を手がけたマイケル・ベイがプロデュースを務め、『悪魔の椅子』(2008)などのアダム・メイソンが監督、共同脚本を務めました。
主人公ニコを演じたのは、ドラマ「リバーデイル」シリーズや『僕のワンダフルライフ』(2017)のK・J・アパ。
恋人のサラを演じたのは、『ディセンダント』シリーズのソフィア・カーソン。
映画『ソングバード』のあらすじとネタバレ
感染症が拡大し、致死率は56%、全世界の死者数は1億1千万人を超えた2024年。
人々は外出禁止され、徹底した感染対策のもとソーシャル・ディスタンスを強いられていました。
感染者は「Qゾーン」と呼ばれる隔離キャンプに連れて行かれ、外出を許可されたのは免疫者というウイルスの免疫を持つもののみです。
しかし、自由に外を歩き回る免疫者はウイルスを保有している可能性が高く、免疫者ではない人々には会えず孤独な生活を送らなくてはなりません。
免疫者であるニコ(K・J・アパ)は、配達員の仕事をしながら恋人のサラ(ソフィア・カーソン)と通話する日々を送っていました。
免疫者ではないサラは祖母と2人で暮らしています。
ニコが配送を間違えたことで出会った2人はまだ直接会ったことがありません。
ニコは免疫者を証明する偽装パスポートがどこかで取引されていると知り、サラのためにお金を貯めています。
ニコが配送でよく訪れる裕福なグリフィン家では、妻のパイパー(デミ・ムーア)のみ免疫者で、夫・ウィリアム(ブラッドリー・ウィットフォード)と娘・エマは免疫者ではありません。
エマは持病により免疫が弱く、パイパーは娘の身を案じて神経を尖らせています。更に、豪邸の維持やお手伝いを雇うお金など、お金が必要になります。
しかし、仕事はなく、やむを得ず厚生衛生局の局長・エメット・ハーランド(ピーター・ストーメア)と組んで偽装パスポートを密輸しています。
神経を尖らせているパイパーに対し、ウィリアムは自粛生活に嫌気がさし、ハーランドに会いに行くと言っては愛人のメイ(アレクサンドラ・ダダリオ)に会いに行っています。
メイはレコード会社と契約するはずが、パンデミックにより契約できず、配信で歌を歌ったりしていました。
メイの配信は人々の癒しともなり、ニコが所属する「レスター急配」でドローンを使って観察などを担当しているドーザー(ポール・ウォルター・ハウザー)もメイの配信を楽しみにしている一人でした。
映画『ソングバード』の感想と評価
世界中を襲った未曾有のコロナパンデミック。今なお終息したとはいえない状況ですが、少しずつ私たちは日常を取り戻しつつあるのではないでしょうか。
日本はロックダウンとまではいかなかったものの、2020年は緊急事態宣言、2021年はまん延防止重点措置と外出制限を余儀なくされました。
人は緊急事態下であっても続けばどこか慣れてきてしまいます。
コロナパンデミック以前では考えられなかった人が、皆マスクをしている風景もいつしか当たり前のように感じているのではないでしょうか。
映画『ソングバード』はそのように、どこか感覚が麻痺してしまった私たちにコロナパンデミック初期の混乱と恐怖を呼び起こさせます。
また、パンデミックにより様々な業界が大打撃を受け、エンタメ業界もその影響は免れませんでした。
表現者らは、それぞれ今自分に何が出来るかを模索していました。そんななか制作されたのが『ソングバード』です。
ドローンを使った撮影や、スタッフ・キャスト陣の数が制限されることを逆手に取り、見事なエンタメ作に仕上げました。
『ソングバード』はパンデミック下で取られたはじめてのパンデミック映画と言えるのではないでしょうか。
“破壊王”マイケル・ベイならではのアクションシーンも、ドローンを活用したスリル満点のアクションシーンになっています。
更に、コロナパンデミックを経験したことにより、フィクションで描かれるパンデミックがよりリアルに感じられます。
『ソングバード』で描かれる分断は、もはや他人事ではないのです。
SNSが発展した現代では様々な憶測や信憑性のない情報も多く飛び交いました。
一方で、SNSで簡単に繋がれる現代だからこそ、不安を共有し、励まし合えることができたともいえます。
メイ(アレクサンドラ・ダダリオ)とドーザー(ポール・ウォルター・ハウザー)の関係はまさにパンデミック下でSNSを通して繋がりました。
ニコとサラもパンデミック下で出会い、2人はテレビ通話のみで実際に会うことが出来ずにいました。
サラの祖母が感染したことにより、一緒に住むサラもQゾーンに行かなくてはならなくなります。
危険が迫りつつあるなか、ニコとサラは知恵を絞って何とか切り抜けようとします。
その強さは互いを信じ愛し合っているからこそなのです。
パンデミックによる分断や混乱を描きつつも、その核にあるのは人と人が愛し合い助け合う姿なのです。
どんな状況であっても人は大切な者のために強くなることができる、そんな真っ直ぐなメッセージは私たちの胸にも直に響きます。
まとめ
感染症拡大により、ゴーストタウン化したロサンゼルス。
免疫者のみ外出が許可され、免疫者であるニコは恋人のサラと会える日を待ち望みながら配達員として働いています。
ニコは最後に上司に向かって、僕らは希望も運んでいたんだ、と言葉にします。
監督を務めたアダム・メイソンは、ロックダウンを余儀なくされた生活を支えてくれた配達員の存在のありがたさを感じたといい、その気持ちが本作の制作にも影響していると言います。
一方で、公衆衛生局の局長による陰謀など公的機関の腐敗、それによる分断などフィクションで描き出し、混乱の中における人々の怖さも浮き彫りにします。
それでも互いを信じ、大切な存在がいるからこそ頑張ふことができる、生きていくことができるという私たちが忘れていたかもしれない大切なことを改めて感じさせてくれます。