バカ騒ぎを繰り返し鬼学長を激怒される親友3人と、行方不明となった1人を捜す10年後の彼らの姿を同時進行で描いた、インドで興行収入ナンバーワンを記録した大ヒットコメディドラマ映画『きっと、うまくいく』のネタバレあらすじと作品解説をご紹介いたします。
実は大学を卒業して以降、ランチョーは行方不明になってしまっていました。そのランチョーの居場所を知っていると言うチャトゥルは、ファルハーンたちを連れて避暑地シムラへ連れて行きます。
「Aal Izz Well.(うまーくいーく)」という、故郷の村で夜回りする時に臆病な心を落ち着かせる口癖をモットーにしているランチョーは、反骨心の強い生徒で、入学早々理不尽なことを要求する上級生に反抗します。
また弁が立つため、ランチョーはたびたび、学校を支配するICE工大学長ヴィールー・サハストラブッデーや教師に反抗しては、生徒の前で言い負かしてしまうため、目の敵にされていました。
そしてランチョーは機械が大好きで、機械を見つけると、いつもズボンのポケットに入れているドライバーで分解していました。時には失敗して壊すこともあったのだとか………。
そんなランチョーに似た生徒がもう1人、ICE工大4年生のジョイ・ロボです。故郷の村で初の学士と父親に期待されているジョイは、学位の授与式はいつかと、ヴィールーに尋ねていました。
誰かに先んじられることが大嫌いなほど、負けず嫌いなヴィールーは、ジョイが卒業制作に作ったドローンを、わざわざ目の前で彼の父親に電話をかけて「実用性がなく飛ばないヘンテコなものを作っている彼は留年決定だ」と罵ったのです。
ジョンの葬儀時、ランチョーは静かに、ヴィールーを糾弾しました。「警察もジョイの父親も自殺だと思っていますが、ジョイの死亡診断書には“学業のストレスが原因”と書いてありました」
以下、『きっと、うまくいく』ネタバレ・結末の記載がございます。『きっと、うまくいく』をまだご覧になっていない方、ストーリーのラストを知りたくない方はご注意ください。
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ランチョーと真っ向から対立したヴィールーは、彼ら3バカトリオの仲を引き裂くべく、あらゆる策を講じます。
「ランチョーのせいで悪に染まったファルハーン/ラージューの将来は絶望的だ」と、ファルハーンとラージューの家族に嘘の手紙を出したり。
貧乏なラージューの家と平凡なファルハーンの家、実は裕福なランチョーの家には家族年収に大きな差があることを、ラージューとファルハーンにだけ伝え、チャトゥルの部屋に引っ越しするよう指示したり………。
前者は失敗したものの、後者はラージューには効果覿面で、ラージューはファルハーンたちと衝突し、チャトゥルの部屋に引っ越してしまいました。
ところが、脳に効く薬を服用しているせいで、裏で皆にサイレンサーと呼ばれているほど、チャトゥルのすかしっ屁は強烈に臭かったのです。
そんなラージューを不憫に思ったランチョーたちは、彼を救い出すため、且つ「教科書の丸暗記はダメ、科学を楽しめ」と教えるため、チャトゥルにある悪戯をします。
成績トップになるためなら手段を選ばない、ウガンダ生まれの勤勉家で嫌味な男チャトゥルは、ヒンドゥー語があまり得意ではありません。
図書員に原稿の代筆を頼むことにしたチャトゥルはこの時、まさかファルハーンとランチョーに、自分の居ぬ間に勝手に書き換えられることになるとは思いもしませんでした。
教師の日である9月5日。チャトゥルは全校生徒やピアの前で、ヴィールーや来賓客の教育大臣に侮辱的な言葉を送り、挙句の果てには、自分の臭すぎるすかしっ屁を詩で詠んでしまいます。
当然、後で大目玉を食らったチャトゥルは、自分のスピーチを酒の肴にして、屋上で飲んでいるランチョーとファルハーンの元へ行ってこう言いました。
「この恨みは一生忘れない」「いつか私はこのやり方(教科書の内容を丸暗記するせいで、物事の理由を突き詰めたりしないこと)で成功してやる」
そう叫ぶチャトゥルに対し、ランチョーは「成功を追うのは間違いだ、優秀なら成功はついてくる」と返します。
しかし、チャトゥルは聞く耳を持ちません。「10年後の今日、9月5日にここに戻ってくるんだ。お前か私、どちらが成功するのか賭けをしようじゃないか」
ランチョーを目の敵にする者が増えた一方、ファルハーンたちのように、ランチョーの姿勢に触発され、惹かれる者が彼ら以外でもう1人います。
医者志望の医学生であり、ヴィールーの娘ピア・サハスラブッデーです。彼女とランチョーたちの出会いは、ピアの姉モナの結婚式でした。
偶然お叱りを受けに行ったファルハーンの実家近くでやっていたモナの結婚式に、ファルハーンたちと一緒に潜り込んだランチョーは、ピアと彼女の婚約者であるICE工大卒業生である銀行員スハース・タンドンがトラブっているのを見かけます。
スハースが席を離れた隙をついて、ピアに声をかけたランチョーは、「あの男は損得勘定で動く男だから、結婚しない方が良い」と忠告しました。
最初はランチョーの言葉が信じられなかったピアでしたが、後日街で会ったランチョーが、「スハースに買ってもらった高級腕時計をもう失くしたんだって」と嘘をついた時、スハースが返した言葉を聞いて目が覚めました。
「あの腕時計はとても高かったんだぞ、それを失くすなんて。君はとんだクズだ」………ランチョーの言う通り、スハースも、彼との婚約を解消させてくれない父親も、マヌケな男だったとピアは思い知らされました。
怒ったピアがバイクで立ち去ろうとした時、彼に助けを求められます。実はこの時、ランチョーの元にラージューの母親から、「半身不随で寝たきり状態の夫の意識がない」と電話がきていたからです。
2時間前に連絡したのにまだ到着しない救急車も、タクシーを呼びに行ったラージューを待ってる暇もないくらい、ラージューの父親の容体は悪かったため、彼の家に駆けつけたランチョーはピアのバイクで3人乗りして病院へ運ぶことに。
その結果、ファルハーンとラージューが病院に駆けつけた時には、ラージューの父親の容体は無事回復。あのまま救急車を待っていたら死んでいたと、ラージューは医師から聞きました。
ラージューはランチョーに感謝し、3人の絆は無事回復。と同時に、ピアはランチョーへの恋に落ちました。
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迎えた1年の成績発表の日、ピアのおかげで試験を無事受けられた3人を含む、1年生全員の成績が記された成績表が廊下に貼り出されました。
結果、ファルハーンは最下位、ラージューは下から2番目、ランチョーはチャトゥルを抑えて学年トップでした。
その後、ヴィールーを中心に、彼の両脇の椅子から成績順に並ばされた1年生は集合写真を撮影。
撮影中、ランチョーとヴィールーは、「ファルハーンとラージュー、2人のうち1人でも就職できたらヴィールーの自慢の髭を剃る」と賭けをしました。
場面転換、10年後の世界。大会社の副社長となったチャトゥルと一緒に、ファルハーンたちはシムラにあるチャチャル邸を訪ねました。
チャチャル邸を訪れたファルハーンたちは、衝撃を受けました。豪邸の壁に飾られたICE工大の卒業証書も、試験後にとった集合写真も本物なのに、家にいたランチョーと名乗る男は、2人が知る親友ではなかったのです。
ファルハーンたちは、ランチョーと名乗った男は一体何者なのか突き止めるべく、彼を問い詰めることにしました。
その結果、ランチョーだと名乗った男こそが本物のランチョーであり、ICE工大に通っていたのは、「チビ」とチャチャル一家から呼ばれていた彼らの使用人だったことが判明。
勉強が好きなチビに目をつけたランチョーは、彼に宿題や試験の肩代わりをさせるように。のちにランチョーの父親に露見してしまいましたが、彼はそのままランチョーの替え玉としてチビに勉強させようとします。
ランチョーの父親は名士であるものの学がなく、ランチョー自身も学がありません。このままでは息子も、自分のように皆の笑い者にされてしまうと危惧したランチョーの父親は、息子の学位をチビに取らせようと考えたのです。
ただしICE工大の学位取得後、チビは大学と連絡を絶つことが必須条件でした。そう話してくれたランチョーは、ICE工大の学位を不正取得したことを秘密にすることを条件に、2人の親友が北の辺境ラダックにいることを教えます。
場面転換、10年前の世界。4年生になったランチョーたちは、就職活動と卒業試験を間近に控えていました。
この4年間、最下位争いを繰り広げたファルハーンとラージューは、4年間変わらず学年首位を独走するランチョーに不満をぶつけます。
そんな2人に、ランチョーはこう言いました。「僕が1番になれたのは、機械が好きだから。工学が僕の情熱なんだ」
「ファルハーンの成績が上がらないのは、本当は5年前からずっと、大好きな写真家アンドレ・イステバーンの下で写真を学びたいことを父親に隠しているせいだ」
「ラージューがビリなのは臆病だから。その証拠に、指の数よりお守りの指輪の方が多い。将来の心配をしていたら生きていけないし、勉強に集中できない」
そう言うランチョーに、ファルハーンは彼も臆病だと言い返します。ピアを死ぬほど愛しているものの、ランチョーは臆病で彼女に想いを告げていませんでした。
ファルハーンたちはランチョーに宣言します。「お前がピアに告白したら、僕も写真家になりたいと父さんに告白する」
「僕もお守りの指輪を全部捨てて、面接に行く」………その後、酩酊状態の3人はICE工大近くにあるヴィールー邸に忍び込み、ランチョーはピアの枕元で愛の告白をしました。
ピアの隣で寝ていたモナに2人が祝福されている中、ラージューとファルハーンは大声を出しながらヴィールー邸のポストに放尿したのです。
そのせいで別室で寝ていたヴィールーが起きてしまい、3人は慌てて退散。しかし、ヴィールーが持つ懐中電灯に照らされたラージューの姿だけ見られてしまいました。
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翌日。学長室に呼び出されたラージューは、ヴィールーから退学を言い渡されます。
「それが嫌ならば、ランチョーを身代わりに差し出せ。そうすればお前の退学は取り消してやろう」とも言われてしまい、八方塞がりになってしまったラージューは、ヴィールーへの精一杯の抗議として窓から飛び降りました。
救急搬送されたラージューは一命はとりとめたものの、一時的に父親と同じ、半身不随に陥ってしまいました。
ファルハーンたちと彼らの同級生たちは、1日でも早くラージューが回復するように、ヴィールーが退学処分を取り消したから問題は解決したと伝えました。ラージューを笑わせるためならばと、ランチョーは幸せな嘘をいくつもつきました。
その甲斐あって、ラージューは車椅子での移動ができるまでに回復。涙を浮かべて抱き合うラージューとランチョーの姿を、ファルハーンは初めて、野生動物以外をカメラに収めました。
それから数日後。ファルハーンは5年前に書いたイステバーン宛ての手紙を、ランチョーたちとピアが隠れて出したおかげでイステバーンに写真を気に入られ、イステバーンの撮影助手になることが決まりました。
ファルハーンはランチョーたちに背中を押され、世間体を気にしてエンジニアにさせようとする父親と正面から向き合い、必死に説得した結果、動物写真家になることを認めて貰えました。
ラージューは宣言通り、お守りの指輪全て捨てて、ファルハーンが行くはずだった面接へ行きました。面接官に成績不振なことを尋ねられた際、ラージューは「昔から優等生だったせいで、1番にならないと競争にならないという恐怖心があった」と、自殺未遂したことを交えて正直に答えました。
その結果、面接官は会社側に迎合しなかったラージュー自身の言葉に感銘を受け、彼はその場で内定を貰いました。
ランチョーとの賭けに負けたヴィールーは、ラージューへの復讐のため、彼自ら卒業試験の答案用紙を作成してラージューを落第させようとします。
ピアから聞いて知ったファルハーンとランチョーは、彼の落第を阻止するべく、彼女が盗んだ学長室の鍵を使って、答案用紙を探しコピーを取りました。
2人は事情を説明し、ラージューに答案用紙のコピーを渡しますが、当の本人は自分の実力で合格してみせると意気込みます。
しかしその直後、ヴィールーに学長室に忍び込み、答案用紙をコピーしたことがバレてしまい、3人は退学を言い渡されてしまうのです。
当然、ヴィールーは学長室の鍵を盗んだピアも叱りましたが、彼女にこう反論されてしまいます。
「パパにエンジニアになれと一方的に決めつけられ、凄い圧迫を受けたせいで、兄さんは入試より死を選んだのよ」
「兄さんの遺書には、本当は文学を学んで作家になりたかったと書いてあった」「一度でいいから、“エンジニアでなくていい、好きなことをやれ”って言って」
その夜、街は道が浸水するほどの豪雨に見舞われ、妊娠中のモナはそのタイミングで破水してしまいます。
ヴィールーが救急車を手配できず困っていると、3人と大学内で荷物運びなどで働いている彼らの友人マンモーハンが偶然そばを通りかかり、大学の娯楽室にモナを運び入れました。
病院にいるピアと看護師の指示のもと、ファルハーンたちは多くの生徒を巻き込んでのピアのお産を始めます。
停電になったり、お腹の赤ん坊の頭がなかなか顔を出さなかったりとトラブルに見舞われたものの、掃除機で作った即席の吸引器でを以て出産は無事成功。
モナの赤ん坊は、お腹の中で聞いて気に入ったランチョーの言葉「Aal Izz Well.(うまーくいーく)」を聞くと、それまで泣かなかったのが嘘のように産声をあげてくれました。
奇跡を起こした立役者であるランチョーは、静かにその場を立ち去ろうとしましたが、ヴィールーに呼び止められ、彼の恩師から貰った大事なペンを貰い、3人の退学処分の取り消しを言い渡されます。
その後、卒業試験をパスした3人は、無事ICE工大を卒業。首席で卒業したランチョーは、皆がハグして再会を約束している間に、黙って姿を消しました。
場面転換、10年後の世界。親友の恋人ピアのことを思い出したファルハーンたちは、彼女の職場に電話をかけると、マナーリーでピアがスハースと結婚することを知ります。
社運をかけた、400以上の特許を持つ発明家フンスク・ワングルとの契約を是が非でも取りたいチャトゥルは、彼との交渉を明日に控えていたため、このままラダックへ行くとの一点張り。
そんな彼を無視することにしたファルハーンとラージューは、ピアがいる結婚式場に急行。世間の目を恐れてスハースと結婚しようとする彼女が、本当はまだランチョーを愛していることを言い当て、必死に説得しました。
その結果、2人はピアを結婚式から連れ出すことに成功。本物のランチョーに教えてもらった住所へ行くと、そこは5人が知るランチョーと同じ、機械が好きな子供たちが、あちこちで様々な発明品で遊んでいる村の小学校でした。
その小学校の学長室には、動物写真家となったファルハーンが撮影した野生動物の写真集や、ピアのヘルメットが置かれており、PCにはランチョーが毎日見ているというラージューのブログがありました。
ファルハーン・ラージュー・ピアにそのことを教えてくれたのは、マンモーハンでした。彼はランチョーのおかげで学校に通うことができ、ランチョーと一緒にこの学校で働いていたのです。
当のランチョーはというと、近くの湖で生徒たちと開発したプロペラ機を飛ばしているのだとか。真っ先に彼に会いに行ったピアは、10年間変わらなかった互いへの愛を確かめ、10年前にできなかったキスをしました。
そこへファルハーンとラージョーも駆けつけ、4人は感動の再会を遂げました。一足遅く駆けつけたチャトゥルは、村の小学校の教師となったランチョーを鼻で笑いました。
しかしそのランチョーこそ、チャトゥルが明日交渉しようとしていたワングル本人でした。
ランチョーの本名を知ったチャトゥルが態度を変え、詫びを入れながら逃げる4人を追いかけていく姿を最後に、物語は幕を閉じました。
4年間共に困難を乗り越え、青春を謳歌し学問を学んだ親友2人と、結ばれたばかりの恋人ピアに何も言わず姿を消したランチョーの心情を思うと、胸が張り裂けそうなぐらい辛く悲しいです。
ただ勉強と機械が好きで、本物のランチョーの代わりに学校に通わせてもらっていただけの使用人だった彼は、ファルハーンたちとの出会いを経て、友情と真実の愛を知ることが出来ました。
反骨心の強いランチョー改めワングルに入学して早々反抗され、彼に触発されるように何かと問題を起こすファルハーンたちに、ヴィールーは激怒。彼らを何としてでも退学しようと画策します。
4年間一緒に工学を学び、青春を謳歌した親友が突然行方不明になってしまったことだけでも衝撃的な出来事なのに、その親友を探すファルハーンたちをさらに驚かせる出来事ばかり起こります。
親友は本物のランチョーの学位取得のために通わされていた、彼の家の使用人だったこと。10年後には400以上の特許を持つ発明家になって、村の小学校教師兼学長になっていたのです。